著者
近藤 金助 久保 正徳 板東 和夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.12, no.11, pp.1077-1087, 1936

(1) 我が國の河海湖沼に饒産するイセエビ,クルマエビ,ホツカイエビ,及びマエビについて一般を知り,前二者に併せてシラサエビの生鮮なるものについて雌雄別に,又季節別に定量分析を行つた.又ホツカイエビに就ては市販の罐詰肉について定量した.其の結果を要記すれば次の通りである.<br> (a) 三種の蝦に於て可食肉量の最も多いのはクルマエビの55%,次はシラサエビの50%にして最も少なきはイセエビの40%であつた.蓋し後者の甲殻肢節が特に大であるからである.<br> (b) 可食肉量の割合は同一種の蝦にありては雌雄別,又は大小別による相違はなかつた.<br> (c) イセエビにありては初夏のものは雌雄共に水分84%に達し,蛋白量は14%にすぎずして新鮮肉100gの保有する利用性熱量は僅かに60Calsであつた 然るに秋季のものは水分減少して78%となり,蛋白は20%に増加し更に脂肪,及びグリコーゲンも亦増加した結果,新鮮肉100gが保有する利用性熱量も亦増加して83~84Cals.となつた.<br> (d) クルマエビにありては初夏のものも亦秋季のものも水分78~79%,蛋白20%であつて,薪鮮肉100gが保有する利用性熱量は82~83Cals.であつた.<br> (e) シラサエビにありては水分82%,蛋白量16%であつて,新鮮肉100gが保有する利用性熱量は約70Cals.にすぎなかつた.<br> (f) ホツカイエビ罐詰にありては一罐内の可食肉量は約110~120gであつて,蛋白が31~32g利用性熱量が約135Cals.保有されて居つた.<br> (2) 蟹及び蝦肉は共に全固形成分の85~92%が蛋白であつて,脂肪,グリコーゲン及び灰分は微量にすぎない.然しながら此の少量成分たる脂肪並びにグリコーゲンは季節によつて稍々規則正しく増減して居るが故に,其の消長は食昧に對して相當なる影響を與へるものと考へられる.<br> (3) 蝦肉蛋白の窒素の形態を定量し其の結果から新鮮肉中に存在するアルギーニン,ヒスチヂン,リジン,及びシスチンの量を算出表示した.<br> (4) 蝦肉蛋白の窒素の形態を定量した結果から知り得た事項を要記すれば次の通りである.<br> (a) 鹽基態のアミノ酸は夏季のものよりも秋季のものに於て多い.<br> (b) 就中アルギーニン,リジン,及びシスチンの含量に於て然りである.<br> (c) ヒユーミン態窒素は秋季のものに於て増加して居る.<br> (d) 夏秋を通じて雌肉蛋白は雄肉蛋白に比して,アルギーニンとリジンの含量は少ないがヒスチヂンの含量は多い.<br> (5) 蝦肉蛋白の窒素の形態が雌雄により,又季節によつて變動するのは生體蛋白の彷徨變異性の自然的表現であることを論證し,蝦肉及び蟹肉が種類別に産地別に又季節別に差別的特味を有する反面に於て又共通的食味を有することを指摘し,其の原因のうち肉蛋白が關與する限り後者の原因に關しては蛋白基成分が共通して居るが爲めであることを論述し,併せて差別的特味の原因を肉蛋白の組成のうちに見出し得ることを暗示した.<br> 本報告のうちシラサエビ,クルマエビ,及びイセエビに關する實驗の全部は久保が行ひ,ホツカイエビに關する實驗の大部は板東が行つたのである.
著者
林 友直 高野 忠 市川 満 橋本 正之 鳥海 道彦 斉藤 宏 小坂 勝 栄元 雅彦 藤久保 正徳
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
no.62, pp.p1-102, 1989-03

臼田宇宙空間観測所の64mφアンテナ設備は1984年10月に竣工し, 人工惑星「さきがけ」・「すいせい」のハレー彗星観測や同人工惑星を利用した太陽オカルテーション観測をはじめ, TDRSを用いたスペースVLBI実験等にも利用され, 数々の成果をもたらしている。さらに, 1989年8月の「ボイジャー2」海王星オカルテーション観測実験や1990年の「MUSES-A」追尾運用に使用される予定である。臼田局周辺の気候は, 強風によるアンテナ運用停止や大雨による伝送条件の低下等, 局の運用に少なからぬ影響を及ぼす。特に, 「MUSES-A」で用いられるX帯における影響は, 現用のS帯におけるそれより遥かに大きく, より深刻である。これらの気象条件の把握と解析のために, 気象観測システムはきわめて有用かつ必要不可欠なものである。臼田観測所における気象観測は1983年に始まり, 恒久的な『気象観測装置』を1987年3月に設置した。そして, 翌1988年にはこれまでの経験を元に, コンピュータシステムを中心とする『気象データ処理部』を付加し, 全体として『気象観測システム』として機能するようにした。この『気象観測システム』は, (1)雨量(雪量), (2)気温, (3)気圧, (4)風速, (5)風向及び(6)湿度(将来計画)の各データを収集し, その処理を行うものである。このシステムの基本コンセプトは, 次の点にある。「(a)臼田観測所でデータ収集からデータ整理までできるほか, 相模原キャンパスでもモニタ可能にする, (b)気象統計データを帳表形式に整理できる, (c)臼田局の運用管理情報の一つとして利用できるようなデータ表示を行う, (d)軌道決定のための大気補正データとして利用できる道を開く」。今回, 開発した気象データ処理システムは, 各パーソナル・コンピューターにおける処理を最適分散させ, 各機能をフルに生かせるシステム構成とする一方, 将来の拡張性も考慮した。そして, パーソナル・コンピュータを中核とするマルチタスク処理機能を基本に, 現行計算機システムではまれなオペレート・ガイド・システムやデータファイルの自動ハンドリング機構等を導入した省力化システムとした。また, 処理システムの各項目を階層構造のメニュー内容に登録し, メニュー選択時に「次にどの操作をすればよいか」等の基本操作方法を前もって表示するほか, 誤入力に対しても十分なプロテクトと丁寧なメッセージを用意し, 初心者でも運用できるシステムとした。さらに, 自動運用を推進するため, データファイルの自動ハンドリング機構を導入した。この機構では, データファイルの確保・削除等の領域管理をはじめ, ファイル管理まで全自動化した。また, データ取得しながら, メニュー選択によりフロッピーディスクヘデータ退避できるようなマルチタスク処理機能も有している。本報告書では, 『気象観測システム』の概要を述べると共に, 操作手引書としても使用できるように操作例を交えながら紹介する。資料番号: SA0166276000