著者
藤田 幸司 藤原 佳典 熊谷 修 渡辺 修一郎 吉田 祐子 本橋 豊 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.168-180, 2004 (Released:2014-08-29)
参考文献数
27
被引用文献数
39 48

目的 地域高齢者における外出頻度の健康指標としての妥当性を検討するとともに,低い外出頻度に関わる要因を明らかにすることである。方法 新潟県与板町在住の65歳以上全高齢者1,673人を対象に面接調査を行い,身体・心理・社会的特徴を調べた。得られた結果を,ふだんの外出頻度 4 群間(毎日 1 回以上,2~3 日に 1 回程度,1 週間に 1 回程度,ほとんどない)で比較し,外出頻度の外的基準妥当性を検討した。また,低い外出頻度に関わる要因を明らかにするため,「毎日 1 回以上」vs.「2~3 日に 1 回程度」あるいは「1 週間に 1 回程度以下」を目的変数とし,性・年齢を調整しても有意な関連性を認めた変数をすべて説明変数に投入した多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。結果 入院・入所中,長期不在,すでに死亡であったものを除く1,588人のうち1,544人(男性39.7%,女性60.3%)から回答が得られた(応答率97.2%)。外出頻度の分布は,全体では「毎日 1 回以上」76.3%,「2~3 日に 1 回程度」13.1%,「1 週間に 1 回程度」3.7%,「ほとんどない」6.9%であった。65~69歳を除く各年齢階級においては,外出頻度の分布に性差はみられなかったが,男女とも80歳以降になると明らかに外出頻度は低かった。 外出頻度の低い高齢者は,ほとんどすべての身体・心理・社会的な側面で健康水準が低かった。外出頻度は,総合的移動能力レベル,老研式活動能力指標あるいは GDS 短縮版の得点と強い相関性を示した。外出頻度が「週 1 回程度以下」であることの独立した関連要因(カテゴリー)は,年齢(高い),歩行障害(あり),転倒不安による外出制限(あり),心疾患の既往(あり),手段的自立や社会的役割(障害あり),近所づきあいの頻度(週 1 回以下),集団活動への参加(なし),散歩・体操の習慣(なし),油脂類の摂取頻度(2 日に 1 回未満)であり,一方,「2~3 日に 1 回程度」であることのそれは,就労(なし),脳血管障害の既往(あり),抑うつ度(GDS 短縮版得点 6 点以上),近所づきあいの頻度(週 1 日以下),集団活動への参加(なし),油脂類の摂取頻度(1 日に 1 回末満)であった。結論 地域高齢者においては外出頻度が低いほど身体・心理・社会的側面での健康水準は低く,すでに信頼性・妥当性が検証されている健康指標との相関性も高かったことから,外出頻度は地域高齢者の包括的な健康指標の一つとみなすことができよう。
著者
新開 省二 藤田 幸司 藤原 佳典 熊谷 修 天野 秀紀 吉田 裕人 竇 貴旺
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.627-638, 2005 (Released:2014-08-06)
参考文献数
25
被引用文献数
10

目的 地域高齢者におけるタイプ別閉じこもりの予後と,それぞれの閉じこもりが予後に及ぼす独立した影響を明らかにする。方法 新潟県与板町の65歳以上の地域高齢者1,673人を対象とした初回調査(2000年11月実施)に応答した1,544人(応答率92.2%)を 2 年間追跡し(追跡調査は2002年10月実施),初回調査の総合的移動能力とふだんの外出頻度から定義したタイプ 1(総合的移動能力がレベル 3 以下かつ外出頻度が週 1 回程度以下)およびタイプ 2(同レベルが 1 または 2 かつ外出頻度が週 1 回程度以下)の閉じこもりの予後を,それぞれの対照群(総合的移動能力が同レベルであるが,外出頻度が 2,3 日に 1 回程度以上である非閉じこもり)との間で比較した。予後指標は,追跡期間中の死亡,追跡調査時の入院・入所および活動能力水準(歩行能力,手段的 ADL,基本的 ADL,認知機能),あるいは活動能力障害の新規発生とした。閉じこもりの独立した影響は,重回帰分析あるいは多重ロジスティックモデルを用いて,交絡要因(性,年齢,慢性疾患,初回調査時の活動能力水準や心理・社会的変数)を調整して検討した。成績 初回調査に応答し,閉じこもりの有無とタイプが判定できた1,520人の内訳は,レベル 1,2 非閉じこもり1,322人(87.0%),タイプ 2 閉じこもり81人(5.3%),レベル 3 以下非閉じこもり39人(2.6%),タイプ 1 閉じこもり78人(5.1%)であった。タイプ 2 は対照群に比べ,2 年後の活動能力が低下しやすく,交絡要因を調整しても活動能力低下の独立したリスク要因であった。2 年後活動能力障害が新規に発生するタイプ 2 の相対危険度(オッズ比とその95%信頼区間)は,一部の交絡要因を調整したモデルでは,歩行障害3.20(1.60-6.38),手段的 ADL 障害2.85(1.20-6.82),基本的 ADL 障害1.52(0.61-3.75),認知機能障害3.05(1.06-8.78)であり,すべての交絡要因を調整したモデルではそれぞれ2.49(1.20-5.17),2.25(0.90-5.63),1.46(0.54-3.94),2.41(0.71-8.17)であった。一方,タイプ 1 は対照群に比べ,追跡期間中の死亡率は高かった(33.3% vs. 5.1%)が,入院・入所の割合は低く(9.0% vs. 25.6%),それらの合計に対してはタイプ 1 の独立した影響は認められなかった(調整済オッズ比は2.05[0.54-7.75])。結論 タイプ 2 閉じこもりは移動能力が高い高齢者における活動能力低下の独立したリスク要因であるが,タイプ 1 閉じこもりは移動能力が低い高齢者の予後を左右する独立したリスク要因とはいいがたい。
著者
藤原 佳典 天野 秀紀 熊谷 修 吉田 裕人 藤田 幸司 内藤 隆宏 渡辺 直紀 西 真理子 森 節子 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.77-91, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
32
被引用文献数
4

目的 在宅自立高齢者が初回介護保険認定を受ける関連要因を,要介護認定レベル別に明らかにする。方法 新潟県与板町在住の65歳以上全高齢者1,673人を対象にした面接聞き取り調査(2000年11月実施,初回調査と称す)に1,544人が応答した。ベースライン調査時の総合的移動能力尺度でレベル 1(交通機関を利用し一人で外出可能)に相当し,未だ要介護認定を受けていない1,225人をその後 3 年 4 か月間追跡した。この間,介護保険を申請し要支援・要介護 1 と認定された者を軽度要介護認定群,要介護 2~5 の者を重度要介護認定群,未申請で生存した群(以降,イベント未発生群と称す)に分類し,男女別にイベント未発生群と軽度あるいは重度要介護認定群との間で初回調査時の特性を比較した。つぎに Cox 比例ハザードモデル(年齢,老研式活動能力指標の手段的自立,慢性疾患の既往は強制投入し,単変量分析で有意差のみられた変数すべてをモデルに投入したステップワイズ法)を用いて,要介護認定に関連する予知因子を抽出した。成績 追跡対象者のうち初回調査時に BADL 障害がなく,かつ申請前の死亡者を除く1,151人を分析対象とした。うちイベント未発生群は1,055人,軽度要介護認定群は49人,重度要介護認定群は47人であった。男女とも共通して在宅自立高齢者の軽度要介護認定に関連する予知因子として高年齢と歩行能力低下(男は「1 km 連続歩行または階段昇降のいずれかができないまたは難儀する」のハザード比が7.22[95%CI 1.56-33.52] P=0.012;女は「1 km 連続歩行・階段昇降ともにできないまたは難儀する」のハザード比は3.28[95%CI 1.28-8.42] P=0.014)が,また重度要介護認定の予知因子として高年齢と手段的自立における非自立(4 点以下のハザード比は男で3.74[95%CI 1.59-8.76] P=0.002;女で3.90[95%CI 1.32-11.54] P=0.014)が抽出された。また,男性のみ重度要介護認定に重度認知機能低下が,女性のみ軽度要介護認定に入院歴と咀嚼力低下が抽出された。結論 在宅自立高齢者の要介護認定の予知因子は,高年齢を除き,大半は介護予防事業により制御可能であろう。今後,これら介護予防事業の効果が学術的に評価されることが期待される。
著者
新開 省二 藤田 幸司 藤原 佳典 熊谷 修 天野 秀紀 吉田 裕人 竇 貴旺 渡辺 修一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.443-455, 2005 (Released:2014-08-06)
参考文献数
30
被引用文献数
18

背景 地域高齢者における“タイプ別”閉じこもりの実態についてはほとんどわかっていない。目的 地域高齢者における“タイプ別”閉じこもりの出現頻度とその特徴を明らかにする。方法 地域特性の異なる二地域[新潟県与板町および埼玉県鳩山町鳩山ニュータウン(以下鳩山 NT と略す)]に住む65歳以上の地域高齢者全員(それぞれ1,673人,1,213人)を対象に横断調査を実施した。ふだんの外出頻度が「週 1 回程度以下」にあるものを「閉じこもり」と定義し,そのうち総合的移動能力尺度でレベル 3~5 にあるものを“タイプ 1”,同レベル 1 または 2 にあるものを“タイプ 2”,と二つに分類した。地域,性,年齢階級別にタイプ別閉じこもりの出現頻度を比較するとともに,総合的移動能力が同レベルにあり,ふだんの外出頻度が「2, 3 日に 1 回程度以上」に該当する「非閉じこもり」との間で,身体的,心理・精神的,社会的特徴を比較した。成績 調査時点で死亡,入院・入所中,長期不在のものを除くと,与板町では97.2%(1,544/1,588),鳩山 NT では88.3%(1,002/1,135)という高い応答率が得られた。両地域とも地域高齢者のうち「閉じこもり」は約10%にみられ,そのタイプ別内訳は,与板町ではタイプ 1 が4.1%(男4.0%,女4.2%),タイプ 2 が5.4%(男5.2%,女5.6%),鳩山 NT ではそれぞれ3.3%(男1.5%,女4.9%)と6.8%(男5.7%,女7.8%)であった。潜在的交絡要因である性,年齢,総合的移動能力(レベル 1, 2 あるいはレベル 3-5)を調整すると,タイプ 2 の出現率に地域差がみられた[鳩山 NT/与板町のオッズ比=1.44(1.02-2.03)]。一方,タイプ 1 の出現率における地域差や両タイプの出現率における性差は認められなかった。両地域,男女において,年齢階級が上がるにしたがって両タイプの出現率は上昇し,タイプ 2 は80歳以降で,タイプ 1 は85歳以降で10%を越えていた。タイプ 2 はレベル 1 または 2 にある「非閉じこもり」に比べると,潜在的交絡要因を調整しても,歩行障害や失禁の保有率が高く,健康度自己評価や抑うつ度などの心理的側面,さらには高次生活機能や人・社会との交流といった社会的側面での水準が低かった。一方,タイプ 1 は,レベル 3~5 にある「非閉じこもり」に比べると,基本的 ADL 障害や「知的能動性」の低下を示す割合が低いにもかかわらず,家の中での役割がなく,転倒不安による外出制限があり,散歩・体操の習慣をもたないと答えた割合が高かった。結論 タイプ別閉じこもりの出現率には,地域差,年齢差を認めた。タイプ 2 には“要介護状態”のハイリスク者が多く含まれており,タイプ 1 を含めタイプ 2 も介護予防のターゲットとして位置づけるべきである。
著者
新開 省二 藤田 幸司 藤原 佳典 熊谷 修 天野 秀紀 吉田 裕人 竇 貴旺
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.874-885, 2005

<b>目的</b>&emsp;地域高齢者における閉じこもり発生の予測因子をタイプ別に明らかにする。<br/><b>方法</b>&emsp;新潟県与板町の65歳以上の全住民1,673人を対象として 2 年間の前向き疫学研究を行った。ふだんの外出頻度が「週 1 回程度以下」にあるものを閉じこもりと定義し,そのうち総合的移動能力尺度でレベル 1(独力で遠出可能)あるいは 2(独力で近隣外出可能)にあるものをタイプ 2,同レベル 3 以下(独力では近隣外出不可能)にあるものをタイプ 1 と二つに分類した。初回調査時にレベル 1, 2 かつ非閉じこもりにあった1,322人(応答者1,544人の85.6%)について 2 年後の状況を調べ,レベル 1,2 非閉じこもりを維持,タイプ 1 に移行,タイプ 2 に移行,レベル 3 以下非閉じこもりに移行の 4 群に分類した。分析においては,まず,追跡調査時もレベル 1, 2 非閉じこもりを維持していた群を基準として,タイプ 1 あるいはタイプ 2 に移行した群との間で,初回調査時の身体,心理,社会的特性の分布を比較した。次に,多重ロジスティックモデル(ステップワイズ法)を用いて,性,年齢を調整しても有意な関連性を示した変数全てをモデルに投入し,レベル 1, 2 非閉じこもりからタイプ 1 あるいはタイプ 2 に移行することの予測因子を抽出した。<br/><b>成績</b>&emsp;初回調査時にレベル 1, 2 非閉じこもりであったものの 2 年後の状況は,レベル 1, 2 非閉じこもりが1,026人(77.6%),タイプ 1 が22人(1.7%),タイプ 2 が63人(4.8%),レベル 3 以下非閉じこもりが29人(2.2%)であった[追跡不可(死亡等含む)は182人(13.8%)]。タイプ 1 への移行を予測するモデルに採択された変数(予測因子)は,年齢(高い,5 歳上がるごとのオッズ比[95%信頼区間]は2.10[1.36-3.24]),就労状況(なし,4.42[1.21-16.2]),歩行障害(あり,4.24[1.37-13.1]),認知機能(低い,5.22[1.98-13.8])であり,タイプ 2 のそれは,年齢(高い,5 歳上がるごと1.65[1.32-2.06]),抑うつ傾向(あり,2.18[1.23-3.88]),認知機能(低い,2.72[1.47-5.05]),親しい友人(なし,2.30[1.08-4.87]),散歩・体操の習慣(なし,2.21[1.26-3.86])であった。<br/><b>結論</b>&emsp;地域高齢者におけるタイプ 1 閉じこもりの発生には身体・心理的要因が,タイプ 2 閉じこもりのそれには心理・社会的要因が,それぞれ主に関与していることが示唆された。閉じこもりの一次予防に向けた戦略はタイプ別に組み立てる必要がある。
著者
藤田 幸司 本橋 豊 金子 善博 佐々木 久長
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、ヘルスプロモーションの手法であるコミュニティ・エンパワメントの自殺予防対策における有効性を検討するために実施した。積極的な社会参加を促す地域づくり型の介入プログラムを実施した。前後に実施した悉皆調査の結果、コミュニティ・エンパワメントを実施した地域の認知的ソーシャル・キャピタルの向上が認められた。高齢者においては、コミュニティ・エンパワメントによる積極的な社会参加と住民同士の信頼を高める地域づくり型プログラムの実施は、地域のソーシャル・キャピタルを醸成させ、地域力を向上させる可能性が示唆された。
著者
本橋 豊 金子 善博 佐々木 久長 藤田 幸司
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

社会格差が自殺に及ぼす影響について、1)無職者の自殺の実態に関する統計学的解析研究、2)域自殺対策緊急強化基金の効果に関する研究(都道府県別の自殺率格差に影響を及ぼす要因)、3)域住民を対象としたソーシャル・キャピタルと心理的ストレスの関連性に関する研究(食事への配慮と教育歴に注目して)、4)東日本大震災被災地住民の地域の絆づくり支援と心の健康に関する研究、について検証した。無職者の自殺率ほど高率だった。基金の効果は自殺対策の先進地域の東北地方で大きかった。また、ソーシャル・キャピタルは心理的ストレスと有意に関連し、地域の絆を重視した自殺対策が重要と考えられた。