著者
並川 努 谷 伊織 脇田 貴文 熊谷 龍一 中根 愛 野口 裕之
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.91-99, 2012 (Released:2012-11-20)
参考文献数
19
被引用文献数
84

Personality scales based on the five-factor model, especially the Big-Five Scale of personality trait adjectives (Wada, 1996), are commonly used in Japan. In this study a short form of the Big-Five Scale was constructed. To avoid changes in the capacity dimension caused by the decrease in the number of items, item selection was conducted after Item Response Theory (IRT) scales were constructed for all the items. In Study 1 data was collected from 2 099 participants. A Generalized Partial Credit Model was applied to the IRT model, and items were selected using the slope and location parameters for each item. Cronbach's alpha showed that the short form, as well as the five sub-scales, had sufficient reliability as a personality test. In Study 2, we determined correlations with the NEO-FFI and tested the concurrent validity of the short form. The results indicate that the short form of Big-Five Scale demonstrates sufficient reliability and validity despite the reduced number of items.
著者
新井紀子# 菅原真悟# 尾崎幸謙# 犬塚美輪 新井庭子# 分寺杏介# 野口裕之 登藤直弥
雑誌
日本教育心理学会第59回総会
巻号頁・発行日
2017-09-27

企画主旨登藤直弥 本自主企画シンポジウムで取り上げるリーディングスキルテスト(Reading Skill Tests,RST)においては,いわゆる国語の文章読解問題のように,「文意が正しく読み取れるか」などといった大まかな能力が測定されているわけではない。RSTではより細かな認知能力,具体的には,「文の中における係り受け構造が正しく理解できるか」だとか「文間での照応関係が正しく認識できるか」などといった,より基礎的な読解能力が測定されるように設計されている。 このRSTに関しては,一昨年度よりその開発を始め,現在では,様々な学校・企業・自治体の協力を得て,データの収集や分析を進めているところである。その結果,以下に記載されているように,RST,さらには,「読解」という行為に関する様々な知見が蓄積されてきた。 そこで,本自主企画シンポジウムでは,RSTの開発を始めた経緯,RSTの仕様,RSTの教育測定学的性質,そして,RSTを用いて行われたいくつかの研究の結果について,以下に示す通り,計6名の先生方から話題提供をしていただく。基盤となる読解力を測る新井紀子 21世紀の知識基盤社会においては,人生を通じて必要となる知識やスキルが確立されたカリキュラムの枠組みだけでは十分には獲得できず,人が生涯にわたり学び・学習の活動を続けていく「生涯学習」が必要となる。その形態が,アナログかデジタルか,直接か遠隔かに関わらず,学習コンテンツの多くが書記言語の「読解」を前提として構成されている。そのため,知識基盤社会においては,書記言語の運用能力の如何が,労働市場での価値を大きく左右する。一方,学習者間で看過できない読解力の差が生じていることは動かしがたい事実である。読解力が知識基盤社会を生き抜くための核心的スキルであるならば,すべての学習者がそれを一定程度身に着ける教育プログラムがあることが,格差の少ない民主的な社会の形成の上で強く望まれる。 我々は,近年の深い言語処理の研究成果と対比させつつ,従来の読解の認知プロセスモデルを精緻化した上で,項目応答理論と認知診断モデルを用いた適応型テストを用いることにより,従来の学習到達度テストや読解力調査では測定することのできなかった読解に関わる認知プロセスにかかわる能力(認知能力)を高い精度で診断することを目的とするRSTの研究開発に着手した。その成果について発表を行う。RSTの各問題タイプの目的と作問方法菅原真悟 RSTでは6つの問題タイプを設定し,それぞれ異なる能力を測ることを目的としている。各問題タイプの概要は,以下の通りである。(1)「係り受け認識(DEP:Dependency Analysis)」:係り受け関係を正しく認識できているかを測る。(2)「照応解決(ANA:Anaphora Resolution)」:指示照応やゼロ照応を理解できているかを測る。(3)「同義文判定(PARA:Paraphrasing)」:2つの文を比較し,それらが同義かあるか否かを理解できるかを測る。(4)「推論(INF:Logical Inference)」:提示された文から論理推論することで,新しい知識を獲得できるかを測る。(5)「イメージ同定(REP:Representation)」:提示された文を読んで,それがどのようなことを表しているかイメージできるかを測る。(6)「具体例認識(INST:Instantiation)」:概念または用語の定義を読み,それがどのような状況に当てはまるか,具体的に認識できるかを測る。 各問題は,主に中学校及び高等学校で用いられている検定済教科書に載っている文を基に作問している。なお,RSTで教科書等に掲載された文を使用するにあたっては,各著作権者と協議のうえ,著作権許諾契約を結び実施している。本発表では,各問題タイプが,どのような目的で作問されているかを,具体例をあげて説明する。RSTの信頼性と妥当性および質問紙調査項目との相関尾崎幸謙・登藤直弥 本発表では,1)RSTの信頼性と妥当性,2)質問紙調査項目との相関について報告する。 RSTの各項目が適切に読解にかかわる認知能力を測定していることを調べるために,まず項目特性図を描き,その形状によって適切な項目であるか否かを判断した。通常の項目特性図は,合計得点のグループごとの各選択肢の選択割合を示したものである。しかし,現在のRSTは,受験者に対してランダムに項目提示を行っているため,受験者によって解いた問題が異なる。そのため,受験者に対する評価は項目応答理論を用いて行った。項目応答理論における受験者特性値θをすべての受験者について求め,これを合計得点の代わりとして項目特性図を描いた。 その結果,いくつかの問題については,問題文や選択肢の修正の必要があることが分かった。なお,RSTでは修正の必要の有無の判断・修正・再データ収集のループを回して実施し,適切な項目内容となるためのフローを作っている。 また,RSTの信頼性と妥当性については,項目特性図によってスクリーニングされた適切な項目のみを使って問題タイプ毎に検討を行った。具体的には,信頼性であれば,たとえばω係数(McDonald,1999)を用いて検討を行い,妥当性であれば,受験者特性値θ間の相関係数や「各受験者特性値や正答率と年齢との関係」などを用いて検討を行った。その結果,現状では,全ての問題タイプにおいて,十分な信頼性と妥当性が示唆される結果が得られている。なお,問題タイプ毎に,項目応答理論を適用する際の前提が満たされているかどうかについても確認を行ったが,この点についても,適用するにあたっての前提は満たされているであろうことが示唆されている。 さらに,信頼性と妥当性が確認された項目群を用いて,質問紙調査項目との相関を求めた。なお,これらの分析についても問題タイプ毎に行っている。この質問紙調査項目には,読書習慣,読書の好き嫌い,得意な科目などについて尋ねるものが含まれている。したがって,読解力という漠然とした構成概念ではなく,読解力を構成するより細かな認知能力について,読書習慣等に関する質問紙調査項目との相関を調べることができた。なぜ読むのが難しいのか:眼球運動の特徴から犬塚美輪 RSTの実施結果からは,教科書という基本的な学習リソースにおいて文理解が困難な学習者が少なくないことが示されたと言える。こうした困難の要因の一つは,教科書の文章の構造の複雑さにあると推測できる。一方で,学習者が十分な読解スキルを有していないことも要因であろう。読解スキル育成のためには,優れた(あるいは困難を持つ)読み手の特徴に基づいた介入案の検討が必要であるが,青年期の読み手の読解プロセスについては基礎的データが十分ではない。 そこで,本発表では,大学生を対象に,原文と構造を明確化した修正文における読解プロセスを検討する。予備的な研究からは,原文と修正文で読解時間は大きく異ならないものの,修正文では低成績者の理解を底上げすることが示唆された。本発表では,眼球運動のデータを用いて,原文と修正文で学習者の読解プロセスがどのように異なるか,そこからどのような教育的提言が可能かを論じる。小・中ギャップにつながる教科書テキストの特徴新井庭子・分寺杏介 教科書の文章は正しく読めることが前提とされてきたが,RSTの実施結果からは,学習者が正しく教科書を読めていない実態が示された。本発表では,学習者の読みを困難にしている教科書の具体的な特徴について検討を行った結果を報告する。 近年,教育現場でいわゆる小・中ギャップ,すなわち,小学校から中学校への進学において,新たな環境での学習や生活に対応できず不登校等に繋がる状況が問題視されている(中央教育審議会初等中等教育分科会,2012)。小・中ギャップは学習者の学習面と生活面から検討が進められており,学習面では,担任制の相違や授業形態の違いなどの指導法の面からの研究はあるが(中央教育審議会初等中等教育分科会,2012;伊藤,2014),学習者が抱える困難がどのようなものか,例えば教科書を読んで理解し知識を獲得できているか等を具体的に分析した研究は少ない。 そこで,小学校と中学校の理科教科書を題材として,そこにどのような量的・質的なギャップがあるかを分析した。また,読みを困難にするテキストのパラメータを予測し,小・中教科書テキストの間にそのパラメータで表現できるギャップがあることを示した上で, RSTの結果を用いてそのギャップが実際に人にとっての困難につながるかどうかを確認した。 「人にとってのテキストの難しさ」を扱う関連研究で伝統的に採用されてきたパラメータのうち,単語親密度・係り受けの数・距離の平均・ツリー構造の深さを採用し,特に係り受けの複雑さについて小・中間で明確な差があることを確認した。その他にも,これまでの研究では考慮されていなかった新規パラメータとして定義表現の数・分類表現の数について,小・中間で大きなギャップがあることを示した。
著者
大塚 雄作 柴山 直 植阪 友理 遠藤 利彦 野口 裕之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.209-229, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
62
被引用文献数
1 1

現在進められている高大接続改革の進展の中で,「学力」をどう捉え,どう評価すべきかといった基本的な部分で,十分な理解が共有されているとは言い難いことをしばしば経験する。調査と選抜試験という評価・測定の目的の違いが安易に軽視されたり,形成的評価に適合する手法や,子どもに必要とされる非認知的要因などの評価が,短絡的に選抜における学力評価などに適用されようとしたりする。 評価・測定は,目的や対象にふさわしい評価手法を状況に応じて選択するということが重要であり,それは高大接続改革のみならず,教育心理学研究においても基本とすべきことである。本討論では,以下の諸点に関して,教育心理学研究の領域における研究事例を紹介しつつ論じていくこととする。(a)大規模学力調査において,目的と設計仕様との整合性の担保,個人スコアと集団スコアの使い分け,データ収集デザイン等が重要という点について。(b)日常的な学校教育実践において,どのような形成的評価が有効に機能するのかについて。(c)子どもの発達に影響を及ぼすと思われる人生早期に培われる「非認知」的な心の性質に関わる研究動向と課題について。
著者
島田 めぐみ 野口 裕之 谷部 弘子 斎藤 純男
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.90-100, 2009 (Released:2017-04-05)
参考文献数
6

本研究では,自己評価であるCan-do statements(Cds)を利用して,日本のT大学と海外協定校の日本語科目の対応関係を明らかにした。具体的には,T大学と,協定校5校の日本語学習者を対象に調査を実施し,各授業科目受講生のCds平均得点を用いて,T大学各レベルの授業科目と各協定校各学年の対応表を作成した。対応関係が明らかになったことにより,協定校においてより適切に単位互換を行うこと,来日前に留学生の配置クラスを予測することが可能となった。さらに,T大学と協定校における各項目の回答結果を比較することにより,技能の習熟度における相違点を検討した。今回使用した項目には,海外においては遭遇する可能性がない言語行動もあり,そのような項目は,おおむね自己評価が低くなることも明らかになった。
著者
加藤 雅信 青木 清 太田 勝造 河合 幹雄 野口 裕之 藤本 亮 岡田 幸宏 菅原 郁夫 フット ダニエル
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

多くの法科大学院院生は「進学決意時」の職業希望を法科大学院入学後、教育を受けながらも維持していることがあきらかになった。また、そうした理想は理想として、現実的に予想する際にも約3分の2の院生は理想と現実的予想が一致しており、その一致率は年度を追い、微増する傾向が観察された。本調査が執行された段階では、まだ「弁護士の就職難」といわれる現象はメディアがとりあげるような話題にはなっておらず、現在の院生にこのような調査をした場合にはまた異なった回答がなされるであろう。また、実際に司法修習修了後にどういった職種に就いているのか等の追跡調査が今後求められてくるであろう。抽象度の高い法のイメージについての法意識は短期間では大きく変化しないと考えられる。そのため、多くの項目では経年変化はみられなかった。しかし、二年の間をあけた調査問の比較では、より大きな差がいくつかの項目に観察された。このことは三年間のインテンシヴな法科大学院教育がこうした一般的な法意識、法態度にも影響を及ぼすことを示唆している。法科大学院は大学の枠を越えて多くの他大学出身の院生を受入れており、また、受験生も複数の大学院を受験することが通例である。入学前には受験生は全員が適性試験を受験することが義務づけられ、また大学院終了後も全員が司法試験を受験し、司法修習へと進む。したがって個別大学での調査ではなく、本研究のように大学横断的に法科大学院生のさまざまな状況について調査研究することは重要である。
著者
斉田 智里 小林 邦彦 野口 裕之
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

英語教育の効果を測定・評価するために、項目応答理論(IRT)と構造方程式モデリング(SEM)の使用が有用であることを実証的に示すことができた。IRTを用いた大規模テストで高校生や大学生の英語力を測定し、英語力の大きさや変化の要因をSEMを用いて検討した。その結果,学習指導要領の変遷や入試科目の変更、大学英語教育カリキュラムの変更が、高校生や大学生の英語力に大きな影響を及ぼしていることが示された。言語プログラムにおける教育評価情報の収集・分析・評価のシステムを構築した。
著者
寺尾 尚大 安永 和央 石井 秀宗 野口 裕之
出版者
日本テスト学会
雑誌
日本テスト学会誌 (ISSN:18809618)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-20, 2015 (Released:2022-02-15)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本研究の目的は,多枝選択式の英語文章読解テストにおける錯乱枝の選択率が能力別にみてどのように異なるか検討することであった.研究1 では,英語文章読解テストにおいてどのようなものが錯乱枝になりうるか質的に検討するため,調査協力者16 名に対し,私立大学入学試験問題の多枝選択式・英語文章読解テストで出題された問題を用いて,誤答選択枝のそれぞれについてコメントを収集し,コメントの結果をもとに錯乱枝の要因・水準を作成した.研究2 では,大学生の受検者366 名に英語文章読解テストを実施し,能力別にみた錯乱枝の効果を検討した.多項ロジスティック回帰分析および残差分析の結果,能力低群では文章中に記述がなく否定語や因果関係を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった一方,能力中群では文章中に記述があり否定語や因果関係を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった.また,能力高群では文章中に記述があり対義語を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった.本研究の知見から,実際の英語文章読解テストにおける誤答選択枝のもっともらしさが能力別に異なる可能性と,多枝選択式の項目作成にかかる労力を軽減できる可能性が示唆された.
著者
坪田 祐基 石井 秀宗 野口 裕之 TSUBOTA Yuki ISHII Hidetoki NOGUCHI Hiroyuki
出版者
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 (ISSN:13461729)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.47-56, 2016

Perfectionism is the striving for flawlessness, and extreme perfectionists are people who want to be perfect in all aspects of their lives. It is known that perfectionism is related to a number of psychological and physiological problems, such as apathy, neurosis, alcoholism and anorexia nervosa. A number of studies have investigated the relationship between perfectionism and maladaptation. Recent studies have suggested that perfectionists have certain cognitive biases, including selective attention to failure, which is particularly problematic. The few previous investigations of this problem based on the social cognitive paradigm had the shortcomings that the used task was limited to the emotional Stroop task, and used stimulus words were only negative perfectionism-related words (failure-related words). In order to overcome these problems, relationships between perfectionism and selective attentions to success- or failure-related words were investigated with the dot-probe task. The result indicated moderate correlations between perfectionism and selective attention to both success- and failure- related words in males, whereas little correlation was found in females. However, success- and failurerelated words used in that study were associated with the task situation (e.g., "correct", "achieving," "mistake," and "error"), which are familiar to male, but not to female perfectionists. Therefore, it is still unclear if the above result was caused by the fact that female perfectionists did not pay attention to successes and failures, or that the words used were not familiar to females. In order to resolve this issue, this study employed the dot-probe task and words related to social situations and investigated relationships between perfectionism and selective attentions. Undergraduates (N = 100, 50 female and 50 male) were asked to perform the dot-probe task and complete self-report questionnaires. In the dotprobe task, participants first focused on a central fixation cross that was shown on a computer screen. It was replaced by two stimuli after 500ms, which were displayed one above the other. For example, the screen displayed a word related to success in social situations and a neutral word. These words disappeared after 500 ms, and a symbol appeared on the screen replacing one or the other word. Participants should respond to the shape of this symbol as fast as possible. If a participant had tendency to pay more attention to such words related to social situations, reaction time to the words would be shorter when the symbol replaced a word related to social situations compared to when it replaced a neutral word. Three kinds of stimuli were used. The first group was words related to successful social situations such as "compromise" and "closeness". The second group was words related to failures in social situations such as "isolation" and "friction". The third group was neutral words such as "pencil" and "weather. Self-reporting questionnaires were also administered: Self-Oriented Perfectionism (SOP) items in the Multidimensional Perfectionism Scale (MPS), the Multidimensional Self-oriented Perfectionism Scale (MSPS), and the Multidimensional Perfectionism Cognition Inventory (MPCI). Ratio of reaction time in neutral condition (neutral words vs. neutral words) to that in conditions including social situations related words (e.g., social situation failure- vs. neutral words) was computed as an index of selective attention. Pearson's product-moment correlation coefficients between this index and perfectionism scale scores showed almost no significant correlations in both males and females. These results suggest that perfectionists do not pay attention to success- or failure words in social situations. Sex differences in relationships between perfectionism and maladaptation in social situations would be caused by other factors such as behavior and consciousness.
著者
野口 裕之 島田 めぐみ 熊谷 龍一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2019年度は、以下の調査を実施した。1)「話す(表現)」「書く」および「やりとり」の自己評価調査、2)「漢字運用力」を表わす能力記述文を開発試行調査、3)日本語教育機関のカリキュラムに対応する Can-do statements 自己評価調査( 1)2)と同時実施、中国のみ)。1)では、CEFRから学習者による自己評価が難しい言語能力記述文を除いて、調査票を構成した。回答には4段階評定尺度を用いた。調査協力者は、中国(漢字圏)、インド、ベトナム(非漢字圏アジア)、豪州、米国(非漢字圏非アジア)および日本国内の日本語学習者724名であった。難易度を表す尺度構成にはIRTの段階応答モデルを適用した。その結果、「産出的能力」では、難易度の順序が元のCEFRの順序と一致する部分が少なくないが、「やりとり」では、元のA2項目群とB1項目群に難易度の重なりが見られるなど項目の順序性に関してCEFRと緩やかな一致傾向が見られるに留まった。CEFRの日本語への適用は、単に翻訳するのではなく、日本語に合わせた調整の必要性が示唆された。2)に関しては、現在詳細な分析を継続している。3)に関しては、2018年度に実施した「聞く」「読む」に関する中国A大学のCan-do statements自己評価データと,CEFR言語能力記述文の自己評価データを合わせて同時に分析した結果を比較検討した。すなわち、IRTの段階応答モデルを用いて,グローバルなCEFRとローカルなA-Cdsを同一尺度に乗せて,両者の項目困難度を比較するという試みを行なったが,この手法の有効性が確認できた。CEFRを日本語教育場面で活用するためには、言語能力記述文をそのまま日本語に翻訳するだけではなく、日本語に合わせたレベルの調整・変更や、日本語の独自性を反映する言語能力記述文を加えることなどが必要であることが明らかにされた。
著者
芝 祐順 大浜 幾久子 野口 裕之
出版者
東京大学
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.111-128, 1981-02-20
被引用文献数
1

Vocabulary of Japanese children who live in a bilingual or trilingual environment was measured and analyzed in relation to results of a questionnire. A semi-adaptive test of Japanese vocabulary was administered to about four hundred Japanese children from the first to the ninth graders in Canada, U.S.A., Australia ,and Switzerland. Testing procedure consists of two steps; a short form of the stratified adaptive test for preliminary measurements and a conventional test for accurate measurement. Each child was tested individually, at first, by the short form, and then was tested again by one of the ten forms of the conventional tests with appropriate difficulty. The distributions of scores of vocabulary were lower and wider in their ranges, in general, comparing to the distributions of the scores obtained from standard group of children in Tokyo. Children who have been abroad for long years show more retardation in their vocabulary development. This tendency was especially significant among children from the first to the forth graders. It was suggested that the critical period for the acquistion of maternal language might exist by the age of ten years old. From methodological point of view, the efficiency of the testing procedure was evaluated. Test information curves obtained from the results of the stratified adaptive test show, in most cases, that the adaptive test works fairly well as the preliminary measurement in choosing an appropriate form of conventional test.
著者
藤本 亮 野口 裕之 藤田 政博 堀田 秀吾 小谷 順子 宮下 修一 吉川 真理 正木 祐史 和田 直人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

TOEFLやTOEICなどで用いられている等化という方法によって、異なった試験の成績を比較することができるようになる。こうした成績測定の分野はテスト理論として研究されている。本研究は、テスト理論の見地から、複数の法律学試験において等化を行い、その下でも成績測定が適切に行えるかを検証している。法律学試験は「資格試験」として実施されることが多いが、実質的には一回限りの競争試験となっている。この研究は、本来の意味での資格試験としての法律学試験の可能性を探る基礎研究である。
著者
野口 裕之 堀川 有美 李 在鎬 庄司 惠雄 熊谷 龍一 野原 ゆかり
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本語口頭能力試験のための評価システムを開発する研究を進めた。このシステムでは Web ベースで配信した受験者の発話標本を聞きながら、評価者が PC 画面上に逐次提示される評価票の各項目に評定結果を入力する。評価者毎には課題を通して比較的一貫した評定であった。評価者間では「量的評価」の方が「質的評価」よりも相対的に一致した結果が得られたが、「量的評価」でも一部の評価者で他と異なる評定結果を示した。多相ラッシュ分析を適用した結果は、評価者の厳しさの違いは無視できないが、推定された能力尺度値は予め 12 名の発話者に想定した能力水準と大きくは異ならないことを示した。
著者
高橋 弘司 野口 裕之 安藤 雅和 渡辺 直登
出版者
経営行動科学学会
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.113-123, 1999-11-20
被引用文献数
1

Organization image, defined as psychological reproduction of organization made by individual who is a member of or is involved in the organization, has been less examined in the past research. Instead, quite a few research dealing with "non-membership" image, which was built by non-member or non-involved person of the organization, have been conducted. It is inconsistent with the definition of image literally, which has an affinity for impression toward object. In this article, we developed a new scale to measure membership image of organization, tested its reliability and validity, and revealed item characteristics of the scale items using graded response model of Item Response Theory (IRT). Questionnaire survey was executed to 3,412 university, college, or junior college students who were informally promised their first job employment. Results of exploratory factor analysis showed that factor structure was consistent with the notion on which the scale was based, and discriminant validity of the scale and reliability of each subscale yielded as high. Results brought by IRT analyses also showed general tendencies that each value of item characteristics parameter emerged high in discriminant and relatively low in difficulty. Further discussion was made about (1) dimensionality of the scale and its overall feasibility; (2) psychodynamic account for organizational image; and (3) future direction to improve validity of the scale.