著者
宮前 治加 伊東 卓爾 小谷 真主 神藤 宏
出版者
和歌山県農林水産部
雑誌
和歌山県農林水産試験研究機関研究報告 = Bulletin of the Wakayama Prefectural Experiment Stations of Agriculture, Forestry and Fisheries (ISSN:21875634)
巻号頁・発行日
no.1, pp.39-48, 2013

1. ほ場で植栽された状態で開花したシュッコンカスミソウ小花は,半開時から満開時にブドウ糖と果糖が急激に増加し,満開小花の全糖含量は,'雪ん子'で54.5mg・g-1,'アルタイル'で53.5mg・g-1であった。2. 第2小花開花時に収穫したシュッコンカスミソウ切り花を0,2,4,6%のショ糖溶液で48時間処理した後,蒸留水に生け替え,部位別(1次茎,2次茎,小花)に糖含量の推移を調査した。この結果,ショ糖処理直後の茎中には処理濃度に応じてショ糖が蓄積されたが,その後は急激に減少した。このことから,吸収したショ糖は,茎から直接開花段階の小花に移行し,茎に蓄積されないことが推察された。一方,ショ糖処理直後の小花には,ブドウ糖と果糖が処理濃度の高い区ほど多く蓄積され,その後は徐々に減少したが,4%,6%区では,処理後6日目まで高い値で推移した。3. 室温20℃,光強度30μmol・m-2・S-1,24時間照明とした条件下で,ショ糖の処理期間を3水準(2日,4日,連続),ショ糖処理濃度を2水準(2%,4%)としてショ糖の処理期間と処理濃度が切り花品質に及ぼす影響を調査した。この結果,ショ糖濃度2%で4日,4%で2日の処理で12日後に90%の小花が開花し,小花中の糖含量も高い水準で推移した。
著者
緒方 邦安 伊東 卓爾 岩田 隆
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.394-399, 1974-08-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

コールド・チェーンにおける果実そ菜の品質保持と温度変動の許容度との関係について,今回はホウレンソウとセロリーについて調査した。(1) ホウレンソウの商品性保持期間は1℃区で約5週間,6℃区で約15日,20℃区では3~4日であった。冷蔵遅延区は20℃の影響が強く,1日の遅れは1℃区に比べて約25日間劣った。6℃ 3日→1℃区も約10日間短縮された。冷蔵中断区は20℃下で急激な鮮度低下を示した。また貯蔵温度の変動は著しい品質低下をまねき,商品性保持期間はかなり短縮された。(2) セロリーでは,20℃区は5~6日後に腐敗を生じ商品性を失なつた。6℃区は25日前後が限界であったが,1℃区は約35日間商品性を保持した。冷蔵中断区では,中断後急速に商品性を失った。1℃〓6℃(1日毎)と1℃〓6℃(5日毎)の変温区を比較すると,5日ごとの区が1ごとの区よりも7日近く劣った。(3) ホウレンソウの還元型アスコルビン酸含量は,貯蔵中に減少したが,とくに冷蔵の遅れや中断によって強く影響を受け減少した。(4) セロリーの揮発性成分のGLCパターンは貯蔵温度により大きな影響を受け,とくに20℃区および6℃区での商品性の限界付近でのピークとの著しい増加を認めた。1℃区では28日後でもピークとの増加はなく,逆にピークaの増加を認めた。(5) セロリーの還元糖含量は,1℃区では漸次増加する傾向にあり,6℃区はほとんど変らず,20℃区は減少の傾向を示した。(6) 以上のように,ホウレンソウおよびセロリーは低温要求度が高く,かつ温度変動に敏感に反応することが判明した。したがって,このような青果物では,収穫後ただちに1℃付近の低温でしかも厳密に調整された条件の下で貯蔵を行なう必要があることを指摘した。
著者
伊東 卓爾 岩田 隆 緒方 邦安
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.223-230, 1972
被引用文献数
3

前報で, むきエンドウおよびソラマメが, 外観的にも食味の点でも低温要求度が強く, 収穫当日から0&deg;C付近の低温下で貯蔵する必要のあることが判明した. 本実験は, 食味からみた品質変化の実態と品質低下に関する成分的要因について調査したものである.<br>エンドウおよびソラマメは収穫後, ただちに, 有孔ポリエチレン袋詰めとし貯蔵した. 温度処理区は, 1&deg;C, 6&deg;C, および20&deg;Cを基本とし, 冷蔵遅延区, 冷蔵解除区, 変温区などを設けた.<br>1. エンドウの食味について対比較嗜好試験を行なつたところ, 20&deg;Cでは1日で明らかな食味の低下がみられた. 6&deg;Cでも食味低下はかなり急速であつた. 冷蔵遅延区, 1&deg;C貯蔵から20&deg;Cへの昇温, 変温 (1&deg;C〓6&deg;C) などはいずれも食味の低下を早めた. ソラマメでもほぼ同様の傾向を示した.<br>2. エンドウおよびソラマメともに1&deg;C貯蔵では, 貯蔵前半において全糖含量の増加の傾向がみられた. これに対して20&deg;Cでは貯蔵後1日で1/4~1/2に激減し, 6&deg;C, 10&deg;Cでも数日のうちに急減した. 初期の低温を少し緩和した区 (6&deg;C2日&rarr;1&deg;C), 冷蔵を遅らせた区 (20&deg;C1日, 2日&rarr;1&deg;C) では一たん減少した糖が, 1&deg;Cに変温されると漸次回復した. 冷蔵を中断した区 (1&deg;C11日&rarr;20&deg;C, 25&deg;C) では昇温後1日で急激に減少した. 変温区 (1&deg;C〓6&deg;C) では初期は1&deg;Cと6&deg;Cの中間の値を示したが漸次6&deg;Cに近づいた.<br>3. 中性および酸性アミノ酸含量を測定したところ, エンドウおよびソラマメともに, アラニン&bull;グルタミン酸区分&bull;パリンなどが多く含まれていた. 20&deg;C区ではほとんどのアミノ酸に急激な減少がみられた. アラニンの例では, 20&deg;C2日でエンドウでは1/12, ソラマメでは1/5となつた. 1&deg;Cでは減少の速度はかなり抑制されたが, 6&deg;Cでは不十分であつた.<br>4. ソラマメ切片に, Sucrose-U-<sup>14</sup>C および Alanine-U-<sup>14</sup>C を吸収させ20&deg;Cに保つと, アルコール不溶残さに急速にとり込まれた. 前者はでん粉, 後者はたんぱく質に変わるものと思われる. この変化の速度は, 前述の全糖, アラニンの減少とほぼ一致した. アルコール可溶性区分にもある程度とり込みがみられた.<br>2. 20&deg;Cでは急速に硬化が起こり, 食味の低下を招いた. 1&deg;Cではかなり長期にわたつて硬化を押えることができる. カード&bull;メーターによる測定値は, エンドウでは食味とかなり平行した結果が得られたが, ソラマメでの相関性はよくなかつた.<br>6. エンドウおよびソラマメの急激な食味の低下は, 糖およびアミノ酸含量の減少ならびに硬化の三要因によるところが大きいと思われる. これを防ぐには, 収穫直後からできうる限りの低温処理が必要である.
著者
伊東 卓爾 佐々木 勝昭 吉田 保治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.629-635, 1997-12-15
被引用文献数
12

近畿大学附属農場湯浅農場 (和歌山県湯浅町) においてハウス栽培されたマンゴー'Irwin'の果実発育中および追熟中の呼吸量, 糖質および有機酸含量の変化について調査した. 発育中の調査には, 6月14日から8月21日までの果実を用いた. 追熟中には, 8月2日, 8月8日および8月21日に採取した果実を用い,25°C下に貯蔵した.<BR>果実の肥大は, 内果皮の硬化が始まるまでは速やかであったが, 硬化後 (7月19日) は非常に緩やかとなった.<BR>呼吸量は7月19日までは急速に低下したが, 内果皮が硬化した後はほぼ一定であった. 追熟中は, クライマクテリックライズが始まった後1~2日目に呼吸量が最大となった. 呼吸量がピークに達した時, 果皮の着色と果肉の軟化が始まった. 芳香は, 果皮の着色開始から数日遅れて発生し始めた.<BR>遊離糖として, 果糖, ブドウ糖およびショ糖が検出された. 内果皮が硬化した後, 果糖およびショ糖含量は増加し, 8月21日にはそれぞれ3.4g•100g<SUP>-1</SUP>FWおよび1.9g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達した. 逆に, ブドウ糖含量は減少し続けた. 発育中は, 果糖が主要糖であった. デンプン含量は, 内果皮が明らかに硬化した7月19日には2.1g•100g<SUP>-1</SUP>FWであったが, その後急増し8月21日には11.7g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達した. 追熟後は, デンプンはほとんど検出されなくなり, ショ糖含量の増加が著しく, 果糖含量はわずかに増加した.その結果, ショ糖が主要糖となり, 還元糖の大部分を果糖が占めた. デンプンの蓄積量が多い果実で, 全糖含量が多くなった.<BR>有機酸としてクエン酸およびリンゴ酸が検出されたが, 大部分はクエン酸であった. クエン酸含量は内果皮が硬化し始める頃に1.4g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達したが,その後減少し続け, 8月21日の含量は0.6g•100g<SUP>-1</SUP>FWであった. 追熟後は, クエン酸含量はさらに減少した.<BR>樹上で果皮が赤または黄色に着色し始める段階が,和歌山県有田地方においてハウス栽培された'Irwin'の収穫適期であると考えられる.
著者
稲葉 昭次 山本 努 伊東 卓爾 中村 怜之輔
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.132-138, 1980
被引用文献数
2 3

トマトの樹上成熟果実と追熟果実の成熟様相と食味の比較を行った.'強力五光'については成熟の様相を, また'強力東光'についてはそれに加えて食味面からの検討も行った.<br>mature green stage からの追熟果実の炭酸ガス排出量及びエチレン発生量は,'強力五光'果実では全期間を通じて樹上成熟果実より低く,'強力東光'果実では成熟の開始に伴う増加が遅れた. turning 及び pink stage からの追熟果実では, いずれの品種ともに樹上成熟果実と大差は認められなかった.<br>'強力東光'果実の遊離のABA含量は, mature green stage からの追熟では, 成熟期間中ほとんど増加しなかったが, turning stage 以後の追熟では樹上成熟よりもむしろ多くなった.<br>full ripe stage における食味テストでは, 果色についてはいずれの熟度からの追熟果実も樹上成熟果実と差はなかったが, 肉質, 風味, 甘味及び酸味の評価は mature green stage からり追熟果実は明らかに樹上成熟果実よりも劣っていた. turning stage からの追熟果実では,酸味の評価のみが樹上成熟果実より劣っていたが, pink stage からのものではすべての面でまったく差は認められなかった. このような甘酸味の食味評価の差異は, 果肉部のグルコース及びフラクトース含量ならびにゼリー部のクエン酸含量における差異とよく一致していた.<br>以上のことより, トマト果実は内的及び食味構成面からみて, mature green stage では追熟に対する条件がまだ十分には整っておらず, turning stage になるとそれらがほぼ完全に整うように思われた.
著者
弦間 洋 小松 春喜 伊東 卓爾 中野 幹夫 近藤 悟
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

暖地での高品質果実生産のための指針を得る目的で、果皮着色機構、成熟制御機構並びに分裂果等の障害発生機構の解明を行い、一定の成果が得られた。すなわち、リンゴ及びブドウ果実のアントシアニン生成経路の詳細な調査を基に、暖地産果実の色素発現生理の一部を解明することができた。例えば、ブドウ'巨峰'の場合、適地である長野産はアントシアニン含量が高く、暖地産のものは低含量であったが、熊本産はプロアントシニンやフラポノール含量が高く、前駆体のフラバノノールからアントシアニンに至る経路が高温によって阻害され、一方、和歌山、広島産ではこれらの含量が低く、フラパノノール合成以前の過程で阻害された可能性が推察された。ジャスモン酸アナログのn-プロピルジハイドロジャスモン酸(PDJ)とABA混用処理をベレゾーン以前に行うと、不適環境下での着色改善に効果があった。暖地リンゴの着色に及ぼす環境要因について、紫外線(UV)吸収及び透過フィルムで被袋し、さらに果実温を調節して検討したところ、低温(外気温より3〜4℃低い)によってアントシアニン畜積が認められ、内生ABA含量も増加する傾向にあった。しかし、UVの影響については明らかにし得なかった。リンゴ品種には貯蔵中に果皮に脂発生するものがあり、'つがる'果実で検討したところ暖地産(和歌山、熊本、広島)は'ふじ'同様着色は劣るが、適地産(秋田)に比べ脂上がりが少ないことが認められた。果実成熟にABAが関与することがオウトウ及びブドウ'ピオーネ'における消長から伺えた。すなわち、ブドウでは着色期前にs-ABAのピークが観察され、着色に勝る有核果で明らかに高い含量であった。また、種子で生産されたs-ABAは果皮ABA濃度を上昇させるが、t-ABAへの代謝はないことを明らかにした。モモの着色機構についても、無袋果が有袋果に着色が勝ることから直光型であることを認めた。さらに裂果障害を人為的に再現するため、葉の水ポテンシャルで-3.0MPa程度の乾燥処理を施したが裂果は起こらなかったものの、糖度が向上すること、フェノールの蓄積があることなどを認めた。これらの知見は暖地における品質改善への指針として利用できる。