著者
湯浅 景元 福永 哲夫
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.36-41, 1987-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2

全身にわたる皮下脂肪厚を測定し, その分布パターンを明らかにした研究は今のところみられていない.本研究では, 2名の成人男子を対象にして, 超音波診断装置 (Bモードlinearタイプ) を用いてほぼ全身の皮下脂肪厚を測定し, その分布パターンを明らかにすることにした.本研究によって得られた結果は次のようであった.1) 体幹で皮下脂肪が厚い箇所は, 臍を中心とした腹部中央と側腹から腰部外側にかけての部分であった.2) 体幹で皮下脂肪が薄い箇所は, 胸部上方の部分であった.3) 体肢では大腿や上腕のように中枢に近いところにある体節で, かつ中枢に近づくほど皮下脂肪は厚かった.4) 以上のことから, 体幹では皮下脂肪厚が幅広く分布しているのに対して, 体肢ではほぼ均一に分布する傾向のみられることが示唆できた.
著者
福永 哲夫
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, no.SpecialContribution2023, pp.2-12, 2023 (Released:2023-12-27)

本研究の目的は、元体育大学長(FT)の60 歳から80 歳までの20 年間の身体情報(体重、血圧、体調、歩数、貯筋運動等)の日間変動及び加齢変化を明らかにし、体調(関節痛や倦怠感等)と身体運動との関係を見ることである。その結果、1)精神的ストレス(配偶者死別や大学内トラブルなど)が血圧の上昇を伴う事が明らかであった。2)体重とウエスト周径囲との間には高い有意な相関関係が見られ、体重1 kg の増減はウエスト周径囲1 cm 増減を伴う事が示された。3)体重/ ウエスト周径囲比(除脂肪体重の指標)は加齢とともに減少する傾向を示したが、同年代の多くの日本人男性の平均値+ 2SDと高い値を示し、この高い除脂肪体重は日々の貯筋運動の効果によると思われた。4)64 歳~ 69 歳及び77 歳以降は関節痛等の体調不良日が少なくなったが、その理由として毎日のストレッチングの実施があげられた。5)高齢(80 歳)でも身体運動(ゴルフラウンド等)を続けられたのは、常に自らの身体情報に注意しながら実施したストレッチングや貯筋運動等、日常生活活動の工夫によるものと考えられた。
著者
福永 哲夫
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.24-28, 2001
参考文献数
9

宇宙などの無重力環境下では骨格筋に対する物理的負荷が低下し,筋が萎縮する.日本人宇宙飛行士の下肢筋量を宇宙飛行前後で比較すると,1日約1%の減少が観察された.とくに膝伸展筋及び足底屈筋といった抗重力筋にこの傾向が強かった.これらの筋は日常生活を営む上での主働筋であることを考えると,宇宙での長期滞在は宇宙飛行士の健康管理上重要な意味をもつ.そこで宇宙における筋萎縮を予防するための適切なカウンターメジャーの開発が期待される.我々はベッド安静中に膝伸展/股伸展をくりかえすレジスタンストレーニングを実施した結果,筋萎縮を防止することが確かめられた. 以上のことから,宇宙滞在は著しい筋萎縮(特に抗重力筋)を引き起こすこと,その予防策としてはレジスタンストレーニングが効果的であることが確かめられた.
著者
湯浅 景元 福永 哲夫
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.36-41, 1987-02-01
被引用文献数
4

全身にわたる皮下脂肪厚を測定し、その分布パターンを明らかにした研究は今のところみられていない. 本研究では,2名の成人男子を対象にして,超音波診断装置(Bモードlinearタイプ)を用いてほぼ全身の皮下脂肪厚を測定し,その分布パターンを明らかにすることにした. 本研究によって得られた結果は次のようであった. 1) 体幹で皮下脂肪が厚い箇所は,臍を中心とした腹部中央と側腹から腰部外側にかけての部分であった. 2) 体幹で皮下脂肪が薄い箇所は,胸部上方の部分であった. 3) 体肢では大腿や上腕のように中枢に近いところにある体節で,かつ中枢に近づくほど皮下脂肪は厚かった. 4)以上のことから,体幹では皮下脂肪厚が幅広く分布しているのに対して,体肢ではほぼ均一に分布する傾向のみられることが示唆できた.
著者
平山 邦明 杉崎 範英 加藤 えみか 金久 博昭 福永 哲夫 川上 泰雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-43, 2010 (Released:2010-07-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

The purpose of the present study was to examine the influence of tendon elasticity, muscle strength and muscle activities on the amount of mechanical work enhancement associated with a counter movement. Twenty-one athletes performed a unilateral maximal jump using only the ankle joint with (CMJ) and without (no-CMJ) a counter movement on a sledge apparatus. Mechanical work done by the ankle joint was calculated from the ground reaction force and ankle joint kinematic parameters, and the difference between CMJ and no-CMJ conditions (ΔWork) was determined. During the exercise, electromyographic (EMG) activities were recorded from the triceps surae muscles. The maximal isometric plantar flexion torque and Achilles tendon stiffness were also determined using a torque meter and ultrasonogram. No significant correlation was found between ΔWork and either tendon stiffness or the maximal torque. In addition, neither the difference between CMJ and no-CMJ in iEMG nor mEMG was correlated with ΔWork. On the other hand, ΔWork was significantly correlated with the integrated EMG during the braking phase (r=0.52, p<0.05) and both the integrated (r=0.55, p<0.01) and mean (r=0.53, p<0.05) EMG during the push-off phase of CMJ. These results suggest that individual differences in ΔWork are influenced not by differences in the mechanical properties of the muscle-tendon unit, but by the individuality of muscle activities during CMJ.
著者
石田 良恵 金久 博昭 福永 哲夫 西山 一行
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.18-24, 1987-02-01
被引用文献数
2 2

本研究では,身体組成,皮下脂肪厚および体肢組成における女子長距離ランナーの特徴について検討し,次のような結果を得た. 1. ランナーは一般女子より有意に少ない%Fat及び体脂肪量を示した. しかしBMには,ランナーと一般女子との間に有意な差が認められなかった. さらに競技成績のすぐれているランナーほど,%Fatは低くなる傾向がみられた. 2. 皮下脂肪厚は,上腕背部,背部,腹部中央,側腹部、大腿背部において,ランナーが一般女子より有意に薄い値を示した. 皮下脂肪厚におけるランナーと一般人の差は,体肢より体幹において大きく,その差が最も顕著にあらわれたのは側腹部であった. 3. 体肢の皮下脂肪断面積は,前腕,上腕,下腿,大腿のいずれの部位においても,ランナーが一般女子より有意に小さな値を示した. これに対し,筋断面積は下腿のみランナーが一般女子より有意に小さな値を示した. 4. 以上のように,女子長距離ランナーは一般女子に比較して、筋はほとんど発達していないものの,体脂肪が著しく少ない. これは主に有酸素性トレーニングの影響を反映したものであると結論した.
著者
沢井 史穂 実松 寛之 金久 博昭 角田 直也 福永 哲夫
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.93-105, 2004-02-01
被引用文献数
8 20

若年男女12名を対象として,携帯型表面筋電計を用い,日常生活の基本動作である姿勢保持・姿勢変換・体重移動動作計27種類について身体8部位から筋電図を導出し,各動作における筋ごとの活動水準を明らかにした.筋活動水準は,各動作で導出された筋電図の時間当たりの平均積分値(mEMG)を各筋の等尺性筋活動によるMVC発揮時の筋電図積分値で正規化して評価した.その結果,以下の知見が得られた.1.対象動作における時間当たりの平均活動水準は,ビラメ筋において一部40%MVCを越える動作があったものの,総じて低く,20〜30%MVC程度だった.2.動作間で各筋の活動水準を比較すると,速い速度での'階段昇り・降り'及び'坂の上り・下り'と'ジョギング'が総じてどの筋でも相対的に高い活動水準を示し,坂や階段を急いで上る(昇る)と,下肢の筋には自然歩行時の2〜3倍の負担がかかることが判明した.3.体幹の筋でぱ立ち座り',脊柱起立筋と大腿直筋でぱ中腰'と'立ちしゃがみ'の活動水準も相対的に高かった.また,腹直筋と大腿直筋は,階段と坂の上り下り動作において昇り(上り)より降り(下り)動作の方が筋の活動水準が高いという特徴が認められた.4.以上の結果は男女に共通するものであったが,筋活動水準の平均値は多くの動作で女性の方が有意に高く,同じ動作を行ったときの筋への負荷は女性の方が相対的に大きいと考えられた.5.本研究の結果から,日京生活の中での速い体重移動動作,特に勾配のある路面での移動動作は,下肢筋群の筋機能の維持・向上に有効な運動刺激となり得るのではないかと推察された.
著者
久保 啓太郎 川上 泰雄 金久 博昭 福永 哲夫
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.597-605, 1999-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
32
被引用文献数
4 5

The purpose of this study was to investigate the viscoelastic properties of tendon structures in humans. Elongation of the tendon and aponeurosis of medial gastrocnemius muscle (MG) was directly measured by ultrasonography, while subjects (N=12) performed ramp isometric plantar flexion up to the voluntary maximum, followed by a ramp relaxation. The relationship between estimated muscle force (Ff) and tendon elongation (dL) was fitted to a linear regression, the slope of which was defined as stiffness of the tendon structures. The hysteresis was calculated as the ratio of the area within the Ff-dL loop (elastic energy dissipated) to the area beneath the load portion of the curve (elastic energy input) . The resulting Ff-dL relationship was non-linear in form, as previously reported on animal and human tendons in vitro. The mean stiffness was 24.0±5.6 N/mm. However, there was a considerable inter-subject variability (15.8 to 36.8 N/mm) . The Young's modulus, i. e., the slope of the stress-strain curve, was 280 MPa, which tended to be lower than the previously reported values for human tendons. It was also found that the strain of the tendon structures was homogeneously distributed along its length. The mean hysteresis (energy dissipation) was 23.4±12.4%. However, again there was a considerable inter-subject variability (8.7 to 39.3%) . The present results indicated that the tendon structures of human MG was considerably compliant and its hysteresis was in accordance with previously reported values.
著者
久枝 光 中村 好男 久野 譜也 福永 哲夫 村岡 功
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.345-355, 1996-04-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究では1) レジスタンストレーニングにおける高速度運動が, トレーニング後の運動速度に与える影響を明らかにすること, および, 2) トレーニングでの運動速度の差異が筋の肥大に与える影響を明らかにすることを目的とし, 健常な一般人に対して, 週4回8週間の肘関節屈曲トレーニングを行った.トレーニングには一定負荷を用い, 急速な力発揮を伴う高速度運動によるトレーニング (Type R) と, 低速度運動によるトレーニング (Type S) の2種類を行った.トレーニングに用いた運動速度の差異がトレーニング効果に与える影響を明らかにするために, 一定負荷のもとにおこなう肘関節屈曲の運動速度, 肘関節屈曲の等速性筋力および上腕屈筋群の筋横断面積を検討した.その結果, Type Rは高速度域 (300deg/s) での等速性筋力を有意に増加させなかった.一方, 一定負荷のもとに行う運動速度の増加率はType Rにおいて高い傾向がみられた.これらの結果より, 急速な力発揮を伴う高速度運動によるトレーニングは同様式の運動速度を増加させるが, 運動様式が異なる高速度域の等速性筋力を必ずしも増加させないことが示唆された.さらに, 筋横断面積の増加率はType Rにおいて有意に高値を示した.このことから, 低速度運動に比べ急速な力発揮を伴う高速度運動は, 8週間のトレーニングにおいて, より筋の肥大を起こしやすいということが示唆された.
著者
角田 直也 金久 博昭 福永 哲夫 近藤 正勝 池川 繁樹
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.192-199, 1986-08-01 (Released:2010-12-10)
参考文献数
11
被引用文献数
11 3

本研究では, スポーツ選手89名 (短距離5名, 長距離10名, バレーボール8名, サッカー12名, ボート22名, スピードスケート16名, 相撲16名) と一般男子14名を対象に, 大腿四頭筋 (MQF) とそれを構成する大腿直筋 (RF) , 外側広筋 (VL) , 内側広筋 (VM) , 中間広筋 (VI) の各断面積における種目差および等尺性脚脚伸展力 (KES) との関係について検討し, 以下の結果を得た.1.MQF断面積は, 相撲 (110.18cm2) が最も高く, ついでスピードスケート (104.09cm2) , バレーボール (99.36cm2) , ボート (96.30cm2) , サッカー (89.92cm2) , 短距離 (86.34cm2) の順であり, 長距離 (73.86cm2) が最も低い値を示した.短距離および長距離を除く他の種目は, 一般人 (75.32cm2) より有意に高い値であった.2.MQFを構成する各断面積は, 相撲, バレーボール, スピードスケートが高い値を示し, 短距離と長距離は, 一般人とほぼ同様な値であった.3.大腿部の全筋断面積に対するMQF断面積の比率は, バレーボール (58.66%) およびボート (57.53%) が高く, サッカー (53.81%) が低い値を示した.しかし, MQF断面積比率は, いずれの種目も一般人との間に有意な差を示さなかった.4.MQF断面積に対する各構成筋群の断面積比率では, サッカーがRFで, スピードスケートがVLで, それぞれ一般人および他の種目より有意に高く, 種目によって特異的に発達する筋が認められた.5.MQF断面積とKESの間には, 0.1%水準で有意な相関関係が認められた.またMQFを構成する各断面積も, KESと0.1%水準で, 有意な相関関係にあり, 断面積が大きな筋ほど, 相関係係数が高くなる傾向が認められた.6.MQF断面積当りのKESは, サッカー (8.97N/cm2) が最も高く, バレーボール (7.10N/cm2) が最も低い値を示した.サッカーのMQF断面積当りのKESは, 一般人 (8.06N/cm2) および長距離 (7.31N/cm2) より5%水準で, バレーポールと相 (7.50N/cm2) より1%水準で, それぞれ有意に高い値であった.サッカーを除く他の種目間の値には, 有意な差は認められなかった.