著者
藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.95-99, 2019 (Released:2019-12-07)
参考文献数
45
著者
猪谷 富雄 藤田 琢也 玉置 雅彦 黒柳 正典 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.316-323, 1999-12-01
参考文献数
8

タデ科, カタバミ科, アカザ科, シュウカイドウ科, バショウ科の体内に比較的高濃度のシュウ酸塩を含むことが知られている植物種(以後, 本論文ではシュウ酸植物と記す)計53種を供試し, それらの乾燥葉から滲出する物質のレタス初期生育に対するアレロパシー活性をサンドイッチ(SW)法によって検定した。SW法では供試植物乾燥葉を0.5%寒天中に包理後, 検定植物の種子をその上に播種し, 20℃で3日後の幼根長と下胚軸長を測定し, その伸長程度(対照区比)によって供試植物のアレロパシー活性を評価した。その結果, ショウ酸植物にはアレロパシー活性に関して大きな種間差異がみられ, 特にカタバミ科とシュウカイドウ科Begonia属において最も活性が強く, ほとんどの種で乾燥葉からの滲出物がレタスの幼根伸長を90%以上抑制した。次に, アレロパシー検定に供試したシュウ酸植物のうち18種の総シュウ酸含量(水溶性および不溶性を含む)を測定し, 上記SW法における幼根長の対照区比との関係を検討した。その結果, シュウ酸植物の総シュウ酸含量には大きな種間差異が存在し, かつほとんどの植物種については総シュウ酸含量とそのレタスの幼根伸長の対照区比との間には有意な負の相関が認められた。従ってシュウ酸植物の示すアレロバシー活性の一因は体内のシュウ酸であることが示唆された。一方, 数種のシュウ酸植物については上記の相関関係から逸脱するものも存在したので, これら植物のアレロパシー活性には, 植物体中の総シュウ酸の化学的形態の違いや他の抑制物質が関与している可能性が推察された。
著者
藤井 義晴 濱野 満子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.49-54, 2003 (Released:2003-06-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

アレロパシー(Allelopathy)は他感作用ともいい,植物が個体外に放出する化学物質が,他の生物個体に何らかの作用を起こす現象を意味し,作用物質を他感物質(Allelochemical)という.アレロパシーの作用経路の中で,生気象学と関係が深い揮発性物質による作用に関する研究を紹介する.1)植物から放出される揮発性物質を,常温吸着法により同定・定量する方法を開発した.この手法を用いて,農耕地を構成する植物から放出される揮発性物質を検定した.2)バイオアッセイによって植物由来の揮発性物質を検定する「ディッシュパック法」を開発した.3)ディッシュパック法によって,クレオメの作用成分としてメチルイソチオシアネートを同定した.4)ミレニアムプロジェクトの一環として,ヒバやヒノキ等の間伐材を原料にした樹木由来成分に含まれる生理活性物質を分析し,農業に利用する研究を,産官学共同研究として実施している.
著者
荒谷 博 関谷 敦 平舘 俊太郎 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究. 別号, 講演会講演要旨 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.176-177, 2004-04-16

トリュフ(Tuber melanosporum)は子実体が発生する条件が整うとその地上部には"ブリュレ(焼け跡地)"と呼ばれる草の生えないパッチが観察されるようになる。同様の抑草現象は野生種のハナホウキタケ、ニンギョウタケなどにも観察され、化学物質を放出することにより現象を発現していることが考えられる。しかし、キノコのアレロパシーを利用した雑草抑制の試みはほとんどなされておらず、作用成分もほとんど明らかにされていない。そこで、キノコ子実体のアレロパシー活性を昨年に引き続きサンドイッチ法を用いて検定した。また、サンドイッチ法により、活性が強かったブナシメジ(Hipsizigus marmoreus)については、菌体が多く含まれる廃菌床についても成長阻害活性を調査した。
著者
鄭 矩 藤井 義晴 吉崎 真司 小堀 洋美
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.475-479, 2010 (Released:2011-12-07)
参考文献数
20

オニグルミのアレロパシー活性がニセアカシアの初期生長に及ぼす効果を明らかにするために,混植実験と根圏土壌法による検定を行った。混植実験において,オニグルミとニセアカシアを混植した区では,対照区に比べて,ニセアカシアの乾物重量が約50% に低下した。また, 混植区の土壌は,1.2%×10-6g g-1 のユグロンが含まれ,ニセアカシアの初期生長を50% 阻害するユグロンの量とほぼ一致した。根圏土壌法による検定では,ニセアカシアの初期生長は根域土壌よりも根圏土壌で阻害される傾向を示し,根に近い土壌ほど生長が低下することから,根から出るユグロンが作用していることが強く示唆された。以上のことから,オニグルミが生育する土壌では,オニグルミの根のアレロパシー活性により,ニセアカシアの初期生長を阻害する可能性があることがわかった。
著者
藤井 義晴 古河 衛 早川 嘉彦 菅原 和夫 渋谷 知子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.36-42, 1991-04-08
被引用文献数
10

薬用植物、および香料植物の一部から、他感作用候補植物を、レタスに対する発芽・生育試験とフザリウムに対する抗菌性試験(胞子発芽と菌糸伸長試験)から検索した。その結果、作物や一般雑草よりも高い頻度で、活性の強い他感作用候補植物が得られた。 植物発芽・生育阻害活性も抗菌性もともに最も強かったのは、キンポウゲ科のオキナグサとセンニンソウであった。これらは著名た毒草としてすでに知られており、とくにセンニンソウは牧草地に侵入する有害雑草として良く知られている。 これに次ぐものとして、オオグルマ、フレンチタイム、アンミビスナーガ、ゲッケイジュがあった。ユリ科のニラとニンニクは、水抽出液の抗菌性が、カンゾウとクスリウコンはメタノール抽出液の抗菌性が強かったが、植物生育阻害作用は小さかった。逆にヨウシュヤマゴボウ、ニッケイ、ペパーミントは、抗菌性は小さかったが、植物の発芽・生育阻害が強かった。
著者
藤井 義晴
出版者
農業環境技術研究所
雑誌
農業環境技術研究所報告 (ISSN:09119450)
巻号頁・発行日
no.10, pp.p115-218, 1994-03
被引用文献数
13

植物対植物のアレロパシーについて調べた。揮発性物質の寄与は小さかった。葉から溶脱する物質の作用の検定法として,ロジスチック生長曲線による解析法,サンドイッチ法を開発し,新たにムクナ,クズ,サトイモ等に活性を見出した。根から滲出する物質による作用の検定法として,階段栽培法,根滲出液循環栽培法,無影日長栽培法を開発し,ムクナ,シロザ,エンバクの作用を検証した。アレロパシーのみを特異的に検定するプラントボックス法を開発し,既報の植物を検定した結果,ムクナ,Vicia属,Avena属等の活性が強かった。圃場規模の検定法として根圏仕切り置換栽培法を開発し,ムクナがイネ科以外の雑草を抑制することを検証した。有力な候補植物ムクナ(Mucuna pruriens)の作用物質として,L-DOPA(L-3, 4- dihydroxyphenylalanine)を同定した。L-DOPAは葉・根の生体重の約1%も含まれていた。その作用機作はLipoxygenaseの阻害であるとの仮説を提示した。
著者
服部 眞幸 平舘 俊太郎 荒谷 博 西原 英治 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.169-183, 2004-09-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
53
被引用文献数
7 4

新たに侵入した雑草が繁殖・定着する要因の1つとして, アレロパシーによる化学生態的優位性が考えられる。そこで, 日本の在来雑草種18科38種, すでに国内に定着している帰化雑草種12科30種, 輸入飼料に混入されていた雑草種8科18種, および今後, 侵入が予想されるブラジル産雑草種17科55種, 合計25科129種を対象に, 根から滲出するアレロパシー物質の活性を検定した。その結果, 平均すると, 必ずしも外来雑草のアレロパシー活性が既に定着している雑草よりも高いとは言えなかったが, ブラジルの主要雑草の中にはアレロパシー活性が高いものが見られた。また, イチビのように, 輸入飼料由来ならびに定着種の両者でもアレロパシー活性の強いものと, シロザのように輸入飼料由来とブラジル由来の個体のアレロパシー活性が強く, すでにわが国に定着している種には, 活性の弱い個体もあったことから, 同一種であっても強いアレロパシー活性を有した個体の侵入が考えられる。以上のことから, 化学生態的侵略性の高い雑草が侵入・定着した場合, 日本の植生攪乱の一因となる可能性が示唆された。
著者
Syeda Shahnaz PARVEZ Mohammad Masud PARVEZ 藤井 義晴 弦間 洋
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.243-249, 2003-12-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
36

バングラデシュ, インド, パキスタン, フィリピン, タイの5力国から収集したタマリンド成熟果実の成分分析を行った.可食部の水分含量は約20%で, 乾物100g当たり粗タンパク質は8.5~9.1g, 脂質は2.7~3.1g, 繊維は2.8~3.4g, 炭水化物は82.1~82.69, カロリーは1, 539~1, 581KJの範囲を示し, 全糖質含量は46.5~58.79であった.構成無機質のうち, 高含量はMg (25.6~30.2mg) とNa (23.8~28.9mg) で, Cu (0.8~1.2mg) とZn (0.8~0.9mg) の含量は低かった.活性酸素ラジカル消去能 (ORAC) と総フェノール含量を計測したところ, それぞれ乾物1g当たりTrolox当量で59.1~66.3μmol, 乾物100g当たり没食子酸当量で626.6~664.0mgを示した.両者間には強い相関が見られた (>0.99, 1%レベル) ことから, 高フェノール含量のタマリンド果実は, 活性酸素ラジカルによる生体の酸化障害から保護する機能を有すると思われた.このようにタマリンド果実はミネラル補給, さらには高フェノール含量に基づく抗酸化性など貴重な食料資源であることが明らかにされた.本報はタマリンド, とくに東南アジア周辺国で収集した果実の抗酸化性に言及した初めての報告であり, 今後, タマリンド果実あるいはその加工食品が, 生体調節機能をもつ機能性食品として利用されるであろう.
著者
前田 浩子 奥村 恒 中村 りり 野村 卓史 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.147-154, 2019 (Released:2020-01-28)
参考文献数
15

効果的な雑草管理能力や雑草抑制効果がある被覆植物を選択するために,多年生被覆植物として,クリーピングタイム(Thymus serpyllum),シバザクラ(Phlox subulata),ヒメイワダレソウ(Phyla nodiflora),マツバギク(Lampranthus spectabilis),リュウノヒゲ(Ophiopogon japonicus),ペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)およびヤブラン(Liriope muscari)の7種を選定し,5年間の圃場試験を実施した。被覆植物の被度,乗算優占度,発生した雑草の乾物重,雑草の種数および種類を比較した結果,日本在来の多年生被覆植物であるヤブランは,いずれの評価項目においても2年目以降5年目まで最も良好な雑草抑制効果を示した。また,ヤブランはアレロパシー活性評価試験においても強い植物生育阻害活性を示した。ヤブランは葉による光の遮蔽等の影響で雑草の発生が抑制されると考えられるが,プロリンに構造が類似したアゼチジン-2-カルボン酸がヤブランの根や葉に多量に含まれており,これも雑草の発生抑制に関与していることが示唆された。