著者
藤井 謙裕 堀井 康弘 岸本 和美 岩野 正之 土肥 和紘
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.1179-1184, 1995-08-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
12

CAPD (continuous ambulatory peritoneal dialysis) 排液の白濁は, 腹膜炎の重要な兆候であるが, 乳糜の混入による白濁排液と鑑別を要する場合が少なくない. 今回著者らは, 排液の白濁が脂肪成分の分析から乳糜の混入によるものと診断されたCAPDの3例を経験した. 乳糜排液の原因は, 症例1ではIPD (intermittent peritoneal dialysis) カテーテルによる腹腔内リンパ管の損傷, 症例2ではmanidipine hydrochlorideの内服, 症例3では高脂肪食摂取であった. つまり, 乳糜排液は, リンパ管の機械的損傷, 薬物によるリンパ管の透過性亢進, 高脂肪食後でのリンパ管流量とリンパ管圧の増加によるリンパ管からのリンパ液漏出が原因と考えられる. さらに, 乳糜排液は, 腹膜炎による白濁排液との鑑別が重要であり, 細菌培養や炎症反応の成績のない場合でも, 1) 発熱, 腹痛などの腹膜刺激症状がない, 2) 白濁排液中の細胞数が100/μl未満である, 3) 3,000rpm, 5分間の遠沈後も白濁が消失しないことが鑑別点になる. つまり, CAPD排液が白濁した場合は, 乳糜排液の可能性を考慮して腹膜炎と鑑別し, その原因を追求することが重要である.
著者
川野 貴弘 西浦 公章 車谷 典男 土肥 祥子 米増 國雄 金内 雅夫 土肥 和紘
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.659-663, 1997-10-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
11

糖尿病患者は非糖尿病患者に比して大腸癌に罹患しやすいかを検討する目的で横断研究を実施した. 対象は, 総合病院町立大淀病院で全大腸内視鏡検査が施行された患者391例 (男性235例, 女性156例, 平均年齢61歳) である. Mantel-Haenszel法で算出したオッズ比から糖尿病と大腸癌合併の関連性について検討した. 大腸癌の合併は, 糖尿病患者57例中17例 (有病率30%) に対し, 非糖尿病患者334例中48例 (有病率14%) であった. 大腸癌有病率についての非糖尿病群に対する糖尿病群のオッズ比は, 2.35 (95%信頼区間: 1.28~4.48) であった. 以上から, 糖尿病患者は, 非糖尿病患者に比して大腸癌に罹患しやすいことが示唆される.