著者
久枝 光 中村 好男 久野 譜也 福永 哲夫 村岡 功
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.345-355, 1996-04-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究では1) レジスタンストレーニングにおける高速度運動が, トレーニング後の運動速度に与える影響を明らかにすること, および, 2) トレーニングでの運動速度の差異が筋の肥大に与える影響を明らかにすることを目的とし, 健常な一般人に対して, 週4回8週間の肘関節屈曲トレーニングを行った.トレーニングには一定負荷を用い, 急速な力発揮を伴う高速度運動によるトレーニング (Type R) と, 低速度運動によるトレーニング (Type S) の2種類を行った.トレーニングに用いた運動速度の差異がトレーニング効果に与える影響を明らかにするために, 一定負荷のもとにおこなう肘関節屈曲の運動速度, 肘関節屈曲の等速性筋力および上腕屈筋群の筋横断面積を検討した.その結果, Type Rは高速度域 (300deg/s) での等速性筋力を有意に増加させなかった.一方, 一定負荷のもとに行う運動速度の増加率はType Rにおいて高い傾向がみられた.これらの結果より, 急速な力発揮を伴う高速度運動によるトレーニングは同様式の運動速度を増加させるが, 運動様式が異なる高速度域の等速性筋力を必ずしも増加させないことが示唆された.さらに, 筋横断面積の増加率はType Rにおいて有意に高値を示した.このことから, 低速度運動に比べ急速な力発揮を伴う高速度運動は, 8週間のトレーニングにおいて, より筋の肥大を起こしやすいということが示唆された.