著者
藤原 宣夫 西廣 淳 佐藤 寿一 井本 郁子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.215-218, 2001-08
被引用文献数
2

ポーラスコンクリートを用いた河川護岸上に植生を成立・維持させる上で配慮すべき点を明らかにするために, 施工後2〜4年が経過したポーラスコンクリート河川護岸15箇所において, 成立している植生を調査し, 工法や護岸場所の条件などの影響を検討した。その結果, 頻繁に冠水する低水護岸では, ポーラスコンクリートの表面が平滑な場合には植物は生育していなかったが, 表面に凹凸構造があり土砂が堆積しやすい形状の場合には植物の生育が認められた。またほとんど冠水しない高水護岸では, 播種や張芝などの緑化工が施された場合のみ, 植生の成立が認められた。ポーラスコンクリート河川護岸に植生を成立させるためには, 対象箇所の冠水頻度に配慮して, 適切な形状の基盤, 緑化工法を選択する必要があることが示された。
著者
藤原 宣夫 山岸 裕 村中 重仁
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.26-31, 2002 (Released:2004-08-27)
参考文献数
7
被引用文献数
18 17

森林のCO2固定量については, 面積あたり固定量を原単位とした算定方法が明らかとされているが, 街路樹など森林形状を有しない都市緑化樹木によるCO2固定量の算定には, 樹木1本あたりの原単位の設定が必要と考えられる。本研究では, 原単位となる年間木質部乾重成長量の算定式を得るため, 都市緑化に多用される6樹種, 30本を対象に, 樹幹解析により成長過程を明らかにした。その結果, 樹高, 胸高直径と木質部乾燥重量には密接な関係があり, 回帰曲線が得られた。また, 樹高, 胸高直径と樹齢とは直線による回帰が可能であり, 両者の関係から, 特定の大きさの樹木1本の年間木質部乾重成長量を推定する式を作成した。この式からは, 各樹種の多様な大きさに対応した年間木質部乾重成長量が得られる。算定式の構造は次のとおりである。Y= a{(X+c)b-Xb} ; Y: 年間木質部乾重成長量(kg/y), X: 樹高(m) または胸高直径(cm), a, bおよびc: 樹種毎の定数
著者
松江 正彦 長濱 庸介 飯塚 康雄 村田 みゆき 藤原 宣夫
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.318-324, 2009 (Released:2010-07-27)
参考文献数
10
被引用文献数
6 11

温室効果ガスの主要な構成要素であるCO2 を減らすためには,排出量を減らすことと併せて,植物による吸収・固定を推進させることが必要である。都市緑化等の推進は,その対策の一つとして重要な役割を担っており,その効果を定量的に明らかにし,京都議定書の報告等にも活用可能な算出手法の開発が求められている。本研究では,木質部重量の増加量からCO2 の固定量が算定できることに着目し,我が国の街路樹や都市公園などに多用されている樹木の部位毎の乾燥重量測定・樹齢判読等を行い,胸高直径を基にした樹木1 本当たりの年間CO2 固定量の算定式の作成を試みることとした。これまでに,樹齢20 年前後の6 樹種を対象に同様の手法で研究・報告を行っているが,今回はその内の5 種に新たな1 種を加え,樹齢30 年から50 年前後の樹木を調査対象とし,先行研究のデータと合わせて解析した。その結果,樹齢50 年前後までを適応範囲とする年間木質部乾重成長量の算定式とそれを基にした年間CO2 固定量算定式を作成した。今後さらなる研究を進め,都市緑化樹木のCO2 吸収・固定効果を明らかにすることで,都市緑化の促進に貢献するものと考えられる。
著者
西廣 淳 川口 浩範 飯島 博 藤原 宣夫 鷲谷 いづみ
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 = Ecology and civil engineering (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.39-48, 2001-07-17
参考文献数
26
被引用文献数
7 16

アサザは絶滅危惧II類に分類される多年生の浮葉植物である.霞ケ浦は我が国におけるアサザの最大規模の自生地であった.しかし近年,霞ケ浦のアサザは急速に衰退していることがわかった.すなわち,1996年には34の局所個体群が確認され展葉範囲の総面積は99,497m<SUP>2</SUP>だったが,2000年には局所個体群数は14に,展葉範囲の総面積は10,081m<SUP>2</SUP>にまで減少していた.また1996年にみられた局所個体群のうち5つでは,異型花柱性植物としての健全な種子生産のために必要な複数の花型の開花が認められたが,2000年には複数の花型の開花が認められた局所個体群は1つのみになっており,この局所個体群以外ではほとんど種子が生産されていなかった.一方,1996年までは良好な種子生産がみられた局所個体群の近くの湖岸では,アサザの実生の出現が認められた.しかし,1999年にこれらの実生約2000個体に標識して生存を調査したところ,それら全てが死亡・消失しており,定着は認められなかった.アサザの幼株も見出されず,霞ケ浦のアサザ個体群では更新がまったく起こっていないことが示唆された.また2000年にも同じ場所で実生の調査を行ったところ,発芽量自体が激減していた.これは調査場所付近のアサザ局所個体群が1999年に消失し,種子が供給されなくなったためと考えられる.2000年に確認された実生は1998年以前に生産されて永続的土壌シードバンク中で生存していた種子が発芽したものと考えられ,同じことが毎年繰り返されれば,霞ケ浦のアサザの土壌シードバンクは無駄な発芽によって消費し尽くされることが予測された.
著者
百瀬 浩 舟久保 敏 藤原 宣夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
no.30, pp.429-435, 2002

栃木県の東荒川ダムにおいて、生物の生息場所創出を目的とした各種の環境整備を行い、その前後約6年間にわたる鳥類のモニタリングにより、ダム湖の環境整備が鳥類の生息状況に与えた変化を調べた。環境整備の内容は、4つのビオトープ池とこれらをつなぐ近自然型水路、そして湖面に設置した計4基の植栽人工浮島で、ビオトープ池群の周囲には樹林の植栽も行われた。整備前には疎林性鳥類が優占した整備地に、カワセミ、カワガラスなどの水鳥類が飛来して採餌や休息に利用したほか、多くの樹林性鳥類も出現するようになった。カワセミ、セキレイ類、カルガモなどの鳥類は、事例地内やその周囲で営巣するようになり、環境整備の効果が実証された。
著者
百瀬 浩 舟久 保敏 木部 直美 中村 圭吾 藤原 宣夫 田中 隆
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.45-53, 1998-10-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
4 5

A field survey was made on many artificially constructed Floating Islands in Japan in order to evaluate their function as habitat for birds such as nesting or resting site. We searched each island for birds' nesting activity and observed the behavior of birds on and near the island. We also collected plant samples and identified them to make the plant species list found on each island. Floating islands were classified into four basic types according to their structure and bird usage was conpared among these types. It was found that the island type B, in which the surface of the planting material was in lebel with the water furface, was suitable as the nesting place for the several water bird species, and all types of the islands were suitable as the resting place for the water birds.
著者
藤原 宣夫 田畑 正敏 井本 郁子 三瀬 章裕
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.601, pp.85-92, 1998-08-22 (Released:2010-08-24)
参考文献数
14

柳枝工施工部におけるヤナギ林の発達過程を推定することを目的とし, 矢作川において施工後の経過年数の異なる8箇所の柳枝工を対象に, 植物社会学的手法による植生調査を実施した. その結果, 3~5年経過では挿し木により導入されたカワヤナギが優占する高さ5m程度の低木林, 10年経過では高さ7mのカワヤナギが優占する低木林が認められた. 10数年経過ではアカメヤナギとジャヤナギが優占する高さ10m程度の高木林が認められ, この高木林は自然のヤナギ林と同様な構造を有していた. 高木林はカワヤナギ低木林が立地の乾燥化に伴い次第に変化したものと考えられ, この変化には河川水位の低下が関与したものと考えられた.
著者
畠瀬 頼子 小栗 ひとみ 藤原 宣夫 宇津木 栄津子 戸井 可名子 井本 郁子 松江 正彦
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.537-542, 2009 (Released:2010-06-24)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3 1

We conducted a survey on vegetation change and performed a germination test for the topsoil seed bank after vegetation management of the herbaceous community dominated by the invasive alien species Coreopsis lanceolata on the riverbed of the Kiso River. We observed that although a large number of C. lanceolata seedlings were established, few flowering shoots emerged in the year following vegetation management (removal). The extended summed dominance ratio of C. lanceolata decreased, while that of Potentilla chinensis and Galium verum-domestic species growing on the gravelly riverbed-increased. However, the number of alien species of annual and biennial plants markedly increased after the removal. The germination test showed that this increase was caused by germination and establishment from the seed bank in the disturbed area after the removal. The test also showed that the seed supply of Artemisia capillaris and Dianthus superbus var. longicalycinus-domestic species growing on the gravelly riverbed and, in small numbers, in the surveyed and surrounding areas-was low. In this study, the removal proved effective in controlling the flowering of C. lanceolata; however, the problem of increase in the number of alien species of annual and biennial plants remains to be resolved.