著者
高橋 規郎 大石 和佳 丹羽 保晴 並河 徹 稲葉 俊哉
出版者
公益財団法人放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

原爆被爆者等を対象とした疫学調査は循環器系疾患のリスクが放射線被曝線量に相関して上昇することを示している。本計画では、この事象を動物実験で検証し、循環器疾患リスクがどのようにして生じるかの作用機序を明らかにすることを目的とした。放射線を照射した脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いた実験では、寿命の有意な短縮、および、脳出血等の重篤度に顕著なる亢進が認められた。一方、高血圧自然発症ラット(SHR)では、収縮期血圧値は線量に比例して高値を示した。また、種々の血液マーカーにも線量に比例した増減が観察された。我々の実験が作用機序の解明に重要な役割を果たすことが示された。
著者
高橋 恵子 多賀 正尊 伊藤 玲子 丹羽 保晴 林 雄三 中地 敬 楠 洋一郎 濱谷 清裕
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.324, 2010 (Released:2010-12-01)

原爆被爆者成人甲状腺乳頭がんの分子生物学的解析より、RET/PTC再配列と放射線量との有意な関連に加えて、遺伝子変異が未同定、即ちRET、NTRK1、BRAFおよびRAS遺伝子に変異を持たない甲状腺乳頭がん症例も放射線量に関係することが見出された。このことは、RET/PTC遺伝子再配列以外にも、放射線関連成人甲状腺乳頭発がんに関与する遺伝子変異が存在することを示唆する。 我々は遺伝子再配列型の癌遺伝子に焦点をおき、遺伝子変異が未同定の甲状腺乳頭がん症例に生じている遺伝子変異の解析を行った。その結果、甲状腺乳頭がんではまだ報告されていない新しい型の遺伝子再配列、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子の再配列を初めて見出した。被曝症例19例中10例にALK遺伝子再配列を見出したが、非被曝症例6例中にはいずれにもこの変異は検出されなかった。現在、ALK再配列のパートナー遺伝子を同定中である。これらの結果より、放射線関連成人甲状腺乳頭発がんにおいて、RET/PTC再配列および ALK再配列を主とする染色体再配列が重要な役割を担うことが示唆される。