著者
中山 祐一郎 梅本 信也 伊藤 操子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.332-338, 1997-01-31 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19

オオバコの種内変異を調査するため, 京都市北東部の8集団かち得た系統を供試し, 同一条件下での栽培実験を行なった。さらに, 生育地の環境を調査して, 種内変異と生態分布との関連を検討した。1) オオバコの形態には著しい遺伝的変異が認められ, 普通型と minima 型の2型が識別された。普通型では, 葉は大きく斜立し, 葉脈数は5で, 花序は長く, 斜立~直立し, 1蓋果は3~7個の大きな種子を結ぶ。minima 型では, 葉は小さく傾伏し, 葉脈数は3で, 花序は短く, 傾上し, 1蓋果は4~10個の小さな種子を結ぶ。2) 普通型は, 畦畔や農道, 路傍, 未舗装の駐車場, 社寺林の林床などに生育していた。minima 型は神社や仏閣の境内に限って生育していた。3) minima 型の生育地である神社の境内は, 薄暗く, 土壌中の窒素とリンの含量が普通型の生育地より低く, 維管束植物の多様度指数が低く, また毎日掃き掃除が行われるなど, 普通型の生育地とは環境条件や管理様式が顕著に異なっていた。そのため, minima 型はストレスや撹乱の質と程度に関して普通型とは異なった環境に生育していると考えられた。オオバコの種内2型はこのような生育地の環境条件の違いに適応し, 住み分けているものと推定された。
著者
汪 光煕 草薙 得一 伊藤 一幸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.135-143, 1997-08-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
11
被引用文献数
6 7 5

ミズアオイとコナギの生育並びに種子生産に対する播種時期, 遮光および施肥量などの影響について検討し, 次のことを明らかにした。1) 草丈はいずれの播種時期においてもミズアオイがコナギよりも高かった。主茎葉数は5月までの播種期においては, ミズアオイがコナギよりも多かったが, 6月以降の播種期においてはコナギの方が多かった。2) 種子生産量は, 両草種ともに5, 6月播種で大きい値を示した。3) 各器官への乾物分配率を4月と8月播種で比較すると, 前者では生殖器官への分配が生育後期に集中したのに対して, 後者では, 生育前期より生殖器官への分配が認められた。4) 草丈は両草種ともに無遮光条件では無施肥区が最も低かったが, 遮光が強化されるに伴い, 逆に無施肥区で草丈が最も高くなり, 倍量施肥区が最も低く推移し, 標準施肥区は両者の中間の草丈を示した。5) 種子生産量は無遮光条件では施肥量の増加に伴い, 明らかに多くなった。しかし, 遮光処理区では両草種ともに播種後90日に25%遮光開始の倍量施肥区で種子生産量が最大となった。
著者
中山 祐一郎 梅本 信也 伊藤 操子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.332-338, 1997-01-31
被引用文献数
1

オオバコの種内変異を調査するため, 京都市北東部の8集団から得た系統を供試し, 同一条件下での栽培実験を行なった。さらに, 生育地の環境を調査して, 種内変異と生態分布との関連を検討した。1) オオバコの形態には著しい遺伝的変異が認められ, 普通型とminima型の2型が識別された。普通型では, 葉は大きく斜立し, 葉脈数は5で, 花序は長く, 斜立〜直立し, 1蓋果は3〜7個の大きな種子を結ぶ。minima型では, 葉は小さく傾伏し, 葉脈数は3で, 花序は短く, 傾上し, 1蓋果は4〜10個の小さな種子を結ぶ。2) 普通型は, 畦畔や農道, 路傍, 未舗装の駐車場, 社寺林の林床などに生育していた。minima 型は神社や仏閣の境内に限って生育していた。3) minima型の生育地である神社の境内は, 薄暗く, 土壌中の窒素とリンの含量が普通型の生育地より低く, 維管束植物の多様度指数が低く, また毎日掃き掃除が行われるなど, 普通型の生育地とは環境条件や管理様式が顕著に異なっていた。そのため, minima型はストレスや撹乱の質と程度に関して普通型とは異なった環境に生育していると考えられた。オオバコの種内2型はこのような生育地の環境条件の違いに適応し, 住み分けているものと推定された。
著者
汪 光煕 草薙 得一
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.105-111, 1996-07-10 (Released:2017-09-25)
参考文献数
28
被引用文献数
2

アジア産ミズアオイ属植物の主な染色体数は2n=24, 48(ホソバコナギMonochoria vaginalis var.angustifolia), 2n=28(カイナンミズアオイM.valoda), 2n=52(コナギM.vaginalis var.vaginalis, ミズアオイM.korsakowii)と2n=80(ナンヨウミズアオイM.hastata)である。このうち2n=48はこの属における新しい染色体数である。また, ミズアオイとコナギについてはこれまでほとんど報告がなかった日本と中国の材料からの結果は既存報告と一致した。2n=52は2n=24と2n=28との交雑から生じた異質四倍体(allotetraploid)で, 2n=80は2n=52と2n=28から生じた同質異質六倍体(autoallohexaploid)であると考えられているのに対して, 2n=48は2n=24から倍加してできたものであろうと推察される。
著者
三浦 励一 小林 央往 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.271-278, 1996-02-09 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

京都付近では畑雑草コハコベは春から秋にかけて耕起のたびに発生するが, 人里植物であるミドリハコベは秋期にのみ発生する (前報)。このような発生消長の差異をもたらす種子休眠性および発芽特性の差異を知るため, 両種の種子を7月から野外地表, 野外土中, 実験室内の恒温乾燥 (10,20,30℃) および恒温土中 (10, 20, 30℃) の各条件下で保存し, 定期的に発芽試験を行った。発芽試験は通常15℃明・暗条件で行い, 実験開始時と2ヵ月間保存後 (9月; 発生始期に相当) には温度の影響を調べるため5~30℃のそれぞれ明・暗条件で行った。1) 実験開始時にはコハコベ, ミドリハコベとも全く発芽せず, 一次休眠の状態にあることが示された。2) 野外地表区のコハコベ種子では休眠覚醒が遅く, 光発芽性は顕著でなかった (Figs. 2, 4)。地表で夏から冬まで経過したときの累積発芽率は30%以下であった (Fig. 3)。野外埋土区では速やかに休眠覚醒して著しい光発芽性を示し, 発芽適温域は5~25℃と広かった (Figs. 2, 4)。3) ミドリハコベ種子は野外地表区・埋土区のいずれにおいても比較的速やかに休眠から覚醒したが, 発芽適温域は5~20℃とやや狭かった (Figs. 2, 4)。野外地表区の種子は秋期にその場で発芽し, 累積発芽率は82%となった (Fig. 3)。4) コハコベ種子の室内の恒温乾燥区における休眠覚醒はきわめて遅く, 光発芽性は認められなかった (Figs. 5, 6)。恒温埋土区では速やかに休眠覚醒して著しい光発芽性を示した (Figs. 5, 6)。5) ミドリハコベ種子の室内の恒温乾燥区および埋土区における休眠覚醒の様相は後者でやや光発芽性が認められたほかはよく似ており, いずれも高温 (30℃) で促進され, 低温 (10℃) では遅かった (Figs. 5, 6)。
著者
中谷 敬子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.74-81, 1991-04-08 (Released:2009-12-17)
参考文献数
23
被引用文献数
3 5

関東地方平坦部における主要畑夏雑草13草種についてファイトトロンを用いて, 日長反応性ならびに生育, 種子生産特性に及ぼす日長および温度の影響について検討した。1) 8~22時間日長まで6段階に分けて日長処理を行い, 播種後出穂・着蕾までの日数から供試13草種について, シロザ, アカザを質的短日性, エノコログサ, メヒシバ, ヒメイヌビエ, カヤツリグサ, ホソアオゲイトウ, タカサブロウを量的短日性, スベリヒユ, ハルタデ, オヒシバ, イヌビユ, ツユクサを中日性の3群に分類した。この中で中日性のハルタデおよびスベリヒユは短日条件により開花が促進される傾向が認められた。2) 質的短日性, 量的短日性草種は日長条件による形態変化が著しく, 短日条件では分枝数, 穂数が増加し, 草丈が抑制され, 長日条件では分枝数, 穂数は著しく減少するが, 草丈の伸長が顕著であった。これに対して, 中日性草種は日長条件による形態変化が比較的小さかった。3) 播種後短日条件で処理し, その後長日条件へ移行した場合とその逆の組合せとでは, 出穂・着蕾までの日数は前者で短かったが, 栄養成長量は著しく増大した。4) 供試草種の出穂・着蕾は低温条件では12, 16時間日長ともに遅延傾向が認められ, 特に15℃ではいずれの草種も著しく遅延した。地上部生育量は両日長条件とも温度の上昇に伴い増加したが, ハルタデは逆の傾向を示した。
著者
中谷 敬子 野口 勝可 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.184-188, 1996-10-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1

スギナの胞子の発芽および前葉体の形成条件を培養条件下で検討した。その結果, MS寒天培地, 明条件下では, 胞子置床後約30日で前葉体が, 約60日で栄養茎がそれぞれ形成された。続いて, スギナの胞子の発芽および前葉体の形成に及ぼす温度条件, 培地の酸性度, 酸素要求性および土壌水分条件等の環境条件の影響についてMS寒天培地, 土壌培地等を用いて検討した。スギナ胞子の発芽可能温度域は15~30℃, 最適温度は20℃であった。培地の酸性度については, 寒天培地の場合はpH 4.5~6.5の範囲で発芽が認められ (最適値はpH 5.7), 土壌培地の場合は, pH 5.3~7.2の範囲で良好な発芽後の分裂伸長が認められた。また, 窒素封入条件でも発芽し, 発芽に際して酸素要求性は低かった。胞子の発芽および前葉体の形成に関しては, 土壌水分の影響が大きく, pF 2.7以下の条件で発芽可能, pF 2.0以下の条件で前葉体形成が認められ, 土壌水分が高いことが必要であることが明らかになった。
著者
中谷 敬子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.176-182, 1991-09-02
被引用文献数
8

シロザ、メヒシバ、ヒメイヌビエ、ハルタデの4草種を供試して1983年から3年間毎年播種期を 4月から9月だいし10月まで変えて、地上部生育量、播種後出穂・着蕾までの日数および種子生産量を調査 し、次の結果が得られた。 1)播種後出穂・着蕾までの日数は4〜8月播種では各草種の日長反応性に対応した差異が認められたが、9〜10月の播種では各草種とも生育が温度により制約され、日長反応性による差は認められたかった。 2)出穂・着蕾が可能な播種期の限界はメヒシバ、ヒメイヌビエでは8月下旬、シロザ、ハルタデでは10月上旬であった。また種子の着生が可能である播種期の限界はシロザでは9月上旬、他の3草種では8月下旬であった。 3)草丈・主茎長あるいは地上部乾物重だとの生育量は各草種とも播種期が遅くなるにともない減少したが、減少程度は短日性のシロザで大きく、中目性のハルタデで小さいなど、草種により異なった。 4)種子生産量は地上部生育量に対応する傾向がみられ・各草種とも4〜6月播種の場合に最も多かった。 5)種子の千粒重はシロザを除いて播種期が遅くなるにともない減少し、個体当たりの生産種子粒数の減少を補償する傾向を示したが、シロザの8月播種の場合の千粒重は大きくなった。また、REは短日性のシロザや量的短日性のメヒシバおよびヒメイヌビエでは播種期が遅くなるにともない増加したのに対し、中日性のハルタデでは播種期が遅くなるにともない減少した。 6) 生殖器官への乾物分配率は短日性のシロザでは播種期が早い場合には生育後期に集中して高くなり、播種期が遅い場合には生育初期から分配が開始され徐徐に増加したのに対し、中日性のハルタデでは播種期にかかわらず各器官への分配率の推移のパターンは変化しなかった。
著者
中山 祐一郎 梅本 信也 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.97-106, 1997-08-30
被引用文献数
2

オオバコ種内2型の生活史特性とその成立過程を検討するために, 京都市北東部の8集団を供試して栽培実験と発芽試験を行い, さらに, 自生地での季節消長を調査した。1) minima 型は普通型よりも全乾物重が小さく, 早く出穂し, 繁殖分配率が大きかった(Fig. 1, 2およびTable 2)。また, 年間の種子生産数は, 栽培1年目では2型間に差異はなかったが, 栽培2年目では普通型がminima型を大きく上回った(Table 2)。2) 普通型では, 明条件下で20℃から30℃までのいずれの温度区でも高い種子発芽率が得られた。一方, minima型では25℃で種子発芽率が最大となり, 20℃では発芽速度が顕著に遅かった(Fig. 3)。3) 普通型が生育する畦畔や農道では, 植生が密で, 成熟個体の死亡することが少なく, 競争が激しかった。一方, minima型が生育する神社の境内では, ストレスが大きく, 乾燥した夏の掃き掃除や不定期な除草, 改修工事などの攪乱が予測不能な死亡要因として作用していた(Fig. 4)。また, 出芽の時期は2型間で異なった(Fig. 4)。以上のことから, オオバコ種内2型の生活史特性は, ストレスや攪乱, 競争の質や程度が異なるそれぞれの自生地の環境に適応して成立したものと推定された。
著者
汪 光煕 草薙 得一 伊藤 一幸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.247-254, 1996-10-25
参考文献数
13
被引用文献数
16

ミズアオイとコナギの種子の休眠, 発芽, 出芽に及ぼす環境要因の影響を検討し, 次のことが明らかになった。1) ミズアオイとコナギの種子の休眠はともに採種後戸外水槽中に貯蔵した種子が最も早く覚醒し, 採種後60日前後で高い発芽率を示した。また, ミズアオイでは戸外畑土表層, 戸外畑土中および5℃畑土中に貯蔵したものも高い発芽率を示し, コナギよりも低温条件による休眠覚醒効果が大きかった。2) ミズアオイの休眠覚醒種子は15℃から40℃までの温度条件下で発芽が認められたが, コナギは15℃では全く発芽しなかった。ミズアオイは20℃, 25℃, 30℃の温度で100%の発芽率を示し, コナギは30℃と35℃で100%となった。ミズアオイはコナギよりも低温条件下で発芽が可能であり, その発芽適温の幅はコナギよりも広いことが認められた。3) 播種から出芽始めまでの日数を調査した結果, ミズアオイとコナギはともに3月16日から7月19日までの間に播種した場合には播種時期が遅くなるにともない, 出芽始めまでの日数が短かったが, 8月14日の播種からは播種時期が遅くなるにともない, 出芽始めまでの日数が増加し, 播種から出芽始めまでに要する日数は積算温度に強く規制されていた。4) 両草種ともに暗条件下での発芽率は明条件よりも低く, その差異は温度が低いほど大きかった。5) 水深と発芽との関係についてはミズアオイとコナギはともに湛水深が5cmと3cmの場合に発芽率が高く, 水深0cmより水位が低くなるにともない, 発芽率も低くなった。とくにコナギは水深0cm以下の水深ではほとんど発芽せず, 地表面から-5cmの水位では発芽率は0%であった。6) 出芽に及ぼす覆土深の影響についてはミズアオイとコナギはともに覆土が厚くなるにつれて, 出芽率が低下したが, 覆土深が1.5cmまではコナギの方が出芽率が高かった。出芽の限界覆土深はミズアオイでは3.0cm, コナギでは2.0cmであったが, この限界覆土深では両草種ともに出芽率は数パーセント程度であった。7) 種子が発芽能力を有するまでの開花後日数はミズアオイの種子では少なくとも23日間を要し, 27日以上経過すれば, 75%以上, 33日以上経過したものは100%の発芽能力があった。コナギはミズアオイよりも少し遅く, 発芽能力を有し始めたのは開花後27日であった。その後, 急速に発芽率の向上が認められた。
著者
浅井 元朗 伊藤 操子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.20-28, 1995-05-31
参考文献数
19
被引用文献数
2

樹園池など粗放的な植生管理が求められる場面では, 植被を利用した害草制御は検討に値する方法であり, シロクローバ(trifolium repens L.)はその有望な材料と考えられる。本研究ではその播種法と初期の刈取が, クローバの定着ならびに植被の雑草制御効果に及ぼす影響を調査した。シロクローバ2品種(コモン型:グラスランドフィア, ラジノ型:カリフォルニアラジノ)を用い, 2段階の播種量0.5kg/10a, 2.0Kg/10a)および2時期の播種時期(1991年9月18日, 同10月14日)について比較した。実験は大阪府高槻市の休耕地で2年間実施し, 実験期間を通じて植生調査および4, 6, 8, 10月の刈取処理を行った。実験圃場の植生は, Th, D_4, R_5型が優占し, 熟畑的な型であった(Table 1)。いずれの処理区でもクローバは良好に発芽, 定着し, その被度は播種翌春には80%を越えた(Fig.1)。1993年以降はラジノの被度がコモンよりも高くなった(Fig. 1)。植被のすみやかな確立には早期播種(9月)が有効であり, 密播も効果があった (Fig. 2)。晩期, 粗播(10月, 0.5Kg/10a)ではクローバによる地表面の被覆が最も遅れた(Fig. 2)。このような播種法による差は6月にはほぼ消失した。草高はラジノの方がコモンより高く推移した(Fig. 3)。晩期, 粗播区において顕著であった被覆の遅れは一年生冬雑草, 特にナズナ(Capsella bursa-pastoris (L.) Medik.)や, 風散布型のキク科雑草, 特にオオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)の侵入, 発生を許した(Fig.4およびTable 2)。一年生冬雑草はクローバの優占度にほとんど影響を及ぼさなかった。しかし, オオアレチノギクは無刈取の場合, 夏期に草高が約2mに達し, 群落下層のクローバを庇陰し, 見苦しい景観を形成した(Fig.5)。オオアレチノギクは4月の刈取後は再生したが, 6月の刈取によって枯死した(Fig.5)。すなわち, 播種後1年目にクローバの優占群落を形成するためには, 6月の刈取1回で十分効果的であることが明らかとなった。早期のクローバ植被によってもギシギシ属(Rumex spp.)やネズミムギ(Lolium multiflorum Lam.)の発生, 生育は抑制されなかった(Fig. 4)。本調査で得られた結果は樹園地以外の非農耕地においても利用可能なものと考える。
著者
テラワッサクール M. 村田 吉男 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.97-103, 1987-08-31
被引用文献数
1

タイ国におけるトウモロコシ畑での Eiphorbia geniculataの生態を解明するための基礎的知見として、光合成および蒸散作用における特徴をトウモロコシおよび Euphorbia hirtaと比較した。 1) C_3植物であるE. geniculataは光合成の光飽和点がC_4植物であるトウモロコシやE. hirtaよりもはるかに低く、そして強光下での党かげの光合成作用(Ap)はトウモロコシ、 E. hirtaでは気孔抵抗(r_s)によって限定されるのに対して、 E. geniculataでは葉肉抵抗(r_m)によって限定された。 2)遮光条件下で育てると E. genisulataの党かげの光合成作用およびその光飽和点はトウモロコシに比べて著しく低下した。見かけの光合成の減少は E. geniculataではr_mの増加によるが、トウモロコシではr_mおよびr_sの両方の増加に起因することが認められた。 3) E. geniculataの要水量は通常、トウモロコシの2倍以上であるが、遮光処理により約3倍に増大した。 4) E. geniculataの見かけの光合成作用は、目長時問が増加するに従って減少する傾向を示した。また強光下の蒸散量 (Tr)は12時間日長で最大となり、Ap/Tr比は最低となった。たお、暗黒化に伴う気孔閉鎖は8時間日長区が12、16時間日長区よりもはるかに迅速であった。
著者
浅井 元朗 伊藤 操子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.194-202, 1995-10-31
被引用文献数
1

値被を利用した害車制御は樹園地など粗放的な植生管理が求められる場面で有用であり, シロクローバ(Trifolium repens L.)はその有望な材料と考えられる。本研究はクローバ定着後の刈取体系がクローバの生育と植生動態に及ぼす影響を調査し, 望ましい刈取体系について検討した。実験は大阪府高槻市で行い, シロクローバ2品種(コモン型: グラスランドフィア, ラジノ型: カリフォルニアラジノ)を1991年秋期に播種した。その後2年間, 春期(4月中旬または5月初旬), 6月, 8月, 10月の4時期の組合わせによる16種の刈取体系(Table 1)を実施し, クローバと雑草の植生調査を継続した。1年目(1992年)の刈取はクローバ生育に与える影響が少なく, 次の刈取までにクローバは再生した。しかし2年目 0993年)の刈取によってクローバ被度ならびにその植生は大きく変化した。6月, 10月の刈取は影響が大きく, 春期, 8月の刈取は影響が少なかった(Table 2)。特に1993年6月の刈取後に大型のイネ科夏雑草(アキノエノコログサ, メヒシバなど)が繁茂し, クローバ被度は著しく減少した(Fig.1, Fig.3)。6月無刈取区では刈取区に比べて夏期のクローバ被度の低下は小さく, 冬期の被度は刈取区より高かった(Fig.1, Fig. 3)。夏期に雑草を除去した場合もクローバ被度の低下は小さかった(Fig. 2)。しかし, 刈取の有無にかかわらず, クローバの生育は前年より衰退した。クローバ品種間ではラジノ型がコモン型に比べて高い被度を維持し(Fig. 1), その雑草抑制効果も優れていた(Fig. 3)。刈取ならびにその後のクローバ被度の低下により生じた裸地には雑草が侵入した。6月の刈取後に夏雑草の発生が増加し, 8, 10月の刈取後に冬雑草の発生が増加した(Table 3)。冬雑草がクローバに与える影響は少なかったが, イネ科夏雑草の庇陰によってクローバは著しく衰退した。多年生のアレチギシギシ, ネズミムギは刈取にかかわらず増加した。以上の結果から, 本地方ではラジノ型がその雑草制圧力, 被覆の持続性において被覆資材として適すること, その優占植生を維持するための管理法としてはスプリングフラッシュ期以外の刈取を避けるべきであることが示唆された。
著者
汪 光煕 三浦 励一 草薙 得一
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-65, 1995-07-28
被引用文献数
4

ミズアオイは東アジアに分布する抽水性の一年草であり, 水田, 水路, 多湿地などに多い。本研究では中国の黒龍江省, 吉林省, 遼寧省と日本の福井県三方郡の自然集団および京都大学付属農場の人工集団で, 水田雑草ミズアオイの花の形態と送粉様式について検討した。ミズアオイの花には雄蕊が6個ある。5個は小さくて葯は黄色, 1個は大きくて葯は花被片と同じ青紫色である。両方とも稔性のある花粉をつくる。その花には鏡像二型性が見られる。即ち, 花から見て大雄蕊が右側, 柱頭は左側に位置するもの(L型)と, 反対に大雄蕊が左側, 柱頭は右側に位置するもの(R型)がある。L型の花とR型の花は花序の各分枝上に交互に付く。主要な訪花昆虫は二ホンミツバチ, クマバチおよびマルハナバチ類であった。これらのハチが訪花した場合, 大雄蕊と柱頭は昆虫の体の左右対称の位置に接触する。従って, 異花受粉は異型花の間で起こりやすく, 同型花の間では起こりにくいことが予想される。また, 大雄蕊が青紫色をしているのは他殖用の花粉を昆虫に食料として持ち去られないための適応であると考えられる。黄色い小雄蕊は昆虫を引きつける目印であり, また, ミズアオイの花には蜜腺がないので, 小雄蕊の花粉は昆虫への報酬でもある。さらに, 昆虫が訪れない場合でも, 柱頭の上方に位置する小雄蕊によって自花受粉で種子をつくることができる。ミズアオイ集団内の虫媒による異花受粉は隣花受粉(同株同花序異花受粉, 同株異花序受粉)と他家受粉(同集団異株受粉)との様式がある。同一個体上に同時に異なる型の花が咲いた場合は隣花受粉が起こり得るので, ミズアオイの花の鏡像二型性は自殖回避の機構としては不完全である。しかし, 一個体に同時に咲く花の数が多くない場合には有効に他殖を促進する可能性がある。
著者
千坂 英雄 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.185-190, 1978-12-25

水稲不耕起直播栽培における雑草の出芽の経過を耕起直播と比較した。(1)タイヌビエ・コナギ・キガシグサ等の一年生雑草は,種子が耕土表層に分布する不耕起直播で多発し,それぞれ耕起直播の3〜5倍,4倍,40倍であった。(2)タイヌビエは,耕起の有無にかかわらず,乾田の全期間にわたって不整一に出芽が継続した。(3)ミズガヤツリの場合,不耕起直播では耕起によるストローンの切断がないため,増殖源である塊茎群数は耕起直播の約1/2であり,これが主因となって塊茎由来の親株が少なかった。しかし出芽期が早いので,生育・分株形成が盛んで,結局耕起直播に比べ乾田期間の生育株数と繁茂量は著しく多くなった。(4)クログワイの出芽と増殖は,耕起の有無によってほとんど変らなかった。