著者
田辺 卓也 粟屋 豊 松石 豊次郎 永井 利三郎 山本 克哉 栗原 まな 伊予田 邦昭 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.318-323, 2004-07-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
6

てんかん症例への予防接種基準案作成の一環として, てんかんの中では接種の際に最も注意を払う必要があると考えられる乳児重症ミオクロニーてんかん (severe myoclonic epilepsy in infancy;SMEI) 症例の予防接種実施状況と自然罹患時の状況とを比較検討した.対象は調査時2~25歳のSMEI症例58例で, のべ359回接種されていた.接種率はBCG, ポリオ1回目が71%と最も高率であった.ポリオの2回目, DPT初回接種の2, 3回目はより低率であり, 接種時期も遅れる傾向にあった.一方, 麻疹は55%と比較的高率に接種されており, 1~2歳代の接種率が高かった.自然罹患した際はけいれん発作の増悪や意識障害, 脳症などの重篤な合併症が高率 (63%) にみられたのに比し, ワクチン接種後の発熱やけいれんは有意 (P<0.0001) に低率 (7.2%;けいれんのみでは5.0%) であった.ワクチンの中では, 麻疹ワクチンによる発熱およびけいれん誘発率が有意に高率であった (P=0.012).SMEI症例に対しては, 十分な発熱, けいれん対策の指導のもと, 特に麻疹を中心に積極的にワクチン接種を推奨し, 自然罹患による合併症のリスクを低減する必要があると考えられた.
著者
伊予田 邦昭 粟屋 豊 松石 豊次郎 永井 利三郎 田辺 卓也 栗原 まな 山本 克哉 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.456-458, 2007-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
6

難治なけいれん発作をもつ小児に対する予防接種基準最終案を検証するため, 全国多施設共同で予防接種後健康状況調査を施行した (112例, 229件, 回答率:52.4%).1)観察期間: 日・週単位群で1カ月, 月単位群で2~3カ月程度, 重積症後では, 各々1~3カ月, 3~6カ月程度. 2)接種後1カ月以内の副反応: 身体面は17件 (7.5%; 1件以外すべて発熱), 50%以上発作が増悪した例はわずか4件 (1.7%; 麻疹・インフルエンザ各2件), 計21件 (9.2%) で, すべて外来対応が可能であった. 3)自然罹患入院例: 麻疹2/5例, インフルエンザ3/7例でけいれん重積を合併した. 以上より各種予防接種は安全に実施されており, 主治医(接種医)が“適切”な時期に個別接種を行う本基準案は妥当と考えられる.
著者
伊予田 邦昭 満田 直美 小川 和則 岡崎 富男
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.401-406, 2004-09-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は6歳8カ月の男児.インフルエンザワクチン接種後16日目頃から, 一過性発熱, 頭痛などに引き続き, 歩行失調, 四肢筋力低下を来し入院した.髄液検査では髄膜炎および脱髄抗体を認め, fluid attenuated inversion recovery法によるMRIで脳白質に散在性高信号域を確認した.急性散在性脳脊髄炎と診断, ステロイドパルス療法により, 比較的すみやかに後遺症なく神経症状は軽快し, 単相性で予後は良好と考えられた.
著者
伊予田 邦昭
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.660-665, 2009
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

道路交通法の改正に伴い,てんかんをもつ人(a person with epilepsy;PWE)でも条件により運転免許取得が可能となった.そこで実務を担当する主治医と広島県警道路交通部運転免許課に免許取得にかかわる適性判定や免許交付状況調査を施行し,運用上の問題点や課題を検討した.(1)法改正の認識はあるが,患者への説明提示不十分,(2)新規の免許取得率が一般の場合に比べ高く,許可交付件数も年々増加しているのは法改正の普及効果だが,一部に発作予知予測精度や保留期間の策定に不安がある,(3)PWEの交通事故率は5.5%で一般と大差なかったが,発作と事故との関連性が示唆され,服薬コンプライアンス不良例が多かった.以上から判定にはより柔軟性を持たせ,患者・主治医への一層の啓発活動が必要である.