著者
中野 尚夫 石田 喜久男 村岡 一彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.31, pp.19-20, 1990-07-31

アマランサスは、タンパク質含量の高い作物で、最近ではアレルギー性疾患回避にも効果があると注目されている。アマランサスはヒユ科ヒユ属の総称で、穀実用として注目されているAmaranthus hypochondriacus. A. caudatus, A. cruentusはいずれも中南米起源の作物と考えられている。中南米では、これら3種が紀元前5000〜3000年頃から栽培され、スペイン人が新大陸に上陸した16世紀にはトウモロコシ、インゲンマメとならんで主要な食糧であった。その後19世紀初頭にインド、アフリカに伝えられ、日本にも明治初頭に渡来し、東北地方において救荒作物として利用されていた。今日では、中南米での栽培は少なく、主要な栽培地はインド北部、ネパールとなっている。岡山農試では、水田転作作物探索の一環として1989年からその栽培利用の可能性を検討している。本報告では、1989年における栽培特性の検討結果を紹介する。
著者
竹沢 尚一郎 坂井 信三 仲谷 英夫 中野 尚夫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、本研究の最終年度でもあり、夏に研究会を開催して、本年度の研究計画と研究報告書についての打ち合わせをおこなった。本年度は、竹沢と仲谷の二人が、西アフリカ・マリ共和国での現地調査をおこなった。これには、現地研究協力者であるマリ文化省文化財保護局の局長テレバ・トゴラと、同文化財保護課長ママドゥ・シセも参加し、マリ東部のガオ地区で、2003年11月下旬から2004年1月下旬まで約72日間考古学発掘調査に従事した。これにより、西アフリカのサバンナ地帯で初めて、総石造りの建造物が出土した。規模については、20mX28mまで拡大して発掘をおこなったが、全容を解明するには程遠いほど巨大な建造物である。また時代的には、2年前におこなったガオ地区のサネ遺跡の土器との比較により、西暦7世紀から11世紀と推測される。この建造物に用いられた石については、いまだ特定はできていないが、ガオ近郊には産出されないものであることは確実であり、遠方より運ばれたものであることは確実である。ガオ地区は、中世のアラビア語文献によれば、ガーナ王国と並んで最初の黒人王国が成立した土地であり、今回の発見は、規模や材料、時代などの点から、西アフリカで発掘された最古の王宮の跡である可能性がきわめて高い。今回の成果は、規模、材料、時期のいずれの点においても、これまで西アフリカで実施された考古学発掘の成果としては類を見ないものであり、これまで謎とされていた時代の西アフリカ史の解明に大きく貢献するはずである。また、社会組織の成層化という社会人類学の重要な課題に対しても、大きな貢献をなすものと考えられる。
著者
中野 尚夫 杉本 真一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.357-363, 1999-09-05
参考文献数
18
被引用文献数
8

緑肥作物の立毛中に不耕起播種した水稲の苗立ちを検討した. 前作緑肥作物は1994年と1995年がレンゲ, クリムソンクローバ, ヘアリーベッチ, アルサイククローバで, 1996年と1997年がこれらとアルファルファであった. いずれの年にも裸地に播種する対照区を設けた. 水稲の播種期は1994年が4月15日, 4月28日と5月13日, 1995年が5月8日, 1996年が4月23日, 4月30日と5月9日, 1997年が4月16日, 4月25日と5月12日で, 供試品種は吉備の華であった. 前作緑肥作物の被陰度は, 地際相対照度でヘアリーベッチ, アルサイククローバ, アルファルファが5〜10%, レンゲ, クリムソンクローバが約20%であった. 水稲の出芽開始は播種期が早いほど早く, 緑肥作物立毛播種で遅く, 被陰度の大きいアルサイククローバ, ヘアリーベッチで顕著に遅かった. 最終出芽数はレンゲ, クリムソンクローバでは裸地よりやや少なかったが, 裸地と同様に播種期による差がなかった. これに対し被陰度の大きい緑肥作物での最終出芽率は裸地に比べ少ないばかりでなく, 播種期が早いと少なくなった. この出芽の違いは, 前作緑肥作物の被陰度に応じて地温が低下したことに基づくと考えられた. さらに, 被陰度の大きい緑肥作物のもとではその立毛中と, 被陰の解消した入水後に枯死する水稲個体がみられた. このため, 被陰度の大きい前作緑肥作物立毛中への不耕起播種では出芽の低下, 枯死の両面から水稲の苗立ちが著しく低下した. これに対しレンゲ, クリムソンクローバの場合には裸地での苗立ちと大差なかった.
著者
中野 尚夫 河本 恭一 石田 喜久男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.40-46, 2001-03-05
参考文献数
16
被引用文献数
3

1990年にタマホマレとトヨシロメ,1991年と1992年にこれらに銀大豆を加えた3品種を水田転換畑において,35cm×36cm(正方形播)と70cm×18cm(長方形播)の1株2個体(1990,1991,1992年)あるいは同1個体(1990年)で栽培し,栽植様式と収量および収量構成要素の関係を節位別の分校発生と分校の生育から検討した.播種日は1990年が6月20日,1991年と1992年が6月22日であった.いずれの品種,1株個体数においても正方形播は長方形播に比べ,分校数が多くて総節数,花数が多く,さらに結莢率が高く,莢数,収量が多い傾向であった.主茎節位別にみると,3品種とも正方形播では長方形播に比べ,第5,6節の分校発生個体数率が高く,さらにタマホマレの第3〜6節,トヨシロメの第4〜6節,銀大豆の第5,6節では分枝の節数も多かった.開花前の7月26日の地際相対照度についてみると,正方形播長方形播に比べ,条間では低かったが,株際ではかえって高かった.開花後の8月12日においても,正方形播と長方形播の差は小さかったが,同様の傾向がみられた.また,正方形播では長方形播に比べ,主茎長が短く,茎径が太く,比葉面積が小さかった.これらのことから,正方形播では長方形播より群落が早く密閉状態になるが,相互遮蔽は小さいと推察され,この相互遮蔽の小さいことによって下位の分枝数が多く,それら分技の節数が多くなったと考えられた.さらに正方形播では,この有利な光条件がその後も継続し,下位節の結莢率も高くなり,莢数,収量が多くなったと考えられた.
著者
中野 尚夫 平田 清則 大西 政夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.175-180, 2004-06-05
被引用文献数
1

一辺15,20,25,30,35,40cmの正方形播(1本仕立て,44.4,25.0,16.0,11.1,8.2,6.3株/m^2)のもとで,ダイズ(品種タマホマレ)における栽植密度と生育・収量の関係を光受容の変化から検討した.m^2当たり茎重は,m^2当たり分枝数と高い相関関係(r=0.74^<**>)にあり,栽植密度が高いほど高かった.分枝の発生率は,その発生する節位置の相対照度が35%程度以上では照度による差がみられなかったが,それより低い照度では照度の低下に伴って低下した.また,分枝の発生した節の相対照度が10%程度より低いと分枝の生存率が急速に低下し,5%程度の相対照度では約60%の生存率となり,個体当たりの分枝数は栽植密度が高いほど少なく,15cm区の分枝数は40cm区の約1/3になった.このためm^2当たり茎重は,密植に伴って増加程度が小さくなった.子実収量は,11.1株/m^2で最も高く,それより密植,あるいはそれより疎植になるに伴って低下する傾向にあった.子実収量はm^2当たり着莢数と有意な相関関係にあった.m^2当たり総節数,同着花数は,同分枝数と0.99^<**>あるいは0.93^<**>の高い相関関係にあり,密植ほど多かった.m^2当たり着莢数は,結莢率が節位置の相対照度が20%程度以下でその低下に伴って低下して密植ほど低かったため,栽植密度に伴う増加が同総節数,同着花数に比べ一層抑えられ,さらに一莢粒数も密植ほど少ない傾向にあった.以上から密植では分枝,節数,着花数に加え,結莢率,一莢粒数も低下するため,20cm区や15cm区のような密植では25cm区や30cm区よりもかえって子実収量が低い傾向になったと考えられた.
著者
中野 尚夫 氏平 洋二 石田 喜久男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.34, pp.16-23, 1993-08-02
被引用文献数
1

山陽地域の主要品種タマホマレを供試し, 1982年と1986年に6月上旬から7月下旬まで1週間隔で播種し, 播種期と分枝数・総節数・稔実莢数および収量の関係を検討した.播種期が早いと主茎節数が多かったが, 6月下旬から7月上旬の播種における差は小さかった.分枝数は, 播種期が遅いほど少なく, 特に7月にはいってからの播種ではその減少が大きかった.総節数, 稔実莢数とも分枝数の少ない遅播きで少なかった.収量は稔実莢数と高い相関関係にあり, 稔実莢数は総節数, 分枝数に支配された.このため収量は, 早播きほど多かった.しかし, 早い播種では下位節分枝の枯死率が高い, 結莢率が低いなどにみられるように過繁茂が懸念された.一方結実期間の短い遅播きでは百粒重の低下も懸念された.したがって, 当地域のタマホマレ栽培における播種適期は, 6月下旬から7月極上旬と判断された.
著者
中野 尚夫 水島 嗣雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.29, pp.44-45, 1988-08-01

岡山県の山間地域は, 河岸の小規模な段丘水田, 背後の傾斜畑, それらをかこむ山林から成っている。このような平野部と著しく異なる立地条件は, 作物選択や栽培法にこの地域個有のものを成立させた。その代表的なものは, 薪炭林や杉・桧植林地においてそれらの再利用が可能になるまでの期間に行われた焼畑の利用とミツマタ栽培であろう。この農法は決して生産性の高いものではなかったが, 自然の再生力を利用した合理的なものであったと思われる。しかし, 暖房燃料が炭から石油に変換した昭和30年代半葉を境にこの農法は一気に消滅した。本報告では, この焼畑について行った聞き取り調査の結果を紹介する。