著者
宇根 有美
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.138-141, 2013-12-20 (Released:2014-07-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1

After the chytrid fungus was first discovered in Japan, studies have revealed the following facts,1)Chytrid fungus is present naturely in Japan.2)Japanese native amphibians are resistant to chytrid fungus.3)Wild chytrid fungus in Japan has many haplotypes. In other words, this organism has surprising diversity in Japan. The chytrid fungus that originates from the Giant salamander shows a unique genetic cluster of haplotypes.On the basis of these facts, we propose a new hypothesis, i.e., “Chytrid fungus has coevolved with native amphibians as a natural host in East Asia, including Japan.”. In other words, in the long process of the evolution of chytrid fungus and amphibians in East Asia, an equilibrium has formed between the hosts (amphibians) and the pathogen (chytrid fungus) which has continued up to the present. This hypothesis may explain the present state of chytrid fungus in Japan.To prove this hypothesis, it is necessary to survey and analyze the genetic and ecological characteristics of chytrid fungus around the world, and research in East Asia is a priority.
著者
久和 茂 谷口 怜 水谷 哲也 吉川 泰弘 明石 博臣 宇根 有美 前田 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

翼手目(コウモリ類)は生物学的多様性とその分布・移動域の広さ、巨大なコロニー形成などの特徴をもつ特異な生物である。また、エボラウイルスなどの高病原性病原体の自然宿主と疑われており、病原体レゼルボアとして高いリスクをもつ。本研究はフィリピンにおいて翼手目の保有病原体の疫学調査を実施し、翼手目の人獣共通感染症のレゼルボアとしての評価を行うことを目的とした。ミンダナオ島、ルソン島中央部、ルソン島北西部においてそれぞれ捕獲調査を行い、合計266匹の翼手目を採取した。これらのサンプルより新規のレオウイルス、ハンタウイルスを見出し、さらに病原性細菌や原虫を保有していることも明らかにした。
著者
宇根 有美
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.124-129, 2007

愛玩用に輸入される齧歯類の公衆衛生上のリスクを評価するために,2006年に輸入動物届け出制度に基づき衛生証明書が添付され輸入された8種の齧歯類,計140匹を対象として病原体保有状況調査を行なった。その結果,レプトスピラ(Leptospira alexanderi)がステップレミング1匹(1/10,10%)で検出された(全頭の0.7%)。Borrelia属細菌は,シマリス5匹(5/30,16.7%)から,B. grahamiiおよびB. washoensis,それぞれ3匹,2匹から検出された。また,消化管よりSalmonella Enteritidisが11/140,7.9%分解された。140匹中20匹の皮膚よりS. aureusが分離され,特にデグー1ロット(9/10)とピグミージェルボア(8/10)からの分解率が高かった。消化管内寄生虫として,人獣共通寄生虫である小形条虫が23匹のハムスター(ジャンガリアンおよびゴールデン)で確認された。なお,腎症候性出血熱,ペストおよびライム病の病原体に対する抗体を保有する動物はいなかった。また,Yersinia pestis,野兎病菌,豚丹毒菌も分解されなかった。以上のように,過去に実施した愛玩用野生齧歯類を対象とした成績より,今回検出された病原体の種類は少なかったものの,輸入ロット毎に汚染の高度な動物群が存在し,野生動物ではみられなかった病原体も確認されたことから,衛生証明書の添付が義務付けられた現在でも,一般市民に愛玩用としての齧歯類の取り扱いに関して注意を喚起し,動物取り扱い業者へは,駆虫を含めた衛生指導が必要と思われる。
著者
辻本 早織 越久田 健 越久田 活子 宇根 有美 野村 靖夫 代田 欣二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.329-331, 2005-03-25
被引用文献数
2

腹部膨満を示し高窒素血症を呈した3か月齢の雌の三毛猫を剖検し, 右側腎臓腹側に尿臭を持つ黄色透明液体を容れる巨大な腎周囲嚢胞(8.5×6.0×4.5cm)を認めた.嚢胞内腔は不規則に拡張した腎盂と腎実質を貫く小孔で連絡していた.嚢胞は上皮に内張りされ, 壁は膠原線維と平滑筋で構成されており, 腎盂や尿管壁の構造に類似していた.嚢胞に接する腎実質間質には, リンパ系細胞の浸潤を認めた.嚢胞は発生異常による腎盂憩室と考えられた.
著者
宇根 有美
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.117-123, 2014-12-22 (Released:2018-05-04)
参考文献数
19

感染症対策に関連する動物園の特性として,動物園という管理された環境下では,感染症の発見,その発生状況,病原体保有状況などが把握しやすく,感染症対策も立てやすいといった点があげられる。その一方で,生息地域や生態も異なる多種多様の動物が飼育されており,自然界では起こりえない動物種の間接的・直接的接触が,病原体に新たな宿主を提供することになったり,動物種による病原体への感受性の差が感染症の流行に結びついたりすることがある。また,飼育環境も,必ずしも自然界における生息環境を忠実に反映しているわけではなく,不適切な飼育環境が感染症発生の要因になることがある。そして,往々にして個体密度が高くなり,病原体の伝播および大量暴露を容易にし,流行のスピードを加速することもある。さらに,汚染された飼料などによる感染症の発生も起こり得る。ここでは,動物園における「感染症」について,いくつかの事例を提示して紹介する。
著者
黒木 俊郎 宇根 有美
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-65, 2007-07-20

両生類,特に無尾類(カエル)の個体数の減少や種の絶滅が世界各地で報告され,ある調査によれば全世界の5,743種の両生類のうち少なくとも2,469種(43%)の個体数が減少し,1,856種(32%)が絶滅の危機に瀕している。劇的な減少が顕著となった1980年以降,9種が絶滅し,113種が絶滅した恐れがあるとされている。この両生類の悲劇の主たる原因のひとつにはツボカビ症(chytridiomycosis)と呼ばれる両生類の新興感染症が挙げられ,<I>Batrachochytrium dendrobatidis</I>が原因微生物である。この真菌は1998年にオーストラリア,カナダ,米国および英国の研究チームによって初めて発見され,パナマやオーストラリアの手付かずの自然環境における大規模な両生類の個体数の減少に関与していることが明らかになり,それ以来世界各地で調査されている。<BR><I>Batrachochytrium dendrobatidis</I>は1999年に1属1種の新属,新種として記載された,ツボカビ門,ツボカビ目に属する真菌である。属名"<I>Batrachochytrium</I>"の"Batracho"はギリシャ語でカエルを意味し,ツボカビを意味する"chytrium"の"chytr"はギリシャ語の"chytridion"または"chutridion" : 陶器製の小型のツボに由来する。したがって,属名をそのまま訳せば,カエルツボカビ属になる。種名の"<I>dendrobatidis</I>"はヤドクガエル属(<I>Dendrobates</I>)の1種(blue poison dart frog)から分離したツボカビ株を用いて種の記載を行ったことによる。しかし,<I>B. dendrobatidis</I>の宿主はヤドクガエルに限られているわけではなく,宿主域は非常に広い。<BR><I>B. dendrobatidis</I>は,ツボカビ類では脊椎動物に寄生する唯一の種である。生きたあるいは死んだ両生類の皮膚の角質層や顆粒層に寄生し,そこに含まれているケラチンを利用して発育する。しかし,ケラチンを含まないトリプトン(タンパク質を加水分解したもの)寒天培地でも培養することができる。<I>B. dendrobatidis</I>の生活環は非常に単純で,遊走子(zoospore)と遊走子嚢(zoosporangium)の2形態からなっている。<I>B. dendrobatidis</I>の遊走子嚢は表面が平滑で,球形から長球形であり,乳頭状の放出管(discharge tube)がある。遊走子嚢は角質層の表面から放出管を突出させ,突起の蓋が取れると遊走子を放出する。遊走子は後方に伸びる鞭毛があり,水中を遊走する。遊走子嚢から泳ぎ出た遊走子が宿主に到達することで伝播する。感染は100個程度の遊走子により成立し,時に致死的となる。両生類の皮膚の表面に達すると,角質層を貫通し,徐々に径が大きくなり,遊走子嚢を形成する。<BR><I>B. dendrobatidis</I>の遊走子は鞭毛で遊泳して宿主に到達することから,発育や感染には水が必須である。遊走子は滅菌水道水では3週間,滅菌精製水では4週間,滅菌湖水ではさらに長く,7週間生存するとされている。遊走子は乾燥により死滅してしまう。発育の至適温度は17~25℃で,23℃が最も適しているとされている。高温には弱く,28°Cで発育が止まり,30℃以上になると死滅する。<BR>ツボカビ症に対する感受性は両生類の種により異なり,アフリカツメガエル(<I>Xenopus laevis</I>)やウシガエル(<I>Rana catesbeiana</I>)は感染しても発症しないことが知られている。しかし,多くのカエル種は発症して,致死率も90%を超える場合がある。<BR>(View PDF for the rest of the abstract.)
著者
南 昌平 横山 真弓 石嶋 慧多 下田 宙 栗原 里緒 宇根 有美 森川 茂 前田 健
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.e29-e35, 2022 (Released:2022-02-15)
参考文献数
50

2016年,近畿地方で2頭の死亡したアライグマが発見された.これらアライグマからオーエスキー病ウイルス(PRV)が分離された.分離されたウイルスの全ゲノム配列を解析した結果,国内で使用されているワクチン株にはないgE遺伝子を保有しており,野外株であることが判明した.同地域のイノシシ111頭とアライグマ61頭の血清についてPRVに対するウイルス中和試験を実施した結果,13頭のイノシシが抗体陽性(11.7%)となり,アライグマはすべての個体で陰性であった.死亡したアライグマの発見地域は養豚場におけるPRVの清浄地域であり,イノシシからアライグマへのPRVの種間伝播が強く疑われた.以上より,本報告はアライグマにおける初のPRV自然感染例であり,イノシシから異種動物へ致死的な感染を引き起こす可能性が明らかとなった.
著者
古澤 賢彦 金本 勇 若尾 義人 高橋 貢 宇根 有美 野村 靖夫
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.501-504, 1995-07-20
参考文献数
16

チャウチャウ系雑種雄犬 (1歳4ヵ月齢) が腹水と徐脈を主徴として来院した. 高度の心拡大をともなう特発性心房停止を認め, 利尿剤投与と腹水の穿刺除去を継続したが, 11ヵ月の経過で死亡した. 剖検では高度の右房拡張が, 病理組織学的検査では心房の脂肪線維化が認められ, 基礎疾患として特発性右房拡張症が考えられた.
著者
宇根 有美
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.103-109, 2011-09-30 (Released:2018-07-26)
参考文献数
10

日本には生きた哺乳類,鳥類および爬虫類が年間約100万頭輸入されており,これらの動物のほとんどがペットとして流通している。ペットは,人と同一の居住空間で飼育されることが多く,幼児や老人など免疫システムが未発達な人との接触も少なくない。このため,これらの動物を原因とする人獣共通感染症の正確な知識を持つ必要がある。さらに,ペットを含むさまざまな動物に接する機会のある専門家は,自らの健康を損なわないためにも,最新かつ適切な感染症に関する情報を知っておく必要がある。 ここでは,最近,国内で確認された輸入動物の人獣共通感染症を主体に実例を紹介する。
著者
黒木 俊郎 宇根 有美 遠藤 卓郎
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.27-34, 2003 (Released:2018-05-04)
参考文献数
27

クリプトスポリジウムは幅広い種類の脊椎動物に感染することが知られている。近年,爬虫類においてクリプトスポリジウムによる致死性の下痢症が頻発し,有効な治療法も無いために大きな脅威となっている。また,ヘビに由来すると推測されるクリプトスポリジウムのオーシストが水道原水から検出され,水道汚染の観点から新たに関心を集めている。ここでは,爬虫類に寄生するクリプトスポリジウムを中心にして,その生物学的特徴や病原性などの概要を紹介する。
著者
伊原 禎雄 宇根 有美 大沼 学 佐藤 洋司 新国 勇
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.37-41, 2014-12-01 (Released:2017-06-16)

We studied the circumstances and cause of a sudden mass mortality of frogs that occurred in May 2012 in Kurotanigawa, Tadami, Fukushima Prefecture. A total of 341 dead frogs of four species were observed: (Rhacophors arboreus, Rhacophors schlegelii, Rana nigromaculata, and Hyla japonica). Most of the dead individuals (91.8%) were forest green tree frog (Rhacophors arboreus). Based on pathological and molecular biological examination for pathogen, the primary cause of death appeared to be mammalian bites. We concluded that a mammalian predator caused this mass mortality by attacking. Automatic cameras provided evidence of raccoon dog (Nyctereutes procyonides), civet (Paguma larvata), and raccoon (Procyon lotor). The injuries to the frogs were consistent with reports of damage by raccoons. Raccoons may cause this mass mortality of frogs.
著者
宇根 有美 多々良 成紀 野村 靖夫 高橋 令治 斎藤 保二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.933-935, 1996-09-25
被引用文献数
1

2頭のオグロプレーリードッグ(Cynomys ludovicianus)に, 肺転移を伴う肝細胞癌と非腫瘍部の慢性活動性肝炎の同時発生と, 肝細胞の過形成が認められた. 過形成性の肝細胞は細胞質内に多数の好酸性, Orcein染色陽性の封入体を持っていた. 電子顕微鏡で, 細胞質内封入体に一致して鎖かたびらのような編み目状の構造物を観察した. これらの封入体の電顕像は, 肝癌に関連するヘパドナウイルスの封入体の形態と異なっていた. また, ヘパドナウイルス様の粒子も認められなかった.
著者
高槻 成紀 宇根 有美
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.21/22, pp.117-122, 2011-03-31

An exhibition entitled as “Hands and legs of mammals: the morphology and variations” was held at Azabu University from June to September, 2010. Bones were chosen from many specimens preserved at the specimen store at Azabu University. At the introduction corner, a cat specimen was exhibited in order to explain the principle of mammal body morphology. At the “hindleg corner”, hindlegs of six terrestrial mammals were exhibited. The visitors could compare the “lifting heels” and simplification of the legs in “running” mammals. At the “foreleg corner”, forelegs of a dolphin and a Japanese macaque, whole body of a bat, a flying squirrel, and a mole were exhibited. This corner showed how the mammal forelegs are modified according to the differences in life styles of the animals. At the “femur corner”, femurs of six species of terrestrial mammals were exhibited. This corner told the femurs of larger mammals are more robust than those of smaller mammals, which is explained by physical reasons. At the last corner, forelegs of a giraffe, an elephant, and a horse were exhibited to emphasize the differences of the size and shape as “long”, “gigantic”, and “simple” bones. All the specimens were arranged on boards of deep blue backgrounds which are contrastive to whitish bones, and Chinese kanji letters to symbolize the functions of the bones were laid out.