著者
伊藤 かおる 志賀 保夫 田中 雅織 松浦 晶央 入交 眞巳
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.e36-e45, 2022 (Released:2022-02-15)
参考文献数
28

犬の問題行動に悩んでいる飼育者は,インターネットを通じて解決手段の情報収集を行うと予想されるが,その情報の質については評価されていない.そこで,インターネット上にある咬傷犬のトレーニングに関する情報を網羅的に収集し,情報の質として情報信頼性と動物福祉の考慮を評価した.その結果,質の低い情報に曝されている現状が示された.また,「恐怖」という単語が高頻度で使用されており,「主従関係」や「痛み」といった単語と強く共起していた.飼育者が質の低いインターネット情報に振り回されないよう,飼育者側には,動物福祉の考え方と情報の見方について,ウェブサイト運営者側には客観的で科学的根拠に基づく情報の提供を求めるとともに,飼育者に適切な情報が届けられるよう獣医師らが率先して科学的根拠に基づいた適正な情報を発信していく必要がある.
著者
伊藤 かおる 池田 俊也 武藤 正樹
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.417-429, 2016

本研究では経口抗不整脈薬の先発医薬品とジェネリック医薬品を比較した臨床試験を網羅的に把握し,その内容のレビューと研究デザインをもとにエビデンスレベルについて評価した。文献は,Pubmedと医学中央雑誌を検索し,Vaughan Williamsの抗不整脈薬の分類表に表記されている薬剤を対象とした。また,ジェネリック医薬品に対する著者の記載内容から肯定的文献と否定的文献に分けて評価を行った。さらに収集した文献のエビデンスレベルを評価した。結果,20文献が今回の調査対象となった。内訳は肯定的文献が14文献,否定的文献が6文献だった。肯定的文献にはβブロッカーを含む循環器領域の治療薬を対象にしたエビデンスレベルⅠに評価される研究があるなど,臨床効果や安全性を評価した文献のエビデンスレベルが有意に高いことが明らかになった。否定的文献は,数症例を対象にした症例報告や記述研究による報告が多く,研究方法や患者の詳細な情報について記述がないものもあったことから,ジェネリック医薬品に対して否定的な文献の方が肯定的な文献よりもエビデンスレベルが低いと判断された。
著者
伊藤 かおる 池田 俊也
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.101-109, 2016-03-31

日米欧の主要な診療ガイドラインにおける推奨降圧薬とその決定過程において,医療経済的視点がどの程度反映されているかを検討した.その結果,欧州高血圧学会/ 欧州心臓病学会(ESH/ESC)2013 はすべての降圧薬が対象にされており,患者の臨床的・社会的背景に応じて個別に薬物治療を行うよう記載されていた.日本高血圧学会(JSH)2014,米国合同委員会(JNC8),英国保健医療研究所/ 英国高血圧学会(NICE/BHS)2011 は4 種類が推奨されていた.推奨降圧薬の決定根拠として,JNC8,ESH/ESC2013 は医療経済学的視点による記述はほとんどなく,臨床的エビデンスを基に推奨降圧薬の決定をしていた.JSH2014 は医療経済評価を行った文献は紹介されていたが,推奨薬の決定根拠には反映されていなかった.NICE/BHS2011 では評価指標として費用効果分析を実施し,その結果から具体的で明確な薬物治療の方針を提示していた.高血圧治療の標準化と効率化を図るために,わが国においても医療経済評価の結果を反映した診療ガイドラインの必要性があると考えられた.