著者
柘植 あづみ 菅野 摂子 田中 慶子 白井 千晶 渡部 麻衣子 石黒 真里 井原 千琴 二階堂 祐子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

女性の妊娠と出生前検査をめぐる知識と経験を把握するために、妊娠と出生前検査の経験について自由記述を含めて詳細に尋ねた首都圏でのアンケート調査(2013年実施、有効回答数 378票、有効回収率39.5%)と、全国の妊娠経験のある女性を対象に妊娠と出生前検査の経験に焦点をあてたインターネット調査(2015年1月~2月実施、有効回答数 2,357、有効回収率26.9%)を実施し、結果を分析した。さらに出生前検査を受検した女性、医師、遺伝カウンセラー、助産師、当事者団体等にインタビュー調査を行い、出生前検査をめぐる情報提供、夫婦の意思決定の過程と要因、医師の検査を提供することの考えなどを分析した。
著者
二階堂 祐子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.118-128, 2019

<p> 科学と医療の進展によって細胞内の染色体やDNAの形状が解明されると,科学者らはその状態に「欠損」「不全」「過剰」などの言葉を付与した.名を与えられたそれらはその後,あたかも構築をまぬがれた実体であるかのように,個体の社会的差異の源泉としてふるまうようになった.こうして,遺伝子の状態が障害の原因であると診断された人の身体は,能力主義的に,あるいは見た目によって価値づけられると同時に,ある遺伝情報を実体として構築するための舞台になっているといえる.</p><p> 本稿では, 遺伝性疾患のある人が,文化的構築物である遺伝情報をどのように用い,受け止めているのかをインタビュー調査事例より明らかにした. 結果,数値や記号として示される診断告知としての遺伝情報と,インタビュー協力者が不可逆的な生の時間の流れを振り返って用いる遺伝情報は,象徴的媒体としての働きが異なっていることがわかった.協力者の生の時間の流れにある遺伝情報は,他者(家族や友人,介助者,医療者,教育者等)との関係,手術の経験,薬の摂取,補助具の利用等の記憶を刻印する媒体として機能していたのである.</p>
著者
二階堂 祐子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.118-128, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
25

科学と医療の進展によって細胞内の染色体やDNAの形状が解明されると,科学者らはその状態に「欠損」「不全」「過剰」などの言葉を付与した.名を与えられたそれらはその後,あたかも構築をまぬがれた実体であるかのように,個体の社会的差異の源泉としてふるまうようになった.こうして,遺伝子の状態が障害の原因であると診断された人の身体は,能力主義的に,あるいは見た目によって価値づけられると同時に,ある遺伝情報を実体として構築するための舞台になっているといえる. 本稿では, 遺伝性疾患のある人が,文化的構築物である遺伝情報をどのように用い,受け止めているのかをインタビュー調査事例より明らかにした. 結果,数値や記号として示される診断告知としての遺伝情報と,インタビュー協力者が不可逆的な生の時間の流れを振り返って用いる遺伝情報は,象徴的媒体としての働きが異なっていることがわかった.協力者の生の時間の流れにある遺伝情報は,他者(家族や友人,介助者,医療者,教育者等)との関係,手術の経験,薬の摂取,補助具の利用等の記憶を刻印する媒体として機能していたのである.