著者
川口 佳則 中谷 敬子 沖 陽子 長谷川 博
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.31-35, 2012 (Released:2012-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

畦畔に植栽されたセンチピードグラスの種子繁殖による逸出リスク評価に関する基礎知見として,畦畔での結実状況および結実種子の休眠·発芽特性を明らかにするため,滋賀県内の畦畔で結実状況を調査し,結実した種子を用いて発芽試験と吸水実験を行った。結実状況調査により,畦畔での種子生産は8,000粒/m2を超えると推定された。採取後23,60,100日間の3通りの風乾処理および採取後20日間風乾後40,80日間の2通りの低温湿潤処理をした種子を供試し,温度条件4水準(35/15°C変温,35°C,25°C,15°C),光条件2水準(明,暗)の発芽試験を行った。その結果,種子は比較的浅い一次休眠を有し,休眠が深いほど発芽に高温と光を要求すると考えられた。種子は採取後日数の経過に伴い風乾でも次第に一次休眠から覚醒するが,100日以下の風乾では光要求性が残存すると考えられた。40,80日の低温湿潤処理により種子の休眠覚醒はより促進され,光要求性も小さくなると考えられた。吸水実験では発芽試験と同じサンプルの種子を供試して24時間吸水させた結果,30%を超える重量増加がみられたため,種皮は透水性と考えられた。
著者
中谷 敬子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.74-81, 1991-04-08 (Released:2009-12-17)
参考文献数
23
被引用文献数
3 5

関東地方平坦部における主要畑夏雑草13草種についてファイトトロンを用いて, 日長反応性ならびに生育, 種子生産特性に及ぼす日長および温度の影響について検討した。1) 8~22時間日長まで6段階に分けて日長処理を行い, 播種後出穂・着蕾までの日数から供試13草種について, シロザ, アカザを質的短日性, エノコログサ, メヒシバ, ヒメイヌビエ, カヤツリグサ, ホソアオゲイトウ, タカサブロウを量的短日性, スベリヒユ, ハルタデ, オヒシバ, イヌビユ, ツユクサを中日性の3群に分類した。この中で中日性のハルタデおよびスベリヒユは短日条件により開花が促進される傾向が認められた。2) 質的短日性, 量的短日性草種は日長条件による形態変化が著しく, 短日条件では分枝数, 穂数が増加し, 草丈が抑制され, 長日条件では分枝数, 穂数は著しく減少するが, 草丈の伸長が顕著であった。これに対して, 中日性草種は日長条件による形態変化が比較的小さかった。3) 播種後短日条件で処理し, その後長日条件へ移行した場合とその逆の組合せとでは, 出穂・着蕾までの日数は前者で短かったが, 栄養成長量は著しく増大した。4) 供試草種の出穂・着蕾は低温条件では12, 16時間日長ともに遅延傾向が認められ, 特に15℃ではいずれの草種も著しく遅延した。地上部生育量は両日長条件とも温度の上昇に伴い増加したが, ハルタデは逆の傾向を示した。
著者
中谷 敬子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.158-165, 2015 (Released:2016-01-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1
著者
中谷 敬子 野口 勝可 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.184-188, 1996-10-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1

スギナの胞子の発芽および前葉体の形成条件を培養条件下で検討した。その結果, MS寒天培地, 明条件下では, 胞子置床後約30日で前葉体が, 約60日で栄養茎がそれぞれ形成された。続いて, スギナの胞子の発芽および前葉体の形成に及ぼす温度条件, 培地の酸性度, 酸素要求性および土壌水分条件等の環境条件の影響についてMS寒天培地, 土壌培地等を用いて検討した。スギナ胞子の発芽可能温度域は15~30℃, 最適温度は20℃であった。培地の酸性度については, 寒天培地の場合はpH 4.5~6.5の範囲で発芽が認められ (最適値はpH 5.7), 土壌培地の場合は, pH 5.3~7.2の範囲で良好な発芽後の分裂伸長が認められた。また, 窒素封入条件でも発芽し, 発芽に際して酸素要求性は低かった。胞子の発芽および前葉体の形成に関しては, 土壌水分の影響が大きく, pF 2.7以下の条件で発芽可能, pF 2.0以下の条件で前葉体形成が認められ, 土壌水分が高いことが必要であることが明らかになった。
著者
中谷 敬子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.176-182, 1991-09-02
被引用文献数
8

シロザ、メヒシバ、ヒメイヌビエ、ハルタデの4草種を供試して1983年から3年間毎年播種期を 4月から9月だいし10月まで変えて、地上部生育量、播種後出穂・着蕾までの日数および種子生産量を調査 し、次の結果が得られた。 1)播種後出穂・着蕾までの日数は4〜8月播種では各草種の日長反応性に対応した差異が認められたが、9〜10月の播種では各草種とも生育が温度により制約され、日長反応性による差は認められたかった。 2)出穂・着蕾が可能な播種期の限界はメヒシバ、ヒメイヌビエでは8月下旬、シロザ、ハルタデでは10月上旬であった。また種子の着生が可能である播種期の限界はシロザでは9月上旬、他の3草種では8月下旬であった。 3)草丈・主茎長あるいは地上部乾物重だとの生育量は各草種とも播種期が遅くなるにともない減少したが、減少程度は短日性のシロザで大きく、中目性のハルタデで小さいなど、草種により異なった。 4)種子生産量は地上部生育量に対応する傾向がみられ・各草種とも4〜6月播種の場合に最も多かった。 5)種子の千粒重はシロザを除いて播種期が遅くなるにともない減少し、個体当たりの生産種子粒数の減少を補償する傾向を示したが、シロザの8月播種の場合の千粒重は大きくなった。また、REは短日性のシロザや量的短日性のメヒシバおよびヒメイヌビエでは播種期が遅くなるにともない増加したのに対し、中日性のハルタデでは播種期が遅くなるにともない減少した。 6) 生殖器官への乾物分配率は短日性のシロザでは播種期が早い場合には生育後期に集中して高くなり、播種期が遅い場合には生育初期から分配が開始され徐徐に増加したのに対し、中日性のハルタデでは播種期にかかわらず各器官への分配率の推移のパターンは変化しなかった。
著者
中谷 敬子
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

アモルファス合金は、低い剛性にも関わらず、静的強度、衝撃破壊強度、疲労強度、いずれも大きいというその特徴をもち、その製品の開発が進んでいる。申請者は、鉄単元系アモルファス金属の理想化されたモデルに対して、分子動力学シミュレーションを実施し、その変形挙動、破壊機構が、結晶とは全く異なっており、その違いは、原子レベルの構造とその変化の違いから生じていることを明らかにしてきた。しかしながら、現実に存在する複数種類の原子を含む合金系では、その原子構造が有しているオーダーリングの複雑さのために、単元系に対する知識がそのまま通用するかどうかはわかっていない。一方、アモルファス合金の解析については、銅ジルコニウム(Cu-Zr)合金について、二、三の原子レベルシミュレーションがなされているが、合金系の原子間ポテンシャルのパラメータに単元系の値を平均したものを用いているなどの点で曖昧さを有している。また、損傷/破壊に対するメカニズムはまだ十分に明らかにされていない。このような経緯から、本研究では、実験データが豊富な銅-ジルコニウム(Cu-Zr)合金系のアモルファス相に対して分子動力学法を用いてその構造および力学特性、変形・破壊挙動について検討を加えることを目的としている。この目的達成のために、今年度は、昨年度に開発したポテンシャルをより適切なものへとブラッシュアップした。さらに、作成したポテンシャルを結晶構造に適用し、その相変態や、構造強度の変化を調べることを試みた。具体的には,(1)幾何学的な原子構造と原子レベルの固有応力,弾性定数の分布等の基礎的データの収集,(2)無負荷および引張予負荷を与えた試験片に対する単軸引張圧縮および二軸引張圧縮試験の分子動力学シミュレーションによる基本力学特性とその変形による損傷についての研究を行なった。得られた成果により、申請者は、(財)日本機械学会から2001年度日本機械学会奨励賞(研究)を授与された。