著者
中川 まり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.201-212, 2010-10-30 (Released:2011-10-30)
参考文献数
28
被引用文献数
4 3

本研究の目的は育児・家事に対する妻の家庭責任意識が夫の育児・家事参加に影響しているか,そして妻の家庭責任意識が就業の有無や相対的資源から規定されているのかを明らかにすることである。対象は12歳以下の末子をもつ有配偶の妻682名である。二次データを用いた分析の結果,妻の家庭責任意識の強さが,夫の育児・家事参加を直接少なくするが,妻が責任意識によって行う育児・家事の多さが,相対的資源差による他の要因よりも強く育児・家事参加を制約することが明らかになった。また妻の家庭責任意識は,高い学歴を得て就業することで弱くなるが,相対的資源が少ないほど責任意識が強まることが明らかになった。この結果より,社会的に構築された妻の家庭責任意識が直接的に,さらに妻の育児・家事遂行を通して間接的にも,夫の育児・家事を強く規定しており,夫の育児・家事参加の促進のためには,夫だけでなく妻の要因も重要であることが示唆された。
著者
中川 まり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.789-798, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
29

This study examines whether wives in double-income families with children facilitate husbands' participation in housework, manage or restrict household performance, and whether such behaviors affect husbands' participation in housework. The study used the concept of maternal gatekeeping. It is reported that wives who play the role of gatekeepers of childcare and housework may facilitate husbands' engagement in childcare and housework, manage the housework, or restrict their engagement. This study focused on 285 wives in double-income families with children under the age of 13. A questionnaire survey was conducted in August 2015 via the Internet. A structural equation modeling analysis yielded two major results. First, the more frequently wives discourage husbands' participation in housework, the less husbands participate in housework. Second, wives' facilitation of husbands' participation in housework increases husbands' participation in housework. This study concludes that wives in double-income families should facilitate their husbands' participation in housework to avoid the double burden of employment and housework.
著者
中川 まり
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は子育て期・共働きの母親を対象に母親のゲートキーピング行動とキャリア形成、父親の家事・子育て参加との関連を明らかにした。家事・子育てのゲートキーピング行動とは母親が子育てや家事の監督者であるために、父親の育児・家事を管理・促進・抑制するという仮説である。成果として母親のゲートキーピング行動は3概念からなることを明らかにした。第一は抱え込みとして父親の参加を妨げること、第二は参加促進として父親の家事・子育てを褒め、教えること、第三は統制として父親に家事・子育てを頼む、父親の家事をやり直すであった。また母親はキャリアも家庭役割も重視し夫婦で家事分担の取り決めがあるほどキャリアへの意欲も高い。
著者
中川 まり
出版者
お茶の水女子大学生活社会科学研究会
雑誌
生活社会科学研究 (ISSN:13410385)
巻号頁・発行日
no.25, pp.65-74, 2018-10

本研究の目的は,日本における未就学児をもつ妻を対象に,IT を利用した夫との子育てに関するコミュニケーションや情報検索が,子どもの教育に関する意思決定にどのような影響をもたらしているかについて,韓国・米国との3 か国比較を通じて明らかにすることである.方法はインターネット調査であり,対象となった妻は,日本1194名,韓国1021名,アメリカ1001名である.パスモデルによる多母集団分析の結果,日本の妻は,夫との子育てに関するメール・SNS でのIT コミュニケーションが多いほど,子どもの教育に関する意思決定を夫もより多く行うが,この結果は韓国と米国でも同様であった.また子どもの教育の意思決定は,日本だけが約6 割以上の夫婦で主に妻が行い,韓国と米国では日本より夫も意思決定を行っている.そして日本と米国では,収入が多い妻は,IT を仕事と子育ての両立のための道具としていることも明らかになった.本研究から日本の妻は,意思決定を含め,夫が子育てにより参加するようにIT を活用していることが示唆された.This study examines how wives' use of IT for the purpose of communication with theirhusbands and information gathering purposes is related to couples' decision-making about childrearingacross three countries; Japan, South Korea and the United States. The data werecollected from web questionnaire in 2016- 2017. As a result of the path analysis, wives' use of IT,through smart-phones, cell-phones and personal computers, can influence couples' decision-makingabout their children's education in Japan, South Korea and the United States. Especially over 60%of Japanese wives with preschoolers mainly make decision about child-rearing and only 30% ofU.S. wives make decision about it. It is speculated that wives in Japan use IT to make theirhusbands participate in child-rearing.