著者
仲本 桂子 渡邉 早苗 工藤 秀機 ノパラタナウォン サム 蒲原 聖可 ラダック ティム 土田 満 宮﨑 恭一 サーシャン ディリープ 田中 明
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.267-278, 2013 (Released:2013-04-18)
参考文献数
36

ベジタリアンの研究によると、ベジタリアンは、ビタミン B 12、 ビタミンD の摂取量が非ベジタリアンより有意に低く、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンB 2 、n-3 系多価不飽和脂肪酸(以下、n-3 系脂肪酸)の低摂取が懸念される。そこで、日本人用ベジタリアンフードガイド(JVFG)を用いて、日本人ベジタリアン男性(n=24)と女性(n=60)を対象に、栄養教育を行い、栄養状態の改善を試みた。 JVFG の栄養教育の介入前と後に、食事記録法による食事調査を行った。うち、16 名に対し、身体計測および血糖、尿酸、アルブミン/グロブリン比(A/G)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、無機リン、鉄、総コレステロール、高比重リポたんぱくコレステロール、中性脂肪、ヘモグロビン(Hb)、プレアルブミンの血液生化学検査も行った。 結果、ベジタリアンで低摂取が懸念された栄養素のうち、女性において、ビタミンB 2(p<0 . 05)、亜鉛(p<0 . 01) の摂取が有意に増加した。しかし、ビタミンA、ビタミンD、ビタミン B 12、カルシウム、n-3 系脂肪酸の摂取量に有意な増加は見られなかった。身体・血液生化学成績では、女性においてA/G(p<0 . 01)、カルシウム、Hb(p<0.05)が有意に増加し、血糖(p<0.01)、尿酸、上腕三頭筋皮下脂肪厚(p<0.05)は有意に低下した。 以上より、日本人ベジタリアン、特に、女性において、JVFG の栄養教育介入により、栄養状態が変化することが示唆された。
著者
新保 みさ 串田 修 鈴木 志保子 中村 丁次 斎藤 トシ子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.333-341, 2022 (Released:2022-06-01)
参考文献数
19

本研究では、日本栄養士会(栄養士会)の未入会者および栄養士会主催の研修会非参加者の特徴を調べることを目的に、2018年11~12月にインターネット上で横断的な自己記入式質問紙調査を行った。対象者は就業資格を必要とする15,133人だった。調査項目は属性、栄養士会入会有無と理由、栄養士会主催の研修会参加有無と理由とした。栄養士会の未入会者は入会者と比べて、年齢が低く、所有資格が栄養士のみで、最終学歴が大学、雇用形態が派遣や契約社員、勤続年数や年収が低い、勤務先が小・中学校、受託給食、保育所幼稚園等の者が多かった。未入会理由は会費が高いことや忙しい、栄養士会の活動を知らない等が多かった。研修会非参加者も参加者と比べて、未入会者と同様の特徴がみられた。研修会の非参加理由には、日程が合わないことを挙げる者が多かった。栄養士会の未入会者および研修会非参加者は年齢、雇用形態、勤続年数、年収、勤務先等に共通の特徴が見られた。
著者
須藤 紀子 澤口 眞規子 吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.349-355, 2010 (Released:2011-12-27)
参考文献数
41

災害時の栄養・食生活支援活動の参考となるように、被災者の栄養リスクについての知見をまとめた。被災のようなライフイベント発生時には、ストレスによる食欲低下と共に、食事やその準備にかけられる時間の減少、調理意欲の低下によって、食事摂取量が減少する。しかし、時間や調理意欲のなさに、ファストフードやインスタント食品を選択することによって対応するとエネルギー摂取量は増加する。ストレスが慢性化すると、ストレスからの回復をめざして食欲は増進する。ストレス対処行動として菓子類の摂取が増加するので、摂り過ぎに注意が必要である。ストレス負荷時は脳のエネルギー源となる糖質と必須アミノ酸を含む良質なたんぱく質を十分に摂取する必要がある。微量栄養素では、生鮮食品を含む多様な食品を摂取することで、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC を確保する。特に平常時から不足しがちな鉄とカルシウムには注意が必要である。
著者
中東 教江 山縣 誉志江 栢下 淳
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.289-293, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
10

本研究では、舌圧を評価することにより食形態を決定することが可能かどうかを検証することを目的とし、合わせてどの施設でも測定可能な握力との関連性を検証した。健常な高齢者と、病院や施設に入院・入所している高齢者を対象に、簡易型舌圧測定装置を用いて舌圧を評価し、食形態や握力との比較を行い、その関連性を検討した。その結果、入院・入所している高齢者では、舌圧と握力は年齢とともに低下した。食形態の違いによる舌圧の差は認められなかったが、握力が20kgまたは舌圧が35kPaを上回ると、常食を摂取できることが示唆された。
著者
佐久間 直緒美 名倉 秀子 山本 茂
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.327-335, 2021 (Released:2021-06-01)
参考文献数
27

文部科学省から『栄養教諭を中核としたこれからの学校の食育』が2017年3月に交付され、全国で食育が推進されている。本研究は、栄養教諭が行った担任への食育サポートによる効果を検証することを目的とした。対象は児童数約600人、一般級担任(以下、担任)18人の小学校とし、栄養教諭が業務上作成した記録簿の食育に関する項目について、2014年度から3年間を調査した。意欲的に食育に取り組んだ担任数は、2015年度の3人(16.7%)から2016年度の11人(61.1%)と有意に増加した(p<0.01)。異動の無かった12人のうち、食に関する指導実践「有り」の担任数は、2014年度の2人(16.7%)が2016年度に12人(100%)と有意に増加した(p<0.001)。また、同担任の学級残食率2%以下は、2014年度の1人(8.3%)が2016年度に11人(91.7%)と有意に増加した(p<0.001)。栄養教諭が担任に食育サポー トしたことにより、意欲的に食育を行う担任数と食に関する指導実践担任数が増加し、給食の残食率が減少することが明らかになった。
著者
深津 章子 宮本 佳代子 諸澤 美里 大久保 研之 池本 真二
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.673-681, 2022 (Released:2022-12-01)
参考文献数
53

低炭水化物食への注目が続く中、その効果と安全性を担保する栄養指導の実践方法は、十分に確立されていない。本ナラティブ・レビューは、低炭水化物食に関する研究結果を見る要点を整理するとともに、低炭水化物食の功罪を概論した上で栄養指導の方法論を提言する。低炭水化物食の研究で用いられる食事の炭水化物量には幅があり、比較対照には種々の食事が用いられる。また、対象者の脱落や食事の遵守度の低下は食事療法の評価を難しくする。低炭水化物食の体重減少や糖尿病管理への効果は、長期的には低脂質食等他の食事に比べて差異は見られない。低炭水化物食は高脂質、高たんぱく質、食塩過多になりやすく、動脈硬化性疾患の危険性が懸念される。食生活に取り入れやすい利点を生かすためには、炭水化物の摂取量を示した上で、植物性たんぱく質や多価不飽和脂肪酸を炭水化物の代替としたり、減塩したりする等の丁寧な指導が不可欠である。
著者
西村 一弘
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.447-453, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
18

WHO(世界保健機関)は、糖類(フリーシュガー)摂取の増加が世界各国の人々の健康に及ぼす影響(非感染性疾患の増加)を懸念し、「糖類摂取ガイドライン」を2015年に公表した。本ガイドラインは、糖類の具体的な推奨摂取量を示しており、肥満とう蝕を対象に行ったシステマティックレビュー(SR)がその科学的根拠となっている。 著者はSRの詳細を原著論文で確認し、次の点を見出した。(1)メタ解析の結果、糖類摂取を増やすことでエネルギー摂取が増える場合に肥満が起きたが、糖類を他の炭水化物に置き換えた(エネルギー摂取が増加しない)場合には体重は変化しなかった。(2)本ガイドラインの摂取推奨量は、糖類とう蝕に関するSRから導き出されたものであり、そのエビデンスの一部には信頼性の乏しいものも含まれていた。 本ガイドラインはわが国の栄養政策においても参考とされるものであり、本稿ではわれわれ栄養士が本ガイドラインをどのように捉えるべきかを日本人の健康状況と併せて考察する。
著者
岡田 昌己 曽我部 夏子 田邉 解 高田 安希子 宮本 雄基 西村 一弘
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.567-572, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
17

日本女子サッカーリーグ1部のチームに所属する選手に、食生活に対する意識等の調査を行った。平日の日中は学業に励む学生が多く、競技以外の仕事に従事する社会人もいるチームであることから、練習後の夕食に求めることについて調査した。平日の夜の練習後の食事に求めることとして、「疲労回復に効果的」、「栄養のバランスがよい」、「おいしさ」を挙げた選手がそれぞれ56%であった。さらに、「たんぱく質が十分にとれる」が39%であったが「エネルギーが十分にとれる」は17%であった。食生活、体調管理で気を付けていることに関する自由記述でも、食事量についてはエネルギーを多くとることを意識している選手がいる一方、食べ過ぎないことを意識している選手もいることが示された。食事に関して知りたいことを尋ねたところ、「自分に適した食事量」が約60%で最も多く、次いで「自分に適した食事内容」、「試合前日に適した食事」であった。体調に関して知りたいことは「疲労回復」が最も多く67%、「コンディション維持」、「貧血予防」の順であった。 本調査は、1つのクラブチームの横断研究ではあるが、他競技の女性アスリートの栄養サポートや食環境支援構築のための資料となると考える。
著者
藤岡 由美子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.316-325, 2016 (Released:2017-09-26)
参考文献数
27

「栄養ケアプロセス」 および 「標準用語」 を管理栄養士・栄養士が正しく理解し実践できるようになるには、大学教育に採用することが有効だと考え栄養ケアプロセスを授業で実践した。平成23~25年における臨床栄養学実習の初回と最終回に栄養ケアプロセスの栄養診断を実施し、臨床症例の栄養学的問題を標準用語から選択させ、最終回に栄養診断と標準用語を使用する利点や懸念について考察させた。学生はどちらの回もおおむね妥当な栄養学的問題を標準用語から選択した。利点では国際的な標準化により管理栄養士・栄養士の役割と責任が明確化し、管理栄養士・栄養士や施設間の連携が促進されることが挙げられた。懸念では不十分な理解では標準用語を適切に選択できないという不安や、正確に理解するための努力や訓練が不可欠という課題が挙げられた。今後、本邦において栄養ケアプロセスおよび標準用語を普及させるためには、大学教育や生涯教育における積極的な実践が期待される。
著者
北林 紘 伊藤 直子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.585-591, 2015 (Released:2015-07-28)
参考文献数
41
被引用文献数
1

リン摂取量は、国民健康・栄養調査結果と食品分析による実測値では乖離している可能性がある。この一因として、食品標準成分表では包括化されている食品の存在が考えられる。今回、風味調味料に焦点を当てリン含有量を測定したので報告する。風味調味料9種類、計23製品の可食部100 g当たりのリン含有量をバナドモリブデン酸吸光光度法により測定した。風味別によるリン含有量の差を確認するために、Tukey-Kramer法で、かつお、こんぶ、煮干し、しいたけ、鳥がらの多重比較を行った。また、化学調味料の添加有無によるリン含有量の差を確認するために、Mann-Whitney検定を行った。煮干しはかつお、しいたけ、鳥がらと比較してp<0.05、こんぶと比較してp<0.01で有意にリン含有量が多かった。化学調味料有無では、無は有と比較して有意にリン含有量が多かった(有258±206 mg、無785±566 mg、p<0.05)。風味調味料のリン含有量は、風味の種類また化学調味料の使用有無により異なっていた。
著者
楠 あかね 森脇 志織 神原 知佐子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.211-218, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
23

中規模病院に勤務する管理栄養士・栄養士の職務満足度およびワーク・ライフ・バランス(WLB)の現状を把握し、それらに関連する要因を検討することを目的として、アンケート調査を行った。152施設396人(うち97.5%が管理栄養士)から回答を得た。中規模病院に勤務する管理栄養士はおおむね健康な状態で、業務の内容・量をある程度負担と感じながらも、同僚や患者との関係性が良好であり、仕事が自分の能力を生かし、向上できるものであると感じていた。職務満足度の中央値(四分位範囲)は70.0(50.0~80.0)/100点で、重回帰分析の結果、最も影響を与えていた項目は「現在の仕事は、能力向上の機会になっている」であった。WLB満足度の中央値(四分位範囲)は60.0(40.0~80.0)/100点で、最も影響を与えていた項目は「職務満足度」であった。職務満足度とWLB満足度は相互に影響を与える関係にあることが示唆された。
著者
岡井 いくよ 近藤 厚生
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.591-596, 2019 (Released:2019-10-25)
参考文献数
27

神経管閉鎖障害の発生リスクは葉酸サプリメントの摂取で40~70%低減可能である。2000年に旧厚生省は妊娠を計画中の女性に葉酸サプリメント0.4mg/日の摂取を勧告したが、脊髄髄膜瘤の発生率に低下傾向を認めない。本論文の目的は管理栄養士の葉酸認知率の推移を調査し、過去2回の調査データと比較し、現状を明らかにすることである。200人の管理栄養士へ質問票を郵送し、70人(35.0%)が回答した。葉酸サプリメントが神経管閉鎖障害を予防することは75.7%が認知していた。葉酸サプリメントを推奨していたのは37.1%、栄養バランスの取れた食事を推奨していたのは87.1%であった。国民へ葉酸情報を提供することは92.9%が必要と回答し、禁煙、禁酒を推奨していたのはおのおの78.6%と75.7%であった。ハイリスク群の女性は10倍量の葉酸(4mg/日)を必要とすることを、12.9%が認知していた。管理栄養士・栄養士の葉酸効果の認知率は10年、15年前に比較して有意に上昇していた(p<0.01)。成人女性が食事から摂取する葉酸量はおおむね240µg/日であり、神経管閉鎖障害を予防するには不十分である。したがって管理栄養士・栄養士は葉酸サプリメント0.4mg/日の摂取を推奨するべきである。
著者
吉川 亮平 小原 香耶 三浦 士郎 小林 信周 吉田 光宏
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.381-386, 2020 (Released:2020-07-01)
参考文献数
27

認知症高齢者は認知機能の障害とそれに伴う行動心理症状により転倒リスクが高く、転倒による骨折が患者の生活の質のみならず、認知症進行への関与が予想されることからも、骨量の評価は極めて重要と考えられる。本研究では、独立行政法人国立病院機構北陸病院の認知症外来受診者における骨量の実態を調査するとともに、栄養状態等との関連性について検討を行った。骨量の評価には超音波骨密度測定装置を用い、踵骨部における音響的骨評価値(OSI)を測定した。対象者の平均OSIは、男女ともに若年成人平均値よりも著しい低値を示した。OSIを目的変数とした重回帰分析の結果、男性ではBMIとヘモグロビン濃度、女性では年齢、赤血球数、手段的日常生活動作が寄与因子として認められた。認知症外来受診者のOSIが低値であることを認め、骨粗鬆症対策や転倒予防の重要性が示唆された。また、男性は骨量と栄養状態に関連性を認めたが、女性は外来受診時の骨量と栄養状態に顕著な関連性は見られず、若年時からの一次予防が重要であると考えられた。
著者
串田 修 新保 みさ 鈴木 志保子 中村 丁次 斎藤 トシ子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.581-588, 2021 (Released:2021-10-02)
参考文献数
33

本横断研究では、全国の管理栄養士と栄養士を対象に、基本属性、就業状況と職務満足度を把握し、両者の関連を検討することを目的とした。2018年11月にインターネット調査を実施し、就業資格を必要とする15,133人を解析対象者とした。基本属性では、性別・年齢・最終学歴・勤務地域・日本栄養士会の入会有無・研修会の参加回数を、就業状況では、所有資格・就業有無・就業資格・資格手当・優遇措置・雇用形態・実勤務先・勤務年数・年収を尋ねた。職務満足度は、5項目の尺度で評価した。尺度の得点を合計した結果、職務に満足している者は73.9%であった。職務満足度の高さには、年齢の高さ、大学等の卒業、勤務地域、日本栄養士会の入会、研修会の参加、管理栄養士の資格所有、昇給制度等の優遇措置、勤務年数や年収の多さ、勤務先が関係していた(全てp <0.05)。標本の代表性に課題があり、属性を限定した無作為抽出による追試も必要である。
著者
前田 佳予子 手嶋 登志子 中村 育子 田中 弥生
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.648-656, 2010 (Released:2011-12-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

介護保険における居宅療養患者の訪問栄養食事指導の実施率を上げるためには、管理栄養士の在宅に対しての意識向上および、利用者のケアプランを作成するケアマネジャーや主治医に、訪問栄養食事指導の重要性や役割を普及啓発することを目標とする必要がある。 今回、われわれは訪問栄養食事指導を導入することにより効果があると多職種に理解されてもなぜ、実施率が低いのか、その原因を明らかにするために調査研究を行った。 調査方法としては、無作為に抽出した700 人にインターネットによるリサーチを行い、回答期間を平成20 年4月24 日11 時から5 月8 日19 時までとし、623 人(89 . 0%)から有効回答を得た。 食事や栄養の課題がケアプランに挙がると答えたケアマネジャーは554 人で、ケアプランに挙がってくる課題は1)嚥下障害、2)治療食の調理が困難、3)食事摂取量の低下による褥瘡、低栄養、4)PEG 等の経管栄養管理であり、これらの課題は訪問栄養食事指導を導入することによる経済効果の見られる項目とほぼ同じであった。
著者
青木 るみ子 山﨑 正幸 朝見 祐也
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.269-280, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
24

本研究は、2000~2018年の過去19年間の食中毒総数と、このうち給食施設を原因施設とした食中毒、および給食施設と不明を除く給食施設以外の施設を原因施設とした食中毒について、食中毒発生状況(厚生労働省発表)を用いて分析し、その動向について考察した。食中毒発生状況の結果をもとに、事件数、患者数、1事件あたり患者数について分析を行った結果、給食施設では事件数および患者数共に分析期間Ⅰ期(2000~2007年)からⅡ期(2008~2018年)にかけて有意に減少していたが、1事件あたり患者数に減少は認められず、なおかつ、給食施設以外と比較して有意に多かった。また、給食施設における事件数および患者数が食中毒総数に対して占める割合はごく小さかった。さらに、給食施設で発生した事件数および患者数に対して、その原因施設の多くは中小規模に相当する摂食者数300人未満の給食施設であり、また、当該施設における事件数および患者数の約半数が老人ホームと保育所によって占められているという現状を示すことができた。以上のことから、特に中小規模に相当する給食施設を対象とした、衛生管理の実態把握が必要であると考えられた。
著者
石川 みどり 阿部 絹子 秋山 有佳 祓川 摩有 山縣 然太朗 山崎 嘉久
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.269-275, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
21

学童期の食の課題を見据えた幼児への食支援事業の事例から、継続的な支援に重要な事項を検討した。方法は、幼児への支援組織(保健センター・保育所等)と学童への支援組織(小学校等)の両者の協力で活動を実施する市区町村を抽出し、自治体の代表者(事業責任者または担当者)にインタビュー調査を実施した。発言内容の音声データを逐語化した後、質的研究手法を応用して分析した。その結果について、事業名、ねらい、対象、事業内容に整理した。その後、幼児期・学童期の両者ともに重要と考えられている指標を抽出した。その結果、7事業の事例を得た。子どもの野菜嫌い改善のための市民への調理教室、小学校入学後を考慮した幼児の給食体験、市が開発した食事の適量の教育、幼児健診に活用できる栄養相談票の開発等が見られた。重要な指標には、偏食の減少、食事の適量の理解、野菜摂取の増加、食事の栄養バランスの理解、朝食欠食の者の減少、食事を楽しむ者の増加が見られた。
著者
樫野 いく子 溝上 哲也 由田 克士 上西 一弘 長谷川 祐子 斉藤 裕子 青柳 清治 倉貫 早智 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.445-450, 2018 (Released:2018-07-26)
参考文献数
12

国民一人ひとりが健康的な食品を特定し、選択することは容易ではない。近年、栄養素密度に基づき食品をランク付けする栄養プロファイリングモデルが各国で開発されている。しかし、わが国ではこのような概念による食品の評価は十分に行われていない。そこで、日本食品標準成分表2015年版に掲載された食品を対象に食品のランク付けを行った。積極的な摂取が推奨される9つの栄養素と、摂取量を制限すべき3つの栄養素を用いて高栄養素食品指数9.3 Nutrient-rich food index 9.3(NRF9.3)を各食品100kcal当たりで算出した。その結果、藻類、野菜類、きのこ類、豆類の食品群順にNRF9.3が高かった。また、同食品群内でも栄養価の高い食品と栄養価の低い食品を区別することができた。食品を購入する際に、栄養価のより高い食品を選択する、あるいは同食品群内で代替食品を選択するにあたり、本指数を参照することは有用であるかもしれない。
著者
小嶋 汐美 福島 弘子 白木 まさ子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.83-89, 2020 (Released:2020-02-01)
参考文献数
15

保育園児を対象に、色変わりチューインガムを用いて咀嚼力測定を行い、咀嚼力の違いと児の属性、食事の状況、子どもの咀嚼に対する保護者の意識等との関係を調べた。兄弟・ 姉妹数が2人よりも1人または3人以上の児、また女児より男児の咀嚼力が高い傾向にあっ た。咀嚼力が高い児は硬い食品から軟らかい食品まで幅広く食べていたが、咀嚼力が低い児は、軟らかい食品に偏り気味であった。今回の試みは、児の噛むことへの関心を高め、また保護者自身や子どもの咀嚼や食に関する意識を変え、咀嚼力を高める取り組みを促す 効果があったと考える。
著者
木口 智美 石原 由香 多田 由紀 古庄 律 内藤 信 日田 安寿美 川野 因
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.415-422, 2012 (Released:2012-05-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1

学校給食は食育を行う場として重要な役割を担っているが、残食の要因についての報告は少ない。給食の喫食時間の短さは残食率の高さと関連すると考えられるが、実際に給食の喫食時間と残食の関連を検討した研究は見られないため、その関連性を検討した。自校給食の小学校で、全25 学級を対象とした22 日間の残食量および給食の喫食時間の測定、児童844 名を対象としたアンケートを行った。その結果、対象校の残食率の平均値は4 . 3± 3 . 7% であった。給食の喫食時間(片付け時間も含む)は、残食率との間には有意な正の相関を示し、アンケートで給食をいつも全部食べると回答した児童の割合との間には、有意な負の相関を示した。一方で、給食を残すと回答した児童は、給食時間が短いと感じている割合が給食をいつも食べる児童より有意に多かった。したがって、給食を全部食べる児童は食べる速さが速く、そのような児童が多い学級は喫食時間が短くなると考えられた。しかしながら、給食を残す児童にとっては、喫食時間の短さが残食の一因となっていることが示唆された。