著者
中崎 清彦 苅田 修一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

コンポスト原料中に含まれる油脂分の分解を促進する高速コンポスト化の研究過程で、油脂分が活発に分解されているときにアンモニア臭の発生が劇的に低減される。コンポスト化における窒素の収支を詳細に検討し、アンモニア臭の低減効果は油脂の分解中間体にアンモニアが中和されるためのではなく、油脂分解菌の菌体合成にアンモニアが使用されるためであることを確かめた。また、トリブチリンを含有するLBTR培地上で油脂分解微生物を計数したところ、油脂分解微生物はコンポスト化中盤以降に増殖し、アンモニア臭低減効果の発現とよく一致する結果が得られた。なお、LBTR培地上で優勢な好熱性細菌LT1株、およびLT4株を単離し同定した。さらに、微生物叢をDGGE解析装置で解析したところ、油脂分解菌LT1株、およびLT4株と協同して作用する微生物として、新たな微生物DOM-1の存在を確認するとともに、遺伝子の配列情報からDOM-1を同定した。DOM-1は油脂含有培地での生育が確認されず、現在まで純粋培養を確立するに至っていないが、油脂を含まず、アンモニア臭低減効果も見られないコンポスト化ではDOM-1が検出されないことから、DOM-1は油脂分解菌LT1株、およびLT4株との相互作用を及ぼしながら共存しているものと考えられた。また、油脂分解微生物、および油脂分解微生物と協同して働く微生物の初期濃度を高めるために、油脂が活発に分解されているコンポストの製品を種菌として返送したところ、油脂の分解を早めアンモニア臭低減にも効果があることを明らかにした。
著者
中崎 清彦 塚田 智隆 大滝 昭仁
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.167-173, 1996-07-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

実験室規模の自己発熱型等温反応装置を用い, 二酸化炭素発生速度, および炭素変化率を測定することによって, コーヒーかすのコンポスト化速度を定量した。コーヒーかすのC/N比は24.2であり, 従来からいわれているコンポスト化の最適C/N比付近にあるが, 水溶性の窒素濃度は1.73×10-3g-N/g-乾燥コーヒーかすと全窒素の10%以下に過ぎずコンポスト化速度は遅いことがわかった。そこで, 水溶性含窒素化合物として硫酸アンモニウム, およびペプトンを添加したところ, いずれの場合もコーヒーかすの分解は促進されるが, ペプトンを添加したときの方が促進効果が大きいことを明らかにした。また, コンポスト化にともなう微生物相変化を測定し, 含窒素化合物を添加することで好熱性細菌の増殖が促進されることを見いだした。なお, 含窒素有機化合物として火力発電所の排水路から回収された廃棄物である除去貝を用いたところ, コーヒーかすは32日間の短時間でコンポスト化が可能で, 除去貝の添加は高速コンポスト化に有効であることを確かめた。
著者
中崎 清彦 安達 友彦
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.570-578, 2000-12-31
参考文献数
18
被引用文献数
2

多くの産業で排水処理施設から大量の汚泥が排出されている。汚泥を工業原料に変えて他の産業で使用するネットワークの構築はゼロエミッションへの一段階である。本研究では排水処理過程で排出される汚泥から生分解性プラスチックの原料であるL-乳酸の生成を試みた。製紙工場から排出される汚泥はセルロースの含有量が高く,糖化と発酵の組み合わせでL-乳酸の生成が可能であること,また,セルロースの糖化にともなって生成するグルコースによる酵素反応阻害の低減には同時糖化発酵法の適用が有効であり,温度40℃,pH5.0の最適条件下で9.779/Lの高濃度L-乳酸が生成できることを明らかにした。
著者
小山 光彦 シュクリ ファディル 戸田 龍樹 トラン クイン ザイヌル カマル シャズニ 中崎 清彦
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第31回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.201, 2020 (Released:2020-11-30)

本研究は、エビ養殖池汚泥のアンモニア変換プロセスの高効率化に有用な知見を得ることを目的として、異なる養殖池汚泥の高温好気発酵処理におけるアンモニア回収ポテンシャルを比較するとともに、次世代シーケンサーによる菌叢の網羅的な解析ならびに機能予測解析をおこなった。エビ養殖池汚泥からのアンモニア回収ポテンシャルは、汚泥の有機物濃度に大きく依存することがわかった。汚泥の微生物分解において、非溶存態窒素画分を溶存態化する過程がプロセスのボトルネックであることが窒素収支により明らかとなった。菌叢解析ならびに機能予測解析により、ペプチドグリカンや難分解性有機窒素の分解が有機態窒素の溶存態化の制限要因となっていることが示唆された。今後、これらの有機態窒素分解酵素を分泌する微生物を接種することにより、養殖池汚泥の分解・アンモニア変換の高効率化が期待される。