著者
那谷 雅之 井上 裕匡
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高温多湿環境下ラットの心筋及び脳幹における遺伝子発現量を定量した。心筋では直腸温上昇と共にHSP70 発現量は増加する一方で、42℃-44℃上昇間に Bcl-2/Bax は減少、β-MHC は増加した。脳幹では、直腸温上昇に伴いHSP70 は増加する一方で、iNOSは低下した。Bcl-2/Bax は37℃から42℃までは明らかな変化を示さなかったが、42℃-44℃間では有意に低下した。過度の体温上昇は心臓・脳幹の形態学的・機能的障害を引き起こす可能性を示唆していると考えられた。
著者
岡本 梢 井上 裕匡 堤 仁勢 才本 由美 石野 真輔 辻 吉郎
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.25-31, 2020 (Released:2020-01-10)
参考文献数
28

回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)は低栄養患者が多いとされ、本研究では当院回復期リハ病棟で提供される食事が栄養学的に適正か否かを検討した。 入院後2週間の食事摂取量から計量した1日平均摂取エネルギー量、たんぱく質量をそれぞれ標準体重で除しEおよびPとした。入院時BMIからUW群(BMI<18.5kg/m²)、NW群(18.5≦BMI<25kg/m²)、OW群(BMI≧25kg/m²)に3分類し、入院2週間後で体重が1.5%以上減少したD群、体重が1.5%未満減少もしくは増加したND群に細分類した6群間のE、P、平均年齢、FIM効率等を比較した。 E、PはOW-ND群で有意に高く、平均年齢はUW-D群で有意に高かった。 FIM効率はNW-ND群で高い傾向を示した。 FIM効率の観点から、肥満傾向の患者には入院直後から標準体重を目標とした減量が望ましい。一方、高齢の患者には摂取量低下を考慮した上で必要エネルギー量を確保する必要がある。
著者
井上 裕匡
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

熱中症診断の有効な所見として肺脂肪塞栓の有無が利用できるか否かを昨年度より解剖症例数を増やし検討した結果、肺脂肪塞栓は熱中症の陽性所見よりはむしろ生前の高温暴露を示唆する所見として有用である可能性が示された(現在投稿中)。これまでは熱中症診断は除外診断として行われてきたが、今回の結果より肺脂肪塞栓はこれまで死後の高体温でしか証明なしえなかった生前の高温暴露を示唆する所見として利用可能であり、熱中症診断の上で非常に有用な所見であると考える。一方、これまで肺脂肪塞栓の原因として指摘されていなかった病態においても肺脂肪塞栓が見られており、このことは肺脂肪塞栓が高温暴露以外にも死者の生前の状態を示唆する所見として利用できる可能性を示している。しかし、これらで見られた肺脂肪塞栓は致死的なものではなくいずれにおいても直接死因が肺脂肪塞栓であることは否定的である。肺脂肪塞栓が直接死因となるには実験的には60ml程度の脂肪の流入が必要であり、骨盤骨折など広範囲の骨折を生じるものではそれによって生じた肺脂肪塞栓症が直接死因の可能性もあることを示した。しかし、法医解剖事例では実際は20ml程度でも死亡しうるといわれており、この実験的肺脂肪塞栓との差は肺脂肪塞栓を生じる原因となった損傷や疾病によって引き起こされる炎症反応などの生体反応の状態に影響を受けていると仮説を立て、現在検証中である。
著者
辻 彰子 石河 淳 井上 裕匡 Kudo Keiko Ikeda Noriaki
出版者
福岡医学会
雑誌
福岡医学雑誌 (ISSN:0016254X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.76-80, 2005-03-25
被引用文献数
1

We performed a paternity test without the alleged father, who was deceased, and we found a mismatch in one of the alleles of the autosomal short tandem repeat (STR) locus D3S1358 in the illegitimate daughter. DNA genotypes of the dead alleged father were estimated from the DNA genotypes of his wife and their four children. The ABO genotype, the DXS10011 locus and the calculations using the 12 STR loci and the D1S80 locus, but not the STR locus D3S1358 suggested that there was a high probability that the dead alleged father was in fact the actual biological father. The genotype of locus D3S1358 of the dead alleged father, the illegitimate daughter's mother and the illegitimate daughter was 15/17, 15/17 and 15/18, respectively. PCR and sequencing after TA cloning of allele 17 of one of the children who had only a homozygote of allele 17, of allele 17 of the illegitimate daughter's mother and of allele 18 of the illegitimate daughter revealed that allele 18 which was considered to be a mutated allele had one more repeat of (GATA) within the first repeat region.擬父が既に死亡している親子鑑定を実施した.妻と4人の嫡出子のDNA型から推定した擬父の型と妻でない女性を母とした非嫡出子の12種類のSTR型においてD3S1358座位のみで不一致を認めた.ABO式血液型の遺伝子型とX-STR型のDXS10011座位およびD3S1358座位を除く他の座位におけるDNA型による父権肯定確率は擬父がこの非嫡出子の生物学的父親であることを示していた.D3S1358座位における遺伝子型は擬i父,非嫡出子の母共に15/17であったが,非嫡出子は15/18であった.i擬父の対立遺伝子17が遺伝していると考えられる娘と非嫡出子およびその母のD3S1358座位のクローニングおよびシークエンスにより,非嫡出子の対立遺伝子18は(GATA)の繰り返しが一回多い突然変異であることが判明した.