- 著者
-
伊原 禎雄
- 出版者
- 日本生態学会
- 雑誌
- 日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
- 巻号頁・発行日
- pp.175, 2004 (Released:2004-07-30)
アジア産サンショウウオの地域ごとの餌の違いや捕食行動の比較については,これまで未調査であった.そこで,トウキョウサンショウウオの神奈川県横須賀市津久井,野比,山中,千葉県夷隅町万木,福島県いわき市四ツ倉の各個体群の餌組成や捕食行動を比較し,その違いや共通性を検討した.本研究では総計で82個体のトウキョウサンショウウオを捕獲し,胃内洗浄法を用いこららの内59個体から個体を傷つけることなく胃内容物を採取した.その結果,検出した個体あたりの胃内容物の湿重量,捕食した餌個体の体長や体積には地域間での差は無いことが示唆された.餌動物の内,ミズムシを除いた動物の全てが土壌動物であり,各地点の餌組成の個体数割合の中で等脚目の占める割合が最も高かったが,地点ごとに捕食された主要な等脚目の種は異なっていた.この結果から,トウキョウサンショウウオは生息地の潜在的な餌資源のなかで等脚目を餌として選考することが示唆され,サンショウウオの餌とする等脚目の選考基準として個体数や体の大きさの違いが重要な要因の様であり,餌とする等脚目の生態にあわせて捕食活動を変化させている可能性が示唆された.