著者
五十嵐 恵 初山 慶道 松本 和浩 塩崎 雄之輔
出版者
弘前大学農学生命科学部
雑誌
弘前大学農学生命科学部学術報告 (ISSN:13448897)
巻号頁・発行日
no.13, pp.7-13, 2011-02

'紅の夢'は弘前大学藤崎農場で育成されたリンゴ新品種である。このリンゴの果実の特徴は濃い暗紅色の果皮と印象的な淡紅色の果肉を持つことである。'紅の夢'は、'紅玉'と'スターキングデリシャス'との交配により作出されたと記録されていたが、DNAマーカー解析によると、'スターキングデリシャス'は交配親ではないことが明らかになった。さらに、SSRおよびSTSマーカーを用いた遺伝子型解析により、'紅の夢'の親品種のうち一方は'紅玉'、もう一方は藤崎農業に植栽されている樹(赤肉親候補A)である可能性を示した。このリンゴ樹は'エターズコールド'とされていたが、SSR遺伝子型を調査したところ大半がオリジナルの遺伝子型とは異なることから、'エターズゴールド'ではないことが明らかになった。PCRベースのS-RNase解析により、'紅の夢'のS遺伝子型は、S3S7と既存品種の'つがる'や'未希ライフ'と同一であることが明らかになった。この結果から、'紅の夢'は日本で栽培されている多くの品種と交雑和合性があると考えられた。
著者
塩崎 雄之輔 菊池 卓郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.827-832, 1992
被引用文献数
1 3

リンゴ'ふじ'/マルバカイドウの開心形樹 (栽植距離9m×9m, 栽植密度123本/ha) 12樹について, 5年生から24年生までの20年間にわたって, 収量と葉面積指数, 新梢長等のいくつかの樹体特性について測定を行った. 10年生以降, 樹高は3.5~4.0mに維持され, 樹冠はもっぱら水平方向に拡大した. 樹冠占有面積率および葉面積指数 (LAI) は20年生まで増加を続け, 前者は約70% (1樹当たり約55m2), 後者は約2.0に達し, 以後ほぼ一定になった. 収量 (1ha当たり)は樹冠占有面積率およびLAIの増加に伴って増加した.LAIとそれに対応する収量 (1ha当たり) は, 1.0で約20t, 1.5で約35t, 2.0で55t以上であった. 樹冠占有面積の増加に伴い, 樹冠占有面積当たり収量と単位葉面積当たり収量の増加が認められた. これは樹冠が扁平で樹冠内部に光線がよく透入するように枝が配置されていることに加え, 樹冠占有面積当たりspur数の増加と平均shoot長の減少とが大きく寄与していることが示唆された.
著者
守谷 友紀 高井 良裕 岡田 和馬 伊藤 大雄 塩崎 雄之輔 中西 テツ 高崎 剛志
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.424-430, 2005-11-15
参考文献数
20
被引用文献数
1

セイヨウナシ(Pyrus communis L.)の自家および交雑不和合性は結実率や種子数により判定されてきたが, それらの評価は明確ではない.本研究では交雑による不和合・和合の判定方法を確立するため, セイヨウナシ10品種を用いて1花そう1花の除雄無受粉, 自家受粉および他家受粉を行い, 各品種の単為結果性, 自家不和合性および品種間の交雑不和合性を調査した.ほぼすべての品種が単為結果性を有し, 結実率による不和合・和合の識別はできなかった.しかし, 新たに提案したself-incompatibility (SI) index((評価対象の交配における交配花数当たりの充実種子数)/(和合交配における交配花数当たりの充実種子数)×100)により不和合・和合の判定が可能になった.その結果, 'グランド・チャンピオン'は部分的自家和合性であり, 他の品種は自家不和合性であることが明らかになった.有種子果実の品質は単為結果果実よりも優れており, 単為結果性を有するセイヨウナシでも安定的な良質果実の生産には和合花粉の受粉が必要でることが明らかになった.'フレミッシュ・ビューティー'と'スタークリムソン'および'バートレット'と'セニョール・デスペラン'の二つの組み合わせが交雑不和合を示した.
著者
松本 和浩 藤田 知道 佐藤 早希 五十嵐 恵 初山 慶道 塩崎 雄之輔
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.211-217, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
20

3倍体で大型の黄色い果皮の品種である‘弘大みさき’を育成した.SSRマーカーを利用した遺伝子型解析の結果,本品種は‘ゴールデンデリシャス’ × ‘デリシャス’系の組み合わせで作出されたものと考えられた.育成地での収穫期は満開後約150日の10月上旬で,リンゴ黄色品種標準カラーチャートで2~3程度の果皮に青味が残る状態が収穫適期であることが明らかになった.果実は450 gを超える大果であり,糖度は12~14°,酸度は0.4%前後の甘酸適和の品種である.有袋栽培を行えば橙赤色の果皮の果実の生産も可能である.贈答用として活用でき着色管理の必要がない省力化品種として普及が期待される.
著者
荒川 修 塩崎 雄之輔 菊池 卓郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.297-301, 1999-03-15

リンゴ樹の樹冠内の光条件の測定方法について, 樹冠内の全天光に対する割合を, 照度(lx), 光合成有効光量子束(μmol・m^<-2>・s^<-1>)および日射量(W・m^<-2>)の測定から求め, その違いについて検討した.照度の測定による相対照度と光合成有効光量子束の測定による相対光合成有効光量子束との間には高い正の相関が認められた.しかしながら, 両者の値は明らかに異なり, 相対光合成有効光量子束は相対照度の値に比べて6.0%高かった.このことは, 1日の積算の光合成有効光量子から求めた相対光合成有効光量子と相対照度との関係にも認められ, その差は曇天日で6.7%, 晴れの日で6.8%だった.日射計による1日の積算日射量から求めた相対日射量と相対光合成有効光量子との間にも高い正の相関が認められたが, 相対日射量の値が相対光合成有効光量子の値に比べて11%高かった.