- 著者
-
井上 文彦
古川 裕夫
内野 治人
- 出版者
- The Japan Society for Clinical Immunology
- 雑誌
- 日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.1, pp.31-36, 1986-02-28 (Released:2009-01-22)
- 参考文献数
- 20
潰瘍性大腸炎患者大腸粘膜におけるラクトフェリンの分布を,螢光抗体法を用いて検討した.また,同時にペルオキシダーゼ染色を施行し,両者の分布を比較した.患者大腸粘膜の内視鏡的正常部では,ラクトフェリン陽性細胞とペルオキシダーゼ陽性細胞は,ともにほとんどみとめられず,内視鏡的境界部では,両者とも散在性にみられ,内視鏡的病変部では,両者とも多数みとめられた.正常対照者大腸粘膜では,両者ともほとんどみとめられなかった.また,ギムザ染色により,ペルオキシダーゼ陽性細胞は好中球であることが強く示唆された.静菌的,殺菌的作用を有する強力な鉄結合性蛋白の1つであるラクトフェリンは,主要な局所粘膜防御因子であるs-IgA系の減少した潰瘍性大腸炎大腸粘膜で,いわば代償的に出現,増加し,局所粘膜における感染防御機構の面において,何らかの意義を有するものと考えられた.