- 著者
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久居 宣夫
- 出版者
- 国立科学博物館
- 雑誌
- 自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.9-19, 1975-12
1. 東京都港区の自然教育園において, 1973年5月〜1975年5月の2年間に18回のヒキガエルの生態調査を実施した。調査は, 指切断法によって標識をし, 体重, 体長, 口幅などの測定後放逐し, 同一個体の追跡によって成長を調べた。2. 各調査時における体重ヒストグラムと, 同一個体の追跡調査によって, ヒキガエルの成長は以下のように明らかになった。0才5月下旬体重0.05g, 体長0.9cm8月中旬体重9±5g, 体長4.0±0.8cm10月上旬体重25±12g, 体長5.9±1.1cm1才5月上旬体重36±16g, 体長7.0±0.9cm10月下旬体重129±35g, 体長10.7±1.Ocm2才5月中旬体重141±32g, 体長11.2±1.1cm雌雄の性別による成長の差は, 陸上にあがってから2年間では認められなかったが, 産卵期での体重の差は, 雌の方が雄よりも80〜100g重かった。3. ヒキガエルの体重, 体長, 口幅のそれぞれの相対成長は, 1974年5月の場合, 次の式で表わされる。体重-体長 : Y=0.109X^<2.92>(Xは体長, Yは体重)体重-口幅 : Y=2.180X^<3.04>(Xは口幅, Yは体重)体長-口幅 : Y=2.815X^<1.03>(Xは口幅, Yは体長)これらの相対成長は季節による変化がなく, また, 雌雄, 未成熟個体と成熟個体による差異も認められなかった。4. 雄個体の場合, 多くは1才の秋(上陸後約17〜18カ月)に性成熟し, 翌春の産卵期には出現する。しかし, 雌個体が性成熟するのは, 雄個体より少なくてもさらに1年後になるものと推定される。