著者
戸井田 哲也 中林 宣男
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.231-240, 1996-05-25 (Released:2018-04-06)
参考文献数
28
被引用文献数
4

酸による脱灰は象牙質コラーゲンを変性させる場合があり, この脱灰象牙質は乾燥により容易に収縮する. 収縮した脱灰象牙質のモノマー透過性は低いため, そこに樹脂含浸象牙質を生成させることは困難である. 研削面の一部をプロテクトバニッシュで保護した後に接着操作を行い, その接着縦断面を塩酸および次亜塩素酸ナトリウムに浸漬させてSEM観察することは, 樹脂含浸象牙質の生成のメカニズムを理解するのに有効な方法である. この観察法により, リン酸のエッチング時間を延長すると象牙質の脱灰はそれだけ深く進行し, 乾燥による脱灰象牙質の収縮の度合いも大きくなること, リン酸の脱灰力は解離したリン酸の濃度と量に関係することを明らかにすることができた.
著者
葦沢 元春 渡辺 功 中林 宣男
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.860-865, 1992-09-25
被引用文献数
6

象牙質への接着メカニズムをより明確にするために象牙質ではなくゾウゲ棒へのMMA-TBBレジンの接着を再検討した.研削ゾウゲへのMMA-TBBレジンの接着強さは14MPaであったが研削象牙質へのそれは5MPa以下である.研削ゾウゲに拡散したMMAを重合して得られる樹脂含浸層の幅は50μmであったが, 象牙質へはMMAは拡散できない.このことから, 象牙質よりもゾウゲの方がモノマーの透過性が格段に高いといえる.従ってMMAの拡散能を向上させる4-METAはゾウゲへの接着には不要であるが, 象牙質の接着には必須である.被着体内へのモノマー透過性とモノマーの拡散能の2つの因子がモノマーの拡散に関係する.歯への接着には, 被着体の中へモノマーを拡散させ重合させることが不可欠であると結論された.