著者
福谷 直人 任 和子 山中 寛恵 手良向 聡 横田 勲 坂林 智美 田中 真琴 福本 貴彦 坪山 直生 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1512, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】腰痛は,業務上疾病の中で約6割を占める労働衛生上の重要課題であり,特に看護業界での課題意識は高い。近年では,仕事に出勤していても心身の健康上の問題で,労働生産性が低下するプレゼンティーイズムが着目されている。しかし,看護師の腰痛に着目し,急性/慢性腰痛とプレゼンティーイズムとの関連性を検討した研究はない。したがって,本研究では,看護師における急性/慢性腰痛がプレゼンティーイズムに与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】大学病院に勤務する看護師807名(平均年齢:33.2±9.6歳,女性91.0%)を対象に,自記式質問紙を配布し,基本属性(年齢,性別,キャリア年数),腰痛の有無,腰痛の程度(Numeric Rating Scale)を聴取した。腰痛は,現在の腰痛の有無と,現在腰痛がある場合,その継続期間を聴取することで,腰痛なし,急性腰痛(1日から3ヶ月未満),慢性腰痛(3ヶ月以上)に分類した。さらに,プレゼンティーイズムの評価としてWork Limitations Questionnaire-J(WLQ-J)を聴取した。WLQ-Jは,労働生産性を数値(%)で算出できる質問紙であり,“時間管理”“身体活動”“集中力・対人関係”“仕事の結果”の下位尺度がある。統計解析では,対象者を腰痛なし群,急性腰痛群,慢性腰痛群に分類し,Kruskal Wallis検定(Bonferroni補正)およびカイ二乗検定にて基本属性,WLQ-Jを比較した。次に,従属変数に労働生産性総合評価および各下位尺度を,独立変数に急性腰痛の有無,または慢性腰痛の有無を,調整変数にキャリア年数・性別を投入した重回帰分析を各々行った(強制投入法)。統計学的有意水準は5%とした。【結果】回答データに欠測のない765名を解析対象とした。対象者のうち,363名(47.5%)が急性腰痛,131名(17.1%)が慢性腰痛を有していた。単変量解析の結果,腰痛なし群に比べ,急性および慢性腰痛群は有意に年齢が高く,キャリア年数も長い傾向が認められた(P<0.001)。加えて,“労働生産性総合評価”“身体活動”“集中力・対人関係”において群間に有意差が認められた(P<0.05)。重回帰分析の結果,急性腰痛が労働生産性に与える影響は認められなかったが,慢性腰痛は“集中力・対人関係”と有意に関連していた(非標準化β=-5.78,標準化β=-1.27,P=0.016,95%信頼区間-10.5--1.1)。【結論】本研究結果より,看護師の慢性腰痛は“集中力・対人関係”低下と有意に関連することが明らかとなった。急性腰痛は,発症してから日が浅いため,まだ労働生産性低下には関連していなかったと考えられる。しかし,慢性腰痛では,それに伴う痛みの増加や,うつ傾向などが複合的に“集中力・対人関係”を悪化させると考えられ,慢性腰痛を予防することで労働生産性を維持していくことの重要性が示唆された。
著者
永井 宏達 山田 実 上村 一貴 森 周平 青山 朋樹 市橋 則明 坪山 直生
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.84-89, 2011-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
19

【目的】姿勢制御エクササイズの反復が足関節周囲筋の同時活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常若年者22名とし,介入群(11名)と対照群(11名)に無作為に分類した。不安定板上で10秒間姿勢を保持する課題を行い,その際の筋活動を前脛骨筋,ヒラメ筋より導出した。介入群には不安定板上での反復エクササイズを行い,その後不安定板上での評価を再度実施した。得られた筋電図波形より,同時活動の指標であるco-contraction index(CI)を求めた。【結果】介入群のCIは,エクササイズ後に有意に減少し,介入前50.7 ± 23.9%,介入後38.5 ± 22.0%であった。一方,対照群のCIには変化が認められず,介入前58.7 ± 23.9%,介入後60.9 ± 23.1%であった(p < 0.05)。【結論】不安定場面での同時活動は,姿勢制御エクササイズを行うことで減少する。このことは,姿勢制御エクササイズにより筋の過剰な同時活動が減少することを示唆している。
著者
森 周平 山田 実 青山 朋樹 永井 宏達 梶原 由布 薗田 拓也 西口 周 吉村 和也 國崎 貴弘 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea0956, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 高齢者に於ける転倒は様々な要因との関連が報告されており,筋力・歩行速度・バランスといった身体機能の低下などの内的要因の悪化により転倒リスクが上昇することは多くの先行研究により証明されている.内的要因としては,身体能力以外に転倒恐怖感や自己効力感といった心理的要因が転倒と関連することが報告されている.しかしこれらで心理的要因の全てを説明しているとは言い難く,転倒者の性格が関与する可能性も示されている.そこで我々は熟慮的に行動する者よりも,衝動的に行動する者のほうが,転倒発生が多いという仮説を立て,本研究の目的を,地域在住高齢者に於ける衝動性と転倒との関連を明らかにすることとした.【方法】 対象は地域が主催する健康イベントに参加した65歳以上の高齢者246名(男性:40名,年齢:72.7 ± 5.8歳)とした.除外基準は認知機能の低下により会話・問診による聞き取りが困難な者,歩行の安定性を障害する明らかな疾患を有する者とした.性格の評価には,滝聞・坂元により作成された認知的熟慮性―衝動性尺度を用いた.この尺度は認知判断傾向に関する測定尺度で,「何でもよく考えてみないときがすまないほうだ.」などの10項目の文章に対し,自分があてはまるかを判断しそれぞれ4段階(4:あてはまる,3:どちらかと言えばあてはまる,2:どちらかと言えばあてはまらない,1:あてはまらない)で評価を行い(合計10~40点),点数が高いほど熟慮性が高い(衝動性が低い)ことを示すものである.さらに,過去一年間の転倒経験の有無と,転倒恐怖感の有無とを問診にて聴取した. 統計解析としては,転倒経験を有する群と有さない群との間の,認知的熟慮性―衝動性尺度の点数をMann-WhitneyのU検定にて比較し,その後転倒経験の有無を従属変数,転倒恐怖感の有無,認知的熟慮性―衝動性尺度の点数を独立変数として,年齢,性別を調整変数とした強制投入法による多重ロジスティック回帰分析を行った.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は京都大学医の倫理委員会の承認を受け,書面と口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,同意を得られた対象者に対して実施した.【結果】 転倒経験の有る者は71名,転倒恐怖感を有していた者は125名であった.認知的熟慮性―衝動性尺度の点数に於いて,転倒経験を有する群(26.7 ± 5.7点)は有さない群(28.3 ± 4.9点)に比べて有意に低かった(p < 0.05).さらに多重ロジスティック回帰分析の結果,転倒恐怖感を有すること(p < 0.01,オッズ比 = 4.0),熟慮性が低い(衝動性が高い)こと(p < 0.05,オッズ比 = 0.9),共に有意な説明変数として抽出された(R2 = 0.19).またHosmerとLemeshowの検定の結果,p = 0.463と回帰式は適合していた.【考察】 先行研究に於いて,心理的特性として転倒との関連が報告されているのは転倒恐怖感や自己効力感などであり,性格との関連を検討した報告は存在しなかった.しかし今回の研究により,高齢者個々人の性格の要素に当たる認知的熟慮性―衝動性が転倒経験と関連しており,転倒経験を有する群では転倒経験を有さない群に比べて熟慮性が低い(衝動性が高い)ことが明らかとなった.また,同様に心理的特性である転倒恐怖感とは別の説明変数として抽出されたことから,それぞれは独立して転倒に関わっていることが示された.しかし,今回の研究は後ろ向きの研究であることから,転倒恐怖感については転倒後症候群として転倒の結果発生した可能性を留意すべきである.より衝動的であることが転倒と関連していたことから,日常生活の中で熟慮的に行動する者に比べ,衝動的に行動する者のほうが周囲への注意を怠り,転倒の起因となる危険な動作に結びつく可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】 衝動性が高い,低いといった性格に関することは一概に善悪で語ることが出来ず,衝動的であるからといって性格を改める介入などは行うべきではないと考える.しかし今回の結果を踏まえ,衝動的な者は熟慮的な者に比べ転倒の可能性が高いということを本人,周囲が理解した上で,衝動的な動作などを抑えることが出来れば転倒を防止することが出来る可能性があると考える.よって,衝動的な性格であるが故に行ってしまいそうな危険行動に対して留意させる介入が必要であることが示唆された.
著者
赤尾 静香 朴 玲奈 梅田 綾 森野 佐芳梨 山口 萌 平田 日向子 岸田 智行 山口 剛司 桝井 健吾 松本 大輔 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】妊娠,出産は急激な身体の変化を伴うことで,さまざまなマイナートラブルが起こるといわれている。その中でも骨盤痛含む腰痛は妊婦の過半数が経験し,出産後も痛みが継続するという報告もされている。また腰痛を有する妊婦は身体活動が制限されることにより,ADLやQOLが低下すると報告されている。妊娠中に分泌されるリラキシンホルモンの作用により,仙腸骨靭帯や恥骨結合が弛緩することが原因で発症する腰痛を特に骨盤痛と呼び,出産後はオキシトシンの作用によりすみやかに回復するとされている。しかし実際に出産後1ヶ月以上経過した女性を対象とした研究は少なく,妊娠期の身体変化が及ぼす影響が出産後どのくらい持続しているか報告している研究は少ない。そこで,本研究では,妊娠期での身体変化が回復していると考えられる産褥期以降の女性における骨盤痛の有無と骨盤アライメント,腰部脊柱起立筋筋硬度に着目し,その関連性について検討することを目的とした。【方法】対象は名古屋市内の母親向けイベントに参加していた出産後3ヶ月以上経過した女性77名(平均年齢30.7±4.2歳,平均出産後月6.3±2.6ヶ月)とした。測定項目として骨盤アライメントの測定には,骨盤傾斜の簡易的計測が可能なPalpation Meterを上前腸骨棘と上後腸骨棘の下端に当て,静止立位時の左右の骨盤前後傾角度,上前腸骨棘間距離(以下ASIS間距離),上後腸骨間距離(以下PSIS間距離)を測定し,骨盤前後傾角度の左右差,ASIS間距離とPSIS間距離の比を算出した。腰部脊柱起立筋筋硬度の測定には,生体組織筋硬度計PEK-1(株式会社井元製作所)を使用し,第3腰椎棘突起から左右に3cmおよび6cm離れた位置を静止立位にて測定し,一ヵ所の測定につき5試行連続で行った。得られた値の最大値,最小値を除いた3試行の平均値を代表値とした。アンケートは基本項目(年齢,身長,体重,妊娠・産後月齢,過去の出産回数),骨盤痛,腰背部痛の有無,マイナートラブルの有無(尿漏れなど),クッパーマン更年期指数,エジンバラ産後うつ病質問票,運動習慣に関して行った。対象者は産後3ヶ月から12ヶ月までの者を抽出し,今回は骨盤痛に腰背部痛のみを有する者を除外した。骨盤痛(仙腸関節,恥骨痛のいずれか)の有無により痛みあり群と痛みなし群の2群に分けた。統計解析は,SPSS22.0Jを用い,Mann-Whitney U検定およびχ<sup>2</sup>検定を行った。【結果】痛みあり群は42名(79.2%),痛みなし群11名(20.8%)であった。痛みあり群は痛みなし群と比較してASIS間距離とPSIS間距離の比が有意に小さかった(痛みあり群2.82±0.81:,痛みなし群:3.47±1.29,p<0.05)。その他の骨盤アライメントと腰部脊柱起立筋筋硬度に有意差はみとめられなかった。また,尿漏れについて,痛みあり群では7名(16.7%),痛みなし群にはいなかった。【考察】本研究の結果より,産後女性において骨盤痛が持続していることが明らかとなった。またこれまで妊婦において非妊娠者と比較しASIS間距離,PSIS間距離が有意に大きくなると報告されている。本研究では痛みあり群でASIS間距離とPSIS間距離との比が有意に低いことから,PSIS間距離がASIS間距離と比較し回復が遅いことが,痛みの誘発に関連しているのではないかと想定される。また妊娠後期おいてPSIS間距離と臀部痛,尿漏れに有意な負の相関がみとめられるという報告もあり,本研究の結果から産後女性においても同様の結果が得られた。これらから骨盤の安定性に関与するとされている筋が,出産後も十分に機能していないことが想定される。しかし本研究では腹筋群,骨盤底筋群の評価は行っておらず,骨盤アライメントと筋の関連性は証明できなかった。今後は評価項目を増やし,骨盤アライメントが回復しない原因を検討することが必要である。本研究により産後女性の骨盤痛に対し,妊娠期での影響を考慮した上でのアプローチが必要であると示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究結果より,産後女性でも妊娠期に特徴的な骨盤痛が持続していること,出産後3ヶ月経過しても骨盤アライメントが回復していないことが明らかとなった。現在,日本では妊婦,産後女性に対する理学療法士の介入はほとんどない。しかし今後産後女性の骨盤痛と骨盤アライメントの関連性を明らかにすることで,骨盤痛に対する治療やその発症を予防するための理学療法介入方法の検討につながると考えられ,理学療法士の介入の可能性が示唆された。
著者
中畑 晶博 青山 朋樹 伊藤 明良
出版者
日本基礎理学療法学会
雑誌
日本基礎理学療法学雑誌 (ISSN:21860742)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.16-22, 2018-12-18 (Released:2019-01-08)

Articular cartilage injury affects many people in the world. However, the articular cartilage tissue is difficult to restore because it has not blood vessels and neurons. Recently, cell therapy has been shown to affect cartilage regeneration. Autologous chondrocyte implantation (ACI) is one of the most common therapies and also performed in Japan under the medical insurance coverage. It is reported that ACI for cartilage defects relieves pain, improves function, and restores the cartilage. Mesenchymal stem cell (MSC) therapy is also performed worldwide. MSC therapy also relieves pain, improves function, restores the cartilage like ACI. However, both ACI and MSC therapy are limited to cartilage restoration and functional recovery. Mechanical stress is an important key factor that facilitates cartilage regeneration, so rehabilitation involving mechanical stress could have synergistic effects. However, evidence on the rehabilitation program after cell therapy is still insufficient. Further verification will be necessary in the future.
著者
伊藤 明良 青山 朋樹 山口 将希 秋山 治彦 黒木 裕士
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.307-313, 2012-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
31

【目的】低出力超音波パルス療法(low-intensity pulsed ultrasound : 以下,LIPUS)の強度の違いが関節軟骨代謝に与える即時的な影響を遺伝子発現解析によってあきらかにすることを目的とした。【方法】ラット膝関節から軟骨細胞を採取し,変形性関節症(以下,OA)の擬似病態を惹起させるため0,100,1000 pg/ml濃度のインターロイキン-1β(以下,IL-1β)を添加し,LIPUSを0,7.5,30,120 mW/cm2強度で20分間刺激後,遺伝子発現解析を行った。【結果】100 pg/ml濃度のIL-1βで惹起された軟骨破壊因子であるマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase : 以下,MMP)-13のmRNA発現はLIPUS刺激強度依存性に抑制された。主要関節軟骨基質成分であるII型コラーゲン(type 2 collagen : 以下,Col2)やアグリカン(aggrecan : 以下,ACAN)のmRNA発現は,LIPUS刺激により抑制される傾向を示した。【結論】LIPUSは軟骨破壊因子であるMMP13 mRNA発現を強度依存性に抑制することによる,関節軟骨保護作用を有する可能性が示唆された。
著者
山口将希 伊藤明良 太治野純一 長井桃子 飯島弘貴 張項凱 喜屋武弥 青山朋樹 黒木裕士
雑誌
第50回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

【はじめに,目的】関節軟骨は自己再生能力に乏しい組織であり,その再生治療として培養軟骨細胞や間葉系間質細胞(MSC)を用いた細胞移植が注目されている。しかし移植後の物理療法などのリハビリテーションの有効性や安全性については十分に検討されていない。今後,細胞治療が臨床にて適用されるにあたり,再生治療における物理療法やリハビリテーションの有効性を明らかにしていくことは重要な研究課題である。近年,骨折治療で用いられる低出力超音波パルス(LIPUS)を照射することにより軟骨細胞の代謝やMSCの骨・軟骨分化に影響を及ぼすことがin vitro研究にて報告されており,今回我々は骨軟骨欠損した膝関節へのMSC移植後にLIPUSを併用することでin vivoにおいても移植したMSCを刺激し,損傷した骨軟骨の再生を促すのではないかとの仮説を設けた。本報告は細胞治療とLIPUSの併用が骨軟骨欠損の再生に影響を及ぼすかを検討したものである。【方法】8週齢雄性Wistar系ラット12匹の両側大腿骨滑車部に直径1mmの骨軟骨欠損を作成し4週間自由飼育した。その後,全てのラットに対して同種骨髄由来MSC 1.0×106個を右膝関節に注入し,左膝関節には対照群としてリン酸緩衝液を注入した。そして6匹ずつLIPUS照射群と非照射群に分け,対照群,LIPUS群,MSC群,LIPUS+MSC(MSCL)群の4群(各群n=3)を設けた。LIPUS群およびMSCL群には週5回,1日20分間の照射を骨折治療ですでに用いられている設定(周波数1.5MHz,繰り返し周波数1kHz,パルス幅200μ秒,空間平均時間平均強度30mW/cm2)にて行った。介入開始から4,8週後に欠損部の組織切片を作成し,サフラニンO(SO)染色,HE染色および抗II型コラーゲンの免疫組織化学染色を用いて組織を観察した。さらにWakitaniの軟骨修復スコアを用いて修復度合いを数値化し,平均±95%信頼区間にて表示した。スコアは値が低いほど良好な再生を示す。【結果】介入4週間後,各群のスコアは,対照群:8.7±2.36,LIPUS群:4.7±1.31,MSC群:4.7±1.31,MSCL群:4.3±0.65となった。組織観察において対照群では修復組織のSO染色性は深層の細胞周囲に限局し,表層から中間層の多くで線維軟骨様の細胞が観察され,組織表面に軽度から中等度の亀裂が観察された。LIPUS,MSCおよびMSCL群では硝子軟骨様の細胞が多く含まれるようになり,SO染色性も中間層において確認された。また修復組織の厚さも対照群に比べて厚くなっていたが,組織表面に亀裂が観察された。対照群とMSC群において軟骨下骨に軟骨様の組織が侵入している所見が一部見られた。II型コラーゲンの発現は,対照群では深層の一部のみに限局していたが,LIPUS群では修復組織の広範囲において確認できた。MSC群においては表層から中間層で発現の低下が見られた。MSCL群ではLIPUS群同様,修復組織の広範囲で確認できた。介入8週後では各群のスコアは,対照群:7.7±2.36,LIPUS群:7.0±1.96,MSC群:4.7±1.31,MSCL群:4.0±0.00となりLIPUS群で4週に比べてスコアが悪化していた。組織観察では対照群とLIPUS群では線維軟骨様の細胞が多く観察され,修復組織のSO染色性は大きく減弱していた。MSCとMSCL群では硝子軟骨様の細胞が多く観察されていたものの,染色性は大きく減弱していた。MSC群においてのみ軟骨下骨に軟骨様の組織が侵入している所見が一部で見られた。II型コラーゲンの組織観察の結果,対照群では表層から中間層で発現が低下しており,LIPUS,MSC,MSCL群では全層において発現が見られるか,表層での発現の低下が確認された。【考察】介入4週後においてLIPUSは欠損した関節軟骨の修復を促す可能性が示唆された。しかし介入8週後になるとLIPUS群の修復した関節軟骨は劣化しており,骨軟骨欠損に対するLIPUS照射は短期的には効果的だが,修復した軟骨は長期的には維持されないことが示唆された。MSC群の修復した関節軟骨はスコアが保たれていたが,MSC注入とLIPUSの併用は,軟骨修復スコアにおいてはMSC単独の効果と比べてほとんど差が認められなかった。今回の研究条件においてはMSC関節内注入とLIPUS照射の併用による再生への相乗効果は軟骨に対しては限定的である可能性が示唆された。しかし,併用することによりMSC群で見られた軟骨下骨への軟骨様組織の侵入が見られなかったことから,軟骨下骨に対して影響をおよぼす可能性が期待される。本報告は予備実験の段階における結果であり,今回の結果を基に,今後サンプル数およびLIPUS強度などの設定を検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は骨軟骨欠損に対する細胞治療において,物理療法のひとつであるLIPUSの併用が軟骨下骨へ影響を及ぼし,骨軟骨再生に有効である可能性を示唆した。
著者
長井 桃子 黒木 裕士 飯島 弘貴 伊藤 明良 太治野 純一 中畑 晶博 喜屋武 弥 張 ジュエ 王 天舒 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,様々な疾患に対し多能性幹細胞を用いた臨床試験が行われている。神経再生には神経のミエリン鞘とシュワン細胞の補充が肝要とされ(Zhiwu, 2012),末梢神経損傷動物モデルを用いて,幹細胞やiPS細胞移植による治療効果を検討した報告は多数あり,幹細胞を用いた臨床試験も始まっている。また,conduit(人工神経鞘)を断端部に連結させる手法においても,その中に自家培養細胞を移植する取り組みが行われている。一方,末梢神経損傷に対する介入効果として,運動は神経発芽や再生軸索の成熟を促進し(Sabatier, 2015),電気刺激は神経再生を促す(Gordon, 2010. Wong, 2015)報告もあり,細胞移植後のリハビリテーション介入が神経再生を促す可能性がある。しかし,同疾患患者の再生治療におけるリハビリテーション効果について,現時点でどこまで明らかになっているか不明な点が多い。本研究の目的は,末梢神経損傷患者に対してconduitや幹細胞を用いた治療方法と効果を報告した論文を系統的かつ網羅的に収集することに加え,これらの治療方法とリハビリテーションのかかわりにおける現状を明らかにすることである。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>研究デザインはシステマティックレビューとし,PRISMA声明に準じて実施した。検索式にはhuman,peripheral nerve,stem cell transplantation,nerve regenerationを用い,データベースはPubMed,PEDro,CINAHL,Cochrane libraryを用いた。2016年9月までに報告された,査読のある英語で記載された論文かつ,ヒトを対象に実施された臨床試験(シングルケースを含む)を対象として,conduitと細胞移植に関するものを抽出した。内科疾患や遺伝疾患に関するものは除外した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>キーワードを用いたデータベースの検索では1220件が抽出された。適合基準に合致するものは16件(全体数比:1.31%,出版年:2000~2016)であり,そのうち,リハビリテーションに言及しているものは7件(適合論文内比:43.7%,出版年:2000~2011)だった。うち6件が手部に関するものであり,その内容は,手術直後から穏やかに手指屈伸運動を長期に行うものや実施の記載のみなど,リハビリテーションプログラムの内容や期間について詳細について記したものはなく,統一した見解は得られなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>末梢神経損傷患者に対する再生治療介入の臨床試験数は少なく,リハビリテーション介入に関しても十分に検証されていない現状が明らかとなった。今後さらに,臨床試験の蓄積と,末梢神経損傷の再生治療におけるリハビリテーション効果に関するエビデンスが求められることが予測される。これらのエビデンスを,基礎的研究を通じて理学療法士が自ら示してくことは,理学療法介入の重要性を示す一助になると考える。</p>
著者
行武 大毅 山田 実 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101004, 2013

【はじめに、目的】 学童期における投球障害の発生割合は増加しており、特に12歳前後が好発年齢といわれている肘の障害は深刻な問題となっている。そこで、学童期の投球障害の予防のために、日本では臨床スポーツ医学会が、アメリカではUSA Baseball Medical & Safety Advisory Committeeがそれぞれ提言(投球数制限)を発表しており、12歳の選手に対する1日の全力投球数として、それぞれ50球以内、75球以内が推奨されている。しかし、これらの提言は、指導者が正しく理解、順守することで初めて意味を持つものである。アメリカにおける報告では、4割の指導者が投球数制限の正しい知識を持っており、7割の指導者が投球数制限を順守していたが、日本における現状は明らかではない。その現状を調査することは、指導者啓発の一助となると考えられる。また、指導者の投球数制限に対する意識が障害発生にどう影響するかは明らかではない。本研究の目的は、日本の学童期野球指導者における投球数制限の認知度、順守度を調査し、選手の障害発生との関連を明らかにすることである。【方法】 学童期野球チームの指導者と選手の保護者を対象とした2種類のアンケートを作成し、京都市内の平成23年宝ヶ池少年野球交流大会参加チーム111チームに配布した。指導者に対するアンケートの内容は、年齢、指導歴、選手歴、年間試合数、週あたりの練習日数、シーズンオフの有無、年間試合数に対する意見とした。加えて、投球数制限について正しい知識を持っているか、日常的に順守しているかを調査した。選手の保護者に対するアンケートでは、基本情報として選手の年齢、身長、体重、野球歴を調査し、さらにアウトカムとして、ここ1年間での肘関節の投球時痛を項目に含めた。統計解析としては、まず投球数制限の認知度、順守度の割合をそれぞれ算出した。続いて、指導者の投球数制限に対する認知や順守が選手の疼痛発生に与える影響を探るため、従属変数を選手のここ1年間での肘関節の疼痛の有無とした多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。ここでは、指導者の中からチームごとに指導責任者を抽出し、独立変数として選手の基本情報、認知や順守を含めたコーチ関連要因、チーム要因を投入した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、説明会において口頭で十分な説明を行い、同意を得た。【結果】 アンケートを配布した111チームのうち、58チーム(指導者123名、選手の保護者654名)から回答が得られた(回収率52.3%)。解析には、欠損データを除いた指導者113名、選手の保護者339名のデータを用いた。指導者113名のうち、投球数制限に対して正しい知識を有している指導者は45名(39.8%)であり、投球数制限を日常的に順守している指導者は32名(28.3%)であった。選手におけるここ1年間での肘関節の疼痛既往者は54名(15.9%)であり、多重ロジスティック回帰分析では、選手の身長(オッズ比1.08、95%CI: 1.01-1.15、p < 0.05)と年間試合数を多いと感じている指導者の率いるチーム(オッズ比0.29、95%CI: 0.11-0.75、p< 0.01)が疼痛発生に対する有意な関連要因として抽出された。指導者の投球数制限に対する認知度や順守度は、有意な関連要因とはならなかった。【考察】 本研究は、日本の学童期野球チームの指導者の投球数制限に対する認知度と順守度を調査した。加えて、それらの認知度や順守度と選手から報告された疼痛との関連を明らかにした。投球数制限に対して正しい知識を有している指導者の割合は39.8%であり、アメリカにおける報告(7割)と同水準の値を示したが、投球数制限を日常的に順守している指導者の割合は28.3%であり、アメリカにおける報告(7割)とは異なる値を示した。このことから、投球数制限に対する問題点に対して、世界レベルで取り組むべき問題と各国で取り組むべき問題とが存在していることが伺える。しかし、これらの認知度と順守度と実際の疼痛発生に有意な関連は見られず、年間試合数を多いと感じている指導者の率いるチームに有意な関連性が見られた。指導者が試合数に対して多いと感じることで練習量を抑えるといった二次的な影響が示唆され、オーバーユースを単なる試合での投球数のみでなく練習量も含めたものとして捉える必要があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 投球数制限を含めた学童期の投球障害に対して各国が連携して取り組むことで、学童期野球界への指導啓発の発展が期待される。また、指導者の年間試合数に対する意識が障害発生のリスクファクターとして抽出されたことから、この結果をスポーツ現場へ還元することにより、指導者の意識向上と障害発生割合の減少が期待される。
著者
伊藤 明良 青山 朋樹 長井 桃子 太治野 純一 山口 将希 飯島 弘貴 張 項凱 秋山 治彦 黒木 裕士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0577, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】外傷などを起因とする関節軟骨欠損は,疼痛や運動機能の低下を引き起こすことで生活の質を下げる要因となるが,現在欠損された関節軟骨を完全に再生することは困難である。これまで関節軟骨の再生を実現するために,再生医療分野において学際的に研究がなされてきた。しかしながら,細胞移植治療術前・後に関わる研究,特にリハビリテーション介入の有効性・安全性に関する研究はほとんどなされていないのが現状である。すでに関節軟骨欠損に対する再生治療は,平成25年4月1日から本邦で初の自家培養軟骨製品が保険適用となり臨床で実践されている。そのため,早急に関節軟骨再生治療におけるリハビリテーションを確立させることが求められ,その基礎となるエビデンスが必要である。そこで本研究では,関節軟骨再生治療における温熱療法の基礎となるエビデンスを得るため,軟骨細胞による関節軟骨基質(extracellular matrix:以下,ECM)生成のための至適な温度環境を明らかにすることを目的として実験を行った。【方法】大腿骨頭置換術時に摘出されたヒト大腿骨頭関節軟骨(62歳,女性)より初代培養軟骨細胞を単離し,ペレット培養法を用いた三次元培養下において軟骨ECMの生成能を評価した。培養温度条件は,通常関節内温度付近の32℃,深部体温付近の37℃,哺乳動物細胞生存の上限付近とされる41℃の3条件とした。軟骨ECM生成能を評価するため,生成されたペレットの湿重量を培養後3,7,14日目に測定し,軟骨基質関連遺伝子(II型コラーゲン,I型コラーゲン,アグリカン,COMP(cartilage oligomeric matrix protein))の発現を培養後3,7日目にリアルタイムPCRを用いて解析した。また,コラーゲンおよび硫酸化グリコサミノグリカン(sulfated glycosaminoglycan:以下,GAG)産生を培養後7,14日目に組織学的に,そして培養後14日目に1, 9-dimethylmethylen blue法にて生化学的に解析した。さらに,走査型電子顕微鏡(以下,SEM)を用いて生成されたECMの超微細構造を培養後14日目に観察した。最後に,生成されたECMの機能特性を評価するため,培養後3,7,14日目に圧縮試験を行い,その最大応力を測定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。対象者にはヘルシンキ宣言に基づき,本研究の主旨を書面及び口頭で説明し,同意を書面で得た。【結果】生成されたペレットの湿重量は,培養後3・7・14日目のいずれの時点においても,温度が低いほど有意に増加した。軟骨基質関連遺伝子のmRNA発現を解析した結果,41℃では解析した全ての遺伝子発現が有意に抑制された。II型コラーゲンの発現は,32℃と37℃の間に有意な差は認められず,I型コラーゲンの発現は,培養後7日目において32℃が37℃と比較して有意に亢進された。アグリカンの発現は,培養後3日目においては32℃が37℃と比較して有意に亢進されていたが,培養後7日目においてはその有意差は認められなくなった。COMPの発現は,37℃が32℃と比較して発現が有意に亢進された。組織学的評価においても,コラーゲンおよびGAGの産生が41℃では顕著に低下した。32℃と37℃の間に顕著な違いは観察されなかった。生化学的解析においても,GAG産生量は41℃で有意に少なかった。SEM観察により,32℃と37℃では生成されたペレットの周縁部に層状の密なコラーゲン線維の形成が観察されたが,41℃においては観察されなかった。最後に生成されたペレットに対して圧縮試験を行った結果,培養後3日目においては37℃で最も最大応力が高かったが,培養後7・14日目においては32℃が最も高かった。【考察】ヒト軟骨細胞において,ペレット培養時のECM生成能は41℃において著しく低下した。これは41℃ではコラーゲンの高次構造の形成が阻害されるという報告(Peltonen et al. 1980)を支持している。間欠的な40℃程度の温熱刺激はコラーゲン産生を促進する可能性があるが(Tonomura et al. 2008),本研究のような長時間の曝露においては逆に抑制される危険性が示唆された。これは,炎症などによる関節内温度上昇の長期化が関節軟骨再生を阻害することを意味している。興味深いことに,本研究は32℃という比較的低温環境においても,37℃と同等のECM生成能を有することを示唆した。以上のことから,関節軟骨基質再生のための至適温度は通常関節内温度である32℃から深部体温である37℃付近ににあることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,関節軟骨再生治療における温熱療法の基礎となるエビデンスを示した。さらに,再生治療における術後リハビリテーション(再生リハビリテーション)の重要性を喚起する研究としても大変意義があり,さらなる研究を求めるものである。
著者
鈴木 祐介 福谷 直人 田代 雄斗 田坂 精志朗 松原 慶昌 薗田 拓也 中山 恭章 横田 有紀 川越 美嶺 浅野 健一郎 篠原 賢治 坪山 直生 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1640, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】腰痛は職業性疾病の中で約6割を占める。また,腰痛が慢性化することで従業員の労働生産性が低下するという報告もあり,従業員の慢性腰痛の予防は企業の健康経営における重要課題の一つである。しかし,慢性腰痛の関連因子を調査した多くの研究は,質問紙調査を基にしており,実測による身体機能を調査した研究は少ない。そのため,先行研究で言及されている精神的因子や睡眠障害の因子に加え,実測での身体機能の因子を含めた慢性腰痛の包括的な関連因子の調査は不十分と言える。従って本研究では,オフィスワーカーにおける慢性腰痛に関連する因子を,身体機能面,精神機能面の両者から包括的に検討することを目的とした。【方法】対象は,A企業で実施した腰痛検診に参加したオフィスワーカー601名(平均年齢44.3±10.1歳,男性72%)とした。対象者に自記式質問紙を配布し,基本属性(年齢,性別,勤続年数),腰痛の有無を,精神機能として睡眠時間の満足感,抑うつ傾向を反映するSelf-rating Depression Scale(SDS)を聴取した。腰痛は,現在の腰痛の有無と,現在腰痛がある場合その継続期間を聴取することで,慢性腰痛無し群,慢性腰痛有り群(発症3ヶ月以上)に分類した。さらに身体機能として,握力,30秒立ち上がりテスト,立位体前屈,閉眼片脚立ちを計測し,姿勢評価としてPalpation meter(Performance Attainment Associates社製)を使用し,骨盤の前後傾斜角度を計測した。統計解析は,従属変数に慢性腰痛の有無を,独立変数に身体機能・精神機能に関連した各測定変数を,調整変数に性別・年齢を投入したロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意確率は5%未満とした。【結果】回答データに欠損のない487名を解析対象とした。対象者のうち,136名(28%)が慢性腰痛を有していた。ロジスティック回帰分析の結果,立位体前屈値(オッズ比(OR)0.966,P=0.003,95%信頼区間(CI)0.945-0.989),睡眠時間の満足感(時間が足りず不眠に該当:OR2.342,P=0.002,95%CI1.357-4.042,寝つきが悪いに該当:OR2.345,P=0.01,95%CI1.223-4.495)が,慢性腰痛と有意に関連していることが明らかになった。【結論】本研究結果より,オフィスワーカーの慢性腰痛は,身体柔軟性の低下,睡眠時間の満足感の低下と有意に関連することが明らかになった。オフィスワーカーは他の職種と比較して,同一姿勢を取り続ける時間や,VDT(Visual Display Terminals)作業の時間が,相対的に長くなることが関与していると考えられる。今後は縦断的な解析を進め,本研究で得られた因子と慢性腰痛発生との関連を検討していく必要がある。
著者
西口 周 青山 朋樹 坪山 直生 山田 実 谷川 貴則 積山 薫 川越 敏和 吉川 左紀子 阿部 修士 大塚 結喜 中井 隆介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】一般的に,加齢に伴う脳萎縮などの脳の器質的変化が,アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)や軽度認知機能障害(mild cognitive impairment:MCI)の発症リスクを高めるとされている。また,ワーキングメモリ(working memory:WM)低下はADやMCIの前駆症状であり,認知機能低下と共にWMに関連する脳領域の活動性が低下すると報告されている。つまり,ADやMCIの発症を予防するためには,WM関連領域の脳活動を高め,脳萎縮を抑制することが重要であると予想されるが,脳萎縮とWMに関連する脳活動の関連性はまだ十分に検証されていない。そこで本研究では,地域在住高齢者における脳萎縮とWM課題中の脳活動との関連性を機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)を用いて明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者50名(73.5±5.2歳,男性27名,女性23名)とした。Mini-Mental State Examination(MMSE)<24点の者,重度な神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者は除外した。全ての対象者のWM課題中のfMRI画像及び構造MRI画像は3.0TのMRI装置(シーメンス社MAGNETOM Verio)にて撮像した。WM課題としてはブロックデザインを用いて,画面上に映る点の位置がひとつ前の点の位置と一致するかを問う1-back課題と,画面上に映る点の位置が中心かどうかを問う0-back課題を交互に8ブロック行なった。また,構造MRI画像をVSRAD advanceにより処理し,対象者の脳全体における定量的な灰白質萎縮割合を算出した。統計解析は,統計処理ソフトウェアSPM8を用いてfMRIデータを処理した後,1-back課題と0-back課題のサブトラクションを行ない,WM課題中の脳活動部位を同定した。続いて,相関分析にて脳萎縮割合とWM課題中の脳活動部位の関連性を検討した。なお,WFU PickAtlasを用いて,解析範囲を前頭前野,内側側頭葉に限定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当該施設の倫理委員会の承認を得て,紙面および口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,署名にて同意を得られた者を対象とした。【結果】本研究の対象者のMMSEの平均値は,27.5±1.9点であった。WM課題において,右の海馬,海馬傍回を中心とした領域,両側の背外側前頭前皮質(Brodmann area:BA9),右の下前頭回(BA45)を中心とした領域に賦活がみられた(p<0.005,uncorrected)。また,脳萎縮割合と関連がみられたWM課題中の脳活動部位は,両側海馬及び両側の背外側前頭前皮質(BA9),右前頭極(BA10)を中心とした領域であった(p<0.005,uncorrected)。なお,これらの関連性は負の相関を示しており,脳萎縮が小さいほど上記の領域の脳活動量が大きいという関連性が認められた。【考察】本研究の結果により,脳萎縮の程度が低いほど,視空間性WM課題中の海馬,背外側前頭前皮質を中心とした領域の脳活動が高いことが示唆された。視空間性WMは前頭前野や海馬の灰白質量と関連すると報告されており,本研究はそれを支持する結果となった。海馬を含む内側側頭葉は記憶機能の中枢であり,一方,背外側前頭前皮質はWMを主とする遂行機能を担う領域とされており,双方ともにともに加齢による影響を受け,萎縮が強く進行する領域であると報告されている。つまり,これらの領域の活動が低下し萎縮が進行することが,記憶機能や遂行機能の低下を主とする認知機能低下を引き起こし,ADやMCIの発症リスクを高める要因の一つになりうると考えられる。今後は,二重課題や干渉課題といったWMの要素を取り入れた複合的な運動介入を行ない,関連領域の脳活動を高めることで,脳萎縮を抑制できるかどうかを検証していく必要があると考える。本研究は横断研究のため脳萎縮と脳活動の因果関係は不明であり,また脳の詳細な萎縮部位は同定していないことが本研究の限界であると考える。今後は,詳細かつ縦断的研究を行なうことが検討課題である。【理学療法学研究としての意義】高齢者の認知機能低下を抑制することは,近年の介護予防戦略において重要な役割を担っている。本研究の結果により,脳萎縮の程度には記憶や遂行機能に関連する領域の脳賦活が関連することが示された。本研究を発展させることで,脳萎縮や認知機能低下抑制を目的とした非薬物療法のエビデンスを構築するための一助となると考えられる。
著者
飯島 弘貴 青山 朋樹 伊藤 明良 山口 将希 長井 桃子 太治野 純一 張 項凱 喜屋武 弥 黒木 裕士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)の病態に即した理学療法の実現のためには,その病態の理解や力学的負荷に対する生体組織の生物学的な応答を明らかにすることが不可欠である。2015年,我々はラット膝OAモデルに対する運動刺激が膝OAの予防に貢献することを報告した。そこで,本研究では,運動刺激の効果をさらに詳細に検討する目的で,異なる強度の運動刺激が関節軟骨と軟骨下骨に与える影響を,関節面の領域別に明らかにすることを目的とした。【方法】本研究はThe Animal Research Reporting In Vivo Experiments(ARRIVE)guidelinesに準じて計画,実施された。12週齢のWistar系雄性ラット30匹の右膝関節に外科的処置(前脛骨半月靭帯切離)を施し,内側半月板不安定性(DMM)モデルを作成した。その後,8週間の自然飼育を行うDMM群(n=10)と,早期膝OAの状態となる術後4週時点から1日30分,週5日間,4週間のトレッドミル走行を行うmoderate群(12m/分,n=10),intense群(21m/分,n=10)の3群に分類した。術後8週時に膝関節を摘出し,脛骨側内側関節面の関節軟骨,軟骨下骨を組織学的手法,力学的手法,およびmicro-CTを用いて領域別(前方および後方)に評価し,3群間で比較した。統計学的有意水準は5%とした。【結果】脛骨内側関節面後方領域を組織学的に観察すると,DMM群では関節軟骨および軟骨下骨中の死細胞を含む変性像が観察されたが,moderate群の変性像はDMM群よりも軽度であり,軟骨変性重症度の評価であるOARSI scoreはDMM群の約50%であった(DMM群,中央値:10.5,範囲:9-12;moderate群,中央値:5,範囲2-9;<i>P</i>=0.025)。同領域のmicro-CT所見では,DMM群では嚢胞状の骨吸収領域が多数観察されたが,moderate群の骨吸収領域の最大直径はDMM群の約70であった(DMM群,平均値:547.1μm,95%信頼区間[CI]:504.7-589.5;moderate群,平均値:375.9μm,95%CI:339.3-412.5;<i>P</i><0.001)。力学的手法を用いて圧縮応力に対する関節軟骨の歪みを評価すると,後方領域ではDMM群は正常軟骨の215%であったのに対して,moderate群では160%に抑性された(DMM群,平均値:65.7μm,95%CI:60.7-71.3;moderate群,平均値:49.1μm,95%CI:39.1-59.1;<i>P</i>=0.045)。しかしながら,前方領域における変性に関しては,DMM群とmoderate群の間で統計学的有意差はなかった。また,intense群では,OA進行予防効果が乏しいだけでなく,micro-CT所見上での軟骨下骨の骨吸収領域の最大直径は,むしろDMM群よりも28%増大した(平均値:700.7μm,95%CI:614.1-787.3;<i>P</i><0.001)。【結論】本研究は,運動刺激による膝OAの進行予防を期待する場合には,運動強度の調整が必要であることを示した。また,中等度レベルの運動によるOA進行予防効果が主荷重部に限局して確認されたことから,運動刺激による膝OA進行予防効果は力学的負荷が加わる領域に特異的に生じる可能性がある。
著者
飯島 弘貴 青山 朋樹 伊藤 明良 山口 将希 長井 桃子 太治野 純一 張 項凱 喜屋武 弥 黒木 裕士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)は膝関節痛やこわばりを主訴とする代表的な運動器疾患である。その病態の中心は関節軟骨の摩耗・変性であるが,近年では病態の認識が改まり,発症早期より生じる軟骨下骨の変化が,関節軟骨の退行性変化を助長している可能性が指摘されるようになった。我々も同様の認識から,半月板損傷モデルラットを作成し,その早期から軟骨変性と軟骨下骨嚢胞が共存していることを明らかにした(Iijima H. <i>Osteoarthritis Cartilage</i> 2014)。理学療法を含む非薬物治療は,膝OAの疼痛緩和を目的とした治療戦略の大きな柱であるが,このような早期膝OAの病態を考慮した,OA進行予防策に関する研究蓄積は乏しい。また,病態モデル動物を用いた研究において,歩行運動が関節軟骨の退行性変化を予防しうる,という報告は散見されるが,そのメカニズムは不明であった。そこで,我々はこれらの課題に対して,早期の病態に関与する軟骨下骨変化を歩行運動によって抑制することが,膝OA進行予防に寄与するのではないかと着想し,これまで不明であった,運動による膝OA進行予防メカニズムの解明へと研究を進めてきた。本研究では,我々が報告した半月板損傷モデルラットを使用し,疑似的に早期膝OAの状態を作り出し,歩行運動が軟骨下骨変化に与える影響を評価し,軟骨変性予防効果との関連性を検討した。【方法】12週齢のWistar系雄性ラット24匹に対して,内側半月板の脛骨半月靭帯(MMTL)を切離する内側半月板不安定性モデルを作成した。MMTLの切離は右膝関節のみに行い,左膝関節に対しては偽手術を施行し,対照群とした。その後,術後8週間に渡り自然飼育を行うことで,OAを発症・進行させるOA群(n=8)と,早期膝OAの状態となる術後4週時点からトレッドミル歩行(12m/分,30分/日,5日/週)を行う運動群(n=8)の2群に分類した。時系列変化を評価するため,術後4週まで飼育する介入前群(n=8)を設定した。主な解析対象および群間の比較は,MMTLを切離した全群の右膝関節とし,対照群とも比較した。解析内容は,μ-CT撮影および組織学的手法を用いて,4週間にわたる歩行運動介入の効果を検討した。μ-CT撮影所見より軟骨下骨嚢胞の最大径を評価し,組織学的解析では破骨細胞マーカーである酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)染色とともに,骨細胞死数,軟骨下骨損傷度(0-5点)を評価した。また,軟骨変性重症度(0-24点)を評価し,軟骨下骨損傷度との関連性の評価としてSpearmanの順位相関係数を算出した。【結果】μ-CT所見では介入前から脛骨内側関節面にて軟骨下骨嚢胞が確認されたが,運動群では最大嚢胞径が縮小し,介入前およびOA群よりも有意に低値を示した(<i>P</i><0.01)。組織学的所見では,軟骨下骨嚢胞内にTRAP陽性破骨細胞が多数観察され,直上の関節軟骨が嚢胞内に落ち込む所見が介入前群では30%で確認された。OA群ではその後悪化し,80%で確認されたが,運動群では0%であった。併せて,介入前およびOA群では多数の骨細胞死が観察されたが,運動群ではいずれも軽度であり(<i>P</i><0.01),軟骨下骨損傷度は介入前およびOA群よりも有意に低値を示した(<i>P</i><0.05)。軟骨変性重症度は,運動群で最も低値を示し(<i>P</i><0.05),軟骨下骨損傷との間に強い相関を認めた(<i>P</i><0.01,r=0.91)。【考察】半月板損傷後に発症した早期膝OAに対する緩徐な歩行運動は,骨細胞死の減少とともにTRAP陽性破骨細胞活性に起因する軟骨下骨嚢胞を縮小させることが明らかになった。つまり,半月板損傷後に生じた損傷軟骨下骨は可逆的な状態にあり,自然飼育のみでは進行する一方,歩行運動によって治癒することを示している。軟骨下骨の損傷により形成された陥没は,関節軟骨に加わるひずみを増大させる要因となるだけでなく,関節軟骨-軟骨下骨間の炎症性サイトカインの交通を介してOAを進行させることが知られている。したがって,軟骨下骨の治癒が歩行運動によってなされることで,その直上の軟骨に加わる力学的,化学的ストレスを緩和させ,膝OAの進行予防に一部寄与しうることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】膝OAに対する従来の理学療法は,摩耗・変性した関節面へ加わる応力を,分散あるいは減弱させることを主目的としてその進行予防に寄与してきたため,歩行運動のような運動負荷を治療手段とするという考え方は希薄であった。本研究結果は,半月板損傷後の早期膝OAに対する一定の運動負荷がOA進行予防に寄与する可能性を提示し,そのメカニズムの一部を病態モデル動物を使用して病理組織学的にはじめて明らかにしたものである。
著者
飯島 弘貴 青山 朋樹 伊藤 明良 長井 桃子 山口 将希 太治野 純一 張 項凱 秋山 治彦 黒木 裕士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】変形性膝関節症(OA)の病変の主体は関節軟骨であるが,加えて軟骨下骨の独立した変化を伴うと認識され,半月板切除後に予後不良でTKAに至った者の多くは軟骨下骨の骨折を伴っていたと報告されている。近年のOAモデル動物を使用した実験では,早期から軟骨下骨の変化が生じることで軟骨変性を助長する現象が明らかとなっている。したがって,早期からの軟骨下骨の変化を抑えることはOAの病態に対する理学療法戦略として重要である。OAモデル動物に対する緩徐なトレッドミル走行は軟骨の変性予防効果があることが報告されているが,軟骨下骨の変化を捉えた研究は存在しない。本研究ではOAを惹起する半月板不安定モデルラットを使用し,早期からの緩徐な走行運動は軟骨変性の予防効果だけでなく,軟骨下骨変化の予防効果もあると仮説を立て,病理組織学的に検証を行った。【方法】12週齢の雄性Wistar系ラットに対してOAモデル(内側半月板不安定モデル)を作成した。右膝関節にOA処置を行い,左膝関節に対しては偽手術を行った。作成したOAモデルラットを自然飼育のみ行う群(右膝:OA群,左膝:対照群)と緩徐な歩行を行う群(右膝:OA+運動群,左膝:運動群)の2群に無作為に分類した。運動条件は12m/分,30分/日,5日/週とし,飼育期間は術後1,2,4週間とした(各群n=5)。各飼育期間終了後に安楽死させ,両膝関節を摘出した後,軟骨下骨変化の評価としてmicro-CT撮影を行った。その後作成した組織切片に対して,HE染色による組織形態の観察と免疫組織化学的手法を用いてCol2-3/4c,MMP13,VEGFの発現分布の評価を行った。軟骨変性重症度の評価に関しては,膝関節前額断の内側脛骨軟骨を内側,中央,外側の3領域別に分類し,OARSI scoreを使用して軟骨変性の評価を行った。統計学的解析はstudent t検定及びANOVAを行い,ANOVAで有意差が見られた場合には多重比較としてTukeyの検定を行った。統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設動物実験の承認を得て実施した。【結果】OA群とOA+運動群の2群間でOARSI scoreを比較すると,1,2週時点では有意差は見られなかったが,4週時点では中央,外側領域においてOA+運動群で有意に軟骨変性重症度が小さかった(中央:4wOA群;16.1±1.5,4wOA+運動群;10.3±3.3,外側:4wOA群;6.6±1.8,4wOA+運動群;3.3±0.7)(<i>P</i><0.01)。OA群,OA+運動群は1,2,4週のいずれの時点でも対照群,運動群よりも有意に軟骨変性重症度が高かった(<i>P</i><0.01)。II型コラーゲンの断片化を検出するcol2-3/4cはOA群と比較してOA+運動群で陽性領域が小さかった。micro-CT上で軟骨下骨を観察すると,1週時点からOA群では主荷重部である中央領域に骨欠損が観察され,時間依存的に骨欠損の大きさが増大していったが,OA群とOA+運動群で骨欠損の大きさに明らかな差は認めなかった。HE所見では軟骨変性が重症である領域と骨欠損領域が一致し,骨欠損領域は骨髄中に含まれる血球系の細胞とは異なる線維軟骨様の組織で埋め尽くされており,VEGFやMMP13の陽性所見が確認された。全ての結果に関して,対照群と運動群では明らかな差異を認めなかった(<i>P</i>>0.05)。【考察】OAモデルラットに対する緩徐な走行運動は軟骨変性の予防効果は示したが,軟骨下骨の変化を抑性することはできず,仮説は棄却された。軟骨下骨骨折領域の細胞には血管性の因子であるVEGFや軟骨破壊因子であるMMP13の発現が確認されたことから,軟骨の変性は軟骨下骨骨折によって助長されうるが,運動療法が軟骨変性予防効果を示した背景として,軟骨下骨変化以外の軟骨破壊プロセスを抑性したことが考えられる。本研究で用いた運動条件はラットの生理的な歩行速度であり,より高い運動強度を用いた実験では軟骨破壊を促進することを我々は過去に報告したことを踏まえると(Yamaguchi S, Iijima H, et al 2013),軟骨の破壊プロセスを生物学的に抑性するためには運動強度や量に注意を払う必要があることも示された。【理学療法学研究としての意義】軟骨下骨の骨折は半月板切除後早期から主荷重領域に生じるが,緩徐な走行運動を早期から行っても軟骨下骨の骨折を悪化させることなく軟骨変性を予防する効果があり,OAの進行予防に対して理学療法が有効であることを示唆するものである。
著者
山口 将希 井上 大輔 黒木 裕士 伊藤 明良 長井 桃子 張 項凱 飯島 弘貴 太治野 純一 青山 朋樹 秋山 治彦 広瀬 太希
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100827, 2013

【はじめに、目的】変形性関節症(OA)は、加齢や遺伝的要因、外傷、メカニカルストレスなど様々な要因によって発症する疾患であることが知られている。関節軟骨に慢性的な過荷重などの過剰なメカニカルストレスが加わることにより炎症性のサイトカインの上昇や炎症に関連するNF-κBのシグナル経路が活性化し、その下流にある分子のMMP13 やVEGF が関節軟骨の破壊を招くことが近年報告されている。寒冷刺激は炎症抑制効果のある物理刺激として、炎症性疾患やスポーツ外傷などの急性期、あるいは運動後の関節等に対して用いられている。関節軟骨に対する寒冷刺激の効果、とくに膝OA の関節軟骨に対する効果はほとんど報告されていない。これまでに損傷した神経や肺疾患において寒冷刺激をするとNF-κBを抑制する効果があることが報告されていることから、関節軟骨においても寒冷刺激によってNF-κBを抑制し、その結果、OA進行を遅らせる効果があると考えられる。そこで本研究はOAモデルラットに対して寒冷刺激を行い、その影響を組織学的に評価することを目的としている。【方法】対象は9 週齢のWistar 系雄ラット2 匹、平均体重229.5gを対象とし、両後肢に対してネンブタール腹腔内麻酔下にて前十字靭帯、内側側副靭帯、内側半月板の切離を行い、OA モデルとした。それぞれのラットに対し、術後一週後より、右後肢に対してのみ寒冷刺激を加えた。寒冷の刺激条件は0 〜1.5℃、10 分間/日、3 回/週の条件で冷水槽にて吸口麻酔下で寒冷刺激を加えた。術後3 週飼育、寒冷刺激9 回の後、ラットをネンブタール腹腔内麻酔致死量投与により安楽死させ、両側後肢膝関節を摘出し、4%パラホルムアルデヒドにて組織固定を行なった。固定後、PBSにて置換した後、EDTA 中性脱灰処理した。脱灰後、パラフィン包埋処置を行い、包埋したサンプルをミクロトームにて6㎛切片に薄切した。組織観察は薄切した切片をトルイジンブルーおよびHE 染色にて染色し、OARSI (Osteoarthritis Research Society International)のGrade、Stage およびScoreを用いて光学顕微鏡下で膝関節軟骨の組織評価を行った。正常ではOARSIのGrade、Stage、Scoreはいずれも0 となる。加えてII型コラーゲン免疫組織化学染色(col2 免疫染色)にて形態観察を行った。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は所属大学動物実験委員会の承認を得て実施した。【結果】寒冷側はGrade; 4.8 ± 0.30、Stage; 4 ± 0.0、Score; 19 ± 1.0 となり、組織画像上では大腿骨内側部に中間層にまで軟骨の欠損が見られた。非寒冷側ではGrade; 3.5 ± 1.00、Stage; 4 ± 0.0、Score; 14 ± 4.0 となり、組織画像において軟骨表面の連続性が消失した個体と中間層までの軟骨が欠損した個体が見られた。非寒冷側に比べて寒冷側ではOAの悪化が見られた。しかしcol2 免疫染色画像での形態観察では、非寒冷群に比べて寒冷群において強いcol2 染色の発現が見られた。【考察】術後1 週後という、手術侵襲による炎症症状が治まった後の寒冷刺激は、むしろ軟骨損傷の進行を招く恐れがあることが示唆された。しかし本結果は関節軟骨の主要な構成成分であるll型コラーゲンの破壊は抑制されることを示していた。つまり寒冷刺激により助長された軟骨損傷の進行は、ll型コラーゲンの破壊以外の要因によるものであると考えられる。【理学療法学研究としての意義】炎症抑制効果のある寒冷による物理刺激でも、変形性関節症の関節軟骨に対しては必ずしも良好な効果をもたらすわけではないことが示唆された。今回はOAに対する寒冷刺激単独の効果を検証したが、今後、運動刺激との併用により炎症症状が強まった状態やより急性期の関節軟骨においてはどのように影響するか調べることが必要だと考える。
著者
吉村 和也 山田 実 永井 宏達 森 周平 梶原 由布 薗田 拓也 西口 周 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea1009, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 高齢者の転倒は要介護に至る主たる要因の一つに挙げられており、本邦において大きな社会問題になっている。各自治体では、転倒予防を含め積極的な介護予防事業が展開されているが、その事業の転倒予防効果については十分な検証がなされていない。我々は、これらの事業を積極的に開催している地域では、事業参加者だけでなく、波及効果によって参加していない高齢者も含めて健康意識が高まり、その結果転倒発生率が抑制されるという仮説を立てた。そこで本研究では、各自治体が地域で実施している様々な介護予防事業(ここでは運動機能向上教室や転倒予防のための啓発活動のこと)への参加者数とその地域の転倒発生率との関連を明らかにし、その効果を検討することを目的とする。【方法】 本研究では京都市左京区在住の要支援・要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者24,964名を対象に、平成23年4月から8月までに回収した「基本チェックリスト」を分析対象とした。回収された6,970名(返送率27.9%)のうち、検討項目に関する欠落データを含まない6,399名を解析した。左京区を小学校区ごとにAからTの20の地域に区分し、転倒発生率を順位別した。従属変数に過去一年間での転倒の有無を、調整変数として年齢、性別、BMIを、そして独立変数にAからTの20の各地域をダミー変数化して投入した多重ロジスティック回帰分析を行い、転倒発生率が高い地域を「high risk地区」、その他の地域を「moderate地区」とした。次に、区内で実施された転倒予防に関わる事業の状況を調査するために、区内で介護予防事業を実施している9つの行政委託機関(左京区社会福祉協議会、京都市左京区地域介護予防推進センター、区内7つの地域包括支援センター)を対象に平成22年度に実施した転倒予防に関わる事業についてのアンケートを配布し、そのうち回答が得られた7機関の事業を分析対象とした。それぞれの事業を「運動教室」「啓発活動」「運動+知識教示教室」の3つの形態に分類し、地域ごとに各形態の参加者数を算出した。なお解析には、参加者数を各地域の面積で補正した値を用いた。統計解析はhigh risk地区とmoderate地区の両区間においてMann-WhitneyのU検定を用いて比較検討を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は京都大学医の倫理委員会の承認を受けて実施した。【結果】 全地域における転倒発生率は22.5%(最低:D地域18.7%、最高:B地域39.0%)であった。ロジスティック回帰分析によって、転倒発生率の最も低いD地域に対して有意に転倒発生率が高かった、B(転倒発生率39.0%、オッズ比2.78)、R(31.3%、2.05)、S(31.4%、1.79)、T(27.5%、1.64)の4地域をhigh risk地区とし、high risk地区以外の16地域をmoderate地区とした。high risk地区で開催された事業の参加者数の中央値は、運動教室で0.59人/km2、啓発活動で6.01人/km2、運動+知識教示教室で14.02人/km2であった。moderate地区では、運動教室で5.54人/km2、啓発活動で72.79人/km2、運動+知識教示教室で203.75人/km2であった。high risk地区とmoderate地区で比較したところ、moderate地区において介護予防に関わる事業への参加者数は多く、特に運動+知識教示教室では有意に参加者数が多かった(p=0.021)。【考察】 これまでにも転倒予防事業については運動教室や啓発などの有効性を示したものが報告されている。今回の研究の結果では転倒発生率はこれらの事業への参加者数が多いほど低下する傾向がみられた。さらに今回はその両者を含有した運動+知識教示教室が有効な結果を得ている事が明らかになった。これらは想定された結果ではあるが、運動、啓発単独でもそれなりの効果を得られることが示唆され、今後は費用対効果などの見地からも転倒予防事業を検証する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 近年、理学療法士の介護予防や行政の分野での活躍を目にする機会が増えてきており、今後さらに期待される分野でもある。全国の高齢者のうちおよそ7割以上が一次予防の対象となる高齢者であり、彼らに対する介護予防施策は重要なテーマの一つである。本研究は横断研究のため、これらの取り組みによる介入効果まで示すことはできない。しかし、転倒予防において、ポピュレーションアプローチの有用性や運動と知識教示の組み合わせが有効であることが示唆されたことは、理学療法士が地域に介入していくうえで重要な知見であるといえる。
著者
行武 大毅 袋布 幸信 永井 宏達 薗田 拓也 山田 実 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cd0834, 2012

【はじめに、目的】 野球肘の発生は11歳から12歳が,野球肩の発生は15歳から16歳がピークであると言われており,それらの発生要因としては過度の投げ込み,投球フォームなどが報告されている.また,初期の自覚症状である疼痛を見逃さないことが重症化を防ぐうえで重要である.一方で,日本臨床スポーツ医学会の,青少年の障害予防を目的とする提言の中で定められている投球数を超える練習を課しているチームも多数あり,指導者の意識的な面が障害発生に影響を与えていると考えられる.本研究の目的は,1) 京都市内の少年野球チームの選手の保護者や指導者を対象にアンケート調査を行い,少年野球チームにおける肩もしくは肘の疼痛発生に関する実態調査を行うこと,および,2) 学童期野球選手の投球障害発生要因を選手の個人要因や指導者の意識面を含めた環境要因から検討することである.【方法】 アンケート用紙を京都市内の平成23年度宝ヶ池少年野球交流大会参加チーム120チームに配布し,そのうち回答の得られた64チーム(選手の保護者740人,指導責任者58人)を対象とした.選手の内訳は男子714人(96.5%),女子24人(3.2%),性別未記入2人(0.3%)であり,選手の学年は6年生355人(48.0%),5年生286人(38.6%),4年生58人(8.8%),3年生29人(4.9%),2年生9人(1.2%),1年生3人(0.4%)であった.選手の保護者に対するアンケートの内容は選手の学年,性別,身長,体重,野球歴,ポジション,ここ1年での肩もしくは肘の疼痛の有無,自宅での自主練習について,ここ1年間の身長・体重の伸び幅,1日の睡眠時間とした(個人要因).指導者に対するアンケートの内容は年齢,指導歴,年間試合数,週の練習日数,投手の練習での投球数,投手の試合での投球数,投球数制限の知識の有無を含めた障害予防に対する知識・意識についてとした(環境要因).統計解析としては,従属変数をここ1年での肩もしくは肘の疼痛既往者とした多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った.階層的に分析するため,第一段階としては独立変数に個人要因のみを投入した.その後第二段階として,環境要因による影響を明らかにするため,両要因を投入した分析を行った.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には,説明会において口頭で十分な説明を行い,同意を得た.【結果】 解析には,欠損データを除いた選手の保護者531人,指導責任者58人分のデータを用いた.ここ1年での肩もしくは肘の疼痛既往者は210人(28.4%)であり,その内訳は6年生123人(58.6%),5年生69人(32.9%),4年生15人(7.1%),3年生2人(1.0%),2年生1人(0.5%)であった.個人要因を独立変数としたロジスティック回帰分析では,1年間の身長の伸び幅のみが有意な関連要因となり,伸び幅が大きいものほど,疼痛発生のリスクが高かった(オッズ比1.14,95%CI: 1.02-1.26,p<0.05).個人要因に加え,チーム情報や指導者の意識面などの環境要因を加えたロジスティック回帰分析では,1年間の身長の伸び幅(オッズ比1.15,95%CI: 1.02-1.30,p<0.05),および年間試合数が少ないと感じている指導者の率いるチーム(オッズ比1.74,95%CI: 1.11-2.72,p<0.05)の2つが疼痛発生のリスクを高める関連要因となっていた.さらに,判別分析を用いて身長の伸び幅のカットオフ値を求めたところ,6.3cmで疼痛発生者を判別可能であった.【考察】 現在野球肩や野球肘の発生要因には練習時間や練習日数などの環境要因が多数報告されているが,今回の解析により,投球障害に関わりうる数多くの個人要因,環境要因で調整してもなお,1年間の身長の伸び幅が独立して疼痛発生に影響していることが明らかとなった.疼痛発生は野球肩や野球肘の初期の自覚症状であることは報告されており,1年間の身長の伸び幅が大きい成長期(特に6.3cm以上)にある選手には,疼痛発生に対して特に注意を要すると考えられる.また,指導者の年間試合数に対する意見では,チームの年間試合数に対してより多い試合数が望ましいという意見を持っている指導者の率いるチームに,疼痛発生者が多いことが明らかとなった.この結果は,指導者の意識的な面が疼痛発生の一要因として関与している可能性を示唆している.【理学療法学研究としての意義】 本研究により,学童期の障害予防を進めるうえで,指導者に対しての意識面に関する啓発活動が必要である可能性が示唆された.また,身長の伸び幅の大きな選手に疼痛発生のリスクが高いという点はこれまでほとんど報告されてこなかった情報であり,これらに関して理解を得ることが重要となる.今後,この結果をスポーツ現場へ還元することにより,指導者の意識の向上と障害発生率の減少が期待される.
著者
松原 慶昌 田坂 清志朗 福本 貴彦 西口 周 福谷 直人 田代 雄斗 城岡 秀彦 野崎 佑馬 平田 日向子 山口 萌 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0062, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年子どもの外反母趾が増加し,問題となってきている。外反母趾の原因は様々な要素が指摘されており,足部アーチの低下が外反母趾と関連しているという報告がある。子どもの足は足部アーチの形成の重要な時期にある。さらに,足部アーチの形成には足趾把持力が関連していると報告されているため,足趾把持力が外反母趾に関連している可能性がある。また,特に子どもにおいては足部の筋力,形状共にも発達段階にあるため,足部の筋力が足部形状に与える影響が大きい可能性がある。子どもにおいて外反母趾と足趾把持力の関連についてはまだ調べられていない。そこで,本研究では子どもにおける外反母趾と足趾把持力の関連について調べることを目的とした。【方法】対象は奈良県田原本町にある小学校5校の小学4~6年生671名の計1342足(平均年齢10.3歳±0.7歳,男子317名,女子354名)とした。外反母趾角は,母趾基節骨と第一中足骨のなす角とし,静止立位にて,ゴニオメーターを用いて測定した。足趾把持力は足趾筋力測定器(竹井機器工業,T.K.K.3364)を用いて股関節,膝関節ともに90°屈曲座位にて,左右両足を各足二回測定した。各足の最大値を足趾把持力として用いた。統計解析は,従属変数に外反母趾角,独立変数に足趾把持力,調整変数に性別,年齢,身長,体重を投入した重回帰分析を行った。なお,同一の対象者から二足を用いているため,両足の類似性を補正するために,一般化推定方程式を用いた。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】全対象者の外反母趾角の平均は7.91±5.0°,足趾把持力の平均は13.3±4.0kgであった。重回帰分析の結果,偏回帰係数は-0.098(95%信頼区間:-0.187~-0.010)で有意差(p=0.029)を認め,外反母趾角と足趾把持力は負の関係にあった。【結論】本研究では,子どもにおける外反母趾角と足趾把持力の関連性を検討した。その結果,小学子どもにおいて外反母趾角と足趾把持力が負の関係にあることが明らかになった。しかし,先行研究においては,健常成人では外反母趾角と足趾把持力の関係性は認められなかった。この理由は,子どもの足部は発達段階にあり,筋力が足部形成に与える影響が大きい可能性が考えられる。低足趾把持力により十分な足部アーチ形成が行われず,足部アーチの未発達が外反母趾角の増大につながったと考えられる。本研究は横断研究であるため,因果関係について断言できないが,足部アーチが発達段階にある子どものころに,足趾把持力を鍛えることで外反母趾の予防につながる可能性がある。