- 著者
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渡辺 功
- 出版者
- 一般社団法人日本歯科理工学会
- 雑誌
- 歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.6, pp.955-973, 1992-11-25
- 被引用文献数
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21
スメアー層が付着したままの研削象牙質への光重合型レジンの接着を目的として研究を行ってきた.拡散力の高いPhenyl-Pを含むボンディング剤を用いると6MPaの接着強さが得られた.しかし長期水中浸漬すると1年後に接着強さは3MPaに低下し長期接着安定性に欠けることが解った.これは十分量のモノマーが拡散できなかったためにスメアー層との樹脂含浸層が弱くなったためである.より多くのモノマーを拡散させるために研削象牙質の物質透過性を向上させる方法を検討したところ, 5, 10%Phenyl-Pと30%HEMAを溶解した水溶液で処理しても1μm以下の樹脂含浸層は形成されるが, 接着強さは向上しなかった.しかし20, 30, 40%Phenyl-Pと30%HEMAを溶解した水溶液で研削面を処理すると, 接着強さは1.5倍の10MPaに向上し, SEM, TME観察により2μmの樹脂含浸層の生成を確認することができた.研削象牙質に強固な接着強さを得るためには, 健全象牙質まで十分にモノマーを拡散させなければならないことが解った.