著者
中畑 晶博 青山 朋樹 伊藤 明良
出版者
日本基礎理学療法学会
雑誌
日本基礎理学療法学雑誌 (ISSN:21860742)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.16-22, 2018-12-18 (Released:2019-01-08)

Articular cartilage injury affects many people in the world. However, the articular cartilage tissue is difficult to restore because it has not blood vessels and neurons. Recently, cell therapy has been shown to affect cartilage regeneration. Autologous chondrocyte implantation (ACI) is one of the most common therapies and also performed in Japan under the medical insurance coverage. It is reported that ACI for cartilage defects relieves pain, improves function, and restores the cartilage. Mesenchymal stem cell (MSC) therapy is also performed worldwide. MSC therapy also relieves pain, improves function, restores the cartilage like ACI. However, both ACI and MSC therapy are limited to cartilage restoration and functional recovery. Mechanical stress is an important key factor that facilitates cartilage regeneration, so rehabilitation involving mechanical stress could have synergistic effects. However, evidence on the rehabilitation program after cell therapy is still insufficient. Further verification will be necessary in the future.
著者
長井 桃子 黒木 裕士 飯島 弘貴 伊藤 明良 太治野 純一 中畑 晶博 喜屋武 弥 張 ジュエ 王 天舒 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,様々な疾患に対し多能性幹細胞を用いた臨床試験が行われている。神経再生には神経のミエリン鞘とシュワン細胞の補充が肝要とされ(Zhiwu, 2012),末梢神経損傷動物モデルを用いて,幹細胞やiPS細胞移植による治療効果を検討した報告は多数あり,幹細胞を用いた臨床試験も始まっている。また,conduit(人工神経鞘)を断端部に連結させる手法においても,その中に自家培養細胞を移植する取り組みが行われている。一方,末梢神経損傷に対する介入効果として,運動は神経発芽や再生軸索の成熟を促進し(Sabatier, 2015),電気刺激は神経再生を促す(Gordon, 2010. Wong, 2015)報告もあり,細胞移植後のリハビリテーション介入が神経再生を促す可能性がある。しかし,同疾患患者の再生治療におけるリハビリテーション効果について,現時点でどこまで明らかになっているか不明な点が多い。本研究の目的は,末梢神経損傷患者に対してconduitや幹細胞を用いた治療方法と効果を報告した論文を系統的かつ網羅的に収集することに加え,これらの治療方法とリハビリテーションのかかわりにおける現状を明らかにすることである。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>研究デザインはシステマティックレビューとし,PRISMA声明に準じて実施した。検索式にはhuman,peripheral nerve,stem cell transplantation,nerve regenerationを用い,データベースはPubMed,PEDro,CINAHL,Cochrane libraryを用いた。2016年9月までに報告された,査読のある英語で記載された論文かつ,ヒトを対象に実施された臨床試験(シングルケースを含む)を対象として,conduitと細胞移植に関するものを抽出した。内科疾患や遺伝疾患に関するものは除外した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>キーワードを用いたデータベースの検索では1220件が抽出された。適合基準に合致するものは16件(全体数比:1.31%,出版年:2000~2016)であり,そのうち,リハビリテーションに言及しているものは7件(適合論文内比:43.7%,出版年:2000~2011)だった。うち6件が手部に関するものであり,その内容は,手術直後から穏やかに手指屈伸運動を長期に行うものや実施の記載のみなど,リハビリテーションプログラムの内容や期間について詳細について記したものはなく,統一した見解は得られなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>末梢神経損傷患者に対する再生治療介入の臨床試験数は少なく,リハビリテーション介入に関しても十分に検証されていない現状が明らかとなった。今後さらに,臨床試験の蓄積と,末梢神経損傷の再生治療におけるリハビリテーション効果に関するエビデンスが求められることが予測される。これらのエビデンスを,基礎的研究を通じて理学療法士が自ら示してくことは,理学療法介入の重要性を示す一助になると考える。</p>
著者
白石 麻衣佳 池田 真琴 渡辺 裕介 中畑 晶博 海老子 淳 須田 守彦
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.197, 2011

【目的】<BR> 当院における全人工膝関節形成術(以下TKA)術後のリハビリは、従来、術翌日より歩行訓練を開始し、自立した杖歩行が可能となるのは術後約1週間前後、入院期間は約2週間であった。今回、積極的に歩行能力の向上を目的としてリハビリを施行した症例に対して、自立した杖歩行に要した期間を調査した。<BR>【方法】<BR> 対象は2011年4月1日以降にTKA施行した6例6膝(女性6膝)、平均年齢74.1歳(67歳~81歳)である。関節アプローチは全例medial parapatellar approachで、固定方法は全例大腿骨側、脛骨側共にセメントを使用した。対象症例に対して、自立した杖歩行までにかかった日数、術前歩行レベル、術前筋力を調査した。筋力は膝伸展筋力をμ-Tas(ANIMA製)を用いて計測した。なお対象者には、ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を得た。<BR>【結果】<BR> 術前歩行レベルは1例のみT字杖歩行で、その他は独歩であった。自立した杖歩行までの平均日数は約4日で、最短2日、最長6日であった。術側筋力は平均15.2±5.2kg、健側の筋力は平均22.4±6.0kgであった。早期に自立した杖歩行となった症例は、術前筋力が高い傾向にあった。<BR>【考察】<BR> 当院では、従来術後2週間で自宅退院が可能となるように術後のリハビリを取り組んでいた。従来の術後プロトコールでは、術翌日より歩行器歩行を開始し、自立した杖歩行までは術後1週間程度を要していた。しかし、症例によっては早期に歩行レベルの向上が図れるものも少なからず存在しており、また、海外におけるTKAの入院期間が日帰りから約1週間であることをふまえて 、今回積極的に歩行レベルの向上を目的として術後リハビリを行った。今回の結果より、自立した杖歩行まで平均4日と従来行ってきたプロトコールよりも早期に歩行能力の向上を得ることができた。また、術前にT字杖を使用していた症例も術後3日にて自立した杖歩行となった。このことから、歩行に関して自立した杖歩行を自宅への退院の指標とした場合、早期に自宅退院可能だと考えられる。また、杖歩行が早期に自立となった症例は術前筋力が高い傾向にあったことから、術前からの筋力訓練は術後の歩行能力改善に有効と考えられる。<BR>【まとめ】<BR> 今回、術後リハビリにおいて積極的に歩行レベルの向上を図った結果、術後平均4日で自立した杖歩行が獲得できた。自立した杖歩行を自宅への退院の指標とすると、術後4日で退院が可能であると思われる。今後は症例数を増やし、年齢や筋力、可動域等をふまえて詳細に術後歩行能力に関与する因子を検討していきたい。