著者
柘植 あづみ 菅野 摂子 田中 慶子 白井 千晶 渡部 麻衣子 石黒 真里 井原 千琴 二階堂 祐子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

女性の妊娠と出生前検査をめぐる知識と経験を把握するために、妊娠と出生前検査の経験について自由記述を含めて詳細に尋ねた首都圏でのアンケート調査(2013年実施、有効回答数 378票、有効回収率39.5%)と、全国の妊娠経験のある女性を対象に妊娠と出生前検査の経験に焦点をあてたインターネット調査(2015年1月~2月実施、有効回答数 2,357、有効回収率26.9%)を実施し、結果を分析した。さらに出生前検査を受検した女性、医師、遺伝カウンセラー、助産師、当事者団体等にインタビュー調査を行い、出生前検査をめぐる情報提供、夫婦の意思決定の過程と要因、医師の検査を提供することの考えなどを分析した。
著者
白井 千晶
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.55-75, 2014-03-05

妊娠・出産した女性が養育困難である場合、子どもを養子とする(養子に出す)ことによって親権を終了する特別養子縁組という選択がある。本稿では、当事者が養子縁組を決めるまでの経緯を語った語りをもとに、どのような背景と意思決定があって特別養子縁組で子どもの養育を託すことに決めたのかを分析する。データは筆者がおこなった15人の女性へのインタビューである。養子に出す意思決定に影響する要素は、①フォーマルな福祉へのアクセス、②インフォーマルな福祉へのアクセス、③自分が養育しないことを最善とみなす、④人工妊娠中絶の非選択、⑤養子縁組以外の選択肢の非選択、⑥若年、である。公的福祉制度があってもそれへのアクセスを拒否すること、アクセス不能である場合があること、養子に出す意思決定は複合的で、当事者性、プロセス性があることを提起した。
著者
白井 千晶
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.102-114, 2001-05-19 (Released:2016-11-16)

本稿は、生殖の医療化を不妊のマクドナルド化を事例に論じるものである。マクドナルド化という分析用具は、アメリカの理論社会学者G・リッツアがM・ウェーバーの合理化理論を拡張して提示したものであり、効率性、計算可能性、予測可能性、制御という4つの次元から構成される。本稿の前半では、生殖の医療化を考察するためには、分析水準と考察対象領域を操作的に設定する必要性が主張され、本稿では不妊患者領域の行為水準に照準を定めることが示されている。後半では具体的にマクドナルド化の4つの次元を使用して不妊患者の行為やそれを取り巻く現象のマクドナルド化を論じている。これらを踏まえて、筆者は最終的に「マクドナルド化」という趨勢の把握から、マクドナルド化メカニズムおよび医療化メカニズムの探究に進むべきであることを主張している。
著者
正岡 寛司 藤見 純子 嶋崎 尚子 澤口 恵一 西野 理子 大久保 孝治 白井 千晶
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、19世紀・20世紀半ばまでの重量型資本主義の基盤を第一次エネルギー供給の面から下支えしてきた石炭鉱業の経済史的ならびに社会学的な意義と特殊性、そしてその発展と終焉過程とを緻密に記述することを目的としたものである。あわせて、それを比較歴史的な記録資料として利用可能な状態で保存する。具体的には以下の5点の作業をすすめ、成果をえた。(1)旧常磐炭砿株式会社磐城砿業所(福島県いわき市)で就労した労働者の職業キャリアの大規模なミクロ・データの構築。(2)入社から退社にいたるまでの個別砿員の職業を中心として各種キャリアの時系列データの分析。(3)磐城砿業所の閉山にともない解雇された労働者の炭砿での職業キャリアと閉山後に形成した職業キャリアとの連結と、その分析(非自発的職業中断の影響)。(4)炭砿で就労した経験をもち、かつそこを解雇された元炭砿労働者たちの職業生活から離脱過程のデータの構築と分析(解雇経験後の職業キャリアと引退後生活)。(5)以上の諸ミクロ・データをデジタル化したうえで、大規模ミクロ・データの公共利用。上記作業の結果、昭和30年代の「採解簿データ」(約80,000件)をデジタル化し、6,459名の入社から退職にいたる職業キャリアの大規模なミクロ・データを構築した。他方、4,209名の離職者の89%にあたる3,747名の追跡調査を終えた(調査終了1,427名(34%)、調査不能879名(21%)、死亡確認(34%)1,441名)。彼らの閉山後の職業キャリアデータと入社から退職までの職業キャリアデータとを連結し、生涯職業キャリアデータを構築した。これらの生涯職職業キャリアデータを用いて、非自発的職業中断の影響、解雇経験後職業キャリアと引退生活の分析をすすめ、その成果を報告書にまとめ刊行した。本研究で構築した大規模ミクロ・データについては、HP上でその一部を公開した。