著者
大久保 努 原田 秀樹 小野寺 崇 上村 繁樹 山口 隆司 大橋 晶良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.187-195, 2008 (Released:2008-06-20)
参考文献数
43

インド・カルナール市において,下水を処理するUASB法の後段処理法として,我々が開発した下向流懸垂型スポンジ(Downflow Hanging Sponge: DHS)法の実規模リアクター(処理水量500m3/day,スポンジ容量に対するHRT: 1.5時間)を導入し,有機物処理特性評価を行った.DHS処理水の有機物濃度はインドの排出基準を満たし,全期間(900日間)を通じた平均全BODが6(標準偏差±4)mg/L,平均SSが8(±4)mg/Lであった.また,DHSからの余剰汚泥発生量は0.05kgSS/kgCOD-removedであり,現在までにUASBの後段処理として報告がある好気性処理法と比較して格段に少なかった.DHSは,メンテナンスフリーにも関わらず非常に安定した運転を長期間維持し,活性汚泥法に取って代わる開発途上国向けの新規下水処理技術としての波及が期待できた.
著者
楠田 哲也 近藤 隆二郎 原田 秀樹 迫田 章義 澤田 浩介 Peter R. Kauticke Julino R. Zapata
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.365-371, 2001-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
7

The old civilization is a typical example of the sustainable society, which may provide us with much information on it. Machu Picchu, one of the towns in Inca, was surveyed in 1999 and 2000 on the system of water supply and drainage to investigate sustainable systems which it might own.Machu Picchu had two springs for water resources. Water distribution was done with open channels made by stone. Water distributed to the town was utilized at a series of 16 fountains in cascade use and probably in time sharing. The first to the third fountains would be for ritual and others for drinking and irrigation. Machu Picchu had neither drainage nor wastewater treatment systems. The population in Machu Picchu was estimated around 2400 from the water supply capacity. The society of Machu Picchu was under severe restriction on water supply, and not safe on drinking water.
著者
土手 裕 原田 秀樹 関戸 知雄
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.23-29, 2023 (Released:2023-07-24)
参考文献数
9

シリコン系太陽光パネルセルから分離されたカバーガラスと比重分離残渣のコンクリート用細骨材としての環境安全性を評価するために,カバーガラス,比重分離残渣,これらの混合物である廃パネル骨材,廃パネル骨材を用いた利用模擬試料,セメントペースト試料について JIS A 5011-1 による溶出量試験,含有量試験を行なった。比重分離残渣のPb含有量が環境安全品質基準値を 1.5 倍超過したが,廃パネル骨材の Pb 含有量はカバーガラスと比重分離残渣の混合による希釈効果により含有量基準を満足した。カバーガラスの Sb 溶出量が指針値を 1.1 倍超過したが,廃パネル骨材の Sb 溶出量は指針値を満足した。廃パネル骨材が含有量基準 ・溶出量基準を満足したことにより,利用模擬試料も含有量基準・溶出量基準を満足した。よって,今回対象とした廃太陽光パネルセルをコンクリート用細骨材として用いた場合,骨材,利用模擬試料どちらで評価しても環境安全上利用が可能であるといえた。
著者
土手 裕 関戸 知雄 原田 秀樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第33回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.201, 2022 (Released:2022-11-30)

太陽光パネルから分離されたカバーガラスおよび資源回収残渣の混合物をコンクリート用骨材として利用した場合の環境安全性評価を目的として、溶出試験および含有量試験を行った。エッチングと湿式分離を比べると湿式分離の方がPbの基準値超過の程度が小さいため、エッチングよりも湿式分離の方が優れていると言えた。 廃パネル骨材の原料となる湿式分離残渣のPb含有量が基準値を1.5倍超過した。しかし、廃パネル骨材のPb含有量は、カバーガラスと湿式分離残渣の混合による希釈効果により含有量基準を満足した。廃パネル骨材のPb以外の有害物質含有量も基準を満足した。 廃パネル骨材が含有量基準・溶出量基準を満足したことにより、廃パネル骨材を用いて作成された利用模擬試料も両方の基準を満足した。よって、廃パネルをコンクリート用骨材として用いた場合、骨材、利用模擬試料どちらで評価しても環境安全上再利用が可能であると言えた。
著者
原田 秀樹 酒井 紀行 松山 普一 飯島 正広 白間 英樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第33回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.195, 2022 (Released:2022-11-30)

太陽光発電システムは、再生可能エネルギーの旗手として2010年以降急速に普及し、さらに最近ではカーボンニュートラル政策が後押しとなり、導入に拍車がかかっている。一方でその保証年数である20年を過ぎる2030年頃から廃棄モジュールが大量発生することに対する懸念が社会問題となっている。それに対し我々はモジュール内の重量比で大部分を占めるガラスに対するマテリアルリサイクルの研究を行った。モジュールはガラスと樹脂および太陽電池セルが密着積層された構造となっており、ガラスを割らずにモジュールから回収する「パネルセパレータ」を開発した。またガラスに付着する樹脂残渣量をリサイクル可能なレベルで抑制し、さらにそれを維持する研究を行った。一方、回収したガラスの組成を分析し、含有する元素の把握とそれらに適合する用途の検討を行い、水平リサイクル用途、リユース用途の開拓を行った。
著者
伊藤 寿宏 押木 守 小林 直央 加藤 毅 瀬川 高弘 幡本 将史 山口 隆司 原田 秀樹 北島 正章 岡部 聡 佐野 大輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.III_305-III_313, 2016 (Released:2017-04-03)
参考文献数
25

本研究では、流入下水中のヒト腸管系ウイルス濃度分布、及びWHOが推奨する許容年間疾病負荷(10-6 disability-adjusted life years per person per year)に基づいて、定量的微生物リスク評価(quantitative microbial risk assessment: QMRA)の手法を用いて下水再生水の利用用途ごとにウイルス除去効率の目標値を算出する手法を構築・提案する。代表的なヒト腸管系ウイルスとしてノロウイルスに着目し、流入下水中のノロウイルス濃度モニタリングデータを使用することで、6種類の下水再生水利用シナリオにおけるノロウイルスの下水再生水中許容濃度及び除去効率の目標値を試算した。本研究で提案した方法により算出したヒト腸管系ウイルス除去効率目標値を使用する際には、下水再生システム稼動後においても未処理下水中のヒト腸管系ウイルス濃度をモニタリングすることが求められる。また、用量反応モデル情報の更新と、下水再生利用が行われる地域の状況に基づいた曝露シナリオとパラメータの更新についても継続して取り組むことが重要である。
著者
堆 洋平 李 玉友 原田 秀樹
出版者
日本水処理生物学会
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.57-75, 2008 (Released:2018-03-10)
参考文献数
143
被引用文献数
1

水素発酵法は,バイオマスもしくはバイオマスの加工工程から排出される有機性排水を原料とした生物学的水素生産方法であり,未来型水素エネルギー社会のための持続的な水素生産方法として注目されている。本稿は,水素発酵において重要なテーマである水素生成細菌および水素発酵プロセスに関する知見を整理し,最新の水素発酵の研究動向を紹介する。水素生成細菌に関しては,水素生成細菌の種類とそれらの水素生成能,水素生成細菌の集積方法,および混合水素発酵細菌群の構造解析に関する知見をまとめた。一方,水素発酵プロセスに関しては,既往研究で検討されてきた様々なタイプの反応槽による水素生成に関する知見,および水素発酵槽の後段にメタン発酵槽を設けた二相式水素・メタン発酵法に関する知見をまとめた。その上で今後の水素発酵の展望を述べた。
著者
上村 繁樹 大久保 努 野本 直樹 原田 秀樹
出版者
公益社団法人 日本下水道協会
雑誌
下水道協会誌 (ISSN:00214639)
巻号頁・発行日
vol.56, no.686, pp.114-120, 2019

<p> 本報では,インド国ウッタルプラデーシュ州アグラ市において建設された,処理水量5,000m<sup>3</sup>/dのDHS(Down-flow Hanging Sponge)実規模実験プラントで形成されたDHSスポンジ担体付着汚泥(アグラDHS担体汚泥)の性状について報告する.アグラDHS担体汚泥は,日本の通常の初沈流出下水で形成されたものと比較して,非常に粘土質で,汚泥濃度が約100g-DS/L-spongeと高く,そのうち60%近くを無機物質が占めていた.またその表面は<i>Thiothrix.</i> spからなる硫黄マットで覆われていた.アグラDHS担体汚泥の無機成分をX線回折と蛍光X線分析で解析した結果,主にカオリン類という粘土類が検出された.さらにアグラDHS担体汚泥に対する初沈流出下水の処理性能試験および水の浸透度試験を行った結果,カオリン類の蓄積の影響により,スポンジ担体への水の浸透が阻害され,DHSの処理性能に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された.</p>
著者
山口 隆司 原田 秀樹 桃井 清至 曽 怡禎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.499-510, 1995-06-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
39
被引用文献数
2 3

The ecological role of sulface-reducing bacteria (SRB) in anaerobic degradation of a long-chain fatty acid (LFA) was investigated using three anaerobic sludge consorita cultivated at different sulfate loading rates. The three kinds of sludge (referred to as Sludge A, B and C) were cultivated in a fill-and-draw mode for 100 days by feeding with plamitate as a major carbon source (feeding concentration : 1.0g COD·l-1), but with different levels of sulfate, i.e., 600mg-SO42-·l-1 for Sludge A, 300 for Sludge B, 0 for Sludge C.Degradation of palmitate into acetate in the presence of sulfate can be performed by either of the following three trophic groups : 1) symbiosis between palmitate-degrading proton-reducing acetogens (P-PRA) and hydrogen-utilizing SRB (H-SRB), 2) symbiosis between P-PRA and hydrogen-utilizing methanogens (H-MPB), 3) palmitate-oxidizing SRB (P-SRB). Three sludge consortia exhibited different behavior of palmitate degradation, depending on their sulfate loadings. As for Sludge A, the first group, P-PRA+H-SRB had the greatest contribution in palmitate degradation, and the extent of the second, P-PRA+H-MPB and the third, P-SRB were about half of the first, respectively. For Sludge B, P-PRA+H-MPB had the superior contribution over P-PRA+H-SRB and P-SRB. The lowest contributor, P-SRB was only one-tenth of the largest contributor, P-PRA+H-MPB. For Sludge C, palmitate degradation was accounted for only by P-PRA+H-MPB, and the contributions by P-PRA+H-MPB and P-SRB were negligible small.
著者
佐野 慈 増田 周平 李 玉友 西村 修 原田 秀樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_565-III_573, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究では,下水処理場における温室効果ガス排出特性を評価し,排出量低減対策を考察した.処理方式の異なる3箇所の下水処理場について季節毎に温室効果ガス排出量の実測調査を行い,各処理場における温室効果ガス排出係数を算定した.その結果,各処理場において電力消費に伴う温室効果ガス,汚泥焼却に伴うN2O及び下水処理過程におけるCH4が主要な排出源であった.また,処理方式や季節により現地におけるCH4,N2Oの排出特性は異なり,下水処理過程におけるCH4排出係数に水温との相関が見られるのに対し,下水処理過程におけるN2O排出は硝化・脱窒の有無や水温との相関,放流水による間接排出など複雑な要因が関わり,区分化の必要性が示唆された.さらに,調査結果を基に下水処理場における効率的な温室効果ガス低減対策について考察を行った.
著者
山内 正仁 今屋 竜一 増田 純雄 山田 真義 木原 正人 米山 兼二郎 原田 秀樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境工学研究論文集 (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.545-553, 2005

To help develop a technology for the conversion of the solid matter contained in sweet potato shochu lees, which is a food industrial waste, into a new resource, a study was conducted on the use of dried shochu lees as a nutrient material in the culture medium of hiratake mushrooms (Pleurotus ostreatus). Mushroom cultivation could be shortened by 4-8 days by using the shochu lees medium in lieu of the conventional rice bran medium. The mean yield in a test plot with 60% shochu lees was 137g, which was 1.6 times the yield from rice bran medium. Moreover, hiratake cultured in the shochu lees medium contained more protein than mushrooms grown on rice bran medium, indicating that the use of dried shochu lees could make it possible to commercially produce mushrooms with higher protein contents than conventionally grown mushrooms and open a way for large-scale utilization of shochu lees.
著者
久保田 健吾 林 幹大 松永 健吾 大橋 晶良 李 玉友 山口 隆司 原田 秀樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.56-64, 2010 (Released:2010-03-19)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

都市下水を処理しているUASB-DHSシステムのG3型DHSリアクターの微生物群集構造をrRNAアプローチを用いて解析した.クローン解析による結果はリアクター上・中・下部において微生物群集構造が異なっていることを示しており,微生物多様性はリアクター上部において最も低かった.定量Real-time PCR法による各種微生物のrRNA遺伝子の定量結果は,アンモニアおよび亜硝酸酸化細菌の存在率がリアクター中・下部に行くにつれて増加することを示していた.リアクター上部からのアンモニア除去は,活性汚泥と同程度以上のアンモニア酸化細菌群の存在率に加え,DHSリアクターの高い汚泥保持能力および酸素供給能力に由来する可能性が示唆されるなど,除去メカニズムに関する知見を得ることが出来た.
著者
細谷 泰久 西田 修 原田 秀樹 日下 輝年 波田 重英 坂 洋一 堀井 充 大野 辰治 杉山 建生 井上 文彦 中井 妙子 水本 孝 古川 裕夫
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.298-300, 1995-02-10
被引用文献数
3

症例は生来健康な32歳男性.平成5年1月30日早朝より右上腹部痛を自覚し当院受診.血液,尿検査にて白血球11100/μl,逸脱膵酵素の上昇(血中アミラーゼ3128U,尿中アミラーゼ65000U)を認め,腹部USおよびCT検査で膵頭部の腫大,上腸間膜静脈から門脈本幹に拡がる血栓を認めた.急性膵炎及びそれに伴う門脈血栓症と診断し,膵炎の治療と並行してヘパリンの投与を行い門脈血栓の消失を確認した.急姓膵炎の経過観察において腹部USおよびCT検査が有用であるが,その実施に当たっては,門脈血栓の合併の可能性をも考慮する必要があると思われた.