著者
井上 征矢 玉置 淳
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.G08, 2007

聴覚障害者に対する適切な情報保障方法を探るため、聴覚障害者と健聴者に対して、駅空間画像を用いた視覚実験を行った。その結果、聴覚障害者は、路線色やピクトグラムとともに表示される文字が読みにくい場合や、文字が(間に数字等が入ることによって)離れて表記されている場合に、健聴者よりもターゲットの探索に時間がかかった。健聴者は色やピクトグラムを見るだけでターゲットの方向を判断する場合も多いが、聴覚障害者は隣に表記された文字までを確認して判断しようとする傾向が強いのではないかと考えられる。従って聴覚障害者に対する情報保障を充実させるには、サインを掲示する側としては、文字の可読性に充分に配慮したサイン計画を、逆に聴覚障害者に対しては、サイン計画への理解を深め、色やピクトグラムによる誘導にも慣れるための教育を進めることが必要といえる。
著者
井上 征矢
出版者
筑波技術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

以下の3種の実験を聴覚障害者と健聴者の各10名に行い、光源色を用いた適切な情報提示について検討した。色と文字の探索実験では、色を色、色と文字、色文字、黒文字の4種の方法で提示し、ターゲット色を6色の中から瞬時に探すタスクを与えた。その結果、両被験者群ともに色や色文字の場合に回答が速いが、聴覚障害者は黒文字の場合にも健聴者ほど遅くなく、両者で視覚認識特性が異なる可能性が示された。また両被験者群ともに赤より青に対する反応が速く、LCDモニタで白背景の場合には青の誘目性が物体色の場合ほど低くない可能性も示された。駅空間画像における探索実験では、内照式サインを含む駅空間画像を提示し、ターゲットの方向を瞬時に回答するタスクを与えた。駅空間画像には、サイン周辺の商業表示物の色や量、サイン情報の質や量が変数となる物を選んだ。その結果、両被験者群ともにサイン内に類似色がある(使用色修正が必要)、周辺にサインと類似色で高彩度の広告がある(商業表示物との棲み分けが必要)、同じ誘導色でも内照式サインと物体色で違う色に見える(色の微修正が必要)等の場合に回答が遅かった。聴覚障害者は誘導色に付記された文字が読みにくい場合に回答が遅く、色のみでなく文字までを確認する傾向が健聴者より強いことが示された。誘導色やピクトを使用する場合にも文字の可読性に配慮する必要がある。文字スクロールスピード調整実験では、電光文字提示装置を想定し、表示文字数、文字色、文型(一般的文章と名詞の羅列文章)を変数として文章を提示し、最も読みやすいスピードに調整するタスクを与えた。その結果、両被験者群ともに表示文宇数が少ないほど遅いスピードを好んだ。文字色や文型による顕著な差は得られなかった。聴覚障害者は大半の試行で健聴者より遅いスピードを好んだため、健聴者の感覚でスピード設定したスクロールは聴覚障害者には速すぎることも示された。
著者
井上 征矢 山本 早里 三井 秀樹
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.100-112, 2003-06-01
被引用文献数
1

幾何学的抽象絵画において縁辺対比の効果が強く見える主なパターンとしては、「Hermann grid」、「グラデーション」、「色の面積比の変化」、「ストライプにおける色ずれ」などが挙げられる。これらは明度差によって作成した場合に最も強い縁辺対比を生むことが知られており、絵画やデザインなどの視覚表現にも頻繁に応用されているが、色相差、彩度差による効果に関する知見は少ない。そこで本研究では彩度差による縁辺対比に注目し、実験を通じてその特性を探ったところ、以下のような傾向が得られた。1)彩度差による縁辺対比は、「グラデーション」や「色の面積比の変化」では色相に関わらず効果が見えやすいが、「Hermann grid」では比較的効果か弱く、見えにくい。2)各パターンともに色相によって効果の強度に差があり、赤で強く、縁で弱い。3)「Hermann grid」や「ストライプにおける色ずれ」を彩度差で作成する場合、明度差で作成する場合よりも、線幅やストライプ幅をやや広くした方が効果が見えやすい。
著者
安田 輝男 岡本 明 長岡 英司 生田目 美紀 井上 征矢
出版者
筑波技術大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1.19年度の実績・成果を踏まえ、20年度はさらに精度を高めた立体ポスターの制作とその展示、調査を積極的に行った。また、有効なサポート情報としての音声情報(聴覚情報)の開発も行った。2.立体ポスターの原画にあたるポスター制作に関しては、本年度も本学デザイン学科の学生を指導して制作。二科展デザイン部等へ応募して、入選・準入選等の成果を得た。3.「触って観る」アート(立体ポスター)は、つくば西武ホール(20年1月)、二科茨城支部展(20年5月)、二科展(20年9月)、筑波技術大学く日韓デザイン学術研究交流大会〉(20年7月)、いばらきデザインセレクション2008(20年10月)、筑波大学(20年10月)結城信用金庫(20年10月)、第23回国民文化祭・つくば美術館(20年11月)、水戸医療センター(20年12月)等で展示され、随時アンケート調査も実施。昨年に引き続き、展示場に訪れた鑑賞者からは深い理解を頂き、社会貢献の意義からも資するところ大であった。4.音声による画像情報支援システムによる「触って聴く」ポスターも随時展示し、強い関心を得た。(*協力:東京カートグラフィック(株)・(財)テクノエイド協会)。5.本研究チーム制作の「触って観る」ポスターとその活動に対して、第23回国民文化祭くつくば市議会議長賞〉、いばらきデザインセレクション2008知事選定、二科茨城支部感謝状が贈られた。6.本研究をまとめた小冊子「『触って観る』アートプロジェクトの歩み」(A5版28頁/英訳付き3000部)を出版。各方面に配布し、本研究の理解促進に供している。
著者
井上 征矢 山本 早里 三井 秀樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.49, pp.212-213, 2002-11-05

When we see the follwing stripe, we can recognize the Border Contrast (BC) vividly. It is already known that the value difference is most influential for the cognition of BC. In this paper, we present the result of the experiment characterising BC, based on hue or chroma difference, and conclude the following. 1) BC can be seen in this stripe composed by hue or chroma difference. 2) Chroma BC tends to be visible in the stripe with red, but hard to be visible in the stripe with green. 3) The strength of chroma BC is influenced by stripe width. In case of yellow or blue, the larger stripe width is more effective for the cognition of BC, comparing with the stripe with red or green.