著者
小山内 正博 舘川 康任 田村 麻美子 清水 弥生 新井 美紗 渡辺 裕介 福山 勝彦 秋山 純和
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.91-94, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕姿勢変化に伴う側腹筋の活動を超音波画像診断装置と表面筋電図法で検証することである。〔対象〕健常成人9名であった。〔方法〕背臥位で安静呼吸と最大呼出の筋厚と筋活動を測定後,体幹を前傾位,中間位,後傾位で,各円背位と伸張位の6種類の坐位姿勢をとらせて再度測定した。〔結果〕最大呼出時に筋電図は,内腹斜筋だけが中間位伸張に対し前傾位円背,中間位円背,後傾位円背で有意差を認めた。安静吸気時は,筋厚で内腹斜筋に中間位伸張に対し前傾位円背,前傾位伸張,後傾位円背で有意差を認めた。〔結語〕中間位伸張は内腹斜筋の姿勢保持筋としての活動に関与しない姿勢と考えられる。最大呼出時の筋電図から内腹斜筋は呼気筋としての機能を発揮しやすい姿勢と考えられる。
著者
白石 麻衣佳 池田 真琴 渡辺 裕介 中畑 晶博 海老子 淳 須田 守彦
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.197, 2011

【目的】<BR> 当院における全人工膝関節形成術(以下TKA)術後のリハビリは、従来、術翌日より歩行訓練を開始し、自立した杖歩行が可能となるのは術後約1週間前後、入院期間は約2週間であった。今回、積極的に歩行能力の向上を目的としてリハビリを施行した症例に対して、自立した杖歩行に要した期間を調査した。<BR>【方法】<BR> 対象は2011年4月1日以降にTKA施行した6例6膝(女性6膝)、平均年齢74.1歳(67歳~81歳)である。関節アプローチは全例medial parapatellar approachで、固定方法は全例大腿骨側、脛骨側共にセメントを使用した。対象症例に対して、自立した杖歩行までにかかった日数、術前歩行レベル、術前筋力を調査した。筋力は膝伸展筋力をμ-Tas(ANIMA製)を用いて計測した。なお対象者には、ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を得た。<BR>【結果】<BR> 術前歩行レベルは1例のみT字杖歩行で、その他は独歩であった。自立した杖歩行までの平均日数は約4日で、最短2日、最長6日であった。術側筋力は平均15.2±5.2kg、健側の筋力は平均22.4±6.0kgであった。早期に自立した杖歩行となった症例は、術前筋力が高い傾向にあった。<BR>【考察】<BR> 当院では、従来術後2週間で自宅退院が可能となるように術後のリハビリを取り組んでいた。従来の術後プロトコールでは、術翌日より歩行器歩行を開始し、自立した杖歩行までは術後1週間程度を要していた。しかし、症例によっては早期に歩行レベルの向上が図れるものも少なからず存在しており、また、海外におけるTKAの入院期間が日帰りから約1週間であることをふまえて 、今回積極的に歩行レベルの向上を目的として術後リハビリを行った。今回の結果より、自立した杖歩行まで平均4日と従来行ってきたプロトコールよりも早期に歩行能力の向上を得ることができた。また、術前にT字杖を使用していた症例も術後3日にて自立した杖歩行となった。このことから、歩行に関して自立した杖歩行を自宅への退院の指標とした場合、早期に自宅退院可能だと考えられる。また、杖歩行が早期に自立となった症例は術前筋力が高い傾向にあったことから、術前からの筋力訓練は術後の歩行能力改善に有効と考えられる。<BR>【まとめ】<BR> 今回、術後リハビリにおいて積極的に歩行レベルの向上を図った結果、術後平均4日で自立した杖歩行が獲得できた。自立した杖歩行を自宅への退院の指標とすると、術後4日で退院が可能であると思われる。今後は症例数を増やし、年齢や筋力、可動域等をふまえて詳細に術後歩行能力に関与する因子を検討していきたい。
著者
鶴田 崇 渡辺 裕介 湯朝 友基 張 敬範 江本 玄 緑川 孝二
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.201, 2010 (Released:2011-01-15)

【はじめに】 当院における投球障害肘に対する理学評価は、肘関節・下肢・体幹も含めた全身は勿論のこと、肩関節の評価として原の11項目も利用している。原の11項目における肩甲上腕関節の柔軟性を評価するCombined Abduction Test(以下CAT)・Horizontal Flexion Test(以下HFT)は、肩甲骨を徒手的に固定して上肢を外転や水平屈曲させ、その角度を計測する方法で左右差を調べるが、陽性と陰性を判断する角度基準が明確でない。そこで今回、投球障害肘に対するCAT・HFTの初回の陽性角度と陰性に改善した角度を計測し比較検討した。【対象】 野球部に所属し、投球障害肘を持つ男性30例、全例投球側。平均年齢は12,7±1,7歳(10~17歳)。なお、対象者には本研究の目的を十分に説明し同意を得た。【方法】 投球禁止・投球開始・試合復帰時期、初回の陽性時の角度と陰性に改善した時のCAT・HFTをそれぞれゴニオメーターで計測し比較した。陽性と陰性の判断基準は原に準じ、CATにおいては上腕部が側頭に近づくと正常で、近づかなければ異常、HFTは手指が反対側の床に着くと正常、床に着かない場合は異常と判断した。また、投球禁止~投球開始までの期間、投球開始~試合復帰までの期間を計測した。【結果】 投球禁止宣告時の平均CATは103,5°±6,3(29/30例陽性)、HFTは88,7°±3,0(30/30例陽性)。投球開始許可時の平均CATは129.5°±1,3(1/30例陽性)、HFTは106,5°±5,6(10/30例陽性)。試合復帰許可時の平均CATは128,3°±3,1(2/30例陽性)、HFTは105,3°±6,2(11/30例陽性)。初診時のCAT陽性平均角度は103,3±6,3、陰性改善時は130°±0。初診時のHFT陽性平均角度は89.5°±1,8、陰性改善時は110,5°±0,9。 投球禁止~投球開始までの平均期間は28,2±10,7日、投球開始~試合復帰までの平均期間は54,9±20,4日。【考察】 投球障害肘を評価する上で、肘関節よりも中枢部である肩関節・体幹を評価することは必須である。それ故に、投球障害肘を治療する際、原の11項目に含まれているCAT・HFTは肩甲上腕関節の柔軟性を的確に診る上で非常に重要である。しかし、患者の理解力や治療における目標設定が曖昧であり、双方とも陽性・陰性の判断角度が明確ではない。 今回の研究によって、目標角度がCATはおおよそ130°、HFTはおおよそ110°と明確になることで、具体的な数値として表現されれば、患者と治療側の間で問題点や治療選択が共有でき、自己認識が高まると思われる。