著者
久保田 広
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.10, pp.410-414, 1963-10-01

レーザの発達につれて光のcoherencyという問題がとりあげられてきた.coherencyというのは直訳すれば可干渉性ということである.しかし光というものはマックスウェルの微分方程式の解として与えられ,この微分方程式は線型であるから,その解の重ね合せもまた解である.これを干渉というならば,どのような光でも完全に可干渉のはずであり,干渉性をうんぬんするということはおかしい.しかし実際には同一光源をほぼ同時に出た光でなければ干渉縞は観測されず,同一光源でも時間を隔って出た二つの光は,その時間に比例して可干渉性が悪くなるという実験事実がある.これはどのように説明されるかをのべ,これを応用した二三の測定法の例をあげてみよう.
著者
久保田 広志
出版者
秋田大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ポリグルタミン病は、特定のタンパク質中のポリグルタミン鎖が遺伝的変異により伸長し、構造異常により凝集を起こすのにともなって、神経細胞死を引き起こす疾患である。ポリグルタミン病には原因タンパク質により異なる症状を示すが、その具体例として、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、球脊髄性筋萎縮症などが知られている。しかしながら、なぜポリグルタミンタンパク質の凝集過程で神経細胞を障害するのか、なぜ原因タンパク質の違いによって異なる種類の神経細胞が障害を受けるのかなど、その本質は今もなお不明なままである。本研究では、ポリグルタミンのコンフォメーション異常と神経細胞毒性との関係を明らかにすることにより、ポリグルタミン病の発症メカニズムの本質解明をめざした。このため、ポリグルタミンタンパク質の細胞内における凝集過程を、蛍光ライブイメージング技術を中心として解析し、タンパク質凝集をともなう別の神経変成疾患である筋萎縮性側索硬化症の原因タンパク質、変異SOD1の凝集過程と比較した。その結果、昨年度までに、ポリグルタミンリーピートをもったハンチントン病原因蛋白質ハンチンチンの凝集状態は、ポリグルタミンのみの凝集状態と大きく異なることが示唆された。具体的には、ポリグルタミンの凝集は不可逆なのに対し、変異SOD1のそれは可逆性であった。そこで、その原因を調べるため、免疫沈降法による可溶性画分の結合タンパク質の解析を行ったところ、ポリグルタミンに結合しているタンパク質は、変異SOD1に結合しているタンパク質に比べて、種類が少ないか、あるいは、量的に少ないものと考えられた。この結合タンパク質の違いが、細胞内における凝集の可逆性に違いをもたらすのかもしれない。