著者
大津 雅之 田中 謙 高木 寛之 中川 陽子 大津 雅之 田中 謙 高木 寛之 中川 陽子 OTSU Masayuki TANAKA Ken TAKAGI Hiroyuki NAKAGAWA Yoko オオツ マサユキ Otsu Masayuki タナカ ケン Tanaka Ken タカギ ヒロユキ Takagi Hiroyuki ナカガワ ヨウコ Nakagawa Yoko
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学人間福祉学部紀要 (ISSN:21874344)
巻号頁・発行日
no.16, pp.22-28, 2021-03-20

今日の社会福祉では、地域における多様な福祉課題に対応した社会資源開発の展開が望まれている。その際、「共生(社会)」の実現が求められる中で、①地域の特性等に応じた多様性の保障と、②地域福祉の担い手としての当事者・当事者組織の参画による当事者性の保障の両立が必要不可欠となる。このような多様性と当事者性の両立は、主に2000(平成12)年以降の社会福祉基礎構造改革前後を転換点として強調された特徴とされる。しかし、それ以前から両者の保障に取組んできた地域創発の社会資源開発手法を実践から確認できる。そこで本研究は戦後日本の社会福祉史における地域創発の社会資源開発手法のメカニズムを学説史の視座から解明し、地域福祉における社会資源開発のあり方を歴史的に問うことを研究課題とする。その上で今日の社会資源開発政策、事業の改善に資する実践的知見を示すことにより、今後の社会開発資源のあり方に関する知見を得ることを目的とした。その結果、先行研究の整理・検討を経て、学説では社会資源に関する一定の議論の蓄積が確認された。しかしながら、実際の地域における社会資源に関連する先行研究では、地域特性を反映したと推測される社会資源開発等の動きが確認でき、それらの事例研究に関するさらなる研究の進展が必要であると考えられた。そのため、今後実際の各地方・地域における社会資源開発の歴史を、実証的に明らかにする作業を行い、学説との関連性を検証する作業が必要であることが示唆されたといえる。
著者
中川 陽子 宮本 信也
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-24, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
22

目的:本研究は,母親の「イライラ感」に着目し,子どもが泣いたりぐずったりする負の感情表出に対する母親の不適切な対処行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした.方法:首都圏の郊外の幼稚園,都市部の幼稚園と保育所の計3施設に在籍する1~6歳の幼児をもつ母親を対象に,2017年4~7月に無記名の自記式質問紙による横断的調査を実施した.回答の得られた687名(回収率57.3%)から無効回答等を除外し,444名を分析対象とした.子どもの育てにくさ,母親の認知様式,特性被援助志向性,被害的認知,イライラ感を点数化し,重回帰分析を行った.結果:子どもの負の感情表出に対する母親の不適切な対処行動に直接的に影響を及ぼす要因は,母親のイライラ感(β=0.32, P<0.001)と子どもの年齢(β=0.18, P<0.001)であった.イライラ感に影響を及ぼす要因は,子どもの育てにくさ(β=0.24, P<0.001)と完璧主義(β=0.17, P=0.001)であった.中でも,被害的認知(β=0.19, P=0.024)と完璧主義(β=0.23, P=0.005)は,イライラ感を高めやすく不適切な対処行動につながりやすいことが明らかになった.結論:母親の認知的要因と不適切な対処行動との間にイライラ感が介在しており,被害的認知及び完璧主義な認知的特性によってイライラ感が高まると,不適切な対処行動につながりやすいことが示唆された.母親がイライラ感を統制できるよう,認知的特性を踏まえた介入方法を検討することが重要である.