著者
土原 健雄 井伊 博行 石田 聡 今泉 眞之
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.245, pp.755-765, 2006-10-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
26

釧路湿原を流れるチルワツナイ川流域に分布する湧水 (噴火口型・噴砂丘型) を形成する地下水の流動特性を, 地層及び水理水頭分布, 安定同位体比及び放射性同位体測定により明らかにし, その涵養域の推定を行った. 地層及び地下水水理水頭分布より, チルワツナイ川流域の湿原下には鉛直上向きの地下水の流れが存在し, その流れは粘土層の断層付近の亀裂を通じて湧出していると推定された. チルワツナイ川流域の地表水, 地下水及び釧路湿原に流入する河川水の水素, 酸素の安定同位体比の分布より, チルワツナイ川流域に多数分布する湧水は, 地形により識別される流域より上流に涵養域を持つと推定され, 釧路湿原の湧水環境の保全・管理を考える際には, 広域流動系の地下水の影響を考慮する必要があることが明らかとなった.また, チルワツナイ川流域の湧水及び湿原下の地下水のトリチウム濃度は自然発生レベルよりはるかに低く, 湿原内の湧水を形成する地下水は50年以上前の降水が涵養され循環してきたものであることが示された.
著者
井伊 博行 平田 健正 松尾 宏 田瀬 則雄 西川 雅高
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.594, pp.57-63, 1998-05-22 (Released:2010-08-24)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

茶畑からの湧水には肥料からの硝酸イオン, 硫酸イオンなどの酸性物質と共にアルミニウムイオン, リンなどが多量に含まれている. 湧水が池に入ると, 光合成, 脱窒, 硫酸還元によって, 中和され, 場合によっては, アルカリ性にもなる. 池内での短期間のpHの大きな変化には, 窒素, リンによる池の富栄養化に伴って起こる光合成が大きく貢献していた. 年間通じての硝酸イオンの池内での消失には, 脱窒が関与していたと考えられる. 池の水が中和されることで, 湧水に含まれていたアルミニウムイオンは水酸化物として沈殿し, 硫酸還元によって硫酸イオンも池から除去されたと考えられる. リンは生物 (有機物) として池内に貯蔵された. 池内で, 有害なアルミニウムイオンや硝酸イオンの濃度が下がるため, 池の存在は重要と考えられる.
著者
富山 眞吾 五十嵐 敏文 井伊 博行 髙野 日出男
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.132, no.5, pp.80-88, 2016-05-01 (Released:2016-05-14)
参考文献数
30
被引用文献数
6

The understanding of source and flow path of the groundwater provides important strategy for the environmental management of mines. Thus, groundwater samples from the shaft and level in the Shimokawa mine and the surrounding river water samples were taken and the stable isotopes of hydrogen and oxygen and water quality of the samples were analyzed. The results indicate that shallow groundwater starts mainly from mountain-sides and passes through rocks above ore bodies. The simulation of groundwater flow was also conducted. The distribution of velocity vector of the simulated result showed that down streamlines which flows more than 2×10-3 m per day from mountain-sides to the ore bodies were observed. By considering the altitudes of mountain-sides range from 300 to 550 m, these results correspond well with the altitudes estimated from δD and δ18O values of samples.
著者
富山 眞吾 井伊 博行 小泉 由起子 目次 英哉
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.261-274, 2010 (Released:2012-02-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2 6

休廃止鉱山である宮崎県富高鉱山では、砒素を含む坑内水が未処理のまま河川へ排水されており、将来的な対策として中和処理が検討されている。地表踏査やボーリング調査、鉱山の既存情報から、梅ヒ断層及び二坑ヒ断層に挟まれた区域では高透水性領域が形成されていることが想定される。大王山斜面から涵養した降水は高透水性領域の不飽和部を経て地下水面に達した後、地形的に低い周囲の河川へ流動しているものと考えられる。概念モデルをベースに数値モデルを構築し、降雨と坑内水流量及び地下水位との応答再現を試みた。その結果、おおよそ実測値と整合的な計算結果が得られ、概念モデルの妥当性を示すものと評価できる。