著者
仲本 桂子 渡邉 早苗 工藤 秀機 ノパラタナウォン サム 蒲原 聖可 ラダック ティム 土田 満 宮﨑 恭一 サーシャン ディリープ 田中 明
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.267-278, 2013 (Released:2013-04-18)
参考文献数
36

ベジタリアンの研究によると、ベジタリアンは、ビタミン B 12、 ビタミンD の摂取量が非ベジタリアンより有意に低く、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンB 2 、n-3 系多価不飽和脂肪酸(以下、n-3 系脂肪酸)の低摂取が懸念される。そこで、日本人用ベジタリアンフードガイド(JVFG)を用いて、日本人ベジタリアン男性(n=24)と女性(n=60)を対象に、栄養教育を行い、栄養状態の改善を試みた。 JVFG の栄養教育の介入前と後に、食事記録法による食事調査を行った。うち、16 名に対し、身体計測および血糖、尿酸、アルブミン/グロブリン比(A/G)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、無機リン、鉄、総コレステロール、高比重リポたんぱくコレステロール、中性脂肪、ヘモグロビン(Hb)、プレアルブミンの血液生化学検査も行った。 結果、ベジタリアンで低摂取が懸念された栄養素のうち、女性において、ビタミンB 2(p<0 . 05)、亜鉛(p<0 . 01) の摂取が有意に増加した。しかし、ビタミンA、ビタミンD、ビタミン B 12、カルシウム、n-3 系脂肪酸の摂取量に有意な増加は見られなかった。身体・血液生化学成績では、女性においてA/G(p<0 . 01)、カルシウム、Hb(p<0.05)が有意に増加し、血糖(p<0.01)、尿酸、上腕三頭筋皮下脂肪厚(p<0.05)は有意に低下した。 以上より、日本人ベジタリアン、特に、女性において、JVFG の栄養教育介入により、栄養状態が変化することが示唆された。
著者
中東 教江 山縣 誉志江 栢下 淳
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.289-293, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
10

本研究では、舌圧を評価することにより食形態を決定することが可能かどうかを検証することを目的とし、合わせてどの施設でも測定可能な握力との関連性を検証した。健常な高齢者と、病院や施設に入院・入所している高齢者を対象に、簡易型舌圧測定装置を用いて舌圧を評価し、食形態や握力との比較を行い、その関連性を検討した。その結果、入院・入所している高齢者では、舌圧と握力は年齢とともに低下した。食形態の違いによる舌圧の差は認められなかったが、握力が20kgまたは舌圧が35kPaを上回ると、常食を摂取できることが示唆された。
著者
須藤 紀子 澤口 眞規子 吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.349-355, 2010 (Released:2011-12-27)
参考文献数
41

災害時の栄養・食生活支援活動の参考となるように、被災者の栄養リスクについての知見をまとめた。被災のようなライフイベント発生時には、ストレスによる食欲低下と共に、食事やその準備にかけられる時間の減少、調理意欲の低下によって、食事摂取量が減少する。しかし、時間や調理意欲のなさに、ファストフードやインスタント食品を選択することによって対応するとエネルギー摂取量は増加する。ストレスが慢性化すると、ストレスからの回復をめざして食欲は増進する。ストレス対処行動として菓子類の摂取が増加するので、摂り過ぎに注意が必要である。ストレス負荷時は脳のエネルギー源となる糖質と必須アミノ酸を含む良質なたんぱく質を十分に摂取する必要がある。微量栄養素では、生鮮食品を含む多様な食品を摂取することで、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC を確保する。特に平常時から不足しがちな鉄とカルシウムには注意が必要である。
著者
石川 みどり 阿部 絹子 秋山 有佳 祓川 摩有 山縣 然太朗 山崎 嘉久
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.269-275, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
21

学童期の食の課題を見据えた幼児への食支援事業の事例から、継続的な支援に重要な事項を検討した。方法は、幼児への支援組織(保健センター・保育所等)と学童への支援組織(小学校等)の両者の協力で活動を実施する市区町村を抽出し、自治体の代表者(事業責任者または担当者)にインタビュー調査を実施した。発言内容の音声データを逐語化した後、質的研究手法を応用して分析した。その結果について、事業名、ねらい、対象、事業内容に整理した。その後、幼児期・学童期の両者ともに重要と考えられている指標を抽出した。その結果、7事業の事例を得た。子どもの野菜嫌い改善のための市民への調理教室、小学校入学後を考慮した幼児の給食体験、市が開発した食事の適量の教育、幼児健診に活用できる栄養相談票の開発等が見られた。重要な指標には、偏食の減少、食事の適量の理解、野菜摂取の増加、食事の栄養バランスの理解、朝食欠食の者の減少、食事を楽しむ者の増加が見られた。
著者
樫野 いく子 溝上 哲也 由田 克士 上西 一弘 長谷川 祐子 斉藤 裕子 青柳 清治 倉貫 早智 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.445-450, 2018 (Released:2018-07-26)
参考文献数
12

国民一人ひとりが健康的な食品を特定し、選択することは容易ではない。近年、栄養素密度に基づき食品をランク付けする栄養プロファイリングモデルが各国で開発されている。しかし、わが国ではこのような概念による食品の評価は十分に行われていない。そこで、日本食品標準成分表2015年版に掲載された食品を対象に食品のランク付けを行った。積極的な摂取が推奨される9つの栄養素と、摂取量を制限すべき3つの栄養素を用いて高栄養素食品指数9.3 Nutrient-rich food index 9.3(NRF9.3)を各食品100kcal当たりで算出した。その結果、藻類、野菜類、きのこ類、豆類の食品群順にNRF9.3が高かった。また、同食品群内でも栄養価の高い食品と栄養価の低い食品を区別することができた。食品を購入する際に、栄養価のより高い食品を選択する、あるいは同食品群内で代替食品を選択するにあたり、本指数を参照することは有用であるかもしれない。
著者
小嶋 汐美 福島 弘子 白木 まさ子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.83-89, 2020 (Released:2020-02-01)
参考文献数
15

保育園児を対象に、色変わりチューインガムを用いて咀嚼力測定を行い、咀嚼力の違いと児の属性、食事の状況、子どもの咀嚼に対する保護者の意識等との関係を調べた。兄弟・ 姉妹数が2人よりも1人または3人以上の児、また女児より男児の咀嚼力が高い傾向にあっ た。咀嚼力が高い児は硬い食品から軟らかい食品まで幅広く食べていたが、咀嚼力が低い児は、軟らかい食品に偏り気味であった。今回の試みは、児の噛むことへの関心を高め、また保護者自身や子どもの咀嚼や食に関する意識を変え、咀嚼力を高める取り組みを促す 効果があったと考える。
著者
木口 智美 石原 由香 多田 由紀 古庄 律 内藤 信 日田 安寿美 川野 因
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.415-422, 2012 (Released:2012-05-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1

学校給食は食育を行う場として重要な役割を担っているが、残食の要因についての報告は少ない。給食の喫食時間の短さは残食率の高さと関連すると考えられるが、実際に給食の喫食時間と残食の関連を検討した研究は見られないため、その関連性を検討した。自校給食の小学校で、全25 学級を対象とした22 日間の残食量および給食の喫食時間の測定、児童844 名を対象としたアンケートを行った。その結果、対象校の残食率の平均値は4 . 3± 3 . 7% であった。給食の喫食時間(片付け時間も含む)は、残食率との間には有意な正の相関を示し、アンケートで給食をいつも全部食べると回答した児童の割合との間には、有意な負の相関を示した。一方で、給食を残すと回答した児童は、給食時間が短いと感じている割合が給食をいつも食べる児童より有意に多かった。したがって、給食を全部食べる児童は食べる速さが速く、そのような児童が多い学級は喫食時間が短くなると考えられた。しかしながら、給食を残す児童にとっては、喫食時間の短さが残食の一因となっていることが示唆された。
著者
森岡 美帆 久保田 賢 中山 健夫
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.272-277, 2014 (Released:2014-06-02)
参考文献数
8

本報告は、高齢者施設に勤務する管理栄養士・栄養士が、栄養ケア・マネジメントにおけるデータベース作成に要するパソコンスキルを学ぶために行われた研修会の成果を述べたものである。研修会のプログラムを開発するに当たって、まず栄養ケア・マネジメントのデータベース作成に必須と考えられる10のパソコンスキルを抽出。そのプログラムを用いて、高齢者施設勤務の管理栄養士・栄養士を対象にパソコンスキルアップ研修会を実施した。研修会後に、パソコンスキルの習得度、習得したパソコンスキルの業務への活用度、フォローアップ研修の希望などを調査した。12施設から14人の管理栄養士・栄養士が研修会に参加した。データベース作成に必要な10スキルの既習得者はファイルコピーが最多(3人)であり、シリアル値、PHONETIC関数、リストから選択は0人であった。研修直後の調査では、ファイルのコピー(12人)以外の9スキルを全員(14人)が理解したと回答した。研修後、業務に生かしたいと回答したスキルは、基本情報の入力に関わるスキル(シリアル値、DATEDIF関数・TODAY関数、PHONETIC関数)で、参加者14人中10人と最も多かった。3週間後の追跡調査で9施設がデータベースを作成し始めていた。研修前の栄養管理ソフトの使用の有無と、研修後の新たなデータベース作成には関連は無かった。データベースを作成し始めた9施設を含む10施設がフォローアップ研修を希望した。以上から栄養ケア・マネジメントにおけるデータベース作成のための、パソコンスキルを習得するのに研修会は有用であることが示唆された。
著者
宮崎 純一 中川 幸恵 藤井 文子 原 純也 渡辺 啓子 石川 祐一
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.327-335, 2017 (Released:2017-09-26)
参考文献数
5

医療・介護における栄養情報の連携は十分とは言えない一方、適切な食形態での食事提供は、栄養状態の改善につながるとの報告があり、栄養管理情報を積極的に発信することが患者のQOL向上に寄与すると考えられる。そこで、栄養情報提供書の作成および研修会による認識の統一を図り、平成29年2月から平成29年3月までに 「医療栄養情報提供書」 を使用した13人を対象に、業務負担軽減への影響と栄養状態の推移を調査し、医療栄養情報提供書の有用性を検証した。栄養情報提供書の作成は普及しているとは言えず、必要性・有用性を実感した回答が得られたものの研修会後の作成率の上昇は見られなかった。しかし、医療栄養情報提供書の活用により、栄養管理計画・栄養ケアプランの作成時間が有意に短縮し、業務負担の軽減が認められた。さらに、栄養状態が改善した患者が46%と、栄養状態の維持のみならず改善も認められ、管理栄養士の記載に特化した標準化した医療栄養情報提供書の有用性が示唆された。
著者
藤岡 由美子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.316-325, 2016 (Released:2017-09-26)
参考文献数
27

「栄養ケアプロセス」 および 「標準用語」 を管理栄養士・栄養士が正しく理解し実践できるようになるには、大学教育に採用することが有効だと考え栄養ケアプロセスを授業で実践した。平成23~25年における臨床栄養学実習の初回と最終回に栄養ケアプロセスの栄養診断を実施し、臨床症例の栄養学的問題を標準用語から選択させ、最終回に栄養診断と標準用語を使用する利点や懸念について考察させた。学生はどちらの回もおおむね妥当な栄養学的問題を標準用語から選択した。利点では国際的な標準化により管理栄養士・栄養士の役割と責任が明確化し、管理栄養士・栄養士や施設間の連携が促進されることが挙げられた。懸念では不十分な理解では標準用語を適切に選択できないという不安や、正確に理解するための努力や訓練が不可欠という課題が挙げられた。今後、本邦において栄養ケアプロセスおよび標準用語を普及させるためには、大学教育や生涯教育における積極的な実践が期待される。
著者
伊藤 薫 Wolf Kay N.
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.422-427, 2009 (Released:2011-12-29)

アメリカにおける管理栄養士(registered dietitian;RD)教育制度を学ぶため、オハイオ州立大学で研修を行っている筆者が、現在のアメリカでの教育制度と日本における制度の相違を報告する。アメリカでのRD 養成プログラムには、学外実習900 時間(2009 年度からは1 , 200 時間に延長)が組み込まれており、アメリカでは実践教育を重要視している。アメリカのRD 教育には、アメリカ栄養士会(ADA)の関連機関である2 つの組織が関わっている。RD 養成大学についてはCommission on Accreditation of Dietetic Education(CADE) が大学教育について認定、管理運営を行い、資格認定試験と卒後教育はCommission on Dietetics Registration(CDR)が行っている。認定試験の内容は学外実習で実践して学んだ内容が主となっているため、実践活動を身につけることが大学教育では必要なことであり、アメリカの高いレベルの実践教育制度は、卒業後のRD としての即戦力と社会的地位の高さを保証しているあり方へもつながる。アメリカでは学生の段階でRD の実務を多く経験できることが、将来の就職先の選択や即戦力としての実務能力の向上に非常に重要である。
著者
酒井 理恵 山田 志麻 二摩 結子 濱嵜 朋子 出分 菜々衣 安細 敏弘 巴 美樹
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.28-37, 2014 (Released:2014-01-30)
参考文献数
32

通所利用在宅高齢者のMini Nutritional Assessment( MNA®)による栄養状態評価と身体状況(日常生活動作、体重、ふくらはぎ周囲長など)、現病歴・既往歴との関連について調査を行い、これらの関連を明らかにすることを目的とした。対象者は通所利用する要介護在宅高齢者78 名、平均年齢81.0 ± 7.29 歳。摂取栄養素量はエネルギー、たんぱく質を含む10 項目で有意に低値であり、体重の維持は低栄養状態の予防に繋がるため、食事量の維持が必要であると考える。また、体重とふくらはぎ周囲長は男女ともに正の相関関係にあり、筋肉量の維持には適度な運動を取り入れサルコペニア予防とともに低栄養予防に繋げる必要がある。さらに、在宅高齢者は定期的に栄養状態評価のスクリーニングを実施し、低栄養の指標となる体重低下やふくらはぎ周囲長の減少を早期発見し重症化を予防することが必要である。
著者
森 直子 小柏 道子 山下 式部 藤井 わか子 上田 伸男 本間 裕人 鈴木 久雄 益岡 典芳 汪 達紘
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.191-200, 2020 (Released:2020-04-01)
参考文献数
44

野菜・果物摂取に関する心理社会的要因について性・年齢階級別の特徴をまとめた。 2011年10月-2013年6月の間、中国地方と近畿・九州地方の一部および関東地方に在住する18歳以上の男女3,179人を対象に自記式調査にて横断研究を行った。 高齢世代ほど野菜・果物の自己申告摂取量が多く、野菜の自己申告摂取量が多い者は、全年代とも「自己効力感」および「態度」の得点が高く、「障害」の得点は低いことが分かった。一方、果物摂取に及ぼす同要因として、全年代で「自己効力感」および「態度」、18-20歳代では「社会的支援」が重要要因であると推定された。同要因オッズ比を見ると「責任」、「自己効力感」、「態度」、「障害」、「態度」および「知識」は女性で世代差がある一方で、男性では「態度」および「知識」以外には差がなかったことから、性・年齢階級別に差があることを考慮し野菜・果物摂取量増加に向けた取り組みをする必要がある。
著者
青山 高 親川 拓也 村岡 直穂 飯田 圭
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.135-142, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
28

本研究は1日推定食塩摂取量(随意尿)と食事習慣上の課題を用いて虚血性心疾患を有するがん患者の栄養指導の効果を判定した。対象は静岡がんセンター循環器内科において2018年4月から2019年3月までに塩分摂取過多が疑われる患者のうち初めて心臓カテーテル検査(CAG)を受け、次回診察日に栄養指導を実施できた18症例とした。栄養指導方法は塩分計量を用いず、食事習慣上に塩分が含まれている食品の使用頻度の改善を指導した。1日推定食塩摂取量と塩分コントロールの必要のある区分(食材、調理、食卓)の頻度を比較した。全18例(男性14例)の年齢は74才(50-85)であった。1日推定食塩摂取量が改善していたのは11例に見られ、非改善症例に比して塩分コントロールの必要のある区分のうち食材の頻度に相対的な減少が認められた(p <0.05)。両群のがん病期stageと消化器系の部位別に差は見られなかった(p =0.56、p =0.63)。がん患者における虚血性心疾患では塩分計量を用いない食事習慣上の栄養指導に効果を得られる可能性がある。本研究は、がん病期stage に隔たりなく治療に向きあおうとしている患者のモチベーションを管理栄養士の視点から支持する取り組みであり、1日推定食塩摂取量が食事習慣に内在している食材の塩分コントロールに照らした指導法により効果が得られる可能性を示した。
著者
坪田(宇津木) 恵 笠岡(坪山) 宜代 渡邊 昌
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.1234-1241, 2008 (Released:2012-01-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1

2007 年9 月、アメリカワシントンDC で食事摂取基準ワークショップ「食事摂取基準の進展1994~2004 年:課題と新たな挑戦」が開催され、1994 年より策定されているアメリカ・カナダ版食事摂取基準の、基準値の設定方法から活用までのさまざまな段階における現状と、今後の課題について議論がなされた。 本論文では、ワークショップに先駆けて公表された事前報告書、ならびにワークショップでの議論をもとに、アメリカ・カナダにおける食事摂取基準活用の現状と課題について解説する。 特筆すべきは以下の3 点である。1.アメリカ・カナダにおいて、食事摂取基準はあくまでエネルギー・種々の栄養素の摂取基準値を示した科学的根拠である。2.食事摂取基準活用における重大な問題は、その概念の難しさから食事摂取基準に対する概念や解釈に混乱が見られること、各指標の誤用が認められることである。3.実際の栄養活動の場においては、食事摂取基準を直接・間接活用したダイエタリーガイドラインやマイピラミッドなどの「明確」で「実用的」、「簡単」な媒体の使用が求められる。
著者
田中 友梨 菅原 文香 川原 哉絵 富永 史子 加藤 由美 鈴木 千春 下國 達志 増田 創 東舘 義仁 中川 幸恵
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.479-487, 2019 (Released:2019-08-28)
参考文献数
6

平成30年度の診療報酬改定は、多職種や近隣施設との連携強化、すなわち、地域包括ケアシステムの構築に向けた政策の1つと言える。そこで本研究では、管理栄養士の「入院支援」と「退院支援」の参画を開始し、有用性について検証した。「入院支援」への参画では、入退院センター利用患者の概要を把握し、管理栄養士介入の手順を考案した。「退院支援」への参画では、「看護及び栄養管理に関する情報(2)」の運用方法を検討し、近隣の病院や施設等との連携を図った。「入院支援」では、先行研究同様、入院まで良好な栄養状態を保つことで治療に寄与すること、多職種が介入することで業務軽減につながることが示唆された。「退院支援」では、近隣の病院や施設と転院前後の情報共有を円滑に行うことで迅速な患者の栄養管理が可能となり、患者の食事摂取量の維持や増加、また栄養状態の維持や向上につながることが示唆された。「入院支援」、「退院支援」における管理栄養士の参画は、院内外のスタッフ連携に加え、患者支援につながると考えられた。
著者
若菜 真実 山﨑 裕子 岩佐 太一朗 白井 智美 部谷 祐紀 武藤 美紀子 本間 和宏 田中 越郎 榎本 眞理 若菜 宣明
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.423-428, 2019 (Released:2019-07-26)
参考文献数
10

近年、食物アレルギーへの対応は重要な課題である。その対応法の1つに代替食がある。複数の代替食を考案した際、その中から最適な代替食を選び出す客観的な評価方法はまだ確立されていない。そこで最適な代替食を選び出す方法を検討した。16種類の食物アレルギー代替食品を作成し、「味」、「食感」、「風味」、「外観」の4項目を5点満点で採点した。この点数をもとに、総和値、和積値、総積値を算出し、和積値はレーダーチャートも作成した。総和値は、算出が簡便であったが、候補間の差が小さかった。和積値に関しては、レーダーチャートを用いることで候補間の評価が可視化でき、傾向を素早くつかめた。総積値は、候補間の差が最も大きく評価しやすかった。簡便さを求める際は総和値を、各候補食品の特徴を一目で判断する際は和積値とレーダーチャートの組み合わせを、候補食品間の差を大きく出す際は総積値を用いることが有用であると考えられた。
著者
梅本 奈美子 布施 晶子 杉浦 正美 鈴木 正子 岡見 雪子 辻 とみ子
出版者
The Japan Dietetic Association
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.356-365, 2014

児童養護施設に入所している子どもたち(施設入所児童)が、自立して食生活を営む力を習得するために、実用的で効果的な食育システムの開発と食育プログラムの作成に必要な基礎調査を行った。名古屋市内児童養護施設14施設の施設入所児童(3歳~18歳)を調査対象者とし、食育指導状況調査、身体状況調査、調理実習による技術調査、アンケートによる食意識調査を実施した。食意識調査は、名古屋市内S小学校在籍児童を比較対象者(家庭生活児童)とした。幼児では、食事の姿勢についてのクイズ正解率が95.8%と正しい知識が身に付いていた。小学生低学年では、施設入所児童は家庭生活児童と比較し、野菜の判別クイズ正解率が有意(<i>p</i><0.05)に低く、野菜の名前を知らないことが分かった。また、施設入所児童は「食事の前に手洗いを行う」項目では、83.1%と家庭生活児童の52.7%と比べ有意(<i>p</i><0.05)に高く、施設における指導の効果が表れていた。「ごはんの時間が楽しみ」と答える割合が、幼児96.4%、小学生低学年81.7%、小学生高学年64.7%、中高生50.0%と年齢が上がるにつれて有意(<i>p</i><0.001)に低くなり、食に対する肯定感が低くなることが分かった。しかし、調理の経験が多い子どもは、食に対する肯定感が高くなり、自立後の自炊に対する不安感が少なかった。本研究の結果から、児童養護施設の食育指導においては、幼児から小学生低学年までに食育体験を多くさせることが有効な指導であり、子どもたちが豊かな食経験を会得できる大切な期間と考えられた。また、小学生高学年からは、技術的体験が多い計画を立案することが有効であると考えられた。
著者
宇賀神 裕美 池内 寛子 櫛田 映子 荒山 麻子 阿久津 里美 江花 裕子 間庭 昭雄 阿江 竜介 中村 好一
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.311-316, 2019 (Released:2019-05-28)
参考文献数
11

精神科医療が入院中心から地域社会へと移行の流れがあり、精神科疾患患者の高齢化も伴い、生活習慣病のリスクの割合が高い精神科疾患患者が地域の中でQOLの高い生活を維持するためには、食生活サポートが必要である。本研究では2014年に実施した「栃木県内精神科病院における栄養食事指導に関する調査」を基礎資料とし、総合病院精神科受診の75人と単科精神科病院受診の367人の精神科疾患患者について解析し比較を行った。総合病院精神科では摂食障害の指導の状況が見られ、指導状況では終了(転院・退院)が見られた。転院先、退院後でも継続的な支援の受け皿の必要性が考えられた。 単科精神科病院では、統合失調症患者への栄養食事指導、指導状況では中断、継続が見られた。指導効果の改善に向けて継続指導の必要性が考えられた。
著者
菊田 千景 八木 万希子 里中 千恵
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.255-263, 2019 (Released:2019-04-24)
参考文献数
9

奈良県にある重症心身障害児・者施設では、摂食・嚥下障害者への食事として、常食に近い見た目で提供し、食べる直前にスプーンやフォークの背で押しつぶして食べやすくする「押しつぶし食」を提供している。本研究では、押しつぶしにより嚥下食としての適性が変化するのかを知るために、7種類の食材(白身魚ムース、エビムース、小松菜、白菜、人参、大根、絹ごし豆腐)を用いた押しつぶし食の物性測定、「特別用途食品嚥下困難者用食品の許可基準」、「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」、「嚥下食ピラミッド」による評価を行った。その結果、どの料理も押しつぶし後の形態は摂食・嚥下障害者に適するものであることが確認された。以上より、食材別に押しつぶしの有用性を見出すことができた。