著者
久保 加津代 西島 芳子 曲田 清維
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

温暖地域(九州・四国地方)の,地域に根ざした伝統的な住生活法について調査した結果,つぎの点があきらかになった。1.掃き出しの開口部や3本溝などを活用して開放的な間取をもち,高床に風を通し,深い軒の出をもって日照を遮っている,ハード面での工夫だけではなく,夏には,窓を開け,植栽や軒先に仕込んだ日よけ障子の活用や打ち水などのソフト面でも「気を用いて」「ていねいに」暮らしている。2.縁側やミセやショウギやオキザなどを活用して,夕涼みやひなたぼっこなどを楽しみ,地域に根ざした住生活は地域コミュニティをも育んできた。3.世代間による環境適応力の違いは大きく,子どもや若者の季節感・住環境適応力低下傾向は著しい。地域差もみられる。4.世代間交流の視点で,「庚申庵伝統文化こども教室」「ふれあいセンターもやい」の活動や家庭科の授業やケーブル・テレビについて,具体的に検討することができた。異世代間交流の可能性は大きい。5.高等学校家庭科『家庭総合』の教科書は,地域に根ざした住生活や健康的で持続可能な住生活についての記述が豊富になりはじめている。地域に根ざした,健康で持続可能な住生活をするために,ゆっくり,ていねいに日常生活を営むことの重要性を世代間で交流していきたい。
著者
久保 加津代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.325-333, 2004-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

以上のことをまとめるとつぎのようにいえる.1. 住生活関連記事の分量は決して多くはなかったが, 当時の『家の光』には農村の生活改善の核である住生活改善の実態が読みとれる記事がある.数は少ないが平面図もある.初期には「啓蒙」が中心であったが, 1930年頃から「実践」がみられるようになる.2. 農村の住生活改善は, (1) 個人の活動, (2) 共同による活動, (3) 組合による活動または組合の協力による活動の3つのパターンで進められている.個人の活動については1933年以後に多くみられ, 男性による寄稿が多く, 能率的になった事例が客観的に述べられていることが特徴である.共同による活動については, 女性たちが協力して講演会や台所批評会を開いたり, 台所改善講などにとりくんだ記事が多く, 個人の活動と比べると, 改善の成果・感想が伝わってくるものが多い.組合による活動または組合の協力による活動は, 産業組合および信用組合や県農業会などが関係して住宅改善を行った例である.また産業組合による共同浴場は, 健康管理意識も高め, 教育機能や村民の情報交流機能まで果たし, 共同作業場の設置や農業経営の向上, 住宅の居住性向上にもつながっている.都市部で進んだ住生活改善の影響もあって, 昭和時代初期には農村部でも台所改善を中心に住生活の改善が進んだ.『家の光』は『婦人之友』『主婦之友』などの女性雑誌と比べると, 女性自身の寄稿が少なく内容も客観的事実を述べるものにとどまっているが, 貧困のなかで協力しあって生活を衛生化・能率化したエネルギーと, そして限定された階層の限定された活動であったとしても, 戦後に展開される農家の住生活改善のモデルになったであろう点は評価できる.
著者
久保 加津代
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.325-333, 2004-04-15
被引用文献数
1

以上のことをまとめるとつぎのようにいえる.1.住生活関連記事の分量は決して多くはなかったが,当時の『家の光』には農村の生活改善の核である住生活改善の実態が読みとれる記事がある.数は少ないが平面図もある.初期には「啓蒙」が中心であったが,1930年頃から「実践」がみられるようになる.2.農村の住生活改善は,(1)個人の活動,(2)共同による活動,(3)組合による活動または組合の協力による活動の3つのパターンで進められている.個人の活動については1933年以後に多くみられ,男性による寄稿が多く,能率的になった事例が客観的に述べられていることが特徴である.共同による活動については,女性たちが協力して講演会や台所批評会を開いたり,台所改善講などにとりくんだ記事が多く,個人の活動と比べると,改善の成果・感想が伝わってくるものが多い.組合による活動または組合の協力による活動は,産業組合および信用組合や県農業会などが関係して住宅改善を行った例である.また産業組合による共同浴場は,健康管理意識も高め,教育機能や村民の情報交流機能まで果たし,共同作業場の設置や農業経営の向上,住宅の居住性向上にもつながっている.都市部で連んだ住生活改善の影響もあって,昭和時代初期には農村部でも台所改善を中心に住生活の改善が進んだ.『家の光』は『婦人之友』『主婦之友』などの女性雑誌と比べると,女性自身の寄稿が少なく内容も客観的事実を述べるものにとどまっているが,貧困のなかで協力しあって生活を衛生化・能率化したエネルギーと,そして限定された階層の限定された活動であったとしても,戦後に展開される農家の住生活改善のモデルになったであろう点は評価できる.