著者
中村 怜之輔
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.73-76, 1961-03-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

1.渋ガキ果実の脱渋に対する凍結貯蔵の影響の有無をみるために,京大付属農場から採取した13品種の果実について,-12°Cおよび-25°Cの凍結貯蔵を10~90日間続け,その間における可溶性タンニン含量の変化を観察した。 2.その結果,凍結後すぐには脱渋しないが,貯蔵日数の経つに従つて可溶性タンニンが漸減し,一定期間後には確実に脱渋した。その場合の品種による脱渋の難易は,炭酸ガス法による脱渋の難易とよく一致した。 3.凍結貯蔵温度が-20~-30°Cまでは低いほど脱渋が速やかにおこるが,それ以下の極低温になるとかえつて脱渋が遅くなる傾向がみられた。 4.脱渋の機構につき2, 3考察を試みたが,その結果従来の脱渋機構とは性質を異にするようである。すなわち,凍結によりタンニン物質そのものは変化しないがそれを包含する膠質物質の不可逆的変性,特に脱水変性に密接に関係するものと思われる。
著者
中村 怜之輔 風岡 三信
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.27-36, 1977

現在わが国のバナナ消費量の85% を占めるフィリピン産Cavendish種バナナの流通経路を次の3段階に大別し,温度条件を中心にして輸送環境を追跡調査した. 1)プランテーション→輸出港(フィリピン) トラック輸送を含むこの工程での箱内温度は気温付近の25~28℃で,冬期にはこの工程で高温の影響を受けることはないと思われる. しかし,滞荷が生じるとパッキング・ハウスや桟橋で直射日光にさらされて,果実温度が一時的に30℃を越えることが予想される. とくに夏期には注意が必要であろう. 振動は輸送距離が短かい割には回数が多く,また3G以上の強振動が日本国内の通常の輸送状態の場合と比較してかなり多かった. 2)海上輸送(ダバオ→大阪) 5000トン級バナナボートで,目標温度13.5℃,5日間で低温輸送した. 3Aホールドでは冷却速度が遅く,大阪到着時にも14.5℃で目標には達しなかった. 一方,4Bホールドでは50時間後には目標に達し,その後も低下して12℃に至った. 今回は低温障害の発生はみられなかったが,危険性は十分にあり,今後船内での過冷却については十分注意する必要があろう. ホールド内湿度は荷積後数時間後には95% RHになり,以後そのまま保たれた. また大阪到着時のホールド内空気組成は酸素19.4% ,炭酸ガス0.20であった. 船の動揺による振動加速度は,使用した加遠度計では記録されなかった. 3)輸入港→追熟加工業者(日本) 大阪港→出雲市(バン・トラック),神戸港→米子市(二重シートがけ)の2回のトラック輸送を行なった. 峠を越える時点で,外気温は一時的に約0℃にまで低下したが,箱内温度はほとんど影饗を受けなかった. また振動は比較的少なかった。
著者
久保 康隆 平田 治 稲葉 昭次 中村 怜之輔
出版者
japan association of food preservation scientists
雑誌
日本食品低温保蔵学会誌 (ISSN:09147675)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.79-83, 1996-05-30 (Released:2011-05-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

The rates of C2H4 production in peach and banana fruits stored under 3 % O2 decreased by approximately 60% and 50% respectively compared to those stored in air. 1-aminocyclo-propane-1-carboxylic acid (ACC) oxidase activity in both fruits did not change during low O2 and subsequent air storage, when measured in the disks incubated under air condition. Low O2 treatment increased slightly ACC contents in both fruits. However, the increase in ACC content in peaches was much less compared to the calculated increase based on the result of the inhibition in C2H4 production, on the assumption that low O2 atmosphere would not affect the conversion of s-adenosylmethionine (SAM) to ACC. When ACC oxidase activity in excised flesh tissues from peach, banana, cucumber, and eggplant was measured under various O2 concentrations, the activity was distinctly O2-dependent. Our results suggest that inhibition of C2H4 production by shortterm low O2 treatment is mainly due to inhibition of ACC oxidase activity, not due to decrease in amount of the enzyme. The inhibitory effect of low O2 on C2H4 production in peach fruit might be partly due to inhibition of the conversion of SAM to ACC.
著者
塩見 慎次郎 丁野 久美 西川 美穂 岡部 真美 中村 怜之輔
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.235-241, 2002-09-30 (Released:2011-05-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

パイナップル果実の収穫後のガス代謝および果皮色の変化に対するエチレンの関与について, エチレンの作用阻害剤である1-メチルシクロプロペン (1-MCP) を用いて調べた。緑熟段階で収穫した果実の炭酸ガス排出量およびエチレン生成量は貯蔵中に上昇し, 末期上昇型パターンを示したが, エチレン生成量は最大でも1nl g-1 h-1に達しなかった。1-MCP処理によって呼吸量は減少し, エチレン生成量は一時的に上昇した。プロピレン処理は呼吸を一時的に増加させたが, エチレン生成を促進しなかった。果実をクラウンと果実部に分けてガス代謝を調べたところ, 末期上昇パターンはクラウンではなく, 果実部に依存していた。未熟果・緑熟果・適熟果に1-MCP処理を複数回行うと, いずれの熟度においても処理直後にエチレン生成が一時的に促進された。呼吸およびエチレン生成は樹上で発育に伴って増加し, 収穫後も増加し続けた。果皮の着色は収穫熟度に関係なく進行したが, 未熟果になるほど1-MCP処理によってその進行が遅延した。以上より, パイナップル果実のエチレン生成はエチレンによるネガティブフィードバック調節 (自動抑制作用) を受けること, 果皮色の変化にエチレンが関与しているごとが示され, 収穫後のガス代謝や果皮色の変化が樹上での変化と同様であることからパイナップルは少なくとも一部追熟性をもつことが明らかになった。
著者
稲葉 昭次 山本 努 伊東 卓爾 中村 怜之輔
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.132-138, 1980
被引用文献数
2 3

トマトの樹上成熟果実と追熟果実の成熟様相と食味の比較を行った.'強力五光'については成熟の様相を, また'強力東光'についてはそれに加えて食味面からの検討も行った.<br>mature green stage からの追熟果実の炭酸ガス排出量及びエチレン発生量は,'強力五光'果実では全期間を通じて樹上成熟果実より低く,'強力東光'果実では成熟の開始に伴う増加が遅れた. turning 及び pink stage からの追熟果実では, いずれの品種ともに樹上成熟果実と大差は認められなかった.<br>'強力東光'果実の遊離のABA含量は, mature green stage からの追熟では, 成熟期間中ほとんど増加しなかったが, turning stage 以後の追熟では樹上成熟よりもむしろ多くなった.<br>full ripe stage における食味テストでは, 果色についてはいずれの熟度からの追熟果実も樹上成熟果実と差はなかったが, 肉質, 風味, 甘味及び酸味の評価は mature green stage からり追熟果実は明らかに樹上成熟果実よりも劣っていた. turning stage からの追熟果実では,酸味の評価のみが樹上成熟果実より劣っていたが, pink stage からのものではすべての面でまったく差は認められなかった. このような甘酸味の食味評価の差異は, 果肉部のグルコース及びフラクトース含量ならびにゼリー部のクエン酸含量における差異とよく一致していた.<br>以上のことより, トマト果実は内的及び食味構成面からみて, mature green stage では追熟に対する条件がまだ十分には整っておらず, turning stage になるとそれらがほぼ完全に整うように思われた.
著者
寧 波 久保 康隆 稲葉 昭次 中村 怜之輔
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.703-710, 1991
被引用文献数
2 4

チュウゴクナシ'鴨梨'の樹上および収穫後の成熟特性をニホンナシ'二十世紀'およびセイヨウナシ'ラ•フランス'と対比しながら調べた.<BR>呼吸活性は3種類とも樹上成熟に伴って増加した.収穫後の呼吸活性は'鴨梨'と'ラ•フランス'では, 収穫熟度にかかわらずクライマクテリック•パターンを示したが, '二十世紀'では, ノンクライマクテリック•パターンであった. 樹上成熟果のエチレン生成は, '鴨梨'では収穫期における落果直前, 'ラ•フランス'では成熟期の後半頃に始まったが, '二十世紀'では過熟になってもみられなかった. 収穫果実のエチレン生成は, '鴨梨'と'ラ•フランス'では明確に認められ, ACC含量とEFE活性もエチレン生成と同調した変化様相を示した. 特に'鴨梨'のエチレン生成量は極めて多く, 最も多量の場合には380nl/g•hrにも達した. また, 収穫時期が早いほど追熟中のエチレン生成量も多い傾向があった.一方, '二十世紀'では樹上ではある程度のACC含量の蓄積がみられたが, EFE活性が低く, エチレン生成は樹上でも収穫後もほとんどみられなかった.<BR>樹上成熟に伴うデンプンの急減と糖含量の増加は3種類ともみられたが, 糖組成は異なり, '鴨梨'と'ラ•フランスは樹上成熟期間を通じて終始果糖含量が最も高かったが, '二十世紀'ではショ糖含量が成熟期間中急増して最も高くなった.<BR>樹上成熟に伴う有機酸含量は, 'ラ•フランス'でリンゴ酸が急増したこと以外にはあまり変化がなかった. 収穫後は, '鴨梨'ではリンゴ酸含量が追熟中一度増加した後減少したが, 'ラ•フランス'では漸減傾向を示した.<BR>果肉硬度はいずれの品種とも樹上では減少し, 特に'ラ•フランス'では著しかった. 収穫後は, '鴨梨'では追熟中に果肉硬度はほとんど減少せず, 収穫時点の硬度を保持していたが, '二十世紀'では漸減し, 'ラ•フランス'では追熟とともに急減した.<BR>以上を総合すると'鴨梨'果実の成熟特性は多量のエチレンを生成するにもかかわらず, 果肉硬度の保持が良好であるという点で, 特徴づけられる.