著者
里見 佳昭 仙賀 裕 福田 百邦 河合 恒雄
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.909-916, 1984-06-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

腎細胞癌に対する化学療法の第4報として, インターフェロンの有効性について, リンパ芽球由来の human lymphoblastoid interferon (α型) を用いて検討した.1) 転移のある腎細胞癌患者19例に対し, 連日投与60回以上できた症例について効果を判定した. CRはなく, PR 2例, MR 3例, NC 4例, PD 5例で, 有効率は35.7% (5/14) と従来の抗癌剤にない高い有効率を示した. 現段階では腎細胞癌の第1選択薬剤として使用すべきと考える.2) 効果の発現は20回から60回投与の間で起こり, それ故, 効果の判定は60回以上投与後に行うべきと考える.3) 性, 年齢, 腫瘍の大きさは有効率を左右しない. low grade 症例は4/7の有効率であり, high grade 症例は1/7で, 特に low grade の腎細胞癌には第一選択剤として使用する価値のある薬剤である.4) 最大の副作用は全身倦怠と食欲不振で, しばしばこのために治療中止をせざるを得なくなる. 骨髄抑制はじめ他の副作用は軽微である.
著者
里見 佳昭 福田 百邦 穂坂 正彦 近藤 猪一郎 吉邑 貞夫 福島 修司 井田 時雄 広川 信 森田 上 古畑 哲彦 熊谷 治巳 塩崎 洋 石塚 栄一 宮井 啓国 仙賀 裕 福岡 洋 佐々木 紘一 公平 昭男 中橋 満
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.853-863, 1988-05-20
被引用文献数
20

1965年1月より1985年12月までの21年間に横浜市立大学病院及びその関連病院に於いて経験した腎癌550例の遠隔成績と予後因子について検討し,次の結論を得た.1. 全症例の生存率は,5年生存率48%,10年生存率36%,15年生存率27%と、術後5年をすぎても長期にわたり死亡する予後不良の癌である.2. 40歳未満の若年者腎癌では術後2年以上経てから死亡する例はなく予後が比較的良好である.3. 予後不良因子としては,発熱,体重減少,食欲不振,全身倦怠などの症状のほか,赤沈亢進,CRP陽性,α_2-globulinの上昇,AL-P上昇,貧血などがあげられた.ツベルクリン反応陰性,LDH上昇,レ線上の腎の石灰化像などは予後不良因子ではなかった.4. 経腰的腎摘除術と経腹的腎摘除術の遠隔成績はほぼ同じであり,症例を選べば手術は経腰的腎摘除術で十分な場合もあると考えた.5. 4分類法のgrade分類は予後を比較的よく反映した.Robsonのstage分類ではstage IとIIの間に差がなく,stage分類法に欠陥あることを指摘した.6. 腎癌にはslow growing typeとrapid growing typeがあり,前者は予後良好であると安心しがちであるが,それは誤りであり,前者は緩慢なる経過を取るだけであり,術後5年経てから転移や死亡症例が多くなり,長期的にはrapid growing typeの症例の生存率に近づくと理解すべきである.
著者
里見 佳昭 仙賀 裕 福田 百邦 河合 恒雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.909-916, 1984
被引用文献数
9

腎細胞癌に対する化学療法の第4報として、インターフェロンの有効性について、リンパ芽球由来のhuman lymphoblastoid interferon(α型)を用いて検討した。1)転移のある腎細胞癌患者19例に対し、連日投与60回以上できた症例について効果を判定した。CRはなく、PR2例、MR3例、NC4例、PD5例で、有効率は35.7%(5/14)と従来の抗癌剤にない高い有効率を示した。現段階では腎細胞癌の第1選択薬剤として使用すべきと考える。2)効果の発現は20回から60回投与の間で起こり、それ故、効果の判定は60回以上投与後に行うべきと考える。3)性、年齢、腫瘍の大きさは有効率を左右しない。low grade症例は4/7の有効率であり、high grade症例は1/7で、特にlow gradeの腎細胞癌には第一選択剤として使用する価値のある薬剤である。4)最大の副作用は全身倦怠と食欲不振で、しばしばこのために治療中止をせざるを得なくなる。骨髄抑制はじめ他の副作用は軽微である。
著者
仙賀 裕 里見 佳昭 福田 百邦 絵鳩 哲哉 中橋 満 穂坂 正彦 田中 祐吉 三杉 和章
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1818-1823, 1988-11-20
被引用文献数
1

Neuron Specific Enolase(NSE)は神経細胞,神経内分泌細胞のマーカーとして用いられるが,最近正常尿細管細胞また腎癌細胞にも存在することが明らかにされたため,抗NSE抗体を用いた免疫組織化学的技法により腎癌におけるNSEの発現度を検索し,腎癌の組織像とNSEの発現の関係について検討した.全割面標本を作製した23例を対象とした.23例中17例70%に陽性反応を認め,腎癌ではかなりの頻度でNSEが出現することが明らかとなった.low grade群(G1,G2)は15例中9例,high grade群(G3,G4)8例中8例NSEの出現を認めた.high grade群はNSEの発現度が高いため,解糖系の代謝が亢進しているとも考えられた.NSEの発現と予後どの関連については,low grade群で陰性例は陽性例にくらべ若干良好であった.high grade群では全例陽性のため判断はできなかった.抗NSE抗体を用いた免疫組織化学的検索により,腎癌の組織像と臨床経過の関係の一端が明らかにできるものと考えられた.