著者
曽宮 正晴 黒田 俊一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.35-43, 2016-01-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
30
被引用文献数
2

核酸医薬の本格的実用化には、生体内標的へ高効率で送達する安全なナノキャリアの開発が不可欠である。これまでは主にカチオン性キャリアが核酸医薬に使用されているが、電荷に由来する細胞毒性、生体内での動態と安定性に問題があった。一方で、非カチオン性キャリアは生体適合性が高く、生体内での動態や安定性も制御しやすく好ましいが、核酸分子の効率的な内封法の開発が必要であった。本稿では、各種の非カチオン性キャリアによる核酸医薬送達技術について紹介するとともに、最近筆者らが開発した簡便で高効率な非カチオン性リポソームへのsiRNA内封法とそれを用いたsiRNA送達技術を概説する。
著者
山添 康 永田 清
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.103-112, 2002-03-10 (Released:2008-12-26)
参考文献数
11

Genetic polymorphism of drug metabolizing enzymes such as cytochrome P450 influences individual drug efficacy and safy through the alteration of pharmacokinetics and disposition of drugs. Considerable amounts of data are now accumulated for allelic differences of various enzymes. Here, current understanding of genotype information is summarized for their use on individual optimization of drug therapy.
著者
中井 浩之
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.582-591, 2009 (Released:2010-02-16)
参考文献数
29

アデノ随伴ウイルス(AAV)は,その誕生から現代に至るまで,自然選択(natural selection)により非常にゆっくりと進化を遂げてきた.ところが,2002年に100種を超える血清型やバリアントが霊長類組織から単離されて以来,人為的操作により急速な進化を遂げつつある.ウイルスの構造が単純で外殻蛋白の遺伝的操作が容易であることから,合理的設計法(rational design)と定向進化法(directed evolution)を用いることにより,使用目的に最も適したカスタムメイドAAVベクターが容易に作成,使用できるようになってきている.
著者
位髙 啓史
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.27-34, 2020-01-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
33

mRNA医薬は、合成されたメッセンジャーRNA(mRNA)を体内に直接投与して、mRNAによってコードされたタンパク質を標的細胞で産生させることによって、治療または予防を行う医薬品である。mRNAは細胞外環境で極めて不安定な物質であり、これを医薬品として有効に用いるためには、DDSの果たす役割は大きい。世界的には脂質ナノ粒子(LNP)が最も多く用いられるが、肝標的投与以外の目的に対しては、まだ多くの課題が残る。筆者らが開発を進めるナノミセル型キャリアは、局所での組織浸透性・安全性に優れ、細胞機能制御を目的とするmRNA医薬投与に優れた性質をもつ。本稿では、このナノミセル型キャリアの概略、および最近の治療応用研究を紹介する。
著者
長谷川 宏之
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.54-62, 2022-01-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
17

バイオベンチャーは生命科学・医療の進展や製薬産業の隆興に「不可欠」な存在である。また、ベンチャーを取り巻くエコシステムの形成も重要である。ベンチャーキャピタル(VC)がベンチャーの起業を促し「不確実」な事業ステージに対しリスクマネーとして投資を行い、「不連続」な事業成長を支える。国内のベンチャーエコシステムにはさまざまなネガティブな「不」が存在するが、各プレイヤーはそれらの成長を期待し「不撓不屈」の意志で取り組んでいる。ベンチャーの起点となるアカデミアでの創薬研究は、目の前にいる患者を治したいという想いが原点であり、強いアンメット・メディカル・ニーズがある。VCとしてアカデミア技術の社会実装の動きに注目し「不」に応えていきたい。
著者
内田 哲也
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.29-36, 2010 (Released:2010-04-28)
参考文献数
29

現行のワクチンは主として病原体表面の蛋白に結合する抗体の産生を誘導することを目的としているため,インフルエンザウイルスのように表面抗原の異なるウイルス亜型および変異体に対しては奏功しにくい場合がある.筆者らはウイルス内部に高度に保存された蛋白を標的とし,宿主のウイルス感染細胞を破壊・除去することのできる細胞性免疫(CTL)を誘導するリポソームワクチンを開発した.CTL誘導型リポソームワクチンはインフルエンザウイルスだけでなく,表面の抗原を頻繁に変異させるウイルスに対するワクチンの開発への応用が期待される.
著者
井藤 彰
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.175-184, 2021-07-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
35

体外からの物理的刺激による遺伝子発現の遠隔操作は、がん治療や再生医療における遺伝子治療のための新しいアプローチを提供する。本稿では、磁性ナノ粒子の細胞局所での加温を利用して、外部からの磁気シグナルを遺伝子発現誘導のための細胞刺激に変換するといったナノテクノロジーと合成生物学を組み合わせた新しいアプローチについて紹介する。合成生物学的アプローチにより構築された温熱誘導型遺伝子発現システム(遺伝子回路)を標的細胞に導入し、さらに磁性ナノ粒子を標的細胞に導入して交流磁場を照射することで、磁性ナノ粒子の発熱を引き金とした目的遺伝子の発現誘導が可能となる。このアプローチは、時空間的な遺伝子発現の遠隔制御に基づく新しい遺伝子治療の開発に寄与すると考えられる。
著者
朝倉 こう子 濱﨑 俊光
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.235-245, 2015-07-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
10
著者
内田 智士
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.25-34, 2022-01-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
60

新型コロナウイルスのパンデミックは、医療、社会生活の「不」となったが、mRNAワクチンが速やかにこの「不」に応えた。一方で、日本のワクチン開発における遅れは、供給や経済的な面で「不」となっている。mRNAは、がん、遺伝性疾患の治療といった感染症予防ワクチン以外の分野でも有望であり、将来、少子高齢化社会の医療における「不」に応えるであろう。mRNAワクチン開発にDDS技術が重要な役割を果たしてきたことを鑑みると、日本には、独自のDDS技術を基盤として、今後のmRNAワクチン、医薬の開発に貢献できる余地が大いにある。本稿では、DDSに絞り、脂質や高分子を用いた人工mRNAナノ粒子の設計から、天然由来の細胞外小胞、naked mRNAの利用に至るまで、さまざまなシステムを紹介する。
著者
高橋 元次
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.433-441, 2007 (Released:2007-10-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

皮膚の生理学的性質を非侵襲的に測定する方法は皮膚計測工学の分野において数多く開発されてきた.それらは角層水分量,肌理,TEWL(経表皮水分蒸散量),皮膚色,血流,皮脂などであるが,最近,無侵襲で皮膚内部を観察する生体顕微鏡が開発され,物質の経皮吸収測定に活用されている.本稿では,in vivo共焦点ラマン顕微鏡と多光子顕微鏡を用いた測定例について述べる.
著者
青枝 大貴 石井 健
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.19-27, 2012-01-30 (Released:2012-04-27)
参考文献数
50

近年、自然免疫の分子機構が明らかになるにつれて、これまで経験則によって用いられていたワクチンやワクチンアジュバントの作用機序を科学的に理解することが可能になりつつある。本稿では、これまでに明らかになっている自然免疫応答による樹状細胞活性化とそれに伴う獲得免疫応答の過程、様々な疾患/病態に関与するTh1, Th2, Th17などの異なるCD4T細胞サブセットへの分化制御に自然免疫シグナルが及ぼす影響などについて概説し、抗原及びアジュバントを適切な樹状細胞に標的することによる次世代ワクチン開発の可能性について述べる。
著者
劉 一イ 森 健
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.142-148, 2022-03-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
48

無害な外来抗原と自己抗原に対する免疫寛容が破綻することで生じるアレルギーや自己免疫疾患は、近年患者数が増加している。その寛解に向けて、抗原に対する免疫寛容を誘導する免疫寛容療法が研究されてきた。免疫寛容療法では、抗原を効率的かつ特異的に目的の免疫細胞に送達した後、これらを寛容性の表現型や不応答などへと導く必要がある。その際、医薬品には、抗原に対する免疫反応の回避、免疫細胞の標的化、および免疫細胞の調節の3つの機能が求められる。本稿では、抗原特異的な免疫寛容を誘導する戦略と医薬品の設計について概説し、最近の研究の例を紹介するとともに、将来展望を述べる。
著者
民輪 英之 武田 真莉子
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.10-19, 2020-01-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
34
被引用文献数
1

難吸収性薬物の経粘膜送達を実現するための有用な戦略の1つとして、吸収促進剤の利用があげられる。この戦略に基づいた研究は1980年代から盛んに行われており、現在においてはペプチドやタンパク質といったバイオ薬物を対象として、吸収促進剤を含有する製剤の臨床試験が多数進行している。そのような中、2019年においては、Novo Nordisk A/Sが開発した世界初となる経口GLP-1(glucagon-like peptide-1)アナログ製剤が米国で承認されて話題となった。本製剤には、経口吸収促進剤サルカプロザートナトリウム(SNAC)が含有されている。バイオ医薬品産業がますます拡大すると予測されている今、注射剤以外の製剤オプションを提供できる吸収促進技術の開発に新たな注目が集まっている。そこで本稿では、特に経口バイオアベイラビリティの改善を目指した経粘膜吸収促進剤に焦点をあてて、現在の開発状況と安全性に関する最新の知見、そして今後の展望について紹介する。
著者
山口 淳
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.457-460, 2011 (Released:2012-01-17)
参考文献数
35

NGF(Nerve growth factor)は, 元来, 感覚神経や交感神経の発達・増殖や機能維持に必須の因子として同定された. 近年, NGFは炎症性・炎症性疼痛などの慢性疼痛に深く関わることが明らかとなってきた. NGFの阻害薬は, 既存の治療薬が効かない多くの患者に対する新規の治療法と期待されている.本概説では, NGFが疼痛を惹起するメカニズムやその治療応用についてこれまでの研究報告をまとめる.
著者
谷本 武史
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.15-21, 2010 (Released:2010-04-28)
参考文献数
18

従来のインフルエンザワクチンの接種経路は皮下・筋肉内のいずれかであり,その接種目的は,血清に液性免疫を誘導することによる重症化の予防に重点を置いたものである.これに対して感染防御を念頭に置いた場合,インフルエンザの感染経路は粘膜であることから,粘膜に免疫を誘導する手段として,経鼻・経口などのルートで粘膜へワクチンを接種し,局所免疫系を刺激することが有望と考えられる.そのなかでも,抗原の変性のリスクが少なく,接種抗原量を少なくできる経鼻吸収型ワクチンが注目されている.
著者
中瀬 生彦 高橋 有己
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.264-268, 2022-07-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
3
著者
東田 陽博
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.310-317, 2013-09-25 (Released:2013-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

オキシトシンは脳内に放出され、扁桃体をはじめとする「社会脳」領域を介して社会性行動、特に信頼を基礎とするあらゆる人間相互間活動に影響を与える。オキシトシン遺伝子や受容体、オキシトシンの脳内分泌を制御するCD38などがそれらの機能を司る。オキシトシンの鼻腔単回投与により健常人、自閉症スペクトラム障害者ともに、目を見るなどの対人関係行動の改善や促進があり、連続投与により、社会性障害症状の改善が報告されている。オキシトシンの末梢投与により、オキシトシンは脳脊髄液中や脳内へ移行すると思われるが、まだ十分な証拠はなく、移行の分子メカニズムを含めて、今後の研究が待たれる。
著者
松﨑 高志
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.252-253, 2015-07-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
1
著者
鈴木 亮 中川 哲彦 水口 裕之 今津 進 中西 剛 中川 晋作 中西 真人 早川 尭夫 真弓 忠範
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.87-93, 1998-03-10 (Released:2009-01-21)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

It is necessary to develop a more efficient gene expression system for gene therapy. A plasmid DNA, using eukaryoic or mammalian promoters, requires to localize into nuclear for gene expression. However, it is difficult to entry into nuclear, because nuclear pore size is not sufficient against the size of plasmid DNA. In this study, to develop a novel cytoplasmic gene expression system that dose not require nuclear localization of plasmid DNA to transcription, we examined the characterization of T7 cytoplasmic gene expression system. When co-transfected with pT7-IRES-L(luciferase expression plasmid containing T7 promoter) and T7 RNA polymerase into LLCMK2 cells, the gene expression of pT7-IRES-L was observed rapidly within 6hr after transfection and significant level of luciferase activity was detected. In contrast, pRSVL, a common plasmid DNA consist of luciferase expression plasmid and Rous sarcoma virus promoter, required 24-48hr for induction of gene expression. The gene expression level of the T7 system was enhanced with an increase in the amount of T7 RNA polymerase. To increase and prolong the gene expression, a plasmid DNA(pT7 AUTO-2) which contained the T7 RNA polymerase gene driven by the T7 promoter was co-transfected with pT7-IRES-L and T7 RNA polymerase. The plasmid DNA(pT7 AUTO-2) dose-dependently enhanced the luciferase gene expression by pT7-IRES-L and T7 RNA polymerase. In addition, we attempted to optimize the cytoplasmic gene expression system. The optimal ratio for co-transfection of pT7-IRES-L and pT7 AUTO-2 was 1 to 3 (mole ratio). These results suggest that T7 gene expression system may be useful in many gene therapies where transient but rapid efficient gene expression is required.