著者
栗原 まな 小萩沢 利孝 吉橋 学 飯野 千恵子 安西 里恵 井田 博幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.285-290, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
18
被引用文献数
5

16歳未満で急性脳症を発症し, 当科でリハビリテーションを行った103例の予後を検討した. 対象を(1)群 : 代謝異常に起因する1例, (2)群 : サイトカインストームに起因する24例, (3)群 : けいれん重積型68例, (4)群 : 難治頻回部分発作重積型5例, (5)群 : 意識障害が主体である5例に分類し, 発症年齢, 既往歴, 発症に関連する因子, 後遺症の状況を検討した. 発症年齢は平均3歳であったが, (4)群は平均6歳5カ月と高かった. 既往歴では熱性けいれん, 喘息, theophylline服用が目立ったが, 有意差は得られなかった. 発症に関連する因子としてはインフルエンザ罹患36例, HHV-6罹患7例などがあった. 後遺症は知的障害89.3%, 高次脳機能障害77.7%, てんかん68.9%, 運動障害27.2%の順に多く, 重症度は(1)(2)(3)(4)(5)群の順に軽度になっていた. 高次脳機能障害では注意障害, 視覚認知障害などがみられた.
著者
井上 有史 久保田 英幹 栗原 まな 馬場 啓至 平田 幸一 松岡 洋夫
出版者
日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.483-489, 2009-01-31
参考文献数
4
被引用文献数
4

2002年6月に道路交通法が改定され、てんかんをもつ人でも条件により運転が許可されるようになった。すべての人が更新を終えた法施行後5年後の実態および問題点について調査するため、警察庁(公安委員会)とてんかん学会会員にアンケートを送付した。警察庁からの提供資料は2003年、2005年と比較し、てんかん学会会員の回答は2003年の調査結果と比較した。合法的に免許を取得した人は2544人で、48%は再適性検査不要であり、要再検査は3年後がもっとも多かった。一方、免許不許可は169人、保留・停止は60人であった。95%が自己申告であり、多くは主治医診断書で処理され、臨時適性検査医によるものは2.5%であった。てんかん学会員は43名が回答し、半数以上がてんかんをもつ人の運転免許に関する意識がポジティブに変わったとした。すべてのてんかんで一律に同じ基準で判定することの問題、殊に希発発作、最近発症のてんかん、誘因のある場合等では、別個に判定すべきであるという意見があった。適性検査における問題点として、発作がおきるおそれがないとは断定できないこと、再発時の免許取消を改善すべきこと、判定医の責任の所在の明確化などが挙げられ、警察の適切な情報公開、学会の判定マニュアル作成や実証的研究推進などの要望があり、啓発活動の重要性が指摘された。法施行後5年が経過し、法の内容および処理手順については浸透してきており、具体的な問題点の整理検討と改善にむけての行動の必要性が指摘された。
著者
田辺 卓也 粟屋 豊 松石 豊次郎 永井 利三郎 山本 克哉 栗原 まな 伊予田 邦昭 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.318-323, 2004-07-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
6

てんかん症例への予防接種基準案作成の一環として, てんかんの中では接種の際に最も注意を払う必要があると考えられる乳児重症ミオクロニーてんかん (severe myoclonic epilepsy in infancy;SMEI) 症例の予防接種実施状況と自然罹患時の状況とを比較検討した.対象は調査時2~25歳のSMEI症例58例で, のべ359回接種されていた.接種率はBCG, ポリオ1回目が71%と最も高率であった.ポリオの2回目, DPT初回接種の2, 3回目はより低率であり, 接種時期も遅れる傾向にあった.一方, 麻疹は55%と比較的高率に接種されており, 1~2歳代の接種率が高かった.自然罹患した際はけいれん発作の増悪や意識障害, 脳症などの重篤な合併症が高率 (63%) にみられたのに比し, ワクチン接種後の発熱やけいれんは有意 (P<0.0001) に低率 (7.2%;けいれんのみでは5.0%) であった.ワクチンの中では, 麻疹ワクチンによる発熱およびけいれん誘発率が有意に高率であった (P=0.012).SMEI症例に対しては, 十分な発熱, けいれん対策の指導のもと, 特に麻疹を中心に積極的にワクチン接種を推奨し, 自然罹患による合併症のリスクを低減する必要があると考えられた.
著者
栗原 まな
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.311-315, 2016-04-18 (Released:2016-05-20)
参考文献数
5

当院で入院リハビリテーションを行った16歳未満で発症した低酸素性脳症例35例(発症年齢平均5歳8カ月)の,急性期の状況と後遺症の状況を調査し,高次脳機能障害に焦点をあてて検討した.発症原因は溺水12例,窒息6例,心疾患10例などで,原因により年齢分布が異なっていた.後遺症は身体障害28例,知的障害30例,てんかん16例,高次脳機能障害12例であった.高次脳機能障害の内訳では視覚認知障害・注意障害が多かったが,小児では評価バッテリーに頼りきらず生活の中での把握が大切であった.それらへの対応についても述べた.
著者
伊予田 邦昭 粟屋 豊 松石 豊次郎 永井 利三郎 田辺 卓也 栗原 まな 山本 克哉 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.456-458, 2007-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
6

難治なけいれん発作をもつ小児に対する予防接種基準最終案を検証するため, 全国多施設共同で予防接種後健康状況調査を施行した (112例, 229件, 回答率:52.4%).1)観察期間: 日・週単位群で1カ月, 月単位群で2~3カ月程度, 重積症後では, 各々1~3カ月, 3~6カ月程度. 2)接種後1カ月以内の副反応: 身体面は17件 (7.5%; 1件以外すべて発熱), 50%以上発作が増悪した例はわずか4件 (1.7%; 麻疹・インフルエンザ各2件), 計21件 (9.2%) で, すべて外来対応が可能であった. 3)自然罹患入院例: 麻疹2/5例, インフルエンザ3/7例でけいれん重積を合併した. 以上より各種予防接種は安全に実施されており, 主治医(接種医)が“適切”な時期に個別接種を行う本基準案は妥当と考えられる.
著者
栗原 まな 高橋 佳代子 小萩沢 利孝 山内 裕子 井田 博幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.294-298, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
11

知的障害以外の症状が認められなかった時期より長期経過観察をした歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA) の28歳女性を報告した. 本例の遺伝子診断に家族の了承は得られなかったが, 母と兄が剖検病理診断でDRPLAと診断されていたため, 頭部MRI・脳波・歩行分析・心理検査などを行いつつ経過を観察した. 頭部MRIでは10歳代後半より小脳萎縮が出現し, 脳波では14歳の初診時より全般性棘徐波複合が認められた. 臨床的には歩行障害とてんかんが発症した15歳をDRPLAの発症と考えた. 歩行分析では20歳代後半になって明らかな異常が認められるようになり, その後1年で歩行不能となった. 経過観察において歩行分析は有用なツールであった.
著者
栗原 まな 吉橋 学 飯野 千恵子 安西 里恵 田辺 仁彦
出版者
一般社団法人 日本脳神経外傷学会
雑誌
神経外傷 (ISSN:24343900)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.70-77, 2023-12-10 (Released:2023-12-18)
参考文献数
10

Objective: Traumatic brain injury (TBI) resulting from a traffic accident is not so common in young children. We reviewed our experience to clarify the status for further medical care.Methods: Nineteen patients aged under 7 years with severe TBI caused by traffic accidents underwent inpatient rehabilitation in our hospital between 1993 to 2010, and were followed up until after age 18 years. We retrospectively investigated the causes of injury, treatment during the acute stage, and outcomes including physical disability, intellectual disability, higher brain dysfunction, and epilepsy, and family functioning. The patients were divided into 4 groups by outcome: group I (7 cases) were independent, group II (2 cases) participated in "employment of persons with disabilities", group III (6 cases) had employment that required support, and group IV (4 cases) required full assistance for all activities of daily life. Clinical factors were compared between the 4 groups. The change in severity for each patient at 7, 13, and 18 years of age was assessed.Results: Average age at injury was 5 years in all 4 groups. Many accidents such as jumping into the road, not wearing seat–belt, and so on seemed to be preventable by adult intervention. The outcome worsened depend­ing on the depth and extent of loss of consciousness. Contusion was most prominent type of brain injury in all groups. Focal damage was prominent and diffuse damage was not seen in group IV. No infarction was found in groups I and II. Neurosurgical treatment was prominent in groups III and IV. Limited help for higher brain dysfunction was required in group I. Some support for higher brain dysfunction and mild mental disability was necessary in group II. Individual support programs for intellectual disability and higher brain dysfunction were necessary in group III. Full support for all daily life was essential in group IV. The severity of disability was gradually im­proved in most patients, but a few in group III showed regression due to intractable epilepsy and bad family functioning.Conclusion: Nineteen young patients with severe TBI caused by traffic accident were examined. Prevention of traffic accidents is the most im­portant intervention. Moreover, good programs to support higher brain dysfunction and family care are the keys to better outcome.
著者
栗原 まな
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.459-460, 2005-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
1
著者
栗原 まな 熊谷 公明 中江 陽一郎 野田 洋子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.505-511, 1998-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
7

新生児期発症を除く後天性小児低酸素性脳症13例のリハビリテーション (リハ) アプローチについて述べた.回復の度合を良好, 中等度, 軽度, 不変群に分けたが, 良好例はなく, 他は各々3, 3, 7例についてリハアプローチを呈示し, 発症状況, 現症, 機能的自立度 (functional independence measure: FIM) の改善度を比較検討した.5分以内に蘇生がなされ, 意識障害の持続が3日以内, 後遺運動障害はないか失調症の例で機能改善が良かった.FIM改善度では, 中等度回復群と不変群間には有意差が認められた.またいずれの群においてもリハ効果は認められた.
著者
栗原 まな
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:18847668)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.110-115, 2000

頭部外傷後のリハビリテーションを行った小児42例の機能回復予後について検討した.受傷原因は, 交通事故26例 (歩行中・自転車乗車中が多い), 虐待7例 (2歳以下) などで, 脳損傷の型では急性硬膜下血腫18例, びまん性軸索損傷9例, 慢性硬膜下血腫4例などであった.後遺障害は多彩で, 身体障害として運動麻痺, 視野障害など, 精神障害として知能低下, てんかん, 高次脳機能障害がみられた.機能予後良好群は急性期意識障害持続が1週間未満, びまん性軸索損傷の例が主体で, 機能予後不良群は受傷年齢が低い例, 虐待例, 急性期Glasgow Coma Scale (GCS) が8以下, 急性期意識障害の持続が1週間以上の例であった.特に虐待例の予後は悪かった.退院後は約半数が普通学級に戻っていたが, 学習面の困難, 危険, いじめなど多くの問題が存在し支援を要した.受傷予防の面から, 交通事故・虐待発生予防対策を強調したい.
著者
栗原 まな 千葉 康之 小萩沢 利孝 衛藤 義勝
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.531-536, 2006-08-18
被引用文献数
6

当センターにおいて脳外傷後遺症に対するリハビリテーション(リハ)を行った受傷時16歳未満の症例のうち高次脳機能障害が認められた39例と認められなかった43例について比較検討した.受傷原因は高次脳機能障害がある群で交通事故が有意に多く(p<0.01),転落・転倒・落下物が有意に少なかった(p<0.05).急性期の意識障害の程度も高次脳機能障害の有無と有意な関連性をもち,高次脳機能障害がある群でGlasgow Coma Scaleは有意に高かった(p<0.05).脳損傷の種別では硬膜下血腫,びまん性軸索損傷などが多かったが,高次脳機能障害の有無との関連は認められなかった.また高次脳機能障害のある39例についてみると,症状は記憶障害,注意障害,感情コントロール低下,遂行機能障害,対人技能拙劣の順に多かった.