著者
野﨑 智仁 谷口 敬道
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.89-98, 2021-02-20

Various studies have been conducted to investigate the actual conditions and to verify the interventions that have been made to support the employment of individuals with mental disorders since their job retention and job separation appeared to be problematic. With the aim of finding ways to support people with mental disorders in retaining employment, a literature search including both Japanese and foreign language journals was performed in the Ichushi, CiNii and PubMed databases. The keywords used in the search were mental disorder, schizophrenia, depression, manic-depressive illness, job retention, job separation and retirement. The literature search resulted in 25 articles. Our analysis indicated that schizophrenia, depression, sleep disorders, duration of the disease (long-term), age (young generation), attention disorders, social cognitive impairment, full-time employment, absence of a person that they can consult with at work, etc., may increase the risk of job separation. Employees with a mental disorder who have not disclosed their disability to their employer are likely to have long working hours per day and retain their employment only for a short period of time; they are not receiving training and support before and after starting employment; and they do not feel rewarded at work. It was revealed that Individual Placement and Support (IPS) was effective for job retention and for improving their cognitive function. As a trend of studies in Japan, there have been many investigative research studies on individuals with mental disorders in the workforce, whereas few intervention studies have been conducted.
著者
重久 加代子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.51-61, 2020-08-20

本研究の目的は,看護実践におけるケアリングの定義を明らかにすることである.Rodgers の概念分析法を用いて,47 の対象文献より,7 つの属性,5 つの先行要件,6 つの帰結を抽出した.これらより,看護実践におけるケアリングは,「傾聴と双方向のコミュニケーション」と「人間的な親しみを感じられるかかわり」を基盤に「対象者と看護師が一体化するような関係」を築きながら「対象者と家族が安心して療養できる環境の調整」,「対象者や家族の状態を予測した支援」,「主体的に療養するための情報の提供」とともに「対象者の人格を尊重したケアの実践」と定義された.これらは,看護チームによるケアリング実践のベースになるものであり,看護実践におけるケアリングの評価指標の作成に寄与することが示唆された.
著者
富安 聡 佐藤 信也 森山 良太 大田 喜孝
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.68-77, 2017-10-06

目的:子宮頸癌検診受診率の向上を目指した施策策定の資料として,大学生の子宮頸癌検診に関する認識を明らかにすることを目的として,human papillomavirus(HPV)と子宮頸癌との関連性について大学生の理解度を調査した.方法:対象は国際医療福祉大学 福岡保健医療学部に平成26 年度に在籍した全学生とし,自記式集合調査を行った.結果:男女共通質問の結果より,HPV と子宮頸癌との関連性,検診やワクチンについての理解度が低く,特に医学検査学科以外の学科で理解度が顕著に低いことが明らかとなった.また,女性のみの質問の結果では全学科で子宮頸癌検診の内容やクーポン券について知らない学生が多いことが明らかとなった.結論:本調査より,国際医療福祉大学 福岡保健医療学部に在籍する学生のHPV および子宮頸癌検診に関する知識および関心が非常に低いことが明らかとなった.学科による差異はあるものの,全学科の知識および関心をさらに高めるために,学生を対象とした講義や講演会を行っていく必要がある.
著者
鈴木 由美 沼澤 広子 森越 美香
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.50-67, 2021-10-01

目的:自然災害が女性に対する暴力にもたらす影響を明らかにし,課題および支援策を検討する.方法:2020 年 8 月,国外文献検索サイト PubMed を用いて過去 10 年,2000 年以降の閲覧可能な full text に限定し Intimate partner violence,Gender based violence,domestic violence に対してキーワード disaster,hurricane,earth-quake,landslide,flood damage,typhoon,cyclone,forest fire とそれぞれの AND 検索を行った.結果:27 文献を対象とした.自然災害後に女性に対する暴力は増加したが,その背景に災害前からの暴力の激化,複雑化があった.個人属性では女性の脆弱性がハイリスク要因であり,貧困や安全でない避難所の居住環境なども要因となったが,基盤にジェンダー不平等やコミュニティ規範があった.また調査の限界として想起バイアスRecall bias)や羞恥心などがあり,潜在化した被害者がいることが推察された.災害から時間が経過しても,PTSD などメンタルヘルスへの影響が懸念された.災害により利用できるリソースやアクセスに限界もあった.自然災害では女性の脆弱性が暴力の引き金になることが示唆された.結論:災害時は女性への暴力は悪化すると予測して支援策を考える必要がある.
著者
クーロワ ナズグリ
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.93-100, 2016-03-31

近年,自殺は15〜19 歳の青少年の主な死因の1 つとなっている.世界保健機関(WHO)によると,世界的に青少年の死因の中で第2 位に位置している.それにもかかわらず,多くの国では自殺予防対策が行われておらず,限定的な対策が行われているだけである.各国の統計局や日本の厚生労働省,警察庁,文部科学省の統計や報告,また,WHO やユニセフ,自殺予防機関の統計,報告,マスメディアの情報を分析し,青少年の自殺の状況を把握し,青少年の自殺予防の実態を明らかにした.各国の自殺予防対策は不十分で,主に市民やボランティアが対策を実施していることがわかった.自殺は青少年の主な死因の1 つとなっており,女子より男子の自殺が多く,主な自殺手段は縊死(首つり)である.自殺リスクは主に家族環境や学校環境にあり,親の教育や学校の教師の自殺予防の教育研修,学校などで面接相談のできる場所を設けることが自殺を減少させるための一歩であると考えられる.
著者
小渕 千絵 原島 恒夫 田中 慶太 坂本 圭 小林 優子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.29-36, 2020-02-29

標準化された聴覚検査では,静寂下での単音節や単語の聴取検査が多く,雑音下での検査など聴取に負荷のかかる検査は少なく,日常生活での聞き取りの困難度を検査によって明らかにはしにくい.そこで本研究では,聴覚障害児者や聴覚情報処理障害が疑われる児者の抱える聞き取り困難を評価する臨床的な検査として,雑音下の単語聴取検査や両耳での分離聴検査,交互聴検査などの 7 つの聴覚情報処理検査を作成し,学齢児 60 名の適用について検討した.この結果,今回作成した検査については,就学後の学齢児で実施できない児はおらず,適用可能であった.検査ごとに比較すると,早口音声聴取検査および雑音下の単語聴取検査においてのみ,学年間で統計的に有意な差がみられたが,それ以外の検査では学年間差はなく,学齢児では同程度の得点を示した.今後は,幼児や成人例への適用,および聞き取り困難を抱える方への応用についても検討していく必要性が考えられた.
著者
伊藤 かおる 池田 俊也
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.101-109, 2016-03-31

日米欧の主要な診療ガイドラインにおける推奨降圧薬とその決定過程において,医療経済的視点がどの程度反映されているかを検討した.その結果,欧州高血圧学会/ 欧州心臓病学会(ESH/ESC)2013 はすべての降圧薬が対象にされており,患者の臨床的・社会的背景に応じて個別に薬物治療を行うよう記載されていた.日本高血圧学会(JSH)2014,米国合同委員会(JNC8),英国保健医療研究所/ 英国高血圧学会(NICE/BHS)2011 は4 種類が推奨されていた.推奨降圧薬の決定根拠として,JNC8,ESH/ESC2013 は医療経済学的視点による記述はほとんどなく,臨床的エビデンスを基に推奨降圧薬の決定をしていた.JSH2014 は医療経済評価を行った文献は紹介されていたが,推奨薬の決定根拠には反映されていなかった.NICE/BHS2011 では評価指標として費用効果分析を実施し,その結果から具体的で明確な薬物治療の方針を提示していた.高血圧治療の標準化と効率化を図るために,わが国においても医療経済評価の結果を反映した診療ガイドラインの必要性があると考えられた.
著者
高石 雅樹 大嶋 宏誌 浅野 哲
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.59-69, 2015-08-25

足尾銅山における「足尾鉱毒事件」は日本最初の公害であり,採掘技術の近代化および大規模化により鉱害は拡大した.鉱害は,製錬所から出る亜硫酸ガス等の有害物質や過剰な伐採による森林の荒廃および農作物の枯死,選鉱排水や鉱石堆積場から漏れ出る銅等の重金属を含んだ水による魚類の斃死および農作物被害であった.また,衛生環境の悪化が原因と思われる出生率の低下や死亡率および死産率の増加が起こっていた.鉱害対策は明治期から行われていたが,煙害は自熔炉精錬法導入まで解決せず,鉱毒水問題は精錬事業停止まで解決しなかった.現在,国や栃木県,NPO,市民ボランティア等が協力して植林活動を行っている.しかしながら,膨大な土地改良事業費用や治山活動費用を費やしても,かつての姿は取り戻せていない.近年は我が国で大規模な公害が発生する状況にはないが,東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故のように,通常とは異なる条件により発生する可能性は否定できない.したがって,過去の公害による知識を利用して十分な予防措置をとることが重要である.
著者
鈴木 由美 小川 久貴子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.74-88, 2018-03-31

目的:国内の医療施設に勤務する助産師の就業継続に影響する要因を抽出し,研究の動向と現状を把握し,今後の課題を検討する.方法:医学中央雑誌WEB 版にて「助産師」「就業継続」の文献検索.結果:58 件が抽出された.内容分析をした結果,衛生要因,院内助産・助産師外来および産科混合病棟の外的要因,帰属感,年齢,経験,ワークライフバランス,アイデンティティなどの内的要因で構成されていた.考察:衛生要因は職務満足には直接影響しないが,人間関係は就業継続に影響する.院内助産など管理者や医師との人的環境も影響する.中堅では職務上の役割荷重,ライフイベント等による過重負荷があるが,助産師においては出産,育児はキャリアとして捉えられる.妊産婦などとの関わりから施設への帰属感が生まれるのも他の看護職とは異なる.結論:医師,管理者との協働も含めて人的環境が就業継続への影響要因となっていた.研究動向として職務満足度が高いベテラン群対象の研究が少ない.
著者
野﨑 智仁 谷口 敬道
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.89-98, 2021-02-20

Various studies have been conducted to investigate the actual conditions and to verify the interventions that have been made to support the employment of individuals with mental disorders since their job retention and job separation appeared to be problematic. With the aim of finding ways to support people with mental disorders in retaining employment, a literature search including both Japanese and foreign language journals was performed in the Ichushi, CiNii and PubMed databases. The keywords used in the search were mental disorder, schizophrenia, depression, manic-depressive illness, job retention, job separation and retirement. The literature search resulted in 25 articles. Our analysis indicated that schizophrenia, depression, sleep disorders, duration of the disease (long-term), age (young generation), attention disorders, social cognitive impairment, full-time employment, absence of a person that they can consult with at work, etc., may increase the risk of job separation. Employees with a mental disorder who have not disclosed their disability to their employer are likely to have long working hours per day and retain their employment only for a short period of time; they are not receiving training and support before and after starting employment; and they do not feel rewarded at work. It was revealed that Individual Placement and Support (IPS) was effective for job retention and for improving their cognitive function. As a trend of studies in Japan, there have been many investigative research studies on individuals with mental disorders in the workforce, whereas few intervention studies have been conducted.
著者
菊池 昭江
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.22-35, 2013-10-31

【目的】CNSにおける自律性測定尺度を作成し,その構造的特徴を明らかにする.【方法】CNS認定者545名を対象に質問紙調査を実施した.【結果】回答者212名(38.9%),有効回答205名(96.7%).因子分析の結果,CNSの自律性は"倫理調整・ケア相談能力","他職種間調整・管理運営相談能力","看護研究の実践・活用能力"のCNS役割行動3因子,"ケアプランニング能力","クリティカルケア・総合判断能力","基礎的実践能力","自立的判断・実行能力"のCNS看護職自律性4因子構造を示した.CNS自律性測定尺度のCronbach's αは0.81〜0.94,各因子総得点と項目得点との相関係数は0.63〜0.83(p<0.001)と高い値が得られた.CNS自律性と自信や意欲,職場の人間関係との間でも関連性を認めた.なお,本研究では対象者数が少なく専門領域の経験年数も僅かに過ぎないことから,今後は認定者数の推移をみてCNSの自律性形成プロセスを検討していくことが課題である.【結論】CNSの自律性は,CNS役割行動3因子及びCNS看護職自律性4因子で構成され,尺度項目に関する一定の妥当性と信頼性が確認された.
著者
佐藤 吉海 藤田 功 佐々木 博
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.68-76, 2013-10-31

MRI頭部臨床画像を対象に,同一ROI法と差分法によるSNR測定において,撮像法やROI内組織の不均一性およびモーションアーチファクトがSNR測定値に与える影響について検討した.撮像法としては2DFE法,T1強調2DSE法,T2強調2DFSE法,および3DFE法を取り上げ,各撮像画像の白質領域内の前頭葉,基底核,後頭葉に左右計16個のROIを設置しSNRを測定した.また,位相エンコード方向と周波数エンコード方向の無信号領域に設定したROIの標準偏差を比較することでモーションアーチファクトの影響の検討を行った.その結果,SNRの計測値への不均一性,モーションアーチファクトの影響は,加算回数の増加によってSNRが大きくなるほど大きくなること,および,影響の大きさは撮像法によって異なることが明らかになった.特に,2DFSEおよび3DFEでは,SNRの高い画像を得るために加算回数を増加しても,モーションアーチファクトの影響が大きくなり,期待されるほど良い画質が得られないので注意が必要である.
著者
平間 さゆり 牛木 潤子 小畠 秀吾 秋葉 繭三
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.37-47, 2016-08-10

近年,男子の殺人事犯は減少傾向にあるが,女子の殺人事犯には変化がない.殺人事犯には男女差があり,女子殺人の被害者には親族や配偶者が多く,情動が主な動機となっている.女子の殺人事犯の数は少ないためあまり研究されていないが,家族や近親者を対象にしていることから,本研究において,女子の殺人事犯を家族機能の側面から検討することとした.家族機能以外にも,犯罪に影響を与えるとされる発達障害(ADHD)と人格傾向(境界性パーソナリティ障害:BPD)に着目し,女子受刑者(殺人以外の他罪種を含む)を対象に家族機能・BPD・ADHD 傾向について調査した.その結果,女子殺人事犯において,ADHD 傾向を持ち,家族の情緒的絆や適応が不良であると,自己否定し見捨てられ感を抱き,他者が信じられず対人関係が困難になることが示された.よって,これらが女子の殺人事犯の背景要因の1 つになると考えられた.また,女子殺人事犯のみに,年齢の高低により家族・ADHD・BPD 傾向全てに差異がみられた.
著者
高石 雅樹 渡邊 拓哉 浅野 哲
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.48-58, 2015-08-25

単身者用アパートでは,単一の部屋が食事,勉強および睡眠等,複数の用途で使われるケースが多い.本研究では,アンケート(206/302人;回収率68.2%)にて一人暮らしを行っている大学生(131人)から住居の情報等を集めるとともに,一人暮らしをしている大学生4名の住居(ワンルーム3名と一戸建て1名)にて室内環境測定を行った.室内環境測定にて,室内温度,気湿,CO2濃度および照度が基準値を逸脱しているケースがあった.これらは,住宅の気密性の高さに起因すると考えられる.換気によりCO2濃度は低下したが,浮遊粉じん濃度はむしろ上昇した.また,換気方法による換気効果を比較したところ,窓のみの換気ではほとんど効果が認められなかった.そして,アンケートでは換気不足の人が多く,適切な方法,時間,頻度等を明確に提示することが重要であると考えられる.一方で騒音は,室内環境測定では基準値を満たしていたものの,アンケートにおいて他人が発し自分の生活リズムに合致しない騒音への不満が多く挙げられていた.このため,騒音と感じやすい音の種類や騒音が気になる時間帯等の情報を共有し,改善方法を検討することが重要である.したがって,一人暮らし環境の改善は自ら良好な環境の維持に努めるとともに,他の居住者との調和を考えて住環境を整えることが重要である.
著者
重久 加代子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.92-105, 2020-08-20

目的:がんサバイバーの闘病体験と必要なケアリングを明らかにすることである.方法:患者会で活動するがんサバイバー 5 名に闘病体験時の看護師の関わりについて半構造化面接を行い質的に分析した.結果:3 つの時期の 14 の状況より 71 の必要なケアリングと 14 の状況のケアリングが抽出された.〈がんの診断を受け入院するまでの時期〉では 2 の状況と【がんや検査に対する不安や苦痛を理解したケアリング】等である7 のケアリング,〈入院し治療を受ける時期〉では 7 の状況と【主体的な療養へのケアリング】,【全人的な理解と尊厳を守るケアリング】等である 36 のケアリング,〈外来での治療継続と経過観察の時期〉では 5 の状況と【在宅療養中の心身の苦痛とセルフケアへのケアリング】,【生き方や価値観を尊重したケアリング】等である 28のケアリングが抽出された.結論:これらは,本研究の定義である「対象者を大切な存在として認識し,その人の能力を最大限生かせるかかわり」を反映した,がん看護のケアリングになることが示された.
著者
若林 馨 小畠 秀吾
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.37-51, 2020-02-29

我々は,更生保護施設入所者の社会復帰への支援を考察する手がかりとして,当事者の孤独感を評価した . まず,孤独感を感じる原因ならびにその関係性について因子分析を行った.結果,孤独感を感じる原因として 3 因子が抽出され,うち「抱えられる関係の不在」因子のみ退所時に値が低下していた.そのプロセスと原因の考察のため,次にインタビュー調査を行った.対象者は施設入所当初は自身を深く否定するものの,施設という安全基地=疑似家族的な軸足と,雇用先など外の社会との行き来による相互作用体験の連続により,自分の再定義づけを行っていた.そして,自分の再定義づけができていくことが,孤独の原因を外的要因へ帰属させることを低減させ,自身の環境や感情を自身で抱えられることに影響を及ぼしていた . 今後の社会復帰への心理的支援として,本人の孤独の原因帰属・対処方法への着目や,自己の再定義づけの中で起こる多様で複雑な葛藤への心理的サポート等が有用であると考えられる .
著者
Baast Gangerel
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.86-94, 2018

モンゴルの医療制度は中国,旧ソ連の支配下で変化を繰り返した.独立後,モンゴル政府は医療サービスの改善と質的向上に取り組んでいる.保健省は「モンゴル健康行動に関する2013 年度,国際的な安心・安全な医療を提供する質的な向上」を作成し,医療改善を推進している.同時にモンゴルと日本は医療交流を深め,日本への期待感は高まっている.本研究ではこうしたモンゴルの医療制度と,モンゴルと日本との医療交流の動きを調査,分析した.モンゴルの医療制度は年々,近代化され,医療機関数と医師の数は増加しているが,増加した民間医療機関の多くは個人開業医による診療所で,規模も小規模の施設が大多数を占めている.今後,病院は経営の改善および医療サービスの充実を進め,政府は医療の国際化,日本をはじめ先進国との交流を深め,人材育成に取り込むことが課題となっている.