著者
亀井 敬泰
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.10, pp.1247-1253, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
26
被引用文献数
11

Recent reports suggest that peptide drugs such as insulin have the potential to serve as therapeutics in neurodegenerative diseases such as Alzheimer's disease. However, the transport of these drugs to the therapeutic target, the brain, is significantly hindered by the blood-brain barrier (BBB). Intranasal administration appears to be an ideal solution for drug delivery to the brain, bypassing the BBB, however the entry of peptide drugs into neuronal and epithelial cells in the olfactory mucosa remains low. In this study, we therefore examined whether intranasal coadministration of cell-penetrating peptides (CPPs) could improve nose-to-brain drug transport. In both mice and rats, we found that direct transport of insulin into the brain was significantly facilitated when coadministered with amphipathic CPP penetratin, and eventually insulin reached the deeper regions of the brain such as the hippocampus. In the mouse line senescence-accelerated mouse prone-8 (SAMP8), spatial learning tests demonstrated that long-term intranasal coadministration of insulin with penetratin improved mild memory loss in the early stages of dementia. In contrast, the severe cognitive dysfunction in the aged SAMP8 mice was preserved despite intranasal coadministration of insulin with penetratin. The immunohistological examination of the hippocampus suggested that enhanced nose-to-brain delivery of insulin had a partial neuroprotective effect but unexpectedly increased amyloid β plaque deposition. In conclusion, intranasal coadministration of insulin with CPPs has the potential to serve as a therapeutic for mild cognitive dysfunction. To identify suitable pharmacotherapy for dementia with severe pathology, further studies of nose-to-brain delivery of molecularly appropriate biopharmaceuticals are necessary.
著者
亀井 敬泰 武田 真莉子
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.287-299, 2013-09-25 (Released:2013-12-26)
参考文献数
46
被引用文献数
2 1

アルツハイマー病に代表される中枢疾患は、依然として治療満足度・薬剤貢献度の低い疾患群に分類されている。そのため、これら疾患に対して有用性の高い薬物治療法の確立が現在強く求められている。近年、中枢疾患治療として、内因性の脳内活性タンパク質や、治療部位をターゲットとするモノクローナル抗体などのバイオ薬物の利用に期待が集まっている。しかし、従来の投与法を介してバイオ薬物の脳内活性を得るためには、脳薬物移行性における最大の障壁である血液脳関門の透過性を著しく改善する、もしくは回避するストラテジーを確立する必要がある。本稿では、バイオ薬物の効率的脳内デリバリーを達成するためのさまざまなストラテジーについて、近年の研究例を紹介する。
著者
亀井 敬泰 武田 真莉子
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.360-367, 2019-11-25 (Released:2020-02-25)
参考文献数
37

末梢から脳への薬物輸送は血液脳関門により著しく制限されている。したがって認知症等の中枢疾患治療薬を開発するためには、脳への輸送障壁を突破する薬物送達法を構築しなければならない。そこで筆者らは、インスリンおよびGLP-1受容体作動薬等のペプチド薬物を新たな認知症治療候補薬物として用い、経鼻投与を介してそれら薬物を脳内に直接送達することを試みた。ペプチド薬物を細胞膜透過ペプチドと混合し経鼻投与することにより、鼻腔から脳への薬物輸送効率は飛躍的に増大した。さらに、本投与手法を介して脳に移行した薬物が、老化促進型認知症モデルマウスの認知機能障害を改善させることを明らかにした。本稿では、これらの研究成果を紹介する。
著者
亀井 敬泰 森下 真莉子
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.392-402, 2010 (Released:2010-11-05)
参考文献数
23

蛋白質やペプチドなどのバイオ薬物は,消化管粘膜における透過性の低さや不安定性の問題から注射剤による投与方法に制限されている.そこで筆者らは,cell-penetrating peptides(CPPs)と総称される細胞膜透過ペプチドを利用し,これらバイオ薬物の経口製剤化の実現に向けた研究を行っている.本稿では,まずCPPsを利用した近年のDDS研究動向をアップデートし,その後,蛋白質・ペプチドの消化管吸収改善におけるCPPsの応用性について筆者らの検討結果を紹介する.さらに,鼻粘膜吸収への応用性や吸収改善メカニズムについて展開し,バイオ薬物の非侵襲的投与経路におけるバイオアベイラビリティ改善ツールとしてのCPPsの有用性について示したい.
著者
亀井 敬泰 森下 真莉子
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug delivery system (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.392-402, 2010-08-06
参考文献数
23
被引用文献数
1

蛋白質やペプチドなどのバイオ薬物は,消化管粘膜における透過性の低さや不安定性の問題から注射剤による投与方法に制限されている.そこで筆者らは,cell-penetrating peptides(CPPs)と総称される細胞膜透過ペプチドを利用し,これらバイオ薬物の経口製剤化の実現に向けた研究を行っている.本稿では,まずCPPsを利用した近年のDDS研究動向をアップデートし,その後,蛋白質・ペプチドの消化管吸収改善におけるCPPsの応用性について筆者らの検討結果を紹介する.さらに,鼻粘膜吸収への応用性や吸収改善メカニズムについて展開し,バイオ薬物の非侵襲的投与経路におけるバイオアベイラビリティ改善ツールとしてのCPPsの有用性について示したい.