- 著者
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久保 加津代
- 出版者
- 社団法人日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.4, pp.325-333, 2004-04-15
- 被引用文献数
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1
以上のことをまとめるとつぎのようにいえる.1.住生活関連記事の分量は決して多くはなかったが,当時の『家の光』には農村の生活改善の核である住生活改善の実態が読みとれる記事がある.数は少ないが平面図もある.初期には「啓蒙」が中心であったが,1930年頃から「実践」がみられるようになる.2.農村の住生活改善は,(1)個人の活動,(2)共同による活動,(3)組合による活動または組合の協力による活動の3つのパターンで進められている.個人の活動については1933年以後に多くみられ,男性による寄稿が多く,能率的になった事例が客観的に述べられていることが特徴である.共同による活動については,女性たちが協力して講演会や台所批評会を開いたり,台所改善講などにとりくんだ記事が多く,個人の活動と比べると,改善の成果・感想が伝わってくるものが多い.組合による活動または組合の協力による活動は,産業組合および信用組合や県農業会などが関係して住宅改善を行った例である.また産業組合による共同浴場は,健康管理意識も高め,教育機能や村民の情報交流機能まで果たし,共同作業場の設置や農業経営の向上,住宅の居住性向上にもつながっている.都市部で連んだ住生活改善の影響もあって,昭和時代初期には農村部でも台所改善を中心に住生活の改善が進んだ.『家の光』は『婦人之友』『主婦之友』などの女性雑誌と比べると,女性自身の寄稿が少なく内容も客観的事実を述べるものにとどまっているが,貧困のなかで協力しあって生活を衛生化・能率化したエネルギーと,そして限定された階層の限定された活動であったとしても,戦後に展開される農家の住生活改善のモデルになったであろう点は評価できる.