著者
小口 太一 大西 真理 近川 幸恵 児玉 貴志 鈴木 えみり 笠原 正輝 穐山 浩 手島 玲子 布藤 聡 日野 明寛 古井 聡 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.41-46, 2009-02-25 (Released:2009-03-26)
参考文献数
5
被引用文献数
2 14

食品・飼料としての利用を目的とした遺伝子組換えテンサイ品種が開発されている.本研究では,テンサイを原料とした加工食品を遺伝子組換え食品の検査の対象にすべきか評価するため,テンサイ糖製品におけるDNA残存の有無を調査した.複数のテンサイ内在性遺伝子配列を標的としたPCR分析の結果,テンサイに含まれるDNAは製糖過程の早い段階で分解され,テンサイ糖製品中から分析可能な質および量のDNAは回収できなかった.
著者
Sabina Yeasmin 高畠 令王奈 鍵屋 ゆかり 岡﨑 法子 峯岸 恭孝 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.180-186, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
19

食品あるいは飼料において,遺伝子組換え(GM)作物の検出法を開発するためには,種特異的な内在性配列が不可欠である.本研究では,ナス科作物のβ-fructosidase遺伝子の部分配列を用いて,loop-mediated isothermal amplification (LAMP)法によるナスの種特異的検出法を開発した.LAMP法は,迅速,特異的かつ低コストで実施可能な検出技術である.開発したプライマーセットを用いて,ナスの種特異性および安定性を,18品種のナスおよびナス科植物を含む作物種を用いて検討した.また,検出限界を評価した.その結果,本LAMP検出法は,ナスに特異的であり,かつナス品種間で安定した増幅を示した.以上の結果から,LAMP法によるGMナス検出法が開発される際には,有用な陽性コントロールとして利用可能であることが示された.
著者
高畠 令王奈 大西 真理 真野 潤一 岸根 雅宏 曽我 慶介 中村 公亮 近藤 一成 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.235-238, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

安全性審査済み遺伝子組換え(GM)トウモロコシおよびダイズの粉砕試料中の混入率を,重量混合比として算出するためには,内標比が必要である.内標比は,GMダイズに関しては,リアルタイムPCR新機種QuantStudio5, QuantStudio12K Flex, LightCycler 96およびLightCycler 480において,組換え配列と内在性配列のコピー数比を基に既に測定されているが,GMトウモロコシに関しては未対応であった.本研究では,GMトウモロコシのスクリーニング検査法の対象であるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター,GA21構造特異的領域,MIR604系統特異的領域,MIR162系統特異的領域において,上記リアルタイムPCR4機種を用いて内標比を算出した.
著者
橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.399, 2006-07-15 (Released:2007-07-15)
参考文献数
2

花粉症をはじめとする様々なアレルギー症状を持つ人が年々増加し,今や我が国の国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持っているといわれている.このアレルギーを引き起こす物質をアレルゲンと呼ぶが,アレルギー症状を引き起こす免疫システムと,アレルゲンのもつ化学構造のインターフェースとなっているのが抗原決定基(エピトープ)である.即ち,アレルゲンのみならず,ある物質がそれに対する抗体を誘発する場合,免疫システムによって認識される部位がエピトープである.アレルゲンをはじめとし,抗体産生を誘発する抗原はその分子内にいくつものエピトープを持っている.これらエピトープは生体内で抗体産生に携わるT細胞によって認識されるT細胞エピトープと,B細胞によって認識され,また抗体の結合部位になるB細胞エピトープとに分類されている.抗体等によって認識される構造単位であるエピトープであるが,タンパク質中の特定のアミノ酸配列だけでなく,糖鎖の一部,低分子物質なども含まれる.糖鎖抗原としてはABO式血液型抗原が有名であり,アレルゲンに関してもミツバチ毒ホスホリパーゼA2,オリーブ花粉アレルゲン等のB細胞エピトープは糖鎖部分であることが示唆されている.T細胞に抗原が認識される場合,まず抗原はマクロファージ,B細胞等の抗原提示細胞に取り込まれペプチドまで分解される.処理されたペプチドは抗原提示細胞上に発現するMHCクラスII分子とともにT細胞レセプターに提示され,これによって抗原情報がT細胞へと伝達され,T細胞の活性化が起きる.このとき,T細胞レセプターはMHCと複合体を形成した線状のエピトープとしか反応しない.従って,T細胞エピトープは熱変性など一次構造に影響しない処理に対しては安定であるが,酵素処理のような一次構造を切断するような処理に対しては影響を受けやすい.一方,B細胞エピトープは,線状に並んだ一次構造から形成されるエピトープだけでなく,タンパク質の立体構造に依存したエピトープを形成する場合もある.従って,B細胞エピトープの場合,T細胞エピトープのように一次構造の変化を伴わない処理に対して影響を受け難いものもある一方,立体構造に依存するエピトープは加熱変性のように三次元構造に変化を引き起こす処理によっても容易に影響を受け,B細胞及び抗体から認識されなくなってしまう.卵一つとってみても,卵白中のオボムコイドは加熱処理に対して安定であるが,オボアルブミンは不安定であるなど,エピトープの構造の違いが調理などによるアレルゲン性の消長に影響を及ぼしている.ところで,花粉症や食物アレルギーなどのアレルギー患者の増加に伴い,その治療法も多くの研究の対象となっている.アレルギーの治療法としては,抗アレルギー剤,ステロイド等,種々の薬剤による対症療法が一般的である.また,少量の抗原をアレルギー患者に長期にわたり繰り返し投与する減感作療法は,花粉,動物,ダニ等の吸入性アレルギーの治療に長く使われてきた.しかし,現行の減感作療法はIgE結合部位を含む抗原を投与することからアレルギー症状を惹起する危険性も否定できない.そこで,ペプチド免疫療法など新たな治療の試みも検討されている.これは完全長のタンパク質分子を用いるのではなく,T細胞エピトープを含むペプチド断片を用いて行われるものである.これらのペプチド断片はアレルギー反応の惹起に必要なIgEの結合及びその架橋形成はできないが,T細胞の不応答を引き起こすとされている.実用化には至っていないが,花粉症のアレルギー症状の緩和を目指したスギ花粉症緩和米はこの現象を利用したものである.具体的には,遺伝子組換えの技術を利用し,スギ花粉症抗原タンパク質の中から7種の主要なT細胞エピトープを選び,これらを連結したエピトープペプチドをコメの胚乳部分に特異的かつ高度に蓄積させたものである1).その他にも,B細胞エピトープのアミノ酸を一つ置換したリコンビナントペプチドを用いた変異タンパク免疫療法も研究されている.T細胞活性化能を保持しながらもIgE結合能が減弱したアミノ酸置換リコンビナントをモデルマウスに投与した実験では,アナフィラキシー発症の頻度及び程度の軽減が認められている2).このようにエピトープの解明は非常に重要であるが,一部の主要アレルゲンを除き,多くのアレルゲンにおいてはエピトープの解明は十分ではない.今後のエピトープ解析の進展が強く望まれる.
著者
穐山 浩 坂田 こずえ SPIEGELHALTER Frank 古井 聡 中島 安基江 橘田 和美 手島 玲子
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.65-70, 2010
被引用文献数
5

リアルタイムPCRを用いた未承認遺伝子組換えトウモロコシDAS59132系統(E32)の検知法を8機関によるバリデーション試験により評価した.試験試料は0%,0.05%,0.1%の3濃度粉末試料と0.01% の抽出DNA溶液試料で,各濃度試料を2点並行により併行再現性や室間再現性などを評価した.トウモロコシ内在性遺伝子の検出試験ではすべての試料において良好な増幅曲線が得られ,陽性と判定された.E32検出用試験では,すべての 0% 試験試料と1機関において 0.01% 試験試料2点の内1試料で2反応並行の1反応が陰性であった以外は,良好な増幅曲線が得られ陽性と判定された.検出限界は約0.01%と判断された.本研究により,E32の検知法の妥当性が確認された.
著者
岸根 雅宏 野口 秋雄 真野 潤一 高畠 令王奈 中村 公亮 近藤 一成 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.151-156, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
15
被引用文献数
2

過去の検討によってDNA検出が不可能であった高度加工食品(しょうゆ,コーンフレーク,でんぷん糖,甜菜糖,植物油など)については,現在遺伝子組換え表示対象外となっている.われわれは,それら高度加工食品のうち,水飴,甜菜糖および植物油を対象として,最新のDNA抽出キットを用いることでDNAが検出可能であるか検討を行った.食品原材料植物の種特異的内在性遺伝子DNAの検出を指標とした結果,いずれの試料においてもDNA検出可能と判定された試料はなかった.DNAが検出されなかった試料の大部分は,抽出DNAへのPCR阻害物質の混入は認められず,抽出DNA量がPCRによる検出限界以下であることが原因であると考えられた.