著者
伊丹 君和 安田 寿彦 豊田 久美子 石田 英實 久留島 美紀子 藤田 きみゑ 田中 勝之 森脇 克巳
出版者
滋賀県立大学
雑誌
人間看護学研究 (ISSN:13492721)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.11-21, 2006-03-31
被引用文献数
2

背景 高齢化が進む中で人間の基本的な生活行動に看護支援が必要な人々が増加するとともに、看護者の腰痛も多発する状況にある。前報では、下肢の支持性が低下した人に対する移乗サポートロボットを用いての立ち上がり動作実験を行い、サポートを受ける人の身体負担が少ないロボットの動きについて検証を行った。その結果、深く前傾しロボットに伏臥して立ち上がる方法で筋疲労は比較的低く、胸部や腹部など身体に密着する側に改善を加えれば有効にロボット活用できる可能性が示唆された。研究目的 本研究では前報に引き続き、下肢の支持性が低下した人を対象とした移乗動作実験を行い、看護者が移乗動作をサポートする場合に、サポートを受ける側とサポートする側の両者にとって安全・安楽・自立を考慮した方法について検証することを目的とした。方法 1.対象および研究方法2004年10月、以下の実験および調査を実施した。被験者は、健康な平均的体格の20歳代の女子4名とした。実験は、看護現場で移乗方法として広く用いられている患者の両足の間に看護者の片足を入れて移乗する方法(「中足法」とする)と、前報で比較的有効な移乗サポートロボットであると検証されたロボットの動きに近い患者を前傾にして看護者の背部に乗せて移乗する方法(「背負い法」とする)を取り上げて移乗動作を行った。分析は、表面筋電図測定装置(SX230)を用いて各被験筋について筋積分値を算出して両者の比較を行った。また、同被験者に対して、安全・安楽・自立の観点から主観的反応調査を行った。2.倫理的配慮 対象は研究の趣旨に同意した者のみとし、研究参加に同意した後でも、いつでも辞退可能であること。また、プライバシーの保護についても文書と口頭で伝えた。結果 移乗サポートを受けた患者側の実験・調査結果をみると、中足法を用いた場合では、特に上肢に苦痛を感じており、動作時6秒間の筋積分値を比較しても上肢の筋活動が高いことが明らかとなった。一方、背負い法を用いた場合では、苦痛は比較的感じていないものの安全性・安心感・自立性の面では低値を示していた。また、移乗サポートを行った看護者側の結果では、中足法を用いた場合に腰部への負担が大きく、背負い法を用いた場合に上肢・下肢に負担が大きいことが認められた。結論 以上より、下肢の支持性が低下した人に対する移乗動作では、看護現場で広く行われている中足法はサポートを受ける側とサポートする側の両者において身体的負担は大きいものの、安全性・安心感・自立性の面からは有効であると考えられた。一方、背負い法では身体的負担は比較的低いものの、サポートを受ける患者側の安心感は低いことが明らかとなり、それぞれの移乗法の課題が示唆された。
著者
久留島 美紀子 本田 可奈子 豊田 久美子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
人間看護学研究 (ISSN:13492721)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.93-96, 2005-03-31

背景 近年、コンピュータの普及により、基礎看護教育において、マルチメディアの導入が盛んに行われるようになっている。我々は、DVカメラとパソコンを使用し、グループ単位で映像を撮影、編集し発表するグループワークを導入するにあたり、その操作方法についての説明会を実施した。目的 説明会・グループワークに関するアンケート調査を実施し、今後の説明会の内容構成の資料とする。方法 本学部一学年の学生62名を対象に、操作方法の説明会を行い、グループワーク終了後、説明会に関するアンケート調査を実施した。得られたデータは統計的に処理した。結果 説明会には33名(54.1%)の参加があった。教員2名で対応したことにより、学生からの質問を受けやすく、また進行状況に合わせての説明となったので、録画、編集ならびに保存の一連の作業を全て行うことができた。アンケートの結果、12名(36.4%)が説明内容を「わかりやすい」、19名(57.6%)が「ややわかりやすい」と回答した。また、説明会がグループワークでの作業に役立ったかについては、「役立った」20名(62.5%)、「やや役立った」12名(37.5%)であった。「あまり役立たなかった」、「役立たなかった」の回答はなかった。結論 説明会の参加者は33名と約半数であったが、学生から積極的な質問が出た。また、アンケート結果より、説明内容のわかりやすさ、グループワークの作業への有効性の両方で高い評価を受け、説明内容が妥当であったことが示された。
著者
石田 英實 伊丹 君和 荻原 直道 中務 真人 栗田 祐 久留島 美紀子 山崎 信寿 堤 定美 国松 豊
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

損傷、変形を受けた形態の復元は、人類学や考古学などで非常に重要である。しかし、その作業の主体はマニュアルであり、精度の高い修復には多くの時間と長い作業経験が不可欠であった。そのため本研究では計算機内に3次元構築した変形化石を,形態情報に基づいて客観的に修復.復元するシステムを開発した。特に本研究では、頭蓋骨など左右対称の骨について変形形態の復元手法を開発した。左右対称な骨では,正中矢状面内の特徴点は空間の同一平面上に、その他の左右で対になる特徴点は2点を結ぶ線分が正中矢状面と中点で垂直に交わる位置に、必ず存在する。しかし、土圧などにより化石が変形するとそのような幾何学的関係が失われる。このことに着目して客観的な変形復元を行う方法を考案した。具体的には、化石の3次元表面形状データと解剖学的特徴点の座標を取り込み、特徴点の位置を上述の幾何学的制約を満たすように移動させた。そして元座標から修正座標への非線形写像を薄板スプライン関数によって記述し、それを用いて化石の表面形状全体を変換することにより変形の除去を行った。本手法を応用して、中新世化石類人猿プロコンスルの変形頭蓋骨化石の復元を試み,光造形装置により立体モデルとして実空間に取り出した。化石化の過程で形態が受ける変形は,直方体が平行六面体になるような一種な変換ではなく、部位により歪みの大きさや方向が異なる非線形変換である。しかし、本手法によれば、そのような変形を受けている化石でも、その歪みを除去することができ、本手法の有効性を確認した。このように、CT等から得られるデジタル形状情報から仮想空間内で化石や骨の3次元構築を行い、それを計算機により数理的に復元して立体形状を作成するシステムは、生物の形態分析に必要不可欠な技術であり、当該分野の今後の発展に貢献するものとなる。