- 著者
-
中野 朋子
- 出版者
- (財)大阪市文化財協会
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本年度は、結髪師の南登美子氏とともに、大阪歴史博物館所蔵『御ぐしあげ』のうちの7種、つまり「水からやっこ」「まるわ」「三徳わげ」「たてひょうご」「ばひわげ」「よこひょうご」「やよい」の再現を実施、この再現で平成16年度からの再現数が22種となった。結髪再現に臨んでは、それぞれの髪型の特徴および結髪手順や技術的側面等に関する充分な協議を行い、途中、手直しの必要な箇所等についても随時確認・修正を行いつつ制作をすすめた。それらの再現過程はできる限り、デジタルビデオおよび写真による撮影をおこない、今後予定している風俗史研究の検証資料として蓄積した。また平成17年度までの再現作業によって確認できた技術的事項の整理と再検討はじめるとともに、ポーラ文化研究所所蔵「容顔美艶考」等の調査を行ない、結髪と連関性の高い「化粧」の問題について考察を深めた。3月には、結髪再現の検証と基礎研究の成果報告を兼ねて「日本髪の源流を探る-江戸時代の大坂の結髪再現-」を開催し、自髪を使用した場合の結髪の手順等を確認するとともに、江戸時代の大坂の結髪文化の豊かさを広く知ってもらう機会とし、70人を超える観覧者の参加を得るとともに、自髪の結髪工程を確認しながらの撮影を行うことができた。なお、本研究の遂行過程において調査・検討を加えた大坂関連の錦絵から得た新知見を論文としてまとめ発表した(「錦絵に描かれたアットゥシ-大坂へもたらされたアイヌ風俗-」(『大阪歴史博物館研究紀要』第5号、2006年)。今後は、本研究で再現された結髪雛形および結髪工程の記録を博物館において積極的に公開することを予定している(平成19年秋頃)。また、蓄積された調査結果をもとに、江戸時代後期の大坂風俗に関して再検討を加え、成果を論文として報告していく。