著者
井上 健治
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-10, 1971-07-31

児童の学級集団に対する意識をとらえ,量化するために,日常の学級での生活場面を材料とした学級意識尺度を作成した。学級意識は日常の学級集団における生活の中で形成され,それがまた児童の学級での行動を規定するものと考えられる。他方,成員の学級意識の総体は,学級の集団個性の一つの指標となることが期待される。項目分析,因子分析を経て35項目(それぞれ4肢選択=4段階評定)が選ばれた。さらに再び因子分析を施した結果,学級意識を構成する主要な5因子を抽出した。それらは,1.学級評価因子,2.学級における行動の自由度因子,3.学級への親密感因子,4.学級活動への参加度因子,5.学級内での安定感因子と解釈,命名された。そして,それぞれの因子負荷量の高い7項目をもってその領域を構成する項目とする。なお,それらの総合として学級意識得点が算出される。尺度の信頼性係数は.865であり,領域の信頼性も.741から.820に及び,かなり高い値と考えられる。つぎに,学級意識尺度の発達差,性差,学級差について検討した。性差としては,やや女子の得点が高く,ことに学級参加度は有意である。また,男子の個人差が大きい。発達差は単純な学年差としてはとらえ難く,むしろ学級差が著しく大である。これは成員個人のパーソナリティ要因よりは学級の集団個性の反映であり,ことに担任教師の集団に対する指導の如何が影響力をもつものと考えられる。