著者
正木 彰伍 五十嵐 大 菊池 亮 齋藤 恆和 千田 浩司 廣田 啓一
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2015-CSEC-69, no.28, pp.1-6, 2015-05-14

パーソナルデータの安全な利活用には,データの安全性と有用性の両立が必要である.安全性については代表的な k-匿名性や,k-匿名性を確率的な指標に拡張した Pk-匿名性が提案されるなど,匿名化技術が広く研究されている.一方で,匿名化データの有用性についての議論は未だ限定的である.特に,レコード数などのデータの特徴と有用性の関係性を明らかにすることは,実用上非常に有益である.しかし,これまで行われてきた,ウェブ上で公開されている実データなどを用いた実験では,用いるデータの特徴が限定的になり,議論が困難となっていた.そこで本稿では,多くのデータを包含する一般的な模擬データモデルを利用した評価法を提案し,この模擬データに,Pk-匿名化を適用した実験を行う.さらに実験結果から,有用性と模擬データモデルのパラメーターの関係について調べ,特定のパラメーターから有用性を予測できることがわかった.
著者
濱田 浩気 菊池 亮 五十嵐 大 千田 浩司
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

プライバシー保護データマイニングを実現するアプローチの一つに秘匿計算がある.秘匿計算は暗号化されたデータを入力とし,一度も復号することなく任意の計算を行う技術である.計算時間の大きさが実用上の課題であったが,近年の研究により単一の表の上で行う分析などの高級な計算が現実的な時間でできるようになってきた.本稿では複数の表を用いたデータ分析で不可欠な表の結合を秘匿計算上で効率よく実現する方法を提案する.
著者
千田 浩司 五十嵐 大 柴田 賢介 山本 太郎 高橋 克巳
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.1993-2008, 2011-06-15

入力データや演算ロジックを秘匿しつつ各種情報処理を可能とする技術の実現可能性が1982年にYaoによって提起されたが,実用上は非現実的な処理時間を要するためもっぱら理論研究のみにとどまっていた.しかしながら近年では,アルゴリズム改良や計算・通信環境の急速な発達に加え,医療分野やサービス分野等での個人のプライバシに関わる情報の安全な活用や,クラウドコンピューティングにおける機密情報保護等の社会的ニーズの高まりを背景に,当該技術に対する実装報告や実用化の動きも見られるようになった.本論文では,当該技術のうち特に情報処理の種別を限定せず汎用的に適用可能な秘匿回路計算(Secure Circuit Evaluation)技術に着目し,従来のアプローチを概観した後,より効率的に処理可能,かつ運用上の利点が見込める委託型2パーティ秘匿回路計算を提案する.また実装により提案方式のパフォーマンスを明らかにするとともに,実用上の価値や課題を探るため実証実験を行った結果について報告する.さらに,個人のプライバシに関わる情報の安全な活用や,クラウドコンピューティングにおける機密情報保護の実現に向け,技術的視点から考察する.A cryptographic technology concept that achieves various information processing keeping input data and/or an operation logic secret was proposed by Yao in 1982; however, it has entirely been stayed only in the theory research due to a heavy processing time. Recently, however, social needs for utilizing personal information safely in the fields of medicine and services etc. and for the cloud computing security are increasing with rapid development of ICT (information and communication technology) environments. In this paper, we focus on secure circuit evaluation as a solution for the Yao's concept and propose a delegation-based 2-party secure circuit evaluation. Moreover, we report on an empirical result of the proposed scheme to clarify the performance and to consider the potentiality on practical use, in particular, for safe uses of personal information and cloud computing security.
著者
五十嵐 大 千田 浩司 柴田 賢介 山本 太郎 高橋 克巳
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.2, pp.1-8, 2010-02-25
参考文献数
23

2009 年 10 月に開催された CSS2009 では,2 パーティ秘匿回路計算システムを用いた行動分析実験が行われた。従来秘匿回路計算は計算コスト等の課題から,実用的な利用報告がほとんどされてこなかった。これに対し本稿では,数百人規模となった CSS2009 における上記実験を利用例として報告し,秘匿回路計算及び上記システムの実用性を示す。In CSS2009, convened in October, 2009, an experimental trial on a behavior analysis using a 2-party secure circuit evaluation system was conducted. In the past, there had been very few practical utilization reports of the 2-party secure circuit evaluation, due to its high computational cost mainly. In this paper, we report the above trial as an example of the technique's utilization, and show the utility of the technique and our system above.
著者
三浦 泰昌 関島 和幸 平井 唯優 五十嵐 大造 井上 知昭 植松 斉 久保井 榮 松山 明彦 吉田 誠 鈴木 昭
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.497-504, 2000-07-15
被引用文献数
1 1

スプレーカーネーション'ライト・ピンク・バーバラ'に対する小売店の品質評価と形状, 体内水分および器官別糖含量ならびに花の品質保持期間の関係について調査した.1. 外見から最高級品(H), 中級品(M)および最下級品(L)に分類して, 切り花の長さ50cm, 1本当たりの小花数3輪に調整して, 試験開始時の器官別の含水率を比較したところ, いずれもHが最も高く, Mがこれに次いで高く, Lは顕著に低かった.また, 試験期間中の吸水量もこの順になり, Hの含水率が常時高く維持された.2. HとMでは試験開始後10日間で全て開花したが, 品質保持期間はHが15日と最も長く, Mは約10日と短く, Lでは開花に達することなく枯死した.3. 試験開始時のHとMの花弁のグルコースとフルクトース含量はほぼ11∿13mg/100mgDWであったが, Lでは4∿6mg/100mgDWと低かった.またHではこれら糖含量が5日後まで低下した後, 8mg/100mgDW前後のほぼ一定した値を示したのに対して, Mでは15日後まで直線的に低下した.Lでは10日後まで4∿6mg/100mgDWの低い値を維持した.4. 試験開始時におけるHのがくのスクロース, フルクトースおよびグルコース含量はほぼ4∿6mg/100mgDWで, 15日後までほぼ直線的に低下したが, Mのフルクトース, グルコース含量は試験開始5日後までに急激に低下した.Lではいずれも2∿3mg/100mgDWと低く, 15日後まで緩やかに低下した.5. Hの葉身のスクロース含量は試験中9∿12mg/100mgDW前後を保ち, Mは16mg/100mgDWから12mg/100mgDWと緩やかに低下した.フルクトースとグルコース含量は1mg/100mgDW以下と低く, 試験期間中ほぼこの値を維持した.一方, Lのスクロース含量は2mg/100mgDW前後, フルクトースとグルコースは1mg/100mgDW以下で推移した.6. 茎のスクロース含量はいずれも4∿6mg/100mgDW前後で推移したが, グルコースは試験開始時2mg/100mgDW前後から15日後までほぼ直線的に低下し, フルクトースは全期間を通じて1mg/100mgDW以下の低い値を示した.7. 3階級とも花弁から銀が検出されたことから, 全てSTS等の処理済みと考えられた.以上の結果, STS等処理後のカーネーション切り花の品質保持期間に対して, 切り花購入時の含水率と花弁のフルクトースおよびグルコース含量が大きく影響すると推測された.