著者
関 勝寿 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.181, pp.137-144,a3, 1996-02-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
18

土に長期的に栄養水が侵入すると, 土の間隙中の土壌微生物と微生物がつくり出す代謝生成物が水の通り道を塞ぐ現象, いわゆるclogging (目詰まり) 現象が生じ, 土の透水性が低下することが知られている. そこで, 栄養水飽和浸透条件下での透水係数の長期変動を調べ, 深さ0~1cmの層において, 118日間でほぼ2オーダー透水係数が低下することを示した.透水係数低下の第一の原因は, 糸状菌の長い菌糸と微生物の代謝生成物による間隙の閉塞であり, 第二の原因は, グルコースから発生したメタンガスが118日間に表層に最大14%の気相率相当量が溶解せず気泡となって間隙中に閉塞されたことによるものであると説明された.
著者
朱 敦堯 中野 政詩 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.194, pp.269-276,a2, 1998

土壌物理性が違うの二つ試料, 砂とYolo粘土を用いて, 斜面における水移動の数値シミュレーションを行った。第一, 湛水開始時間の数値解と準解析解を比較した。湛水開始時間は, 降雨強度の増加とともに指数関数的減少する。土の浸潤能は, 傾斜角に大きく依存し, 特に傾斜角30°になると, 斜面と平面の浸潤能が著しい相違である。<BR>第二は, 土壌物理性と斜面水流の関係を調べた。砂の場合には, 斜面と平行のフラックス成分は斜面水流に大きい影響を与る。湛水開始の際, 砂の場合は, 浸潤前線の後方で飽和層と不飽和層を明確に区別できた, しかし, この砂の特徴は, Yolo粘土で見つけなかった。第三には, 傾斜角と降雨強度はフラックスの大きさ及び屈折を決定する最も重要な二つ要因であることが分かった。土の表面での最大屈折角は, 傾斜角によって直線に増加し, ただし, 降雨強度が大きいと, 最大屈折角は小さくなる。
著者
中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.103-104,a1, 1997-02-01 (Released:2011-08-11)

大学院の重点化の社会的意義が次世代の生活様式の加速度的向上に即するためのものであり, したがって重点化された大学院での教育・研究が社会の形態や事業にそのまま直結するものを目指していると分析して, 大学院で教育を受ける者にとってのメリットの幾つかを挙げ, 大学院の側から進学希望者および進学者に期待する準備や研さんの姿勢について述べた。
著者
高木 東 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.313-318,a2, 1989-04-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24

農地斜面上の水の移動, すなわち降雨によって生じる表面流および雨裂内の流れについて述べ, さらにそれらの流れによって生じる土壌の流亡すなわち面状侵食および雨裂侵食について, それらの現象を記述する基礎方程式を中心に水理・水文学的な解説を行った。次に, それらを踏まえて, 耕うん, 等高線栽培, 有機物の施用そしてマルチングなど農地における土壌の管理が土壌の流亡の制御に果たす役割について解説した。
著者
中野 政詩 宮崎 毅 田渕 俊雄
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.525-530,a1, 1989-06-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14

フィールドで土中の物質移動をみると, 特異的に,(1) 長く続く大間隙を通る移動,(2) 斜面における土中の移動,(3) 深い土層中の移動,(4) 表面に亀裂が発達した土中の移動, こうしたものをよく知ることが必要である。その特徴として, 大間隙中の移動は極めて早い速度をもち,深い所の土塊中の水分を素早く補給する。斜面では水流の方向が独特な向きをとり,成層土では各土層でその方向がまちまちになる。深い土層中では,通年鉛直下向の移動を起こし地下水を涵養する。また,亀裂が形成された土地では,亀裂に囲まれた土塊中で個々に移動が異なる。こうした点を解説して,講座のまとめとした。
著者
粕渕 辰昭 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.237-241,a2, 1989-03-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

土中の物質移動が,太陽放射を源とするエネルギの移動と深く結びついていることに焦点を当てて解説した。まず,地表におけるエネルギの流れとそれに連携した土中の熱伝達の特徴を述べ,重力とは逆の方向である下から上に向う流れが重要であることを指摘した。次に,土中におけるエネルギ移動と物質移動との相互関係について,水分不飽和領域における温度勾配下の水移動の特徴を述べた。さらに,視野を拡大し地球レベルでの土中のエネルギと物質移動を生物圏の中で位置づけ,今後の農地管理にもこの視点が必要であることを述べた。
著者
石田 朋靖 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.421-428,a1, 1989-05-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
27

従来, 植物に対する土中水の有効度は, pFに代表される土中水の状態によって静的に判断されることが多かった。しかし, 植物の生長は植物体自身の水分状態によって決まるものであり, その水分状態は根に向かう水移動と大気の蒸散能との相互関係の中で動的に決定されている。本章では土壌, 植物, 大気を連続的にとらえた系 (SPAC) における水移動について解説し, 系内の各部位での水分変化の特徴を述べ, こうした水移動の中で決まってくる植物の水分状態と植物生長, あるいは生産物の品質との関係についても若干の説明を加えた。
著者
宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1225-1230,a2, 1988-12-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7

土壌中の微生物の生態について, ごく初歩的な知識をまとめた。土壌による水の浄化機能など, 水循環や物質循環の中での土壌微生物の役割の重要性は, 従来から指摘されては来たが, そこにはどのようなメカニズムが働いているかについてわかりやすい説明はなかなか見出し難い。本講では, 土壌微生物の基礎知識をでき得る限り簡略に記述し, 後半において微生物の生存と増殖が間隙サイズのレベルでどのように生じているかを示す代表的なモデルとして, モルツのモデルとマクラーレンのモデルを解説した。微生物の消長と物質移動の現象も質量保存則に基づいて記述できることを示した点に, 本講の特徴がある。
著者
遅沢 省子 久保田 徹 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.135-142,a2, 1989-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1

土壌のガス組成は, 植物根や微生物の呼吸や物理・化学反応により, 分子状酸素が消費される一方で二酸化炭素, および条件により硫化水素, メタンなどのガス状物質が生成するため大気とは異なり, また場所により不均一である。そして, ガス成分の濃度勾配を小さくする向きに生じるガス拡散, および風や雨水の浸透, 気圧の変動などによって生じるガスの対流型移動 (マス・フロー) のために, 土壌ガスはたえず動き, その組成は変動している。この2つの型の移動が土壌間隙の幾何に依存する機作は異なり, マス・フローは間隙径分布に, 拡散は拡散に有効な連続間隙の総体積と屈曲度に強く依存する。土壌-大気間のガス交換への寄与は後者が大きいと考えられる。また, 液相中のガス移動や土壌におけるガスの測定法についても述べた。
著者
中野 政詩 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.47-52,a1, 1989-01-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
19

土壌中の移動物質すなわち土中ガス, 化学種等の発生源として, また化学種や水の貯留や放出を司る物体として, 土中の有機物質を位置づけ, 特に粗大有機物の分解のプロセスについて解説した。まず, 定性的なその分解の様子を概説し, 各種有機物質がその存在量に比例して分解速度を決定し, 新規投入量とのバランスの中で蓄積と消失が定量的に決められる。そして, 有機物質の蓄積が連続投与によって, やがて平衡に至り, 適切な投与量の決定が可能となることを示した。最後に有機物質の蓄積が, 団粒の形成をもたらし, 土壌化の促進を促すが, その様子について若干の事例を挙げて説明した。
著者
中野 政詩 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.693-697,a2, 1988-07-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

土中の物質移動を最適に制御することにより, 基盤整備, 農地開発, 土壌防災, 環境保全, 汚水処理, 水資源管理等の農業土木事業の効用が向上することを述べ, 必要な知識として土の実艨の理解に加えて, 移動則および保存則の適用にもとつく水の移動, 化学物質やガスの移動, さらに熱の移動と体積変化との相関を知ることの重要性を述べ, 有機物の分解や微生物活動の影響を指摘する。また, 物質移動の理解は, 土の内部での物質の分布形態を知ることと共に, 土の境界での物質の出入りを知ることが土の物質移動論と現実的な技術問題との接点として重要であると述べ, 境界の形や性質に関心と理解を向けることを強調した。
著者
溝口 勝 藤井 克己 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.903-909,a2, 1988-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
19

降雨あるいは潅漑などによる水の貯留後に, 重力に逆らって生じる土中水の上方移動の現象について蒸発を中心に解説した。圃場を含めた不飽和土中でみられる水の上方移動には, 土壌表面からの蒸発, 植物を通しての蒸散および土の凍結がある。これらの現象は一見全く関係がなさそうに見えるが, 前回の講座で解説された水分移動式の右辺に吸込み項を付け加えることで整理できる。本講座ではこれらの土中水の上方移動現象をこの観点から見直し, 不飽和土中で生じる水の移動を統一的に理解できるよう, やさしく解説した。
著者
塩沢 昌 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.791-797,a2, 1988-08-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4

水が土中を地下水面に向って降下浸透するときのメカニズムについて, 水移動の基礎式の物理的性格を考察した。すなわち, 土の上層部における水移動は, サクション勾配の影響が大きい流れであり, 水分分布をなだらかに直線化するように降下するものである。一方, 土の深層部では, むしろ重力による水の流れが支配的になり, 重力項だけを用いて水分分布の解析の容易にできるものとなる。そして, 地下水面への水の到達は, 水移動における排水過程として解析することができ, それは土中水分を均一化する水の流れになる。こうして地下水涵養の物理的意義づけが明らかとなり, 砂丘地における実測と比較して検証された。
著者
川本 治 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.385-393, 2009-08-25

粘性土から成る農地斜面の長期安定問題における初生破壊解析を念頭に置いて,地すべり崩土の力学特性と変形の局所化に関する実測値を示した.不攪乱試料の圧密・排水三軸試験結果における中位のひずみ(軸ひずみ15%程度)では,せん断帯幅は微小亀裂に囲まれた粘土土塊の変形集中領域の幅として評価するのが適切であり,粒子径が重要な役割を果たす粒状体材料の場合とは異なる機構によってせん断帯が形成されると考えられた.この結果に基づいて田中による弾塑性有限要素モデルのパラメータ決定と三軸圧縮試験の有限要素解析を行った.浅層すべりの斜面中央部付近で採取された複数の試料の応力-ひずみ曲線は,過去の地すべり履歴を反映すると考えられる多様なパターンを示しており,有限要素解はこれらの供試体における平均的挙動を表現すると考えられた.